M県S市杜王町在宅のとあるスタンド使いの日記   作:BサインからCサイン

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ふゥー やっと期末テスト終わった…。
久しぶりの投稿です。遅くなって申し訳ありません!


エニグマの少年

「それで?もう風邪は大丈夫なの?」

 

康一からの問いに治一は”ああ”と答えた。

岸部露伴家半焼事件という地元の新聞でも大きく報道された事が起きたあの日から数日、すっかり熱も引いた治一は康一と一緒に通学していた。

 

そして他愛もない世間話をしながら通学すること数分。康一の身体に変化が訪れる。

それは人間が誰しも避けられないいわば”自然現象。

 

「…あ、治一くん。ぼくちょっと、トイレにいってくるね」

 

康一は公園の公衆トイレを指さし、カバンも持ったまま駆け出していった。治一はひらひらと手を振りながらその姿をぼーっと見つめた。

 

(……どっこいしょっと)

 

康一がトイレに入ったのを確認すると、治一は公園のベン・に腰を下ろした。

康一が帰ってくるまで三十秒もないだろうが、その間ただ突っ立っているのも恥ずかしいからとりあえず座ることにしたのだ。

だが 二分ほど経っても康一はトイレから出てこなかった。

遅いんじゃあないかと疑問を持った治一だったが、もしかしたら”大”のほうかもしれないという可能性を考慮して、大人しく待っていることにした。

…だが、五分経っても康一はトイレから出てこなかった。

さすがに長いなと感じた治一は康一が入って行ったトイレに向かった。

 

「康一ー?」

 

……………

 

「……康一?いつまでトイレにこもって…」

 

治一は驚いた。

トイレに”誰もいなかった”のだ。康一の姿はどこにも見当たらない、個室は全て閉まっているが、一つずつノックしてもまったく返事がなかった。聞こえるのは響いている自分の声だけだ。まさかいない?が、そのとき、不意に何かを蹴った感触がした―――――――康一のカバンだった。

治一はそれを手に取った。

 

「…これは康一の?なぜカバンだけがトイレに放置してあるんだ?いやっ それ以前になぜカバンだけがあるんだっ?康一はどこにいったんだ!?それにさっきはカバンなんて落ちていなかった!」

 

おかしい――――――そう治一が感じた瞬間、()()を踏みつけ、カサっ という音がトイレに響いた。

 

「…………『紙』?」

 

治一が見つけた物。それはタイル性の床の上に落ちている”紙”だった。何も書かれていないメモ用紙を綺麗に折りたたんだかのような”紙”が、いつの間にか自分のすぐ後ろに落ちていたのだ。

しかし、さきほど見たときにはこんな”紙”は落ちていなかった。風に飛ばされてきたわけどもなく、誰かが落としたわけでもないのにだ。

風なんて吹いていなかったのにだ、そもそもトイレの中に風なんて吹くはずがない。それにこのトイレには誰も出入りしていないはずだ。

 

怪しいのは確実だった。

 

「……………」

 

ペラ…治一は紙を手に取り、ゆっくりと広げた。

 

「ワンッ!ワウンッ!」

 

「!なにーっ!」

 

紙を広げると、その中から突然と”犬”が飛び出してきた。治一は犬にのしかかるように身体を押さえつけられ、尻餅をついてしまう。だが、犬はお構いなしに治一の身体の上で暴れ、彼をなんども足で踏みつけてくる。

 

「くっ、なんだこの犬は!まさか、スタンド攻撃か!?」

 

治一は身を転がして犬の下から脱出した。そのまま犬の腹を蹴り飛ばした。

犬との距離が空いたすきに治一は起き上り、〈I's〉を身構えさせた。

しかし犬はキャインキャインと鳴きながら外にに走り去ってしまった。

 

「?……なんだ。あの犬はスタンド使いじゃなかったのか?」

 

逃げるようにして去っていく犬の姿を見ながら制服についた汚れをはらう。

 

「……いや…「紙から犬が出てくる」なんてことはありえない これは間違いなくスタンド攻撃だ」

 

どこにいる?本体はそう遠くにはいないはずだ、康一が俺がトイレに行っている間に襲われたとしてもその間は五分もない。それに悲鳴すら聞こえなかったということは”一切の抵抗を許さないほどの強力な相手”ということ…………。

 

「〈I's〉ッ」

 

治一は能力を使い、周囲の状況を散策し始めた。

トイレの個室、掃除用具室、外壁の周り……六人の治一による捜索は時間を必要としない。数による行動は”確実”を手にするからだ。逃げ道を作らず、なおかつ自分の身に危険を晒すことは絶対にない―――――――――それが治一の能力〈I's〉

