ストライク・ザ・ブラッド ~暁古城が……~   作:天狐空幻

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皆さん、申し訳ありませんでした!
ちゃんと生きてます!


暁古城。幼子になる。 第016話

 昨日の連絡どおりに凪沙はお隣に暮らしている雪菜に暁家の合鍵を渡し、部活の為に学園に出かけていった。

 合鍵を使い暁家の扉を開け部屋にお邪魔する。古城の部屋の扉を少しだけ開けて室内を確認、ベットの上には古城が穏やかに眠っているのを確認して雪菜は静かに扉を閉じて台所に立つ。

 

「あっ、メッセージですね」

 

 上部の食器などを仕舞っている棚の部分に張り紙が見えてそれを取る。

 紙には「食事などは準備してるから古城くんが起きたら食べさせてね」っと書かれており準備する必要がないと分かった雪菜は起きる時間まで少し待つ。

 そろそろ起こす時間帯――九時ぐらい――になったので部屋に入り、ベットに眠っている古城を揺さぶり起こす。

 

「起きて下さい古城」

 

「んっ……ん~……」

 

 揺さっても中々起きない古城。子供なので少しばかり仕方ないと思う雪菜であるが何度も揺さぶるが起きない。

 それ所か、揺さぶっていた雪菜の手を掴み顔に近付かせ抱き込んでしまう。

 愛らしく思う雪菜ではあるが起きてもらわなければ為らない。

 

「はぁ~……この辺りは子供になっても変わりませんね」

 

 溜息をつく。

 抱き込まれていない片方の手で古城の髪を少しだけ撫でてあげ、頬を軽く引っ張る。

 引っ張られ伸びる頬は柔らかいと思うと、唸りながら古城が目を覚ます。

 

「う~ん……ゆきな」

 

「はい。もう起きる時間ですよ」

 

「おきる~」

 

 重たい瞼を開け擦りながら身体を起こす、だが身体を支えていた手が滑り雪菜の方向に倒れてしまう。

 倒れてくる古城を戸惑う事無く平然と受止める抱きしめる雪菜。だが、抱きしめた場所は胸元で柔らかい胸、と女性特有の優しい匂い、それらが古城の五感の触覚と嗅覚を刺激してしまう。

 

「大丈夫ですか?」

 

「…………」

 

「古城?」

 

 無事かを訊いて返事が無いことに不思議に思い再度、名で呼びかけるが無反応。

 流石に何かあるのかと思い顔を覗き込もうとしようとした瞬間、古城は勢いよく離れ布団に顔を覆い被さり隠れてしまう。

 

「こっ」

 

「なんでもないよ! ひとりできがえるからでてって!」

 

「どうしたのですか古城?」

 

 急な行動。それに驚きながらも何があったのか問うが古城は被っている布団を頑なにのける事無く部屋から出て行くように言い放つ。

 気に為る事は多々あるものの仕方なく部屋から出て行く雪菜、それを確認した古城は布団をのけて自分の鼻を押さえる。その瞳は真紅の血と同じ色に変色していた。

 

「う~~。……や」

 

 何かを呟こうとして左右に顔を振る。鼻血をすすり血を飲み、流れ落ちてしまった鼻血に関してはテッショで拭いてかむ。

 かみ終えたテッシュをゴミ箱に捨てて、古城は自身の手を見詰る。そこで何かを思い出しそうになるが、また左右に顔を振って思い出しそうになった記憶を霧散させ私服に着替える。

 着替え終えた古城は扉を開きリビングを覗き込む。そこには雪菜が朝食の準備をしている。

 

「あっ、やっと出てきましたね」

 

「お、おはよう」

 

「はい、おはようございます。何時までもそこに立っていないで朝食を食べましょう」

 

「うん」

 

 視線を少しだけ逸らす古城に気に為るも暖めた料理が冷めてしまうので後回しにした雪菜。古城が椅子に座り、食事の手伝いをしやすい様に隣に座る、だがそこで古城は雪菜との間隔を少しだけ離した。

