「ところで達也君」
「はい」
波乱の部活動勧誘から2日後の昼、すっかり昼食場となっている生徒会室には声をかけた摩利とかけられた達也の他に、真由美、深雪、そして中条あずさがいた。
男女比だけでいえば達也のハーレム状態と言えなくないのだが当人からすれば代われるなら代わりたいというのが本心だろう。
「昨日、カフェテラスで何かあったのかい?」
「……何かとは?」
摩利の言葉に若干返答が遅れたのは思い出したくもない事を思い出したからだ。摩利の方もいや、と歯切れ悪く言い淀むが
「何、君が珍しく茫然としていたと聞いたものだからね」
途中でやめるのは性格上合わないのだろう摩利は結局言いきってしまう。
「いえ、何もありませんでした」
「本当かい?」
「えぇ全く何もありません」
逆に達也は冷静に、言ってしまえば早くこの話題が終わって欲しくつっけんどんな言い方になってしまう。正直説明しろと言われても分からないというのが本音である。
「ならいいんだが」
「あぁ、そういえば」
言い足りなそうな摩利の矛先を逸らすため今度は達也から話題を提供する事にした。
「なぁに達也君?」
「風紀委員の活動についてですが」
真由美が興味を持ってくれたのを幸いとばかりに達也は言い募る。
「どうやら、一部の人間から反感を買っているようでして」
「反感?」
摩利も不穏な言葉にふざけた雰囲気を捨てる。隣のあずさも真剣な目で(泣きそうな目で?)此方を見ている。
「えぇ、ここ数日活動してどうにもそんな感じが見受けられるのです」
「ふむ」
唸る摩利の顔色は考えているというより思い至る節があってやれやれと思っているという風であった。
「校内で高い権力を持っているのは事実ではあるのよね」
「つまり、それを笠に着て横暴な取り締まりをしていると考えている者がいるという事ですか?」
真由美も摩利と似たような顔色で言葉を付け足すと今まで沈黙を保ってきた深雪が身を乗り出す。彼女としては兄が所属する組織、というか兄がそんな風に考えられている事自体が許せないのだ。
「正確に言うとそういう風に情報操作している何者かがいるのよ」
「正体はわかっているのですか?」
「張本人がわかっていれば止めさせている」
「いえそうではなく」
愚痴のようにこぼした真由美の言葉に反応した達也に摩利あが憮然とした表情で応えるが達也はそれをも否定する
「末端でデマを流している連中ではなくその背後にいる連中の事です」
「何が言いたいの?」
気付いてないだろうが真由美の堅くなった声で、達也は核心に触れたと悟った。そして彼女達がその正体に気付いているという事も
「例えば、『ブランシュ』のような組織とか」
そして達也はここで最大級の爆弾を落とす。生徒会室が緊張に包まれた。
「何処でその名を?」
「別に極秘情報というわけではないでしょう。噂の出所を全て塞ぐなんて不可能なわけですし」
一番最初に再起動した摩利の言葉に達也は至極冷静に事実を述べる。
(先日、俺を襲った男が巻いていたトリコロールのバンド、あれはブランシュの下部組織エガリテのトレードマークだ)
達也が根拠を得た理由にはこんな事情があるのだが態々言うほどの事ではないだろうと口には出さなかった。ただこの学校がブランシュの浸食を受けているという事実だけ分かれば十分だ。
「今後はより注意しなければなりませんね」
「無理はしないでね」
「こちらでも対策は練ってはいるんだ」
二人の聞き様によっては言い訳ともとれる言葉に達也は無感情で頷き深雪を伴って生徒会室を後にした。
(今年の新入生主席にして生徒会役員の深雪が狙われる可能性が高い以上放ってはおけないな)
手掛かりとしては俺を襲った下手人の正体だろうか。
達也が頭の中でパズルを組み立てている傍らで深雪が心配そうに彼を見ていた。
~その頃~
「なぁ、ヨシタケ、ブランシェって知ってる?」
「んだそりゃ?聞いたこともねぇよ」
「だよねぇ」
「おい和人、ヨシタケ早くこねぇとクエスト始めちまうぞ」
「ちょっと待ってくれヒデノリ」
「そういや爆裂樽持ったか?」
「あぁタダクニが持ってるから大丈夫だよ」
「よっしゃ行くぞ!」
「「「おう!」」」
一狩りしてる中でこんな会話があったとかなかったとか
~魔法科高校生と不思議な目~
部活動勧誘が終わり、普通の授業が行われるようになった帰り、達也、深雪、エリカ、レオ、美月、そしてA組から雫とほのか、最早いつものメンバーと言ってもいい面子がカフェで放課後のひとときを満喫していた。
とそこに
「あ、おひさ~」
「今日は一人か、珍しいな」
「タダクニとヨシタケはバイト中でヒデノリは河原で修羅場中だ」
「なんだそりゃ」
四方坂和人が乱入し八人の大所帯となる。和人はレオが気を利かせてあけといてくれた席に座ると
「そういや」
「あの」
達也に聞きたい事があった彼が口を開くと美月とかぶってしまった。気まずげに目線を合わせる二人
「お先にどうぞ~」
「あ、ありがとうございます」
美月は律義に頭を下げると軽く息を吸い
「あ、あの和人さん!」
「え、俺!?」
意外な事に和人に声をかけてきた。かけられた本人もびっくりしている。
「和人さんって魔法師ではないんですよね?」
「そうだけど?」
「な、なんか見てて不思議な感じが」
美月がどう言ったものか悩んだのが手に取るように分かる感じでそれでも何とか言葉にしたのは聞き様によっては色々と想像が掻き立てられるものだった。
「え?まさか俺に隠された才能が!?」
「いえそれは全くないんですけど」
「ないんかい!」
あらやだこの子、大人しい見た目で言う事はしっかり言う子だったのね。
おい、みゆきち普通に笑ってんじゃねぇおwwwせめて光井さんみたいにこっそりやりなさいこっそり、てかエリカ氏あなたもか
「美月、オブラートに包む必要はないわ」
「そうだぞ、はっきり変態と言ってやるのも優しさだ」
「司波兄妹が容赦なさすぎる件」
君達人の事嬉々として貶めるよね。
「驚いた」
と北山さんがぽつりと呟く、この子いつも眠そうだけど大丈夫かな?