 

康一が()()()()のならどこかに康一の姿があるはずだ スタンド使いが殺した相手を連れ去っていくなんてことは恐らくないだろう。仮にそうだとしてもトイレから外に出るスペースは一つしかない…そしてそれを俺は見ていないんだ。まだその辺にいるはずなんだ。

 

「いたか?」

 

「いや、こっちにはいない」

 

「外にもいないぞ」

 

「スタンド使いらしい奴も康一も見当たらない」

 

「手掛かりらしいものもないぞ」

 

分身が戻ってくるが有力な情報は得られなかった。治一は思考を巡らせる。

しかし答えはでてこない。探してもまったく見つからないなんて―――――()()()()()のだ。

 

「……いや…あっ()()ぞ」

 

分身が自分の手に隠していたモノを見せる。

それはさきほど”犬”が突然飛び出してきたのと同様の”紙”だった。

それは散策時、個室の中で拾った紙だった。トイレットペーパーの上に”丁寧に折りたたんで”置かれていたのだ。

 

「…………」

 

ゆっくりと”紙”を広げる――――――――――

 

「…………?」

 

しかし、何も起こらなかった。紙を調べても何も出てこない、ただの白い”紙”だった。

ただの紙かと安心したのもつかのま、安堵した瞬間に”敵の攻撃”はやってきた。

 

ガァーン!!

 

「うガァーッ!! !?」

 

突然白い紙の中から”拳銃”が出てきて…治一に向けて発砲してきたのだ。

治一の身体が大きく仰け反り、弾丸は治一の後ろにあったトイレの木製のドアを貫通した。

 

『……・ッ 弾丸が当たる直前に能力を使ったのか…まあ当てるつもりなんかなかったが、どうやらお前のスタンドは”パワーはないみたいだな』

 

”少年”は悪態をついた。

そしてそのとおり、弾丸は治一の脳天に向かって直進してくるのではなく、頬をかする位置に撃たれていた。まるで”当てるつもりなどなかった”かのように、だが”弾丸が自分に当たる”と勘違いした治一はとっさに能力を使用し、分身を自分の身体の大きさの分だけ移動して出現させ、”自分と分身の間”を弾丸に通過させたのだ。

 

「やはりその”紙”、スタンド能力!そして本体はその”紙の中”に隠れているなッ!それがお前の能力だッ!!」

 

治一の分身のうち一体が”紙”を掴みにかかる。

しかし、その”紙は逃げるようにし空中を舞い、さらに中からは包丁やナイフがバラバラと落下する。これでは紙を取りにいけば自分が負傷してしまう。だが手を出さなければ刃物は自分に向かって降ってきてしまう。

落下してくる刃物の”柄の部分を掴み〈I's〉は治一の身を守った。

 

『うーんダメだな。「恐怖のサイン」が見えない…かといってこれ以上このままでいくとマズイし……しょうがない、姿を見せるとするか』

 

”紙”は一人でに外に飛んでいき、治一はそれを追いかける。

トイレの外にいたのは健康的な褐色肌に白髪の容姿をした少年だった。年は恐らく治一より少し上だろう。そこには謎めいた不気味さを感じた。

 

 

「恐怖を感じない人間はいない」

 

「……………」

 

「怖いという態度や表情を押し隠そうとしてもダメだ。心の奥深いところの「恐怖」って言うのはそれは決して取り除く事はできない…誰であろうと…」

 

少年――――――宮本輝之助はポケットから一枚の”紙”を取り出した。

そしてそれを親指と人差し指で掴み、見せびらかすようにひらひらと揺らしてる。

 

「この”広瀬康一”は簡単に紙にできた。トイレの影からちょいと驚かしたら、康一の「恐怖のサイン」は「目ばたき二度」…すぐにわかった。しかし――――――」

 

「おまえの「恐怖のサイン」は見えなかった!それにボクは興味がある、どうすれば恐怖するのか どうして恐怖しないのか!ボクはそれが知りたい!」

 

「……そんなことはどうでもいい。康一はそこにいるんだな?」

 

治一は輝之助が持つ”紙”を指さす。

 

「…お前の能力はその「恐怖のサイン」を見つけた奴を紙に変える。…だが、スタンドで攻撃してこないってことは……近接パワー型じゃあないな」

 

輝之助はしけたように目を細め”そうさ”とだけ言うと、別の”紙”を取り出し、再び口を開いた。

 