 

「ん? 古城……」

 

「ひっ、ひとりでたべれるから」

 

「……そう、ですか」

 

 多少落ち込む雪菜だがこの機に1人で食事出来る様になってもらおうと思う。だが、何故急にこの様な行動に出たのか分からず困惑してしまう。

 色々と思う所があるがそのまま朝食を取り、今日は何処に出かけるか2人で話し合う。

 

「じゃぁ、こうえんにいきたい」

 

「そういえば行きたいと言ってましたね。では、近くの彩海学園前の公園で良いですか?」

 

「うん!」

 

 出かける場所を決めた二人は朝食を終え、雪菜は使い終えた食器を台所に持って行き洗う。その間に古城も出かける為に白のパーカーを着て準備を終わらす。洗い終えた食器を水を切って並べる。

 

「では、行きましょう古城」

 

「はぁ~い」

 

 手を繋いでマンションを出てモノレールに乗り込む。

 今日は日曜日の休日、モノレールの車内には乗り込んでいる客は疎らで混んでおらず2人は簡単に座席に座れた。

 モノレールの窓から流れる風景を眺めて楽しむ古城に、それを微笑み慈しむ様に見守る雪菜。だが、あまりに周囲に迷惑に為らない様にやんわりと忠告する。

 そんなほのぼのした雰囲気を醸し出している2人に隣に座っていた老婆が話しかけてきた。

 

「元気だねぇ」

 

「すみません。騒がしくしてしまい」

 

 周囲に困らせてしまったと思った雪菜は直ぐに謝罪するが、老婆は左右に顔を振る。

 笑顔を絶やさない優しそうなご年配の女性、緑色に水仙の花が施された着物を着ており片手に日傘を持っている。

 その老婆の持っていた茶色い巾着袋から小さい包みで包まれた飴玉を取り出した。

 

「子供は元気が一番だねぇ。ほれ坊や、飴食べるかね?」

 

「いいの?」

 

 老婆は小さく頷き、古城の視線を雪菜に向けると軽く微笑む。それが合図だと分かった古城は飴を貰い口に含む。

 その飴はグレープフルーツ味で口一杯に広がり古城は笑顔で老婆に向いてお礼を述べた。

 

「ふふ、可愛らしいねぇ。兄妹かい?」

 

「えぇ……そんな感じです」

 

 監視なんて言えず口篭る雪菜。老婆は不思議がるも追及はしなかった。

 次の駅で老婆はモノレールから降りて行き、二人は予定通りにに彩海学園公園前で降りた。

 彩海学園の近くに存在する公園は駅から徒歩数分程度の所にある。公園を囲むように木々が植えられ、公衆トイレは綺麗に清掃されている。公園の定番である滑り台からブランコ、砂場、動物を象った乗物が置かれており、これと言って目立つものは無いものの落ち着きがあり静かな公園。

 その公園には既に複数の子供とその親御さんなどが居り、子供たちはフランゴを漕いだり砂場で山を作ったりと遊んでいる。

 

「公園の外には出てはいけませんからね」

 

「うん!」

 

 繋いでいた手を離すと古城は一目散に砂場へと向っていき、その砂場で遊んでいた子供達と一緒に遊びだす。

 雪菜はそれを遊びだした古城を確認して、その近場の公園に設置されている長椅子に座り持ってきた日傘を差す。楽しむ古城に目を細めながら見守っていると隣から誰かが近付いてくる気配に気付く。

 

「隣、良いですか?」

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

 白い日傘を差し、それと同じ白色のワンピース、薄茶色の腰にでも届くだろう長い髪をポニテに纏め、左薬指に銀の指輪、三十代前半に見られる女性。

 女性は雪菜の隣に座り、砂場に視線を向ける。

 

「さっき男の子と来たわね。弟さん?」

 

「いえ、友達の……弟さんです」

 

「あらそうなの? そう言えば、似てないわね」

 

