M県S市杜王町在宅のとあるスタンド使いの日記   作:BサインからCサイン

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Take 9

□月U日

 

 

仗助のやつが承太郎さんに拉致られていた。狩りに行くとかなんとか。

刑務所にいる音石は俺たちに正体がバレる前に、”弓”と”矢”を使ってこの杜王町で一匹の鼠を狩っていたらしい。

しかもその鼠は”矢”に刺されても死なず、自分の力で脱出し逃げていったとか。

動物でもスタンド使いになれるんですか……?

聞けば昔、承太郎さんの仲間に犬のスタンド使いがいたらしい。確かワンピースのキャラの名前に似てたと思うんだけど………ビギー?

その鼠を狩るため、人手がいるとのこと。

仗助に頼みにきたらちょうど俺もいたから一緒に誘われてしまった。

これは日記だ。そう簡単には誰にも見られはしないだろう、だから堂々と言わせてもらおう。

無理です勘弁してください。

俺のスタンドが遠距離型?遠くからでも捜索できる人材が必要?

いやいやいやいやいや、だからってなんで俺まで、確かに〈I's〉は80mくらいなら自由に動けますし、分身して探せば簡単に見つかるかもしれません。

でもだからってワザワザ俺が行くことは……

しかし俺の意見など当然聞いてもらえず、結局俺も狩りに行くことになった。

当然だろう、現実では俺は快く了承するしかできなかったんだから。

意志が弱い?違うね、困った人が見過ごせないだけさ!

鼠はベアリングというパチンコ玉みたいなやつを飛ばして殺すようだ。

承太郎さんや仗助はスタンドの指でそれを飛ばして缶に穴を空けていた。

俺?大した威力はでませんでしたとも。〈I's〉のパワーは運動神経のいい人くらいしかないから当たり前、二人みたいなことはできません。

よって俺には〈I's〉を使って直に殺すという手段しか残されていなかった。

唯一の利点は鼠の『スタンド』にも攻撃ができることだろう、あ、大して利点でもないね。

そしていざ、鼠がいるであろう農業用水路へ。ドブネズミを殺しにレッツゴー。

巣の近くに罠を仕掛けたり、その途中で鼠たちの肉塊的なものを目撃したり、農家に俺のスタンドを先に向かわせて囮にしたり、二人が家に入っていく中俺と分身たちは外で農家を包囲したり。

あれ、これ俺必要なくね?

そう思ったのも束の間、壁の穴から一匹鼠が出てきた。

分身で踏みつぶそうとしたら、変な機械みたいな『スタンド』に針みたいなモノを飛ばされた。

もちろんかわすことなどできるわけもなく、〈I's〉の足に針は直撃した。

と同時に、鼠逃走。

追いかけようと〈I's〉が手を伸ばすが、その瞬間俺の足に熱いゼリーに浸かったような痛みが襲ってきた。

とっさに足を確認したけど、外傷は見当たらない、痛みだけがフィードバックするって便利だね。ホント。

欠点は〈クレイジー・ダイヤモンド〉で治すことができないということだろうか。

しかし…へへ、逃げる前に”触れてやった”ぜ。

鼠が逃げる直前、〈I's〉は鼠の尻尾に触れていた。鼠は分身し、その体分がこっちに近づいてきた。痛みに耐えつつ、片方の逃走を許すももう片方を捕まえることに成功。

家の中から二人が出てきたので、状況を説明。俺の言葉足らずな感じの説明でも、承太郎さんは理解してくれたようだ。承太郎さんは。

捕まえた鼠のスタンドを二人が攻撃、すると遠くの田園から鼠の悲鳴が響き渡った。いや、泣き声か?

