アイクの異世界旅行記   作:よもぎだんご

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こうして|客人《やっかいもの》は警備員《グレイル傭兵団》となった。

「客人」の事情聴取には局長マデリーンと助手の私、護衛にカーネル中尉が選ばれた。

 行きたいとは言ったけど、正直行けるとは思わなかった。そんなに行きたそうな顔をしていただろうか。声を大にしては否定できない。

 

「おい、あの話は本当か」

「ああ、本当らしい。今日の会議で決まるそうだ」

「かわいそうだなあ。なんとかならんのか」

「しっ、滅多なことを言うんじゃねえ。この計画には連邦軍のお偉方が関わってるんだ。消されちまうぞ」

「でもよ、まだ俺の娘と同じ位の年なのにかわいそうじゃねえか」

「今日の会議で決まること次第だからな」

 

 マデリーン達と歩いていくと、廊下の端で男の職員たちが何か話していた。

 彼らの話はたぶん『客人』についての話だろう。彼らの所に向かったゼーベス星人の末路を知らないんだろうか。『侵入者』は『客人』になったから、大丈夫だ、と教えてやるべきだろうか。

 まあいい。そのうち誰かから聞くだろう。

 

 客人の部屋に入った私たちを迎えたのは艶のある低音だった。

 声の主はぼさぼさの蒼い髪に緑のはちまきをしていた。端整な顔立ちに蒼い目。

 赤いマントと黒い服を着て、青い金属鎧を片腕と胸と肩に付けて、白いズボンを履いている。背中からは剣の柄が覗いている。う~ん、クラシックだ。

 

「あんたらがこの牧場の責任者か」

 

 牧場とは言いえて妙だ。確かにここは人間の役に立つ生物を飼うという意味で牧場だ。なかなか洒落と皮肉が効いていていい。でも礼儀がなってない。

 

「人のことを聞くなら、自分から名乗るべきじゃないかしら」

「ちょ、ちょっとメリッサ」

 

 あ、しまった。つい・・・。マデリーン達も青い顔している。いや、青い顔しながらやれやれと呆れている。そ、そんな顔しないでマデリーン。

 

「そうだな。すまなかった。俺はアイク。グレイル傭兵団の団長だ。」

 

 そういって彼は、アイクは頭を下げた。

 傭兵団、それはつまり賞金稼ぎの集団ということだ。賞金稼ぎならば大金を払えば、ここのことを黙っていてくれる可能性が高い

 でも、目の前の彼は賞金稼ぎの団長なのに不思議と荒っぽい雰囲気が無かった。とても意外だ。

 

「私はマデリーン・バーグマン。ここの責任者です。こっちが助手のメリッサ、あっちは護衛の・・・カーネルです。その、先程は助手が失礼なことを言ってしまい申し訳ありませんでした」

 

 私たちも頭を下げた。

 

「いや、礼儀が無かったのは俺の方だから、謝るのはこっちだろう」

「そう言ってもらえると助かります。それでは本題に入りますが、あなたたちはどうしてここへ」

「俺たちは旅の途中なんだが、食糧も路銀も少なくなって来たのでな。雇い先を探している。このあたりに良い雇い先はないか」

「それはつまり雇ってくれってこと?」

「このあたりもさっきの賊のような輩がいて物騒だしな。俺たちは自分で言うのもなんだが腕は立つ。雇っておいて損はないぞ。もしくは他の誰かを紹介してくれてもいい」

 

 そう言うとアイクはじっとマデリーンを見つめた。彼の青い瞳に射抜かれてマデリーンが硬直する。マデリーンは絞り出すように答えた。

 

「そうですか。貴方の言いたいことは分かりました。少し時間をもらってもいいでしょうか」

「ああ」

 

 私たちは扉の前にカーネル中尉を残し、アイク達の部屋を出て二つ隣のナビゲーションルームに入った。

 マデリーンが機械を操作し幹部たちのいる会議室につなげる。ほどなく会議室の映像が映った。さっきまで震えていたマデリーンだが今はきりっとした顔をしている。局長も大変ね。

 

「どうやら、ここがどこだか分かっていて侵入したみたいね」

 

 やっぱりか、という重苦しい空気が会議室に広がる。

 

「間違いないのか」

「間違いないわ。彼らいわくここは牧場だそうよ」

「で、『客人』の正体と目的はなんだった」

「彼らの正体はグレイル傭兵団。団長は青髪の男で、アイクっていうみたい。フリーのバウンティーハンターで、彼らの要求は自分達の好待遇での雇用または雇用先の紹介」

 

 彼らの正体と要求を聞いて、幹部たちは明らかに安堵していた。まあ、ここには潤沢な資金があるので臨時雇用の10人や20人、訳はない。

 

「では、彼らのここまでの行動は」

「ええ、十中八九、自分たちの力を示すためのデモンストレーション。ただの営業活動」

 

 物騒な営業もあったものだ。いや、ここの研究も十二分に物騒だが。

 

「なるほどな。彼らの能力は目を見張るものがあるが、ぱっと見では懐古趣味の色物集団にしか見えんからな」

「じゃ、彼らに採用通知をだしていいかしら」

「そんな素性のわからん奴を雇うのは、承服しかねる。反対だ」

「おい、何言ってんだ。あいつらはこんな地図にも載ってない辺境のステーションを見つけ出して、警備を出し抜いて侵入した挙句、あのエリートパイレーツ部隊を倒しちまうんだぞ」

「だからなんだ。奴らが裏切らない保証がどこにある。怪しい奴を雇うのはだな」

 

 いつまでも愚かなことを言っている男にいらいらした私は割って入った。

 

「今ここで雇わなければ彼らはボトルシップを簡単に脱出して、ここの映像と情報をばらまくでしょうね。スペースパイレーツのクローン部隊を銀河連邦軍が作っていたなんて、大スキャンダルになるわ。連邦軍のお偉い様はすぐさまここを吹き飛ばすはずよ。当然よね、もっとやばいのがいるんだから。逃げたとしても、口封じのために一生暗殺者や特殊部隊に狙われ続けるわ。分かった? 私たちに彼らを雇わないっていう選択肢は無いのよ」

「ぬ、ぬう・・・」

 

 ぐうの音も出ないほど、言い負かしてやってすっきりした私はくるっとマデリーンの方に振り返った。

 でも、マデリーンは険しい顔をしてこっちを見るだけだった。

 別に褒めて欲しかった訳じゃないけど、そんな顔をされる理由が分からない。

 

「ま、まあ、ここでは危険な生物も飼われているし。ゼーベス星人より強いなら十分よ。ゼーベス星人より細かい指示も出せるし。彼ら採用決定でいいかしら」

 

 マデリーンの確認に幹部たちが頷く。

 

警備員『グレイル傭兵団』、まあまあの響きね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




サムスが遠い。

祝日だし連続投稿しようか、ストックしとこうか迷っている。

どうしたものか……

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