なんか余計な描写を入れ過ぎなのかなともんもんしながらもどうにか書きあげました。あんま話進んでないけど(汗
四方坂家の二の舞をどうにか防ぐ事に成功した司波家の食卓は今日も平穏無事に夕飯を終え、達也がソファに座りくつろいでいるとタイミングを見計らったように電話が鳴った。
「狙ったんですか?」
「何の事だかわからんが、久しぶりだな。特尉」
電話の相手は実に二か月ぶりの対面となり、沖縄での邂逅以来三年間の付き合いとなる人物だ。
「お久しぶりです。風間少佐」
「ふむ、元気そうでなによりだ。彼も変わりないか?」
「昨日も深雪をからかって氷漬けにされてましたよ」
「はっはっはっ!それはなによりだ」
何よりかなぁ?と本人が聞いていたら抗議する事請け合いな事を大笑いしながら言う電話先の男性、風間少佐(昇進して大尉から佐官になった)を達也も苦笑しながら見返す。
沖縄での戦争以来、独立魔装大隊と呼ばれる部隊の隊長となった風間は日々激務をこなしているはずだがそんな気配を微塵も感じさせないのは流石と言ったところか。
「少佐、それで本日はどのような御用件でしょうか?」
「あぁ、そうだなまずは個人的な要件からいこうか」
と風間は短冊形の紙を数枚取り出し、達也に見せた。
「それは?」
「ゴールデンキャッスルの九校戦特別ライブチケットだ」
達也の顔色が少し微妙な、笑えばいいのか呆れればいいのかわからないどっちつかずのものになる。
ゴールデンキャッスル、今オリコンランキングの首位を独占し、映画の主題歌なども歌っている今最もノリに乗っているバンドだ。
バンド名を直訳すると『金城』つまりこのバンドは沖縄で出会った金城伍長をリーダーにしたレフトブラッドのみで構成されたバンドなのである。達也も面識は当然あるがこれに関しては『彼』のほうが付き合いは深いだろう。
「まさか本当にバンドを組むとは思いませんでしたよ」
「いまやあちこちのメディアに引っ張りだこらしいからな」
まさかあの悪ふざけを本気でやり遂げるとはと達也派が言外に含ませたのを知り風間はあえて大仰に頷く。その声色はあの時の事を思い出しているようにも思えた。
「俺と真田に招待状が来た。そちらの分も来ているから俺の方で送っておこう」
「……ありがとうございます」
「少し多めに送っておくから友人を誘っても構わんぞ」
実に楽しげな風間の言い方に達也のテンションは反比例して微妙なものになっていく。何故この人はこんなに楽しげにいられるのだろうか。
「和人に方には送らないのですか?」
「彼の方は金城伍長が直接連絡するそうだ。バンド創設に密接にかかわった強いて言うならもう一人のバンドメンバーみたいなものだからな」
これは金城本人、沖縄の事がなければ俺は今こうしてはいないだろうと言っていた事だし、そういう意味では彼がもたらした影響と言うのも結構大きいのではないだろうか。
「次に業務連絡だが」
とここまでいまいち状況に乗り切れなかった達也の背が意図せず伸びる。
「サードアイの部品を幾つか新型に新調した。ついては性能テストを行って欲しい」
「了解しました」
風間と達也の付き合いは沖縄のあの日までさかのぼる。そのまま何も起きなければそれだけの付き合いとなる筈だった、だが力及ばず失ってしまった者がいた、そして思い知らされた事実があった。そしてそれに絶望した者がいた。
そして、ある者に救われた人間がいた。
ある者は思った。二度と失わぬ為の力を、万物全てを守れる力をと
そう思ったその時から風間達独立魔装大隊とのつながりは始まっていた。
「では明朝出頭致します」
「あぁ、別に学校を休まなければならない程差し迫っているわけではないんだ。余裕を持って貰って構わないぞ?」
「いえ、次の休みには既に予定が入っていますので」
先ほど実用のめどが立ったばかりの新型デバイスのテストの為、達也はFLTに出社する予定があったのだが、それを聞いた風間は軽く呆れの色をにじませた含み笑いを漏らす。
「本官が言えた事ではないが、ますます学生らしくない生活を送っているようだな」
「仕方のない事です」
本人が望んだわけでなく、やるべき事だからやりとおした結果であり、仕方ないと言うほかないのは必然だろう。
「そうだな、それと聞いた話だが九校戦にエンジニアとして出場するそうだな」