あとは悲鳴が聞こえた位置まで移動し、承太郎さんがベアリングで鼠の眉間に風穴空けて終了。

なんか仗助がプレッシャーがどうのこうの言ってた気もするが気にしない。ただまあ、褒められていたということはわかった。

 

 

 

□月Z日

 

 

康一との下校中、露伴先生と出会った。

数日であの怪我が治りかけているっていうのはどういうことなんだろうか。

そして康一はなんでこういう人たちと"気が合う"とか言われるんだろうか。

さらになんで俺まで目をつけられているんだろうか。俺の記憶がどうのこうの言って”本”にしようとするのはやめてほしい。

なんのようですか?って聞くと、どうやら露伴先生は俺たちに”お願い”があるらしい。

露伴先生がいうには、町内地図に書いてある店がどうもおかしいとのこと。

町内地図の前は右からそば屋「有す川」、薬屋「ドラッグのキサラ」、そして「オーソン」というふうに並んでいるんだけど……

なぜか「薬屋」と「オーソン」の間に道があった。

おかしい…前見たときはあんな道はなかったはずなんだけど……

んで、露伴先生はそれが気になるらしい、さらに俺たちに周辺を案内してほしいんだと。

勿論快く了承した。いや断れるわけないじゃん。

だってこの人はかの有名なジャンプ作家だぜ?断れるはずがない。

それをさりげなく塾へ行くのでと断る康一はすごい。

黙って頷くことしかできない俺とは大違いだ。

意志が弱い?違うね、困った人が見過ごせないだけさ!

見過ごせないだけなのさ!

大事なことだから二回書かせてもらった。

にしても露伴先生……ワガママだなぁ。ねちっこいっていうのかな?

そのときの露伴先生のセリフが今でも鮮明に頭に残っているので、書こうと思う。

 

「ふぅ~ん、そうかい!君はたった数10メートル歩くだけのことを断るのか…治一くんとは大違いだな。君は彼よりも親切心に欠けているみたいだね。いいとも!君が断るというのなら僕は治一くんに案内してもらうよ!君は人に冷たくしといてテストでせいぜいいい点とっていい学校に入りたまえ」

 

正直、引いた。この嫌味の連発を「もぉ~」で済ませる康一の心はどれだけ広いのだろうか?尊敬する。どっちも。

と、いうわけで。俺と康一は露伴先生と共に”あるはずのない道”を歩くことになった。

道に入ると、そこは摩訶不思議な場所だった。

人の気配は無し、家はあるが地図には載っていないしかも空き家ばかり、なのにポストの近くには今さっき誰かが踏みつけたような犬の糞、自動販売機の電気も止まっている。

しかも、曲がり角を曲がるとさっきの場所へ戻ってしまう。

急に恐ろしくなった康一がダッシュで元の道へ帰ろうとするが俺たちの後ろに戻ってきてしまった。

康一のスタンド、〈エコーズ〉で空から。俺のスタンド、〈I's〉で同時に別々の道を進ませて脱出を試みた。

しかし、〈エコーズ〉は空中で”何か”に弾かれ、〈I's〉も”なぜか”同じ道から戻ってきた。

もしかして”スタンド攻撃”か?と露伴先生が考え込んだとき、さっきは誰もいなかった曲がり角から俺と同じくらいの女が姿を現した。

 

「あなたたち、『道』に迷ったの?案内してあげようか?」

 

先手必勝、〈天国への扉(ヘブンズ・ドアー)〉。

なにしてるんですか露伴先生……今この子案内してくれるって言ってたのに…挙句の果てにスリーサイズとか読もうとしたよこの人。

康一が止めてくれなきゃ暴走してたんじゃあないだろうか?

 

 

(次のページへ)

 

 

この女の名前は杉本鈴美16歳、愛犬アーノルドと共に行動する”幽霊”である。

俺たちがいるのは”あの世”と”この世”の”境目”で、彼女が15年前から入り込んだ場所らしい。

それを説明するのに、ポッキー占いとかノンフィクションの怪談話から始めるのはやめてほしい。

二人が慌てて逃げ出してしまったじゃないか。

俺にいたっては怖くて動けなかった、なんとも情けない………。

別に目の前にいる杉本鈴美が怖かったんじゃあない。自分が今、死にかけた位置にいるんだと思うと怖かっただけだ。

だから感心した目で俺を見るのはやめてください、怖くて動けなかっただけなんですホントに。

っていうかそもそも、怖がる必要はないんじゃあないか?

この子はまだ何もしていないのに、俺たちが勝手に勘違いして怖がってるだけなんじゃあないか?だとしたらこの子はかなりかわいそうな子だ、心霊スポットに出現する幽霊も同じなんじゃあないか?

