四葉の影騎士と呼ばれたい男   作:DEAK

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なんかもう真夜さん出したくて仕方ない病にかかってしまったので無理矢理出してしまいます。

主人公が東京に行ってからの四葉家という感じです。

この作品の真夜さんと葉山さんは16巻裏表紙のミニキャラをイメージして頂くのが一番近いかとwwwもうあのミニキャラ可愛過ぎて俺の中の何かがマテリアルバースト


番外編~四葉真夜の日常~

あらゆる悪徳と陰謀の中心地と言っても過言ではない四葉の本家、外界から完全に隔絶された屋敷は不気味なまでの静けさと濃密な死の気配が漂っている。

 

「……」

 

その中で一際濃い負の気配を持つ屋敷の一室、目の保護の為なのだろう、黒縁のメガネをかけながら屋敷の主、四葉真夜はパソコンの画面と格闘していた。

 

真夜のプライベートルームはただ一つをの覗き完全なオフライン環境にある為、執務室として設けてある一室で彼女は魔法研究にその時間を費やしていた。四葉では情報保護の為紙媒体の資料が主だが、機密度が低いものに関してはその限りではなく、今彼女が扱っているのもそういう類いのものだ。

 

「……」

 

時折マウスを滑らす音とクリック音が響く以外静寂を保っていた執務室だが

 

「奥様、葉山です」

 

控えめにノックされる扉の音とその向こうから聞こえる老執事の声でその静寂は破られる。

 

「お疲れ様でございます。ハーブティーを持って参りました」

 

葉山は主の返事を待たず、右手で器用に扉を開ける。真夜が何かに夢中になり周りの声が聞こえなくなるのはよくある事、というより『彼』が来てから頻繁に見受けられるようになったことなので特に主への不敬とは葉山は考えなかった。

 

「……」

 

「奥様?」

 

だがこうして他人が自身のいる部屋に入ってきても気付かないというのは少々珍しい。それほどまでに集中しているのだろうか?と葉山は少し考え、彼は一つの可能性に辿りついた。

 

「……」

 

「奥様、そこにスタックで黒屍病の使用がよろしいかと」

 

「そうねぇ、でも光のマントで無効化されたら……」

 

今まで沈黙を保っていた真夜が思わず葉山の言葉に答えかけ漸く彼女は他人の存在に気付いた。

 

「奥様、オンラインゲームは程々にとあれだけ」

 

「何よ、仕事はもう終わってるわよ」

 

目つきと言葉両方で責めてくる執事に真夜は決まり悪げに視線を逸らすも指で山積みになっている書類を指さす。確かにそれらはもう処理の終わった資料のようだが主がそれでは示しがつかない。ここは筆頭執事である私がきちんと言わなければと葉山は思い

 

「だからといって遊んでいいわけではありませんぞ。で今どうなってます?」

 

と思いはしたが正直今更か、と思い直し自分の欲望に正直になる事にした。

 

「こんな感じよ」

 

説明するのが億劫なのか真夜はパソコン自体を回転させ葉山の方に向けた。葉山はそれを顎をなでながらしばし見つめる。

 

「ほう、なかなかいい盤面ですな」

 

「でしょ?ジルオーラも並んだし、そうそうこの布陣は崩されないわよ」

 

葉山の言葉に真夜は誇らしげに胸を張る、どやぁという効果音が聞こえてきそうだ。

 

(すっかり熱中してしまったようで)

 

葉山は年甲斐もなくオンラインゲームに熱中する主の姿を見て静かに嘆息する。元々ある少年が

 

「面白いゲーム見つけたのに誰もやる人がいねぇ!」

 

とか喚き立て、本当にたまたま暇だった真夜が何の因果か気まぐれで彼に付き合ってあげる事にしたのだが、こう言う事に関しては一日の長がある少年にそれはもうボコボコに叩きのめされ

 

「敗北を知りたい」

 

と腹の立つドヤ顔を決めた少年を年季の入ったウエスタンラリアットで沈めた意外に負けず嫌いの真夜はそのゲームを仕事そっちのけで研究し(四葉研究室所員の嘆きは聞こえないふりをした)今や件の少年と互角の勝負をするくらいになっていた。まぁ真夜いわく勝ち越せない以上意味ないらしいのだが