 本当は一つ年上の高校生、などと言っても誰も信じないだろう。

 それに同級生の友達、それの兄妹から預かっているのは事実である。

 

「あの子、パーカーを着てるけど紫外線に弱いのかしら?」

 

「いえ、その……体質みたいな……本当は朝も弱いのですけど」

 

「そう、うちの子も朝が弱くて中々起きないの。互いに大変ね」

 

「はい」

 

 返事を返すも雪菜にとっては古城には私生活を正して欲しいという感情が高い。勿論、隣の婦人が知るわけが無いので仕方ないと思いながら話を合わせている。

 すると砂場から揉める声が聞えたので視線を婦人から戻す、その先には砂場で古城と他の子供が揉めているのが目に入った。

 流石によそ様の子供に怪我などはさせられないと雪菜は立ち上がり砂場に近付く。

 

「どうしたのです?」

 

「ユウのオモチャをタイチがかってにうばうから、ちゅういしたんだ!」

 

「すこしだけかしてもらうだけだろ!」

 

「ユウはいやがったじゃんか!」

 

 古城とタイチと名乗る子供の双方の話を訊いて雪菜は理解した。

 タイチが持っている玩具は土砂などをダンプカーに積み込む重機であるホイールローダーで、それを許可無く勝手にユウと名乗る子供から奪って、それを注意した古城と喧嘩が起きた、それが経緯である。

 どうやら古城が悪さをした訳ではないと雪菜は安堵する。だが、それが分かった所で喧嘩の解決には根本的に関係がなかった。

 兎に角、喧嘩を雪菜は宥める。

 

「喧嘩はダメですよ。それにタイチくんでしたね。どの様な理由であれ嫌がっている相手の玩具を勝手に取る事はダメです」

 

「でも、おれかしてっていったらかしてもらえたもん!」

 

「オモチャつかんでいいっていうまえにかってにうばったじゃん!」

 

 そう言い放つ古城。

 このままではまた喧嘩を仕出かしそうになり止め様とする雪菜、すると隣で泣いていた男の子――古城の話ではユウと名の子供――が急に玩具に掴んで来た。

 

「かえして!」

 

 玩具を掴み引っ張るユウ。その急な行動に古城とタイチは驚き、最終的には奪い合いようになってしまった。これを避けたかった雪菜ではあったが、起きてしまった事は仕方ないと思いながら懸命に宥める。だが、喧嘩は収まる所か過激になっていく。

 

「はなせ!」

 

「いやだ!」

 

 子供特有の甲高い声が公園内に響き、それが周囲の遊んでいた子供や連れて来た親御さんの視線を集める。

 タイチとユウが左右から引っ張られる玩具にミシミシと悲鳴を上げ出している。例え子供の弱い力とはいえ全力で引っ張られれば玩具といえ只では済まない。

 

「やめろよ!」

 

 その2人を止め様とする古城。

 子供の2人の間に立ち、玩具を引っ張ろうとする。だが、そこで雪菜はある事に気付いた。

 

「(赤目!)ダメです古城!」

 

 赤目。それは吸血鬼に特徴的な瞳。その吸血鬼としての力を解放した時に見られ、その状態では子供とはいえ尋常ではない力を発揮してしまう。

 それに気付いた雪菜は、この状態で喧嘩に乱入などすれば相手の子供に怪我をさせてしまう。そう思い止め様とする雪菜ではあったが一歩遅い。

 そして、勢い良く子供を――約1メートルほど――吹き飛ばしまった。

 




言い訳しません。
ブラック・ブレットの二次小説に執筆してたらストライク・ザ・ブラットを執筆する暇がなくなったんです。ゴメンナサイ(涙)
勿論、この話も頑張って終わらせますので宜しくです。

さて、今回は古城くんは少しだ雪菜を異性として見てしまいました。これはら古城が雪菜にどのような感情を浮かべていくのが……。

では、次回をお楽しみに!

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