こんなときにこんなことを考えれたのは、”動けなかった”からこそだろう。

考えることしかできなかった。ホント情けない。

やっと落ち着いた二人と一緒に、俺は杉本鈴美から話を続けてもらった。

俺たちがこの”境目”にきてしまったのは、俺たちがスタンド使いだからじゃあないかということらしい。

そして、さっきの怪談話。

その内容は15年前、一人の女の子とその家族全員が皆殺しにされてしまったというモノ。

そして、彼女たちを殺した殺人者はこの杜王町でまだ”生きている”。

しかも”まだ”殺人は行われている。

彼女と同じ犠牲者がでているのだ、背中に酷い傷を負って。

彼女はこのことを、誰かに伝えるために”地縛霊”となって”境目”に留まっているというのだ。

そして俺たちにこの町の”誇り”と”平和”を取り戻すために、犯人を捕まえてほしい……と、いうことだ。

危険な行為だと思う。一般人が手慣れた殺人者を捕まえようとするということは、狩りもしたことのない現代人が旧石器時代で生き延びるようなモノだ。

だけど…狩りなら俺もしたことがある。相手は鼠だったけど、対象が変わっただけじゃあないか。

それに、せっかく形兆が戻ってきてくれて、友達もたくさんできたこの町を壊そうとする奴を放っとくわけにもいかないし。

ま、できることがあるなら喜んでやらせてもらうよ。

 

 

 

□月%日

 

 

時間も遅かったので、一時中断。昨日の続きを書こうと思う。

あの後、俺たち三人は”境目”から出られることになった。

案内人はもちろん彼女である。

ただし、”境目”から出るにはある”ルール”があるらしい。

ポストを越えて曲がったあと20m先に見える出口。そこまで何があろうと絶対に”振り向いてはいけない”とのことだった。

もし振り向いてしまったら、魂があの世に引っ張られてしまうらしい。

そこからは”簡単だった”。ポストを越えるとき”何か”が足の間を通り過ぎたり、首筋に”誰か”の生暖かい息を吹きかけられたり、後ろからワザとらしい足音が聞こえてきたり、俺たちを振り向かせる気が満々の妨害が続いた。

だからなんだっていうんだろうか。

正直、くだらないとしか言いようがなかった。

こんな妨害しかできないのか、これなら幼稚園のときの肝試しの方がまだ怖かった。俺たちに”触れる”ことができないんなら怖がることなんてないもないのだから。

だからみんな、俺に向かって信じられないモノを見るような目を向けるのはやめてほしい。

これくらい怖がるほどのモノでもないだろ?

まあ最後の三人の目は置いとこう。

俺たち全員は無事、”境目”から出ることができた。

彼女、杉本鈴美は”犯人”が捕まるまで”境目”にいるらしい、聞きたいことがあったらいつでもきてね、だそうだ。

二人はあまり行きたくなさそうだ、康一は特に。

また行くことがあったとしても、たぶん俺に押し付けられるだろうなぁ……。

ま、明日の朝にでも、このことを仗助たちに教えよう。承太郎さんに言うのもいいけど、SPWは”スタンド使い”関連のことでしか動かないだろうし、たぶん。

だって承太郎さんが”スタンド使い”が現れたとき以外に見かけたことがないし。

 

 

 

□月!日

 

 

通学中、仗助たちに昨日のことを話した。

だけど、仗助も俺と同じ意見のようだった。

SPWや承太郎さんに言っても、協力はしてくれないだろう。でも警察も当てにならないだろう。、

なぜならこの15年間、15年も事件から経っているのに、犯人の手掛かりは”ゼロ”なのだから。

まあ、じっくり調べていくしかないだろう。

犯人が”スタンド使い”なら、承太郎さんも動けるのに……いや、”スタンド使い”じゃあない方がいいのかもしれない。

殺人者の『スタンド』なんてどんな能力なのか恐ろしくて検討もつかないからね。

とりあえず億泰は杉本鈴美の写真を見つめるのをやめようか。その人は実質31歳だぞ。

……そういえば彼女、露伴先生のことを”露伴ちゃん”と言っていた気がする。

露伴先生の昔の知り合い?でもそれならあんなに驚いたりするはずもないし……。

今度、直に聞いてみようかな。

 

 




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