「確かに…ボクの『スタンド』()()()な能力かもな。そして君の言う通りだが、こうやっていろんな物を”紙”にしてファイルすることにしてはバツグンなんだ。本物の銃だって簡単に持ち歩けるし、九州のトンコツラーメンだってホカホカのままファイルして杜王町で好きな時に食べる事だってできる」

 

そういうと輝之助は不敵に笑い、取り出した”紙”を破いた。すると破れた紙の中からどんぶりの割れたトンコツラーメンがビシャビシャと砂の上に落ちた。

 

「そしておまえの言う通り、この紙が”広瀬康一”さ。もちろん生きている……………ぼくの『スタンド』はチンケな能力だからねえ~……人を殺すパワーや能力はない……もっとも、今のように誰かがやぶいてしまえば別だがね……。そしてぼくこれから君の「恐怖のサイン」を見つけなければならないというわけだ……」

 

しかし、彼はまったく危機感を感じている様子はない。

むしろ今の状況を楽しんでいるような愉快さを感じる。

 

「……まあお前が何を言おうが関係ない。すぐに康一の”紙”は渡してもらう……!!」

 

〈I's〉の拳が輝之助の顔面に向かって繰り出される。

輝之助はサッと”紙”で防御した。

普通なら紙などでは拳は防げないであろう、しかし、この状況でなら、”紙”は鋼鉄でできた盾よりも強力な防御壁となる。

 

「おや、攻撃してこないのかい?」

 

「…ぐ、ううう――――」

 

治一は攻撃ができない。

〈I's〉の拳で”紙”を殴りつけた際に”破いてしまう”かもしれなかったからだ。

 

「なら―――――――こっちから行くぞッ!」

 

輝之助はまた別の”紙”を取り出し、治一に向け 広げる。

すると”紙”の中から炎―――いや、一直線となった炎は火柱となって飛び出してきた。

 

「くっ〈I's〉ッ!」

 

とっさに能力を使おうと手を伸ばす。が、それを治一は途中で踏みとどまった。

今、火柱を”分身”させれば、二つとなった火柱は自分に当たることなくかわせるだろう。

しかし、ここは公園。自分の後ろは何もないが……自分のすぐ横には葉がしげっている木が何本も立っている。もし、このまま能力を使えばたちまち大火事になってしまう。

治一は〈I's〉で自分を殴った。殴った痛みでうめき声が漏れる。が、これで能力が発動できる。

”自分が分身する”ことで直撃を避ける。だが、あくまで”直撃を避ける”だけだ。

自分の右腕と分身の左腕―――――つまり、両腕に火傷による痛みが走る。

 

「うっ ぐ……!火も”紙”にできるのか……!!」

 

両腕に感じる痛みをこらえながら輝之助を睨む治一。

 

「なッ……!?」

 

しかし、輝之助は予想外の行動に出ていた。

それは『逃げる』

なんと彼は敵である治一に背を向けながら一目散に公園の外に走り出していたのだ。

 

「っ…待てッ!」

 

追いかける治一。

この先はメインストリート…隠れる場所も多いし彼の”紙”になる能力を使えばたとえ商品の隙間からドブの中でも自由に移動できる――――ここで彼が逃がしたら康一は”紙”にされたままだ。

それだけは避けたかった。

 

しかし、輝之助は突然足を止めた。

そして―――――”紙”を車道に…捨てた。

 

「!?」

 

ひらひらと紙が落ちていく、そして紙を丁度踏みつける位置に大型トラックが突っ込んでくる。

このままでは、康一の”紙”は高速回転するタイヤに無残に引き裂かれ―――――――――

 

「こ、康一ィィィィーッ!!」

 

治一は輝之助を押しのけ”紙”に手を伸ばす……だが惜しくも届かない。

ふと治一の頭には破られた”紙”の中から康一が出てくる姿がよぎった。

その姿は先ほどのトンコツラーメンが壊れたときのように…血だらけになり、死んでいた。

 

「――――――ッ!!」

 

治一は友達を失う恐怖に『目を閉じ、歯を喰いしばった』。

そしてそれを輝之助は見逃さない。

 

「!見たぞ おまえの「恐怖のサイン」をッ!『目を閉じ歯を食いしばる』それがおまえの恐怖のサインだ!!」

 

瞬間、輝之助の身体から『スタンド』のヴィジョンが飛び出す。

 

「そして「恐怖のサイン」を見つけた時!我が〈エニグマ〉は絶対無敵の攻撃を完了するッ!!」

 

そして〈エニグマ〉が物凄い速さで治一に肉迫する。

 

「う―――おおおおおおおオオオオォーッ!!」

 

治一は〈I's〉で〈エニグマ〉を攻撃する―――――――が、〈エニグマ〉は〈I's〉に組み付き、一瞬で治一ごと”紙”にしてしまった。

抵抗も空しく、治一はやられてしまった。”恐怖のサイン”を見せた者に絶対的な敗北を与え”紙”にする。それが宮本輝之助の能力〈エニグマ〉だった。

 

ズキュン!

