それから数日は何事もなく過ぎた。
「き、筋肉痛ががが……」
「そ~れ、そ~れ」
「ちょ、深夜さんってあだだだだ!!」
グラウンド(500周は流石に免除された)をとことん走らされ筋肉痛で苦しむ少年にここぞとばかりに追い打ちをかける深夜の姿とか
「どうよ?」
「あなたにも特技があったんですね」
「ひでぇや、みゆきち」
「その呼び方はやめて下さい」
ゲームセンターのドラム〇ニアで意外な才能を発揮する少年の姿とか
「古今東西卓球!破壊力Cのスタンドの名前!ムーディーブルース!」
「アクアネックレス」
「デス・サーティーン」
「ハイウェイ・トゥ・ヘル」
「何でみんなわかんの!?」
俺TUEEEEEE!!しようとしたら周りの方がTUEEEEEE!!されて涙目になる少年の姿とか色々?あったがまぁつつがなく過ぎて行った。
このまま何事もなくこの旅行が終わればいい
「この時、少年はそう考えていた」
「何を言ってるんだ?」
「あ、ごめん急に言いたくなって」
はぁ、と溜息を吐く達也君の部屋に今俺はいるわけだが、彼はいま真田さんから貰ったらしい二丁拳銃型のCADをチューニングしている。
専門知識のない俺にはわからんが、CADのチューニングが出来るというのは結構凄い事らしい。確かにディスプレイを埋め尽くす数字とアルファベットの羅列と数々のコードとか見るともう部屋というより研究ラボに近い。
「なぁなぁ、これって何しようとしてんの?」
「かくかくしかじか」
「なるほどぉ、ってわからんがな!」
達也君は答える気が全くないようだ。と達也君が急にドアに目を向けた。
「誰かいる?」
「へ?」
「部屋の前に誰かが、あぁ」
達也君は言葉の途中で合点がいったかのように頷くと外の誰かに当たらないようにそっとドアを開けた。俺が来たときは遠慮なしに開けたのにえらい違いだ。
達也君は外の誰かと何事か話しその人物を中に入れる。
「あ、みゆきち」
「だからその呼び方はやめてと、はぁもういいです」
どうやら、外にいたのは深雪ちゃんだったようで、所在なさげにあちこちを見ている。
「あなたはいつからここに?」
「20分ぐらい前からかな」
達也君がCADいじってる傍らで、操作盤見たり世間話したりしてました。ってあれ?なんでみゆきちそんな恨めしげな眼してんの?羨ましいの?
「別にお兄さんをとったりしないんだけどな」
「何か?」
「べ・つ・に?」
恨めしげな眼が更に強くなる。ほっぺたも膨らまし、ぷくーという擬音が聞こえてきそうだ。達也君もいじめてるわけじゃないからその咎めるような視線はやめて貰いたい。全くお前ら結婚しちまえよwww兄妹だけど
「それで、どのような御用でしょうか?」
達也君は深雪ちゃんにあくまで無表情に問いかけるが、深雪ちゃんの意識を俺から自分に変えたい意図があるのがわかる。でも深雪ちゃんはまだ察せないと思うな~。ほら、なんかしどろもどろになってるし
「お嬢様?」
「っ!」
達也君は本当に疑問に思ったのだろう。いつも通り『お嬢様』と呼んだが、深雪ちゃんはショックを受けたような顔をしている。
「お嬢様なんて……呼ばないで下さい」
「……?」
懇願されるような声色で言われてしまうと達也君もどうしたらいいか対応に困ってしまう。そんな空気を敏感に感じ取ったのか。それともさっきの言葉は思わず出てしまったのか、ハッとしたように眼を見開くと
「あの、えっと……そうです!普段から慣れておかないと、思わぬところでボロを出してしまうかもしれませんし?だからその……」
早口でまくしたて、やがて
「わ、私の事は深雪と呼んで下さい」
こう告げた。
顔を赤くして目をギュッと瞑ってる姿はさながら告白する淑女のよう、そして告白されているのは達也君、俺モブ、どうしようこの状況
Qこんな時、どんな顔していいかわからないの
A笑えばいいと思うよ
笑えないよシンジ君、でも任せてくれ、ちゃんとフォローしてやるぜ!
「わかったよ、深雪。これでいい?」
「!?」
「エンダァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
「やかましい」
「うるさいです」
こうして俺は、兄妹揃ってのメニアルボンバーをくらうのであった。だが悔いはない
本当は筋肉痛を深夜さんにとことんいじられる少年、ゲームセンターで達也とデッドヒートを繰り広げる少年、古今東西卓球でボコボコにされる少年で3話使おうと思ってたんですが、話がすすまなすぎるので没になりました。
『わっふるわっふる』と書けば上記の話しが見れるわけではありません