緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

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~第四章・『灰被りの捜索者』 うーむ、これからどうしようか? (配点:茶店)~

 灰色だった。

 空は灰色に曇り、時折雷光が雲を照らす。

 地面には灰色の層が出来上がり、河はねずみ色に濁る。

 地響きだ。

 大地を揺らす振動と共に、遠くに見える大きな島が爆発した。

紅い溶岩を噴出し、マグマの河は大地を焼き尽くし海に流れて行き急激に冷やされた溶岩が黒色に変化している。

 そんな島の様子を一人の男は丘から見ていた。

 緑色のレインコートを着た男は双眼鏡を懐にしまい首を横に振る。

「やれやれ、思った以上に噴火が激しいな。これでは近づく事も出来ないか」

 そう言うと男━━カシウス・ブライトはコートに積もった灰を手で払う。

 噴火を起こしている島の周囲には多数の航空艦がおり、島を囲むように旋回している。

さらに海岸沿いには重装備の兵たちが集まり、海路から島へ近づく事もできない。

━━やや、警備が厳重すぎるな……。

 災害救助の為と言うよりはまるで島を封鎖しているかのようだ。

 この噴火、ただの自然災害ではないという事か……。

 ともかくここに居てもしょうがない。

取り敢えずは内城を目指し、そこにある遊撃士協会英国支部に顔を出すとしよう。

そう決断するとカシウスは踵を返し、灰色の丘を下って行くのであった。

 

***

 

 英国本拠地である内城へ向かう街道。

 この街道には多くの宿場があり、普段であれば多くの人々が行き来していた。

だが桜島が噴火すると街道の人通りは無くなり、殆どの宿場は閉じてしまっている。

 内城に行く前にどこかで休憩しようと思ったものの宿場も茶店も閉じてしまっていたため、さてどうしようかと悩んでいると街道から少し離れた所で小さな飯屋を発見した。

 英国では珍しい和風の店構えに興味を持ち入ると店内には多くの客が居た。

「いらっしゃいませ」

 店主の老婆に声を掛けられレインコートを脱ぐと笑みを浮かべる。

「盛況ですな」

「何時もは閑古鳥が鳴いたように空いているんですけどねえ。今日はほら、表の店が全部休んじまったから」

 人の良さそうな老婆は奥の席に此方を案内し、カシウスは角の小さなテーブル席に着く。

 そして暫く待つと老婆が紙のメニューを持って来た。

「ほう、紙製のメニューですか?」

「ええ、最近は表示枠とかでやってる所が多いですけどね。私は機械音痴ですから」

 そう言い頭を下げると老婆は別の席に向かう。

━━雰囲気の良い方だ。

 個人的には派手な店よりもこういった質素で落ち着いた雰囲気の店のほうが好きである。

 紙のメニューに目を通すと様々な和菓子が書かれておりどれにするか悩む。

━━まだまだ知らない和菓子が多いな。

 ゼムリア出身の身としてこの世界の食べ物、特に極東の食べ物は大変興味深い。

 此方の世界にも東方の食べ物は多くあるがやはりリベールやクロスベルの居ると食べる機会は少ない。

「ふむ……、アリオス君のお土産は何か和菓子にするか」

 先日アリオスにお土産は何が良いか聞いたところ彼は「なんでもいいです」と答えた。

 その為何を買うのか悩んでいたのだが、よし、九州の名物和菓子か何かを買うとしよう。

 取り合えず今はお勧め欄に書いてある“紫芋ようかん”にしようと思い、店主を呼ぶと店の入り口側が騒がしい事に気がついた。

 椅子から立ち上がって見てみれば入り口側のカウンター席に粗暴そうな男達が集まっている。

「……トラブルか?」

 

***

 

