と思っていた時期が私にもありました(キリッ
またいい文字数いってしまったぞ?
こ、今度こそ短編集を……っ!
~魔法科高校生と青春~
「よう、服部」
「桐原か」
第一高校二年生の教室、そこには朝早いにもかかわらず二人の生徒がいた。
一人は服部刑部少丞半蔵、ものすごく長ったらしい名前だが、決して嫌がらせとかDQNネームとかではなく、家のかつての官職だった関係らしいが詳しい事はわからない。一応学校には服部刑部で届けているが、かの生徒会長には、はんぞー君などと呼ばれてしまっている気苦労の絶えない少年だ。
一人は桐原武明、剣術部(剣と魔法を組み合わせた競技)に所属する中学では関東一位にもなった事がある、剣のエリートとでも言うべき少年だ。
「お前、部活はどうした?朝練があるんじゃないのか?」
この時間ならまだ練習中の時間の筈だ。休憩中に来たという感じでないのは衣服が道着でなく制服の時点でわかっていた。
「服部だって知ってるだろ。例のアレで今日は休みだよ」
桐原の言葉に合点がいったように服部が頷く。事の発端は学校の上層部が言いだしたある一言であったのだが、それから正式に生徒会に依頼が入り風紀委員や部活連の助けも借りながら着々と準備を進めていた。
「そうか」
「服部はアレの準備か?」
「まぁな、各部活間の調整が大変でな」
「そりゃ大変だ」
「頼むからお前は問題を起こしてくれるなよ」
地味にフラグっぽい事を言いながらも比較的穏やかに談笑していると、他の生徒も教室に入ってきて教室は段々と騒がしくなっていく。
すると
「んなあっ!?」
窓から外を見ていたある生徒がいきなり机を巻き込みながら倒れこんだ。
なんだ?と思う前にその生徒から告げられた言葉に場は騒然となる。
「か、会長が……
七草会長が男と歩いている!」
「「「な、何ィィィィィィィィィ!?」」」
今更な話だが、現生徒会長の七草真由美は大変人気がある。一高のみならず他校にもファンクラブがあるほどに彼女は魅力的だった。そんな彼女に男が出来たとなっては彼女の魔性の魅力に魅せられた男達としては一大事だ。
「どこだ!」
「あ、あそこに……」
息も絶え絶えに男子生徒が指さす方向に他の男子生徒が一斉に目を向けると、確かに意中の人物がある男子生徒と歩いているのが見て取れる。正確に言うとその男子生徒の友人だろうか女子生徒が三人と男子生徒が一人いるが
「ば、馬鹿なっ!」
「この世には神はいないのか……」
「もうだめだぁ、おしまいだぁ……」
一人、また一人と崩れ落ちていく男子生徒達その中には当然真由美のファンクラブの人間もいる。
その様はまさに敗残兵に相応しい。女子生徒の冷ややかな視線も牙を抜かれた彼らにはお似合いだろう。
「落ち着けお前達」
「服部?」
そんな彼らに服部が桐原との会話を切り上げ声をかける。だが何を隠そうこの服部刑部も七草真由美に恋焦がれる男の一人だ。だが彼は決定的な場面を見せられるも一切動揺することもない。
やはり彼は格が違うと言う事だろう。女子生徒達の視線も熱い物になる。
「よく見ろ。楽しげに会話しつつも時折外れる視線を、更に互いの歩幅も合っていない。お互いまだ知り合って間もない証拠だ」
「おぉ、確かに」
「やはり服部、お前は天才だな」
格は格でも主に救いようがない方向で格が違ったらしい。女子生徒達の視線が一気に絶対零度に下がる。
「二人は付き合ってはいない。だが、それも時間の問題だろう」
「そんなっ!」
「一体どうすれば!」
「鎮まれっ!」
服部は騒ぎ出した連中を一括でなだめる。
(あの男は確か今年の新入生総代、司波深雪さんの兄だった筈)
実技はからきしだが筆記は歴代最高得点を叩き出し、教師を驚かせていたのを真由美から聞いている。真由美が興味を持ち生徒会室に招待しても不思議ではない。ならば生徒会副会長として自分がやらねばならない。
「俺に任せておけ」
服部はただ一言言うだけだったがその自信に満ちた言葉は浮足立った有象無象を一気に沈静化させ、去って行く背中には後光が見えた。まさに彼等にとっては救世主と言っていいだろう。
(七草会長相手にもそんぐらい堂々としてればいいのになぁ)
傍から見ていた桐原は白けた視線と共にそんな事を考えていた。
そして時は少し進み
「……」
「なぁ市原、服部の奴どうしたんだ?」
