GOD EATER―池袋最強のIF―   作:神無月神流

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episode2

ーーーー『贖罪の街』

アラガミが出現した直後に、多くの人が集まり身を寄せ合っていた都市の一角らしい。

教会を中心とした居住区の周囲には、自衛のためのバリケードが放置され、建造物は無残に喰い破られた穴だらけになり静かに佇んでいる。

今は人間なんかは存在出来ない。

 

「さて、今日の標的はオウガテイルだ」

突然の出撃命令を受けた俺は、そんな『贖罪の街』に来ていた。

 

「命令は3つ。

 

死ぬな。

 

死にそうになったら逃げろ。

 

そんで、隠れろ。

 

運がよければ不意をついてぶっ殺せ」

 

「……それじゃあ4つっすよ」

 

リンドウさんは、武器である『ブラッドサージ』を肩に持ち命令を下す。

 

「ま、とにかく生き延びろ。

それさえ守れば、後は万事どうにでもなる」

 

少し戯けたように言う。

だが、その目は真剣だ。

 

「さーて、おっ始めるか」

 

「ウッス」

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

(あの人の言ってた通りだな)

 

雨宮リンドウは連れてきた新人、平和島シズオのその戦い方を見て思う。

 

(あれは最早戦闘じゃなく虐殺だな。

アラガミの中じゃ最低レベルとは言え、あの数を相手に圧倒的とは…)

 

数が2体や3体、多くて5体程度であったなら才能のある奴だという認識で事足りただろう。

しかし、彼の能力は想像を超えていた。

その数何と15体以上。

 

(戦闘訓練を受けてねーから戦い方は荒い。

だが、それを補って余りある程のパワーがこの一方的な虐殺を可能にしているのか)

 

新人の戦いを見て思う。

 

(いや、それに加えあの驚異的なまでの堅さ。

少ないながらオウガテイルの攻撃は当たっている。

なのにあいつの身体には、()()()()()())

 

オウガテイルといえどもアラガミだ。

例えゴッドイーターであっても、攻撃が直撃して薄く出血しているだけというのはおかしい。

 

リンドウは吸っていたタバコの吸い殻を落とす。

 

(数体相手取らせて無理そうなら助けに入ろうと思っていたんだが…。

訓練も無しに実地訓練で実力を見ろ、なんて言われた時は正気を疑ったが……、確かにこれはダミーなんかじゃ意味がねぇな)

 

オウガテイルを殲滅し終え、こちらに来る規格外の新人を見てリンドウは苦笑した。

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

(どうやら俺の力はアラガミ相手でも通用するらしいな)

 

平和島シズオは思う。

アラガミの中では最低レベルであるとは聞かされていたが、それでも人知を軽く超える力に勝てたということに安堵する。

 

「終わりましたよリンドウさん」

腰掛けながら見ていたリンドウの元に向かいながら報告する。

 

「お疲れさん。んじゃ、帰るか」

 

手を上げながら労い、迎えのヘリを呼ぼうとしたーーー

 

 

『ーーーーーーリンドウさん!!そちらに急接近する大型のアラガミの反応を感知しました!』

 

ーーー直後、切羽詰まったヒバリの声が聞こえる。

 

『これはーーー

 

ヴァジュラです!!』

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

(少し油断してたかね、これは)

 

報告をうけた直後、リンドウは状況の把握を瞬時に行った。

 

(オウガテイルがあんな数群がってたってことは、ヴァジュラがそう遠く無いところにいることは予想できたんだが……。

シズオの戦闘に見入りすぎて、引き際を見誤ったな)

 

いつもならここでヴァジュラを相手取るのになんら問題は無かった。

しかし、ここにはシズオがいる。

いくら規格外の能力があろうが、中型さえも相手にしたことが無い新人を連れてヴァジュラとやり合うのはリスクが高い。

 

(まあ、やれちまいそうだけどなぁ)

「ヘリの到着はどれくらいになる?」

 

『5分後です!』

 

「ふぅーーー」

(急接近してきてるっつー事は、こっちの存在に気づいてんな)

 

隠れる事はしないほうがいいと判断したリンドウは、様子を見ていたシズオに対し指示を出す。

 

「これから大型アラガミを相手にする。

ヴァジュラって言うんだが、オウガテイルとは次元が違う。

俺が前に出るから死ぬ気で最初言った命令を守れよ」

 

あれ?これ矛盾してね?なんておどけるように言っているが、そこに一切の油断はなかった。

 

「わかりました」

 

それにつられて、気を引き締めながらシズオが返事を返した。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「スゲーな…」

 

ヴァジュラが振り下ろしの動作に入ったら横っ腹を切り裂きながら背後に回り、一瞬リンドウの姿を見失った無防備な後部へ浴びせ斬り。

後ろを振り向きながら爪を振り回し攻撃してくるのをサイドステップで躱し、斬る。

雷撃のチャージをした瞬間にそこを離脱し、それを冷静に回避する。

一種の芸術のような戦いに、シズオの口から感嘆の声が漏れる。

 

(さっきから全く攻撃が当たってねえ。

攻撃の予備動作を、あの一瞬の中で読み切って捌ききってんのか?)

 

これがゴッドイーターというものかと認識を新たにし、戦闘を物陰から観察しながらタイミングを待つ。

 

『ヘリが到着しました!』

 

と、通信が入ったと同時に、シズオはリンドウから預かったスタングレネードを投げ入れながら、

「リンドウさん!」

と呼びかけ、合流地点へ駆ける。

 

「やっとか!」

と、リンドウも応答しながら追走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーウヴォォォァアアアアアアアアア!!!!!

 

聞こえてきた咆哮に背後を見たリンドウは絶句する。

 

(スタンからの回復が早すぎる!)

 

それは、こちらに向かって全身を怒りに染めたヴァジュラが猛然と駆けてくる姿だった。

 

(迎え撃つか)

「シズオ!先に…」

 

迎え撃とうとしたリンドウの頭上を越えたヴァジュラが静雄に迫る。

先の戦闘でズタボロにされたヴァジュラはリンドウではなくシズオを狙ったのだ。

(ぬかった!)

 

「シズオ!!」

 

リンドウはシズオの方を向きながら叫びーー

 

「ぅおオラァァぁああああああああ!!!!!」

 

ーーながら見たのは、ヴァジュラの顔面をぶっ飛ばすシズオの姿だった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「ハアー」

 

シズオに部屋で休むように言った後、リンドウは深くため息を吐く。

 

(いくら俺が痛めつけたっつっても、まさかヴァジュラを吹き飛ばすとは…)

 

あの後、怯んだヴァジュラを置いてヘリに乗り込み無事に帰って来る事ができた。

 

(身体能力は規格外。

ここに、戦い方が加われば…)

 

 

「報告行って、酒でも飲んで寝るかな」

 

 

 

 

 

 

 

 




2通目の感想を頂いたので、執筆をしてみました。
また、忘れられた頃に執筆するかもしれません。すいません。

批判は軽めでお願いします

4/1 名前の修正 : 静雄→シズオ

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