「あ!? もういっぺん言ってみろや!!」

 店の入り口側に立つ屈強な体つきの男が顔を赤くし叫ぶ。

 彼の周囲に居た男達も皆眉を逆立て同じように顔を赤くしている。

 そんな怒声を放つ男達の中心に一人の少女が居た。

 赤く長い髪を持ち、旅用のローブを身に纏った少女は自分よりも遥かに大きい男達に囲まれながらも不敵な笑みを浮かべ、団子を頬張っている。

「テ、テメエ、さっきからへらへらしやがって!! なめてんのか!?」

 男達の表情はどんどん険しくなって行き、少女へ詰め寄って行く。

だがそんな状況で誰も少女を助けようとしなかった。

その理由は男達の服に付いているマークだ。

 青い二頭の鮫が描かれたマークを男達は服の肩につけており、何人かは帯刀している。

「俺たちを<<蒼鮫団>>だって知ってて喧嘩売ってんのか!?」

 そう男の一人が詰め寄ると少女は漸く表情を変えた。

 眉を下げ、半目になり大きく溜息を吐く。

「鮫だか、鮭だか知らんが店では静かにせんか、小童共」

 沈黙。

 怒声は止み、場を静寂が支配すると危険を察した何人かの客が店の奥や外に退避する。

 先ほどまで詰め寄っていた男の顔はみるみる赤くなってゆき今にも爆発しそうな爆弾その物となっている。

これ以上の刺激は駄目だ。

そう誰もが思っていると赤の少女は口元を押さえ噴出す。

「それにしても、随分と下手な鮫じゃのう」

 直後、爆発した。

 男は拳を振り上げ少女の小さな頭蓋を砕こうとする。

そして力いっぱい振り下ろされた瞬間、突如その拳は止められた。

「そこまでだ」

 突然の事に男達は驚愕し、振り返ると口ひげを生やした中年の男が男の腕を掴んでいる。

「な、なんだ!? てめえは!?」

「何事かは知らんが子供を相手に暴力は感心しないな」

 そう言われた男は激昂し、左腕で男の顔を殴ろうとするがそれよりも速く、宙に浮いていた。

「は?」

 突然の事に誰もが反応できなかった。

 腕を掴まれていた男はいつの間にかに宙を舞っており、背中から床に落下する。

 そんな様子に皆が呆然としている中、中年の男は少女の方を見る。

「それで? これは何事かな?」

「…………ほう。これは中々」

 少女は暫く中年の男を見ると頷く。

「いやなに、この小童共が突然店に入ってきてな、店主が満席だと言っておるのに聞かず駄々をこねるからちょいと注意してやったのだ」

「なるほど、それで逆上か」

 そう中年の男が言うと、先ほど投げ飛ばされた男が立ち上がりその赤い顔を更に赤くさせ怒鳴り声を上げた。

「テメエら!! 表出ろや!!」

 

***

 

 店の表に出ると男と少女はあっと言う間に二十人の男達に囲まれた。

 男達は皆武器を所持しており、下品な笑いを浮かべ獲物を眺めている。

 そんな中で中年の男と少女は平静であり、少女が背筋を伸ばす。

「小僧、名は?」

「…………ん? 小僧というのは俺の事か?」

「お主以外に誰がおる。で、名は何と言う?」

 「この年で小僧と言われるとは思わなかったな」と中年の男は苦笑すると店に立てかけてあった自分の体より少し長い木材を手に持つ。

「カシウス・ブライトだ。お嬢さん、君の名前は?」

 少女は暫く悩むと頷き、笑みを浮かべる。

「<<紅(あか)>>と呼ぶがいい」

「て、てめえら!! どこまでも俺たちをコケにしやっがって!! 猟兵団<<蒼鮫団>>の恐ろしさ!! 教えてやらあ!!」

 リーダーらしき男の一声で部下達が一声に武器を構える。

そんな相手の様子を冷静に窺いながらカシウスが呟いた。

「ふむ。そこまで練度は高くないな」

「ならば、小僧。先陣は任せる。好きにやれ」

 <<紅>>の言葉に「ん?」とカシウスは振り返る。

「君も戦うのかね?」

「当然。この程度の奴等、我の敵では無いがお主の力を見たくなった」

 そう胸を張る<<紅>>にカシウスは苦笑すると木材を構え、前に出る。

「さて、お前たち最初に言っておく。

━━怪我をしたくなかったら下がってろ」

 その言葉と共に戦闘は開始された。

 

