ルーアンの、のどかな漣が打ち付ける海岸沿いの道を一人の少女が走っていた
「はぁはぁ」
その少女は今現在、凶悪で大きな狼の様な魔獣に追い詰められようとしていた。
「はぁはぁ!そ…そんな…」
とうとう袋小路まで追い詰められ顔色は絶望に染まりその場に座り込んでしまった。
グゥルルル
当然魔獣に情けなどなく一歩また一歩とこちらに狙いを定め徐々に距離を詰めて来た。
「…申し訳ありません、お父様、お母様、お祖母様、…テレサ先生」
死を覚悟し目をつむり空の女神に祈りを捧げた。
しかし一行に身体に激痛がこない、死んでしまったかと思い目を開けると
「……」
体格のいい黒髪の男性が魔獣を片手で押さえていた。
「ぁ…あぁ」
「…怪我はないか?」
これは空の女神の起こした奇跡なのだろうか…
「犬畜生ごときが!」
「!?」
魔獣自信も突如現れた男に困惑の色を隠す事ができなかった。
「切り裂け、南斗水鳥拳奥義!千塵岩破斬‼︎」
魔獣は男性が手を振るうと一瞬にして身体中が細切れまで切断され、一瞬にして辺りは静寂に包まれた。
「あっ、あの…ありがとうございました、危ないとこを助けて頂きまして」
「フッ、怪我がなさそうで何よりだ」
男性が差し出してくれた手を掴み立ち上がった、
先ほどまで魔獣を切り裂いた冷血な印象の手だと思っていたが、優しく温かい大きな手であった。
すると遊撃士らしき人とテレサ先生が走って来た。
「クローゼ‼︎無事でしたか、…よかった何事にもなくて」
女性はクローゼの安全を確認し抱きしめた。
その後話を聞くと早朝ごろに手配魔獣が出現したそうだが、ルーアンから孤児院に連絡が行っていなかったようでマリアナにお使いに行ったクローゼを遊撃士と共に捜索していたそうだ、私は襲われた事を話し、そして助けられた事も話した。
「…そうですか、あなたに危ないところを助けて頂いたのですか…クローゼの保護者の代わりとしてお礼をさせて頂きます、助けて頂きありがとうございました」
「…そうか」
保護者の代わりか…聞くのも野暮だろう。
それだけ言い俺は次の町ルーアンを目指して歩きだした。
「あの!私はクローゼと申します、あなたのお名前を教えて下さい!」
一旦足を止め「レイだ」それだけ言いまた歩き出した。
「…レイさん」
少女の胸の中にレイと言う男の名前と今日の出来事が深く胸の中に刻まれた。
◇◆◇◆
「…クローゼか、いい目をしていたな」
レイの記憶にも一人の少女の名が刻まれたようだった。
はい、今回はクローゼとのフラグを立ててみました。
レイは男前ですからねー(作者の主観です)これから幾つかフラグを立てるかもしれませんねーこの旗男。