M県S市杜王町在宅のとあるスタンド使いの日記   作:BサインからCサイン

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Take 8

□月N日

 

 

やった!やったぞ!

あの〈レッド・ホット・チリ・ペッパー〉を倒したぞ!お前の仇を打つことができたんだ形兆!

あ、死んでなかったな。

でもどういったらいいかわからないからこれでいいや。

俺のスタンド〈I's〉。その能力は触れた対象の分身を作ることらしい。

最初にこの能力に気づいたのは〈チリ・ペッパー〉が俺の家にやってきた日のことだ。

あのとき、〈I's〉は文字通りボロボロにやられていた。大した反撃もできずギリギリ〈チリ・ペッパー〉の拳を防ぐくらいしかできなかった。

俺が"能力"に気づいたのはやつが家を去っていった後だった。

部屋は戦闘の後で傷だらけ、凹んいる箇所だっていくつかあった。もちろん壊れている家具だって……。

そのときだ、俺が”能力”を見たのは。

家具を片付けていたとき、俺はふと違和感に気づいた。

おかしい、俺の部屋にある家具が…増えている?セットで買ったものなんてないしスペアなんて用意してないぞ?

ましてやテレビまで"二つ"になっている……。

これが〈I's〉の能力だったんだ。俺が攻撃、反撃の際に傷つけてしまったテレビ、ゲーム、電球、エトセトラエトセトラ。

そして数十分の思考のすえ、これがスタンド能力だとやっと気づいた。

この見た目でこの能力か……てっきり溶解液でも吐くのかと思ったよ。

 

あれから、音石明は刑務所に入った。

普通はスタンド使いが犯罪を犯しても一般人にはわからないんだけど…音石は〈チリ・ペッパー〉を使って悪質な盗みを働いていたらしく、窃盗の容疑で簡単に捕まってしまった。

正直、なんかダサイと思った。同時に同情してしまった。

殺人を行った犯人が痴漢で捕まった感じか?そんなバカはさすがにいないと思うけど……。

しかもその金品や品物の総額はなんと5億円!音石の部屋から警察によって全て押収された。

もしもの話だけど、音石はジョセフさんを襲ったりしなければ一生楽して暮らせたんじゃあないだろうか?今となっては誰にもわからない。

裁判所は音石に懲役3年を言い渡した。

ちなみに承太郎さんや仗助が音石に脅しをかけているのであいつは刑務所の方が安全だーと服役中らしい。

スタンドも俺が海に放り込んだりしてボロボロにしたので復帰は不可能だろう。

こうして、無事”弓”と”矢”は回収され、

杜王町には平和が再び訪れたのである。めでたしめでたし。

そうそう、SPW財団に保護されていた形兆はこの町に戻って来た。

あいつも”弓”と”矢”で結構な人を殺したのだが、証拠となる"弓"と"矢"がSPW財団に厳重に保管されているので、形兆は刑務所に入ることはなかった。

そのかわり、また危険な行為を犯すことはないとも言いきれないので、形兆には監視役がつくことになった。

これは承太郎さんの強い推薦で俺に決定した。どうやら承太郎さんに俺は結構信頼されているようだ。

信頼……いい響きだ。今まで他人に信頼されたことなんて数えるほどもない。

小学校のころ、クラスの係決めで誰もやりたくない係があった。

その係は一年間先生の雑用、プリントの配布など今時の子供が嫌がる仕事満載だった。

そして俺は係に立候補した。誰もやりたがらないのなら俺がやればいい、これを機に周りからの目も変わるかもしれない。そんな淡い希望を持っていた……。

そのあと、クラスの女子に言われた言葉が

 

「先生、一之瀬くんは授業中も不真面目で役割を果たせるとは思えません。他の人にやらせた方がいいと思います」

 

そのあと俺はこっそり泣いた。

俺の席は窓際の一番後ろ、隣には誰もいなく、俺と同じ列の人もいなかった。

しかも俺は積極的に挙手をするわけでもないので確かに授業中に何をしているのかはわからないだろう。

 

 

(文字が汚くて読めない)

 

 

というわけで、形兆が杜王町へ戻ってきた。

億泰もすごく喜んでいて、形兆帰還祝いにファミレスで食事をした。

俺の奢りだ、今日くらいはこんな使い方をしてもいいと思う。

諭吉さんが夏目さんに早変わりしちゃったけどね。

 

 

 

□月O日

 

 

今日は康一と二人で帰った。

康一と二人で帰るのも久しぶりだなーと思っていたら、間田先輩と合流した。

康一くんの性格からか、間田先輩ともすぐに仲良くなっていた。

友達の友達も友達だよね。ってきな感じなのだろうか?

それから俺たちは三人でぺちゃくちゃと喋りながら下校した。

その途中、間田先輩からの提案であの『ピンクダークの少年』の作者、岸辺露伴の家に行くことになった。

どこから手に入れた情報かは知らないけど、断る理由もなかったし(むしろ行きたかった)俺たち三人は岸部露伴の家に向かうことになった。

もちろん、サインをもらうために。

露伴先生は最初こそ、俺たちのことを不審者かと警戒していたけど、俺たちが”ファン”だと言うと"なぜか"すんなり通してくれた。

仕事部屋を見せてもらえることになったが、突然尿意に襲われた俺は露伴先生にトイレを借りた。

漫画家の家にきてトイレに入るってどうなんだろう……しかも大だし。

その後、三人のもとに戻ってきてみれば、とんでもない事態があった。

身体中が”本”にされている康一と間田先輩、そして康一の"本"をものすごく興奮しながら見ている露伴先生。

まさか、露伴先生もスタンド使いなのか…?あの"本"は露伴先生のスタンド能力?