***

 

 カシウスは戦闘が開始されるのと同時に自分に向かってくる敵を確認した。

 数は八人。

 何れも人間であり三人が槍を四人が剣を持ち、最後の一人が導力式の拳銃を持っている。

敵は槍を持った三人が突撃を仕掛け、残りの四人が回りこんでくる。

咄嗟に相手を包囲したところを見ると先ほどは練度は高くないと評価したが、それなりに出来るようだ。

━━ふむ、あの少女は無事だろうか?

 振り返り見てみれば残りの十二人を相手に少女は戯れるように攻撃を避けていた。

「…………相当の実力者だな」

 最初に会ったときからあの少女には全く隙が無かった。

 かなりの訓練を受けた者、いや、達人級かもしれない。

ともかくあちらが大丈夫と分かったのなら……。

「まずは一手。危険な敵から潰させてもらう!」

 駆けた。

 一歩目の踏み込みで槍を持った敵を抜け、二歩目の踏み込みで銃を構えたまま驚愕の表情を浮かべた敵の眼前へ。

そして三歩目と同時に木材を突き出し敵の胸を穿つと敵は凄まじい勢いで吹き飛び地面に叩き付けられた。

 ほんの一瞬の事に敵は皆固まり、驚愕の表情を浮かべている。

 それに笑みを浮かべ振り返ると踏み込んだ。

 今度は槍を持った三人の中へ。

 敵は即座に槍を振ろうとするが味方に当たる事を恐れ、動きが鈍る。

その隙を突き……。

「突撃の陣形は良かったが、密集しすぎだな……!!」

 至近の敵の顎を下から穿った。

 男の巨体が宙に舞い、それに敵が気を取られているうちに上体を捻り木材をスィングする。

 呆気に取られていた二人目の男は側頭部に打撃を喰らい、白目を剥いて倒れた。

 即座に三人目を狙うが三人目の男は手に持っていた槍を此方に投げつける。

「む!?」

 投げつけられた槍を木材を縦にし弾く間に敵は懐のナイフを取り出し距離を詰めてくる。

━━いい判断だ!!

 至近距離では長物よりも短いナイフや刀の方が有利。

それを理解していての行動だろう。

 ナイフを構え突撃してくる敵に対して自分は木材を地面につき立て防御が出来ない。

ならば……飛ぶのみ!!

 木材を地面につき立てたまま跳躍し空中で逆立ちするとそのまま敵の背後へ着地。

そして振り替えようとする敵の首に手刀を入れ、気絶させる。

 乱れた髪を手櫛で戻すと残りの四人、剣を持ち遠巻きに此方を見ていた連中に笑みを送る。

「さて、次は誰かな?」

 

***

 