 

「ふふふ、降参するなら今のうちよ、っと」

 

「相手は彼なのですか?」

 

「えぇ、たまたまマッチングしたみたい」

 

真夜の言葉に葉山はおや?と頭に疑問符を浮かべる。この時間なら彼は学校に行っている筈だが、もしかしてサボっているのか?と後で穂波に連絡を入れて絞めて貰おうとひそかに東京にいる少年に死刑宣告に等しい報告をすると心に決めた葉山であった。

 

と葉山からハーブティーを受け取り喉をうるおしていた真夜の目線がパソコン画面に再び釘づけになる。葉山も真夜の後ろに回り込んでみると画面右にあるチャット機能を見ているようだ。

チャット内ではこんな会話がなされていた。

 

true night<なんでこの時間にパソコンいじってるのよ>

 

bird man<情報の時間で課題終わったら好きにしていいって言われたんでちょっぱやで終わらせましたwww>

 

true night<そのやる気はもっと別な所で活かしなさい>

 

bird man<とか言いつつジルオーラ配置とか最早トドメwww>

 

 

とりあえず穂波に連絡は少し待ってやるかと葉山は思いなおし、少年はしばし執行猶予がついたのだった。葉山はその下にまだ続いているチャット画面に目を戻した。

 

bird man<厄災撃てねぇしwww>

 

true night<ふん、降参するなら今のうちよ>

 

bird man<慢心カウンターあざっす>

 

「あん?」

 

画面の向こうの少年の安い挑発に真夜の額にこれまた大人げなく青筋が浮かび、葉山はまたやれやれと心の中で溜息を吐く。とチャットの方でなくゲーム画面の方に動きがあった。

 

-調整フェイズ-

 

相手が聖繕を発動しました。

相手が捨て札置き場の竜王の厄災日を選択しました。

 

 

「あ」

 

「……」

 

葉山が思いがけず声をかけるのを尻目にゲーム画面の画面が非常にシンプルになる。分かりやすく言うとお互いの場のカードがきれいさっぱりなくなってしまったのだ。

 

bird man< m9(^Д^)プギャー >

 

「葉山さん、穂波さんにあの子が学校サボってゲームしてるって教えてあげて」

 

「御意に」

 

うわ、大人げな、と心で思っても表情には一切出さない。それぐらいの腹芸がなくては四葉の執事は務まらないのだ。

 

 

 

 

「ふぅ、くだらない事に時間を使ってしまったわ」

 

「……」

 

「何よ」

 

「私めは何も申しておりませんが?」

 

しばらくどっかの動画サイトで見たキーボードクラッシャー少年のようにパソコンに向かってエキサイトしていた真夜だがあの状況からではどう頑張っても劣勢は覆せなかったようで、今はパソコンを閉じ葉山の淹れたハーブティー(二杯目)を飲んでいる所だ。

 

「仕方がないじゃない。まさかあそこであれが出てくるなんて」

 

「そうですな」

 

真夜としては先ほどのやり取りをなかった事にしたかったらしいが流石に無理があると分かっていたのだろう取り繕うような言葉に葉山は特に追求せずに賛同する事にした。だがその優しさが時に辛い事もあったりする。

 

「……葉山さん、次の仕事を」

 

御覧の通りすっかり拗ねてしまった真夜に葉山は何度目かになるかわからない溜息を吐いた。だが主から命じられた以上それに従う義務がある。

 

「承知しました。次の件は例のブランシュもどきの件ですな」

 

「あぁ、あれね」

 

葉山の言葉にようやく真夜が真剣な表情になる。ブランシェ改めツカの爪団との一幕は真夜の耳にも届いており、聞いた瞬間大笑いしてしまったのは記憶に新しい。

 

「精神極散、あの子の魂の一部と考えていいのかしらね?」

 

「でありましょうな。達也殿もあのような魔法は見た事がないと申しておりました」

 

見ただけで魔法の構築式がわかる特殊な目を持つ達也が見た事がないという事は魔法ではなく異能、それもBS魔法やサイキック等ではなく本物の『異常能力』と言う事になり、真夜はそんな異能を他に二つしか知らない。

 