「さぁ?私にはわかりかねます」
「やけに気合いが入ってますね……」
放課後、生徒会室では風紀委員長渡辺摩利、生徒会会計市原鈴音、生徒会書記中条あずさがなにやらおかしな服部を見ながらひそひそ話をしていた。
「会長」
「ん?なぁにはんぞー君」
「これからここに来るのは」
「新入生総代の司波深雪さんと兄の司波達也君よ」
「そうですか」
件の服部は真由美に今日何度目かになる確認をすますと何かに集中するかのように再び目を閉じ直立不動の体勢をとった。
「はんぞー君どうしちゃったの?」
「いや私らにもわからんよ」
「いつもの副会長なら二科生の司波君に対して文句でも言いそうなものですが」
流石に真由美もおかしいと感じたのかひそひそ話の輪に加わるが答えは出ない。というより鈴音の言葉がなかなか容赦がない、真実なだけに何も言えないが
「失礼します」
そんな内緒話を打ち切ったのは扉を開けて入ってきた人物が発した声だった。
「いらっしゃい深雪さん、待っていたわ」
真由美は先ほどの困惑顔を露とも見せず柔和な微笑みで入室者、司波深雪を迎えた。
「達也君も来たな。御苦労さん」
摩利は深雪の隣にいた男、司波達也に声をかける。その感じは誰が聞いても少し気やすすぎないか?と思うほどで、達也も困惑したかのように眉を八の字にしている。
(来たか!)
服部は目的の人物がのこのこやってきたのを見てこっそりほくそ笑む。だがいきなり事を起こすつもりはなかった。
「はじめまして司波深雪さん、生徒会副会長の服部刑部です。生徒会へようこそ」
まずは、隣の少女に向かって挨拶する。彼女には何も罪はない、巻き込むつもりは毛頭なかった。
が達也にも全く罪がない事は都合よく服部の脳内からは削除されていた。
「そして、よく来たな、司波達也君?」
「はい?」
まさか声をかけられるとは思ってなかったのだろう、達也の反応が数瞬だが遅れる。
「最近、寒くないか?」
「え?いえ……むしろ暑いくらいですが」
今は四月、寒いどころかどんどんと暖かくなる季節だ。服部の発言の意図がつかめない達也であった。
「いいや、寒いはずだ。何故なら……」
ここで服部は右手を左手のCADにそえる。
「今からお前の春を殺すからだ……!」
「は?」
「いやお前何言いだしてんだ!」
お前の頭の方が春だろ!と叫びたいのをどうにか押さえ摩利が立ちあがるが服部の行動の方が早かった。
「来い!我が同胞よ!」
「おう!」
「任せろ!」
「イー!」
服部の声と共に何処に潜んでいたのか、男子生徒達(真由美ファンクラブ)が生徒会室に入ってくる。
「一体どこから!?」
「さぁ、覚悟しろ。司波達也」
真由美が混乱するのも構わず、男達は達也をとり囲む。
「あの、このような事をされる心当たりがないんですが」
「ふ、安心しろ。会長と妹さんには手を出さないで置いてやる」
「あなたの頭の中は全く安心出来ないようですね」
頭が春の服部に達也は疲労感が多大に溜るのを感じながらも、深雪に下がっているように指示する。
「会長といちゃつきやがってぇ」
「万死に値する!」
「ちょ、ちょっと待って!」
男達が怨嗟の声と共に達也に襲いかかろうとするのを止めたのは顔に赤みが差した真由美であった。
「私いちゃついてなんかないわよ!」
「しかし、朝のあれはどう考えても……」
「朝?」
服部の言葉に真由美が首をかしげる。が思い出したかのように手をポンと叩く。
「あぁ、あれは深雪さん達を昼食に誘ってただけよ?」
「「「「え……?」」」」
「まぁ受けてくれたのは深雪さんと達也君だけだったけど」
「……」
「……」
「……」
「……」
真由美の言葉を最後に、生徒会室は沈黙に包まれる。
「……服部君?どういう事?」
たっぷり三十秒かけ沈黙から解かれた男子生徒の一人が服部に声をかける。
「ふっ」
服部は部屋中の視線が自分に集中するのを感じながらそれでもニヒルに彼は笑って見せ
「いや、カップルの事とか俺に聞かれてもわかんないし」
こんな事をのたまった。
何言ってんの?コイツ……
男子生徒のみならず生徒会の面々、司波兄妹ですら全く同じことを思ったという。
因みに、服部は勝手に生徒会室に生徒を入れたので鈴音にこってり絞られ、当然達也と模擬戦になる事もなく努めて平和に達也は風紀委員となったのであった。
おう、主人公全く出てきてないやwww