━━ほう、やはりあの小僧、出来る。

 連続して放たれる攻撃をどれも寸前の所で避けながら<<紅>>はカシウスの戦いを見ていた。

 流水の如く柔軟な動き、烈火の如き攻め。

あの男、人間の中では相当の、いや、この世界でも最上位の一人だろう。

「呵呵!! これは良い拾い物をしたかも知れんぞ!」

 あの男、恐らく何らかの国や組織に務めている者。

それもあれだけの実力があればかなり上位の役職者だろう。

この男について行けば自分の目的にも近づけるかもしれない。

 あとで茶でも奢り味方にするとしよう。

「そうと決めれば!!」

 一直線に突き出された刀を中指と人差し指で挟み受け止めると刀をへし折った。

そして大きく後方へ跳躍すると先ほどの茶店の屋根に着地する。

「に、逃げる気か!!」

「逃げるじゃと? 誰に言っておるのだ戯け」

 下に集まってきた男達に笑みを送ると腰に手を当てる。

「一つ聞くぞ? 降参する気は?」

「ど、どこまでも俺たちをコケにしやがって!! 降りて来い!! 酷い目に合わせてやる!!」

「……具体的に?」

「…………え? えーっと?」

 リーダー格の男は目を丸くすると冷や汗を掻き、暫く目を泳がせる。

「裸にひん剥いてR-元服なことするとか?」

「……何を顔をそんなに赤らめとるんじゃ。さてはお主、どうて……」

「ぶっ殺すぞ!! 餓鬼!!」

 激昂する男を見下しながら「どうやら誰も降参する気がないようじゃな」と頷くと口元に笑みを浮かべる。

 それは先ほどまでの楽しげな笑みとは違い、酷く冷酷な、加虐的な笑みであった。

「それでは行くぞ? 小童共!!」

 跳躍した。

 一気に十メートルを超える跳躍をすると背中から炎の翼を出し、落下と同時に加速。

そして突き出し、男達の中央を狙う。

「我様!! すーぱぁーきーっくぅ!!」

 落下してくる少女を見上げ男達は一斉に声を揃えた。

「「ローブの下、下着だけだと!?」」

 直後少女の蹴りが男達の中心の地面を直撃し、周囲の物が一斉に吹き飛んだ。

 大地は砕け、積もった灰は舞い上がり、近隣の店の窓が割れ、十二の男達が吹き飛び星となる。

 そんな惨事の爆心地で少女は笑みを浮かべカシウスにピースをするのであった。

 

***

 

「……おいおい」

 達人級と先ほどあの少女の事を判断したがこれは達人級どころではない。

先ほどのキックの破壊力、もう人間の域を超え怪物の領域だ。

 仲間が皆吹き飛ぶのを見て残りの猟兵達も一斉に蜘蛛の子を散らすように逃げ出し後には少女と自分と、地面でのびている敵だけが残った。

 予想外の事に少し呆然としていると<<紅>>は倒れている男の懐を弄り、金貨の入った小袋を取り出す。

「ほほう、それなりに稼いでいたようじゃな。僥倖僥倖」

「こら、何をしてるんだ」

 <<紅>>の頭を小突くと彼女は「えー」と頬を膨らませる。

「悪党の金は我の物じゃ。ちなみに我の物は我の物」

 そう胸を張る<<紅>>に溜息を吐くと表情を正し、この小さくも絶大な存在感を放つ少女と相対する。

「<<紅>>、お前は何者だ?」

 そう問うと彼女は挑戦的な笑みを浮かべ、倒れている男を踏みつけた。

「我は<<紅>>。それ以上でもそれ以下でも無い。今はな。

小僧、お主が我の思うとおりの人物であるなら何れ明かそうぞ」

 そう言い、彼女は金貨の入った小袋をローブのポケットに入れるのであった。

 

***

 

 肥後国。

熊本城から二キロ離れた所に英国の航空艦隊は撤退の準備を行っていた。

 当初の予定では熊本城に張り付き三征西班牙の主力を引き付け、その間に別働隊が三征西班牙の首都である府内を強襲する予定であったが桜島が噴火した事により事態は一変。

英国は全戦力を国内に戻す事になった。

 英国艦隊の後方に居るスカーレットデビル号も撤退の準備を進めており、陸上戦士団の回収作業を他の艦と共に手伝っている。

 そんなスカーレットデビル号の艦橋でレミリア・スカーレットはつまらなさそうに艦長席に腰掛け、流体表示枠から見える損傷した艦首を見ている。

「お嬢様、撤収作業はほぼ完了しました。午後三時頃から全艦撤退を開始する予定です」

 隣りに立つ己の従者━━十六夜咲夜の報告を興味無さ気に聞くとレミリアは大きな欠伸をする。

「せっかく大暴れできると思ったのに。ベスの奴、火山の噴火ぐらいで大袈裟過ぎよ」

「……確かに全艦隊を戻すのは大袈裟。ですが、あの女王陛下が無意味にこのような命令をするとは思えません」

「……何か他の理由があるって事?」

 そう訊くと咲夜は首を横に振る。

「私には分かりません。取り合えず戻ったらお聞きになるべきでしょう」

 今回の噴火、確かに妙なのだ。

 この世界の桜島は休火山であり噴火の心配は無いとされていた。

それが突然の大噴火。そしてそれと共に英国国内で怪魔が出没するようになった。

━━まるで崩落富士ね。

 ベスもそれを警戒しているのだろうか?