「雫、一体何に驚いたの?」
「深雪も達也さんもいつもはもっと落ち着いてるのに、今では年相応?」
とここでくてんと首をかしげる。いや此方に聞かれてもな~
「まぁ確かに学校では二人とももっとクールだよな」
ぶほっ!
「クールwwwだっておwww」
レオの言葉に思わず吹き出してしまい机をバンバン叩くと
「風通し良くしてクールビズに協力してやろうか?」
「物理的にクールにしてあげましょうか?」
CADを突き付けられながら非常にクールなお言葉をいただきましたとさ
一体これのどこがクールだというのか
「で?美月は何が言いたかったわけ?」
ハチの巣+氷像になりかけた俺を救ったのはエリカちゃんのこの一言だった。
マジ天使!
「え~と、非魔法師の人にしてはオーラが凄く厚いというかBS魔法師の人とちょっと似たようなオーラが見えるな~って」
なぬ?オーラですと?アリオン五体並べてオーラバトラーTHUEEEEEE!みたいな?
分からない人は『ラストクロニクル』でググってちょ。
「ねぇねぇエリカ氏、オーラって見えるもんなの?」
「なによ氏って、いや普通は見えないわよ」
あれ?でも彼女普通に見えるみたいな事言ってたよね?
「あ、私少し特別な目を持ってて」
「特別な目!?」
「うえ!?あ、はい」
ここで一気にテンションが上がってしまう。だって特別な目だぜ!誰もが一度は持って見たいと思うじゃない!
「それってあれかい!?見ただけで相手の術コピーできたり、幻術かけられたり、炎出せたり、360度見渡せたりするの!?」
なんか殆ど写輪眼のことしか言ってない気がするぞ?
「え?いえそういうのは出来ないんですけど」
「あぁ、そう……」
(な、なんか凄いがっかりされた!?)
意気消沈してしまった和人を見て何故か申し訳なくなってくる美月であった。
「お前、俺の時にも同じような事言っていたよな」
達也が思わず呟いてしまった言葉に深雪がばっと普段からは考えられないスピードで達也を見る。達也はそんな深雪と目が合うと
(あ……)
自らのミスを悟った。
「え、達也さんも何か特別な目を持ってるんですか?」
そしてほのかが目ざとくというよりは耳ざとく聞き逃さなかった為、全員の目が達也に向く
(し、しまった……!)
達也の持つ精霊の目
(少し気を抜きすぎたか)
どうにも彼といると色々と迂闊になってしまう。
どうしようか、地味に人生で一位二位を争うピンチに陥った達也だが
「そういや達也君も目が良くてさ~」
(和人!?)
救いの手かどうかはわからないが和人が声を上げ視線がそちらに集まる。
(い、一体どうするつもりだ?)
達也が不自然にならない程に和人を凝視すると、彼は達也に向かって軽くウインクする。
達也はそこに救いの光を見た。
あぁ、なんだかんだ言ってお前はちゃんと助けてくれるんだなと
「といっても他の人よりも目端が利くってレベルなんだけどね」
「あぁそういう」
「確かに達也は色々とよく見てるよな」
彼の言葉に納得したように頷くエリカとレオを見てほっと胸をなでおろす。
あぁ今ならお前にうんと優しくしてやれそうだ。
「でもそれも突き詰めれば特別になるでしょ?」
「つまり、努力の結果?」
「流石です達也さん!」
更に和人からの補足説明に雫もうんうんと頷きほのかは尊敬の目で達也を見る。
目を向けられている達也はそれを気にしている余裕はなくただただ感動に討ち震えていた。
お前の好きなモンブランだっていくらでも買ってやるし、深雪にも今後はもう少し優しくするよう言ってやろう。
かくいう深雪も安堵の色を顔に滲ませていた。
「だから名前を付ける事になったんだよ」
「それってどんな名前なんですか?」
「え~とね」
亜夜子からの暴力からもこれからは出来るだけ助けてやろう。
達也は桃源郷を歩くが如き至福から
「たしか、エロサイトだったかな?」
「俺の感動を返せ貴様」
一気に地獄にたたき落とされた。
「え”?」
「いや、それは……」
「おい!?ちょっと待て!?これは」
達也は必死に弁明しようとするが
「これは尊敬できない」
「……」
「」
雫、ほのかの目を見て心折れそうになる。
「あれ?なんかミスった?」
この憤りは全てコイツにぶつける事にしよう。達也は鉄の意思でそう誓った。
因みにこの後、達也の必死の弁明の甲斐あってかどうにか誤解は解けたのであった。
「俺の氷は溶けないけどな!」
「ナニカ?」
「なんでもありません女王様」
「深雪、もう少し凍らせろ」
「イヤァァァァァァァァァッ!」
流石に扱いが理不尽だと思うの
裏タイトルは魔法科高校生とエロ組織です(キリッ
やはり主人公居た方が筆乗りますね。
当然かwww