「仁の精神憑依、そしてあの子の精神安定、一つ一つがこの世に二つとしてない異能でありながらそれらはすべて一つの魂の一欠片でしかない」

 

ここで真夜は意味ありげに言葉を切り葉山を見た。主の言葉の真意は分かっていたが求めているのは答えではないという事も充分にわかっていたので何も言わずただ真夜の言葉を待つ。

 

「それならその魂が一つになった時、彼はどれだけの力を持った存在になるのかしらね?」

 

「私ごときには想像もつきませんが、恐らく」

 

「恐らく?」

 

「世界最強にふさわしいかと」

 

葉山の大げさとも言える表現に真夜は特に否定の言葉を挟まなかった。自身の甥に当たる達也はあらゆるものを分解する最強の矛とあらゆるものを再成する最強の盾を併せ持つ物理的に最強の魔法師だが『彼』は

 

仁ではなく、司一でもなく四方坂和人でも無い。ただ一人の『彼』はきっとそれに勝るとも劣らない精神的に最強の存在になる。

 

 

司波達也はきっと一撃でこの星を死の星に変える事のできる死神となる。

 

『彼』はきっと世界の人間全ての精神を崩壊させ世界という疑念そのものを殺す事が出来る死神となるだろう。

 

「素晴らしいわ」

 

真夜は誰にともなく呟き笑みを作る。だがその笑みは先ほどとはかけ離れた絶望と混沌の暗闇を湛えた冷たい笑みだった。

 

「この星を、このふざけた世界を滅ぼす死神を二人も手に入れる事が出来るなんて、とても素晴らしいわ。あぁやっと、やっとこの世界に復讐できるのね。それも最高の方法で」

 

真夜の目は何も見ていない。ただ空虚と暗闇がそこにはあった。紡がれる言葉は葉山に聞かせる言葉ではなくこの世の全てに対する呪詛。四葉真夜はこの瞬間確かに世界を呪う『魔術師』となっていた。

 

葉山はそんな主の姿に何も言わず静かに一礼し部屋を出るべく足を進める。行先は四葉の研究所、いち早く彼の精神全てを集め『彼』を作らねばならない。全ての工程を急ぐよう指示しようと葉山は部屋を後にしようとしたのだが

 

「あら?葉山さん何処に行くの?」

 

主である真夜自身に呼び止められてしまい、訝しさをどうにか隠し真夜に向き直った。正直、雰囲気的に出てく場面だと思っていたのだが

 

「失礼いたしました。奥様の為に良かれと思ったのですが」

 

「あぁ、そういうこと」

 

葉山の言葉に真夜は合点が言ったように頷いた後

 

「別に急がなくていいわ、ていうかむしろやらなくてもいいくらい」

 

「はい?」

 

こんな爆弾発言を落とし、この道数十年の葉山を大層困惑させた。真夜の三十年間積り続けた世界に対する恨み、そしてそこに鎮座する闇こそ四葉の当主たり得る証であり四葉真夜の本性であったはずだ。その闇の一端をまるでこともなげにやらずともよいとは葉山にしては珍しく主の本心がつかめなかった。

 

「最近気付いた事があるのよ」

 

そんな葉山の狼狽を知ってか知らずか真夜は今度は葉山の方をしっかりと見て微笑みながら言う。

 

「恨み続ける、怒り続けるって疲れるんだなって」

 

「つ、疲れるですか?」

 

「そう、でもそれって恨んでる最中は気付かないのよね」

 

ついに言葉にまで困惑が出てしまっている葉山に構わず真夜は近くにあった鏡を前で頬を指でぐにぐにと動かす。

 

「あ~しばらくぶりにやったから疲れたわ。昔の私はよく四六時中あんな笑顔で居られたわね」

 

「あ、あの奥様……?」

 

えらいぞ私、とOLみたいな事を言い始めた真夜についに我慢できなくなった葉山が自身の頭を占める混乱と困惑のやり場を求め声をかける。

 

「なに?」

 

「なに?といいますか……」

 

むしろこの状況そのものが何なのかと聞きたいくらいなのですがと言えたらどんなにらくだろうか?