 ともかく今はさっさと戻る事を考えよう。

 そう考えていると突如警報が鳴り響いた。

「なに!?」

「前方より高速で接近する物体あり!! これは……機竜です!!」

 表示枠に望遠映像が映し出され、赤の機竜が現われた。

 

***

 

 青い空を赤い鋼の竜が切り裂いていた。

 赤の機竜は高速で飛行し、轟音と共に大気を振動させる。

 竜が狙うのは英国艦隊の最前列にいる小型のガレー船だ。

船は三征西班牙の方面を警戒していたため突然現われた機竜に反応が遅れ、慌てて回頭を行っている。

 砲撃が来た。

 回頭中のガレー船を守るべく、英国艦隊が砲撃を放ち機竜を迎撃しようとするが赤の機竜は突撃を止めない。

 装甲で弾ける実体弾はそのまま当たり、流体砲撃は機体を斜めにずらす事によって回避を行う。

そして翼を更に大きく広げると加速し、回頭中のガレー船の側面に入り━━激突した。

 大質量の体当たりを側面から受けたガレー船はその船体をくの字に曲げ、装甲は砕け、フレームはへし折れ、破砕と破断の音を重ね鳴らしながら二つに分かれた。

 千切れ墜ちて行く船を確認もせず赤の機竜はそのまま一気に離脱して行き、あっと言う間に英国艦隊の射程圏外へ逃れていった。

 

***

 

「やってくれたわね!!」

 警報鳴り響く艦橋の中でレミリアは眉を顰め苛立たし気に翼をバタつかせる。

「今のは龍造寺の……」

「ええ、噂に聞く龍造寺家の“大気不足”」

 もともとはM.H.R.R.所属の機竜であったが搭乗者の鍋島・直茂が龍造寺家に戻った事によって龍造寺の所属となった機体だ。

最新鋭どころか規格外の性能を持つ機体であり戦艦クラスの戦力を持つ。

 統合争乱以降龍造寺には目立った動きは無かったがここで動くか……!!

 あの機竜が来ているという事はおそらく龍造寺の陸上戦士団も来ている筈だ。

━━九州最後の最大勢力が動いたのね!

 となるとこの撤退戦、かなり厳しいものになるかもしれない。

「ドレイクに連絡よ。此方も直ぐに動きましょう」

 そう言うと船員たちが一斉に動き始めるのであった。

 

***

 

熊本城から北の方角にある山の麓に二千を超える軍勢が布陣していた。

日足旗の下に集まった軍勢は皆軽装であり、新型の機殻剣や長銃を装備している。

 そんな軍勢の中心に一人の男が居た。

 男は単眼鏡を覗き、英国の船を砕いた機竜を見る。

「襲名者殿は張り切っているな」

 そう言うと男は笑みを浮かべ単眼鏡を懐にしまう。

「直茂様、準備が整いました」

 兵士の言葉に男━━鍋島直茂は満足そうに頷くと表示枠を開く。

「襲名者殿、もう一度お願いできるかな?」

『Tes.、 三征西班牙の方はどうするの?』

「あちらは放っておいて大丈夫だろう。今回はあくまで顔見せ、ぱっぱっと戦果を上げたら帰るぞ」

『了解、そんじゃ行って来るわ』

 上空で機竜が旋回し再び英国艦隊に突撃したのを確認すると直茂は軍配を振り上げる。

「では、全軍。さくっと戦果を上げて熊殿に報告するとしよう!!」

 そう宣言し、軍配を振り下ろすと同時に龍造寺家強襲部隊約二千が一斉に突撃を開始し始めた。

 一月七日の午後一時。

 九州での争いに龍造寺家が加わるのであった。




薩摩に向かったカシウスの話と肥後の戦いの話です。

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