ドアの陰に隠れ、聴覚を頼りに部屋の様子を窺った。

露伴先生たちが言っていることが本当なら、あの”本”には康一たちの記憶が書かれているようだ。

康一はみんなに好かれる人物と言われ、間田先輩は最低な男と言われていた。

………間田先輩。

そして康一の記憶から、俺たち”スタンド使い”のことまで知られてしまった。

康一の記憶にあることがそのまま書かれているのだとしたら、俺のことは確実にバレているはずだ。

しかも、この人は"ネタ"のために俺の記憶も読むつもりだろう。俺がいつまでたっても戻ってこないことを不審に思っているはずだ。

逃げることも簡単だけど、それでは康一と間田先輩がこの家に取り残されてしまう。何をされるかわからない……。

俺は一か八かの賭けにでた。

〈I's〉を使って俺の分身をつくり、片方をあたかも"ついさっき戻ってきた"かのように部屋に入らせた。

そのすきに俺は外に周り、こっそり窓から部屋の様子を覗く。

案の定、俺の分身はすぐさま"本"にされてしまった。が、窓から覗いていた俺の身体には問題はなかった。

どうやら、一人が"本"になってもその影響はこっちにはこないようだ。

倒れた時の痛みはきたけど。

そのあと、露伴先生は俺たちの"本"のページをびりびりと破っていった。

この時点ではっきりした、露伴先生のスタンド能力は"対象を本にすること""本に命令を書き込むこと"本のページを破き、記憶を消すこと"だ。

俺の分身に『岸辺露伴を攻撃できない』と書かれてしまった。

しかし残念、俺には影響ありません。失われたのは"分身の記憶"だけのようだし。

康一たちと家から出た瞬間に能力を解除したけど、体に別状はなかった。

仗助に知らせるべきなんだけど、康一たちが覚えていないから本当のことか信じてもらえるかわからない。

最悪、俺の見間違いということで終わってしまうかもしれないし……。

どうしたものだろうか。

 

 

 

□月T日

 

 

朝、露伴先生の家に康一が入っていった。

朝から露伴先生の家に行く?明らかに怪しい……仗助たちも少し不審に思っていた。

そこで俺は二人に昨日起こったことを説明した。康一が家に入っていったのも露伴先生のスタンド能力じゃないか、と。

俺たちが家の中に入ろうとした瞬間、康一が出てきた。

本人は遊びにきただけと言っていた。が、手から血が出ていてしかも服にはほこりが所々に付いていた。

大方、露伴先生の命令なのだろう。

俺たち三人は、それぞれ別々に家の中に侵入した。

念のため、三人の分身を作った。そして外で待機させる。

身体能力が二分の一になってしまうけど、今回は大丈夫だろう。

けっして戦いたくなかったというわけじゃあない。

ほら、俺のスタンドよりも…ね?二人の方が戦いには向いてるし。うん。

そっからは楽だった。

露伴先生は俺の(分身の)記憶を消しておいたから自分の能力がバレてないと勘違いしていたようで、目を瞑ったままスタンドで攻撃してくる億泰と仗助に一方的に殴られそうになった。

俺?康一の救出。だってこれしかやることないじゃん。

わざわざ俺が前に出る必要ある?

そして焦った露伴先生はなんとか目を開けさせようと、仗助の"ヘアースタイル"をバカにした。

あえて言おう、逆効果だったと。

先に部屋の隅に避難していてよかったと。

プッツンしてしまった仗助は露伴先生の漫画の絵なんてまったく見えておらず、手加減無しで露伴先生をボコボコにしてしまった。

さすがにこれには同情する。

露伴先生がやられたことで康一は"本"にされた状態からもとに戻った。

康一、俺を命の恩人をのような目で見るのはやめてくれ。確かにあの位置にいたら君は巻き添えをくらっていただろう。

でもそんな意図があったわけじゃあないんだ、偶然なんだ。

まあ口には出さなかったけどね。

しかし、仗助のヘアースタイルの秘密にはびっくりだったなあ……。

それを嬉しいそうにネタにする露伴先生にもびっくりだけど……。

もうどっちとも、褒めるしかないね。

 

 

 

□月X日

 

 

『ピンクダークの少年』は一時休載するようだ。

………まあ、あのケガじゃあなあ。

今度落ち着いたころに、仗助に治させよう。

できるかどうかはわからないけど…。

今日は新しいスタンド?を発見した。

自販機でアクエリアスを買おうとしたら自販機の下から出てきたんだ。

腕が四本あるちっこい『スタンド』だった。蜜蜂を連想させる姿をしていた。

まあ、あんなに小さいんなら危険もないだろうし大丈夫だろう。

その『スタンド』は50円玉を持ってどっか走っていった。

たぶん、あの『スタンド』は遠距離タイプのスタンドなのだろう。しゃべってたし。

俺のスタンドと同じか……お近づきになれないだろうか?

そのあとは普通に授業を受けた。

そういえば……形兆が"矢"で射たスタンド使いは、この町にあとどれくらいいるんだろう?

 

 




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