 

「ふふ、まぁそうよね」

 

言葉に詰まった葉山にクスリと笑みを催す真夜、彼女にもなんとなく彼の言いたいことが分かるのだろう。一番混乱し困惑し、結局まぁいいかと受け入れたのは真夜自身だからだ。

 

「でも一度気を抜いたら知ってしまったのよ。随分と疲れる生き方をしていた事にね」

 

 

「今は随分とリラックスしているようで」

 

「そうね、正直今だってこんな世界大嫌いよ。でもそんな大嫌いな世界に馬鹿正直に付き合ってやる必要がないと思ったらね。どうにもやる気がなくなっちゃって」

 

少しだが調子が戻ってきた葉山を鏡越しに見ていた真夜の目線が鏡から脇に置いていた在る書類に写る。

 

「それでも自分で始めた事だし、適当な所までやってみるかと思ってたんだけど、駄目ね。やっぱやる気がおきないものね」

 

適当な所って、葉山がこめかみが引き攣りそうになるのをどうにかこらえているのを知らず真夜は書類を見ながら深くため息をついた。

 

「知ってる?司一の目的は世界征服だって」

 

「どっかの悪徳組織のようですな」

 

「まぁ悪徳組織みたいなものよね」

 

違いないと葉山と真夜は笑い合う。その響きは軽く先ほどまで重苦しい闇が漂っていたとはとても思えなかった。

 

「正直、少し面白いと思ったわ」

 

世界征服、世界を自分の望むように変えてしまえばそれまでの世界はあとかたもなく滅び去ってしまう。それがたとえどんなくだらない世界でも在り方が変われば古い世界は淘汰される。

 

なるほど、面白い。残酷で理不尽な運命を強制する世界に向かって『そんな疲れる生き方で、つまらない生き方して楽しい?』とげらげら下品に笑いながら意気揚々と面白おかしくこの世界を征服してしまう。

 

うん、凄く面白い。今までの復讐よりよっぽど面白い復讐だ。

 

「よし、今後の研究方針は世界征服でいきましょう」

 

「青木か?私だ。奥様が御乱心だ今すぐ腕の良い医者を呼んで来い」

 

「流石にそれはあんまりではなくて?」

 

軽い冗談のつもりだったのだが、遊び心のわからない執事である。

 

「世界征服が面白いと思ったのは冗談ではないのでしょう?」

 

軽く笑いながら言われた葉山の言葉に真夜は目をパチクリとさせるとやがてくすくすと遂には堪え切れず声を上げて笑いだす。葉山はそれを柔和な笑顔で見守っていた。

 

「あぁ、少し笑い疲れたわね」

 

目に滲んだ涙を軽くぬぐいながら真夜は葉山にハーブティーのお代わりを所望する。葉山はそれを笑顔で承ると部屋を今度こそ出て行った。

 

「司一、どうやって世界征服するつもりなのかしらね?」

 

世界中の人の胃袋を支配するつもりです。と聞いたら恐らくまた真夜は笑い転げるだろうがそれを告げる者も知る者もここにはいない。

 

「少し会ってみようかしら?」

 

真夜はそう呟きながら部屋に立てかけてある古い書物を見た。それは四葉の家系図だった。四葉は何代も続く名家ではなく、第四研の被検体から生まれた一族でありその歴史は百年に満たない。当然その家系図もそこまでさかのぼる必要もなく一族の祖先である人間に行きつく事が出来る。

 

 

そこの一番上には四葉の素体(長老と呼ばれている)となった人物の名が記されている。

 

そこには

 

 

 

『司馬仁一』

 

と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~その頃~

 

「ただいま~」

 

「和人?授業サボってゲームしてたんだって?」

 

「え”!?」

 

「葉山さんから連絡があったわ」

 

(まさか、負けた腹いせ!?)

 

「さて、覚悟はいいわね?」

 

 

ある平凡な一般家庭の風景である。とある少年の悲鳴が聞こえるが平凡ったら平凡なのである。

 

 

 

 

 

 





こっそりでもないけど伏線を張る作業をwww

あっさりばれてしまいそうですが分かった方は感想欄ではどうか御自重頂けるとありがたいです。

メッセージボックスなら大丈夫ですけど

久しぶりの真夜さんなので本気を出してしまった(キリッ

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