随分と耳が早いなと達也は驚きを顔に出さないようにするのに多少苦労した。彼が九校戦のエンジニアに選ばれたのは今日の夕方、時間にしてみれば三時間にも満たないぐらい最近の出来事だ。一体どこから聞きつけてきたのだろうか
「和人の奴が映画帰りに言っていたぞ?妹さんから自慢のメールが何通も来たとな」
(あいつか)
思いのほかなんてことない情報の出所にふと湧いた好奇心は満たされたが
「映画帰り?」
「うむ、今丁度帰った所だったんだ」
「一緒に、映画に行ったんですか?」
「そうだが?」
何かおかしい事言った?と言わんばかりに堂々とした態度に達也の方がおかしいのかと思ってしまうが正直こんな事考えるのも今更かと思い直し表情には出さなかった。
(多分見に行った映画はあれだろうな)
アルペ、何とかとかいう戦艦の話だろう。和人とその話題で意気投合してた筈だし、というか忙しいんじゃなかったのか?と問いただしたくもあったが止めておいた。理由は不毛だからだ。
「と話がそれてしまったな」
とこほんと咳払いを一つし風間は達也の目をまっすぐに見つめる。
「九校戦の会場付近で不正な侵入者の痕跡が発見された」
「それは」
「あぁ、九校戦が狙いだろうな」
予想以上に物騒な話題に達也の顔も自然と引き締まる。
「情報提供者によると無頭竜の下部構成員の可能性が高い」
「追加情報が入り次第連絡しよう」
「ありがとうございます」
たかが高校生の行事と思われがちだがここで好成績を収めた生徒は近い将来軍事関係の仕事に就く事が多く、彼等にとっては将来の敵を先んじて始末しておく必要があるという事だ。
深雪が狙われないとは限らない、むしろ卓越した魔法力と容姿が相まって一番に狙われそうだ。ならば護りきるのが自分の使命だと達也は唯一ある感情でそう感じていた。
「では向こうで会えるのを楽しみにしている。師匠にもよろしく伝えておいてくれ」
「はい」
風間の言う師匠とは忍術使いの九重八雲のことで達也は弟弟子にあたる、あの似非坊主と言う言葉が非常に似合うあのくえない男にどう言ったものかと考えながら達也は通信を切ろうとした。
のだが
「こんばんは~!司の椀で~す!」
「おぉ!来たか!」
(な……にぃ!?)
この場で聞く筈のない、いや出来れば聞くのはご遠慮したい声が聞こえ、不本意ながら達也はしばし呆然としてしまう。
「本日の献立はなんちゃってローストポークになりま~す」
「ほぉ、これはベーコンと……ジャガイモか?これは面白い」
「あ、あの」
画面の向こうの会話を無視できる胆力が欲しいとこれほど願った事はない。
「あぁすまん、夕飯がまだでな。そういえば和人から話は聞いてるぞ?」
と風間の人の悪い笑みを見て達也の顔色は渋いものになる。こういう辺り八雲と似た所があるなと自分の事を棚に上げて思う達也であった。
「おや司波君かい?君はいろんな所に知り合いがいるんだね」
「その節はどうもお世話になりました」
いやあなたほどではありませんと言いたい気持ちをぐっと抑え達也は画面の向こうの緑色の制服?に身を包んだ司一に軽く頭を下げる。
なんか自分の周りがどんどんと彼に浸食されていっている気がするのは気のせいだろうか?
「それでは次のお客様が待っているので」
「あぁすまんな」
実は結構忙しいのか司一は風間から代金を受け取ると部屋から去って行った。それを見届けた風間は口笛を吹きかねない程の軽い足取りで容器を机の上に置くとゆっくりと蓋をあける。
「ではいただくとしよう」
風間が一口食べた瞬間カッと目を見開く、背後に稲妻が走ったような気もする。
「これは!蒸しあがったジャガイモの甘み!
甘く炒めた玉ねぎとエリンギの香ばしさ!
それをベーコンが優しく包み、ほのかなローズマリーと赤ワインソースの香りが口の中に広がる!
グゥゥレイトダァァァ!」
「おぉ!くるか!風間少佐が本当においしいものを食べた時にしか来ないというおはだk」
プツンと達也は自らの精神の安寧の為、速やかに電話の通話ボタンをオフにした。
「……深雪はどこだろうな」
そうだ愛しの妹にコーヒーを淹れて貰おう。記憶を飛ばせるくらいとびっきり濃いやつを淹れて貰おう、そうだ、そうしよう。
現実逃避?知らん、達也にだって現実と戦いたくない時ぐらいあるのだ。
こうして司波家の夜は更けて行く……
前に感想でおはだけがないと言われましたので風間さんにやってもらいました(白目
寸止めで終わらせましたけどwww
こんなんばっか書いてるから本編が進まないんですよね、すまぬ