四葉の影騎士と呼ばれたい男   作:DEAK

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追憶編⑨

 

沖縄に来てから、はや3日、今日はあいにくの天気で、空はどんより曇って、強い風が吹いている。

 

Q:『どんより』を使って言葉を作りなさい

A:うどんよりそばが好きだ

 

暗い天気につられがちになる気分を晴らすため、一発上記のギャグをかまそうと思ったが、最近自分の考えが読めるようになったのか桜井さんに無言で足を踏まれてしまう。痛い

 

「今日のご予定はいかがしますか?」

 

桜井さんが深夜さんにパンを渡しながら尋ねる。

 

「そうねぇ……」

 

パンを受け取りながら独り言のように呟く深夜さんの姿は、40歳を超えるのが信じられないほど若々しい。年齢聞いてビックリしました。真夜さんといいこの家の人は波紋呼吸でも身につけてるんだろうか?

 

「琉球舞踊なんてどうです?」

 

「何を企んでるんです?」

 

桜井さん、開口一番それは酷い気がします。

 

俺から比較的まともな意見が出るとは思わなかったのか、みんな一斉に俺の方を見る。深夜さんに至っては持ってたパンを落としてしまっている。

そんなに俺が普通の事言うのがおかしいか?おかしいなwww

 

「舞を制する者は武を制す」

 

「達也君?」

 

それまで静かにパンを口に運んでいた達也君がぼそりと呟き、桜井さんが首をかしげる。

 

「かつて人間は、音にこそ神が宿り「舞」こそ己と世界がひとつになる方法だと信じていました。日本に限らず世界中のあらゆる格闘技は、その国と文化の持つ拍子に驚くほど支配されています」

 

と達也君はここでスープを一口飲むとそのまま

 

「事実、ほぼ例外なくどの文化も武よりも舞の歴史のほうがはるかに深く古いんです。つまり彼は琉球舞踊、すなわち舞を学ぶことで自らの武を更に昇華させようという考えなのでしょう」

 

と続けた。みんな唖然として達也君と俺を交互に見ている。達也君の饒舌な説明に驚いているのではないようだ。

 

「ウソです!」

 

「この子がそんな殊勝な事考える筈がないでしょう」

 

「私も違うと思いますよ」

 

上から深雪ちゃん、深夜さん、桜井さんと、見事にフルボッコにされる主人公(仮)であるが、誠に遺憾である。

 

「ちょっとぉ!俺だって必死なんだよ!達也君てばどんどん型の練度が上がって行ってるからこっちも併せてレベルアップしないと

 

あのお兄様と互角に戦っているあの殿方はだwれw?

 

って騙せないじゃん!」

 

「そんな事だろうと思ってました!ていうか今の誰のモノマネですか!?」

 

プススwww深雪氏www笑顔が怖いでござるよwwwフォカヌポウwww

 

「そりゃ昨日の朝、演武もどきに見惚れてた誰かさんで」

 

「フンッ!」

 

「オウフッwww」

 

わ、わき腹はアカン……

 

「その努力をなんで別の方向に活かせないのかしら」

 

「ですけど、この琉球舞踊、衣装を着て体験も出来るみたいですね」

 

呆れたように首を振る深夜さんに、壁に掛かったディスプレイを操作していた桜井さんが件の琉球舞踊公演の案内ページを開いて見せる。

 

「小癪な事に面白そうじゃない。深雪さんは?」

 

「私もそう思います」

 

そう思うのは『面白そう』の方か『小癪な事』の方なのか、頷く深雪ちゃんに聞いてみたかったけどやめといた。

 

「お、じゃあ決まり?」

 

「みたいですね。車の手配をしときます。あ……」

 

と桜井さんが画面をスクロールする指が止まった。

 

「どうしました?」

 

「この公演、女性限定みたいですね」

 

「なん……だと?」

 

画面を見ると確かに女性限定と書いてあった。

 

「ぷぷっ」

 

「あら~?残念ねぇ?私達だけしか楽しめないなんてね~?」

 

「ぐぬぬ……」

 

噴き出す深雪ちゃんにここぞとばかりに煽ってくる深夜さんに僕は歯を食いしばることしか出来ませんでした。ちくせう

 

「いいもんね~!俺は達也君と一緒に基地に行くもんね~!」

 

負け惜しみとばかりにもぐもぐとパンを食べていた達也君と肩を組む。僕らは野郎同士で仲良くしようぜ!

ん?なんか深雪ちゃん唖然としてる?

 

「そういえば昨日の大尉さんに誘われていたそうね?丁度いい機会だから見学してくるといいわ」

 

「わかりました」

 

「あ、あのお母様!」

 

達也君は他人行儀に深夜さんにそう答えた矢先、深雪ちゃんが

 

「私も、に、兄さんと一緒に行ってもいいですか?」

 

そんな事を言い出した。あら?琉球舞踊行くんじゃないの?

 

「深雪さん?」

 

ほら、深夜さんも訝しげな目をしてるし、よしここは助けてやるか(ニヤリ

 

「なんだい深雪ちゃ~ん?俺と達也君のラヴラヴっぷりに嫉妬かい?」

 

「黙れ」

 

「!?」

 

うわ~すご~い人間ってこんな低い声出せるんだね(震え声

 

「はっ!?い、いえその私も軍の魔法師の訓練に興味がありますし、それにミストレスとして自分のガーディアンの実力は把握しておきたいですし」

 

自分でもこんな声が出るとは思ってなかったのだろう。はっとして早口で深夜さんに説明する深雪ちゃんの姿はいつもの深雪ちゃんだった。え?まさかホントに嫉妬?まさかね~

 

「そう、関心ね」

 

深夜さんもそんな深雪ちゃんの回答に満足げな笑みを浮かべるがそれを直ぐにかき消し、達也君に向き直る。

 

「というわけですので、基地には深雪さんが同行します」

 

「はい」

 

「よっていくつか注意しておきます」

 

そのまま深夜さんはまるで機械にプログラムを打ち込むかのように淡々と達也君に『命令』していく。

なんか家庭環境がいろいろと複雑なんかね?どう見ても親子の会話じゃないんだよな~深雪ちゃんと話してる時はそんなことはないから子に対する接し方がわからないってわけじゃないだろう。

 

「あの」

 

う~んと頭をひねっていると深雪ちゃんがこっそり耳打ちしてくる。

 

「さっきはごめんなさい。なんであんな態度とったのか私にもよくわかってなくて」

 

さっき?あぁあれね~深雪ちゃんは悪くないしむしろあれですんで良かったと思ってるし

 

「気にしないで~、あれは俺が煽りすぎたし、それだけ兄さんが大好きって事でしょ?」

 

「そ、そんな事ありません!!」

 

「深雪さん?」

 

「す、すいません。なんでもないです」

 

せっかくこっそり話してたのに結局大声を出してしまったね深雪ちゃん。でもどうみても深雪ちゃんは達也君の事気にしてるよね?達也君も深雪ちゃんとそれ以外の人だと明らかに態度が違う気がするし

 

かくして、俺、達也君、深雪ちゃんの3日目の予定は恩納基地の見学に決まった。




しまった。早速話がそれてしまった(汗
予定では恩納基地まで行くつもりだったのにな~
風間大尉の出番はまた次回になります。

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