 

「………フン。一之瀬治一、か。奴の「恐怖の引き金」は友人の死ってところか…まあ――――」

 

輝之助は治一の”紙”を拾い、トラックが通過して後の道路を見つめた。

そこには”割れた容器物”が無残に散らばっていた。

輝之助は”勝ち誇った笑み”を浮かべ、本物の康一の”紙”を取り出した。

 

「薬品を友人と勘違いして助けようとするなんて…マヌケな奴だな」

 

「ほお~ じゃあお前はもっとマヌケな奴だな」

 

「!」

 

「俺を倒したと思っているんだからよお~!!」

 

ガシィッと輝之助の腕が捕まえれる。

恐る恐る彼が振り向いた先には、自分の腕を掴む『スタンド』の姿。

一之瀬治一のスタンド――――――〈I's〉

 

「な、なぜ――――――」

 

「ウオリャアッ!!」

 

輝之助が言い終わる前に、〈I's〉の拳が彼の顔面を捕らえた。

苦痛に顔を歪めるも、自分の腕を彼は離さなかった。

 

「「なんでいるんだ?」って顔してるな… 答えは簡単だ『俺は能力を一度も解除していないんだよ』」

 

そう、治一はこれまで一度も能力を解除していないのだ。

さきほど、トイレから出てきたのが”一人の治一”だったせいで輝之助は”彼が能力を解除している”と勘違いしていただけだったのだ。

彼の能力によって生まれた分身は全て、トイレの中で待機していたままだったのだ。

そして〈I's〉の特徴の一つ――――――”ダメージ以外はフィードバックしない”という点のおかげで、他の治一は”紙”になっていないのだ。

 

「ば、ばかな……」

 

「よし、これが康一だな……」

 

治一は輝之助が握っていた”紙”を広げる。

すると”紙”から康一が出てきた…負傷した様子はない。

そして、人質がなくなった今、輝之助はとてつもない大ピンチにへと状況が一変してしまった。

治一は〈I's〉の右腕を振り上げた。

 

「うああああああああああああああああああああああああああああ」

 

悲鳴をあげ、輝之助は最後の力を振り絞った。

自身を”紙”にすることで腕の拘束から逃れ、空中に逃れることに成功したのだ。

しかし―――――――

 

「やったぞ!逃げ切ったッ!これで助かるッ!!」

 

「…〈エコーズ ACT2〉!」

 

康一の〈エコーズ ACT2〉がそれを許さない。

空中に舞う”紙”を掴み、捕らえたのだ。

そして”紙”は絶対に開けない…掴まれている限り。

 

「ちょ…ちょっと待ってくれ 僕は他人が怖がるのを観察するのが好きなだけだったんだ。『スタンド』を身につけたもんでつい図に乗ってしまったんだ は…反省するよ わ、悪かったと思ってるんだよ……」

 

その顔には余裕はなく、明らかな怯えだけがあった。

といっても、”紙”になっているので顔なんて見えないのだが。

そして”紙”に向かって〈I's〉の手が伸び……”一枚の紙”を開いた。

 

「……?た、助けてくれるのか…」

 

「…今回は誰も死んでいないから見逃してやる……だが、次にまた康一たちに手を出したら――――――この”紙”を破くぞ」

 

「ハッ! そ、それは!」

 

治一が手に持っている”紙”輝之助にはその”紙”がなんなのか理解できた。

そう、あの”紙”には輝之助自身が入っているのだ。

さらに治一はカバンからテープとハサミを取り出し…”紙”をグルグル巻きにしてハサミを構えた。

 

「俺の能力で作ったお前の”分身だ”もし約束を破ったら―――――」

 

「わ、わかった!もう手を出さない!吉良の親父の事もしゃべる だからその”紙”を切らないでくれえーッ!!」

 

 

 

 

宮本輝之助 康一を”紙”にするが治一の能力の前に敗北 康一の”紙”を失いさらに自分自身を人質にとられる。再起可能?

 

一之瀬治一と広瀬康一 この後学校へ行った。

←To Be Continued




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