「・・・・・・ん」
結局昨夜のパーティーが終わり、兄と状態異常:『ひんし』の少年と共に別荘に帰ったきたのは真夜中近くになってからだった。
だというのに深雪が目を覚ますと時計は5時を少し回った程度の時間であり、深雪はいつもの習慣が染みついてるなぁと他人事のように考えていた。
二度寝をする気分でもないし、深雪は大人しくベッドから出る事にした。窓を開けて空気を入れ替えようとすると
(あれは?)
庭で兄がトレーニングをしていた。それだけなら驚きはない、兄はガーディアンとして常日頃から鍛錬をしている事は知っていたし、たまに怪我をしてくるのも知っていた。
ただ問題は・・・・・・
(ウソ!?あの人が互角に闘っている!?)
昨夜、亜夜子により戦闘不能(笑)にされた筈の少年が兄の練習相手、詳しく言うと演武の相手をしているという事だ。詳しくは深雪も知らないが、演武はゆったりとした動きとは裏腹にかなりの技術と鍛錬が必要だったはずだ。それを兄はともかく彼が?
兄がゆっくりと突出した拳を少年は回りながら同じくゆっくりと避けるが、兄はさらに回し蹴りを放つ。狙いは頭。かわせない!と深雪は直感的に思ったが、少年は体勢を崩し地面に寝そべりながら蹴りをかわして見せた。
深雪にはわからないが、おそらくこの攻守の全てに高い技術が使われているのだろう。
(実は凄い人だったのかしら)
深雪は、彼らに見つかる事を気にもせずただぼーっと二人の演武を見続けていた。
「うまぁい!美味いっすよ桜井さん!」
この別荘には自動調理器が存在するが、桜井穂波はそれを使わずいつも手作りで御飯を用意してくれる。司波家にとってはそれはいつものことであり、本日の朝食も慣れ親しんだと言っていいいつもの味だった。だが、初めて食べる事になる少年にとっては別であり、四葉家の食事とは違う、高級感には劣るが親しみやすい味に舌鼓を打っていた。
「ふふ、そう言って貰えると嬉しいです」
対する穂波も笑顔で少年に答える。気に入らないわけではないが、なかなか他の3人は食事に関して称賛してくれる事がない為(いつもの味として認められているという事ではあるが)素直に嬉しかった。
そんな、いつもより若干賑やかな朝食であった。
「そういえば、あなたも武術の心得があったのね」
ふと深雪は今朝見た光景を思い出し、スープを一気飲みで飲み干した少年に問うてみる。
「あぁ、あれかい?」
少年はフフンと自慢げに鼻を鳴らす。
「何も伊達や酔狂で監視役をやっているわけではないんですぜ?」
「あれは、俺が型をやってるのを適当に茶々入れてるだけだろう」
「それは言わない約束www」
自分の事ながら、どんどん目が据わっていくのを深雪は感じていた。その証拠に少年の顔がどんどん青ざめていくし
「ちょ、ちょっと深雪ちゃん?今朝はあんなに見惚れてたのに」
「なっ!?そ、そんなことありません!」
深雪は図星を突かれぎくりとする。
(確かに見惚れてたけど、それは兄に対してで・・・・・・って何考えてるの私!?)
盛大に混乱する深雪の姿は昨夜の亜夜子にそっくりだった。
「このっ!馬鹿ぁっ!」
「深雪氏!?そのフォークは皿のウインナーを刺すための物で俺の顔に向けたら、って刺さる刺さる!?」
兄に見惚れていたという事実を脳内からかき消すため少年に八つ当たりする深雪は
(武術の勉強もしよう。二度と騙されない為に)
そんな事を考えていたとか
次回また深夜さんのターンになる予定なのでエネルギー充電します。その影響で今回ちょっと短くなってしまいました(汗
すいません