緋想戦記Ⅱ   作:う゛ぇのむ 乙型

6 / 63
第一部・関東騒乱編
~第一章・『青空の訓練者達』 はいはーい、皆、しゅうごーう (配点:新生梅組)~


 一月も七日が経つと年末の忙しさも大分無くなり人々はゆったりとした正月休みを楽しむようになっていた。

 ここ駿府でもクリスマス前から始まった織田との戦いが一段落し、国境を越えて布陣している北条や難民を何処に住まわせるかなど問題はまだまだ山済みではあるが取り合えずの休息を得ていた。

 そんな中、駿府城と北側の陸港の間にある草原に集まっている若者達が居た。

 二十人ほどの彼らは殆どが極東の制服を身に纏っていたがごく一部は冬用の私服を身に纏っている。

「はいはーい、ちゅうもーく!」

 若者達の中心に居たジャージ姿の女性が手を叩き、注目を集める。

「最近いろいろあってみんな思う事があるでしょうけど、こういう時ほど初心にかえるのが大事よ。

だから、今日は梅組合同訓練といきましょうか」

 ジャージ姿の女性━━オリオトライ・真喜子はそう言うと表示枠を開く。

「今から二つのグループに分かれて戦ってもらうわ。それぞれの大将はトーリとホライゾン。

それで残りの振り分けだけど……」

 オリオトライが全員の表示枠に振り分け表を送り、皆が一斉にそれを確認する。

 その振り分け表にはこう書かれていた。

 

<<トーリ軍>>             <<ホライゾン軍>>

葵・トーリ              ホライゾン・アリアダスト

浅間・智               “曳馬”

ネイト・ミトツダイラ         葵・喜美

立花・宗茂              魂魄妖夢

ノリキ                立花・誾

点蔵・クロスユナイト         メアリ

ウルキアガ              伊達・成実

アデーレ・バルフェット        トゥーサン・ネシンバラ

マルゴット・ナイト          マルガ・ナルゼ

本多・二代              直政

ハッサン・フルフジ          伊藤・健児

ペルソナ君              ネンジ

アリス・マーガトロイド        霧雨魔理沙

比那名居天子             永江衣玖

 

「ふむ、均等に振り分けられているで御座るな。ところで数名参加して無いようで御座るが?」

 そう訊いて来た忍者にオリオトライは頷く。

「正純は家康さん達との会議で欠席、シロジロとハイディは商工会がらみ、それで御広敷は前回の戦いで青梅の農耕地区が損傷したからその関係で。

あと東やミリアム、鈴は不参加ね。しょうがないけど」

 成程と皆が頷くとオリオトライは表示枠を閉じる。

「それじゃあ、出席確認も終わった事だしルールを説明するわね。

ルールは簡単、どんな方法でも敵のチームの大将を倒せば勝ち。

ただし大将を攻撃するには必ず何処かで一勝をしてなきゃいけない。つまり相対戦で誰かに勝たなきゃいけない。

ちなみに大将同士なら一勝を得て無くても戦えるけどその場合大将を守るという名目で各チーム一名だけ援軍を送れる」

 「先生」と手を上げたのは黒く長い髪を後ろで結った少女だ。

「一勝を得て、大将に挑んだ場合も援軍は可能なので御座るか?」

「Jud.、 でも援軍を送るって事は前線に穴が出来るって事だからね?

そこらへん、注意するように」

 オリオトライは「他に何か質問は?」と皆を見渡し、誰も質問が無い事を確認すると頷いた。

「よし、じゃあ各員、持ち場に着くように!」

 

***

 

駿府城の北側にある航空艦用の陸港。

そこで武蔵は修復を受けていた。

 この陸港は去年から急造された物であり、まだ資材を置く倉庫地区などは建設途中である。

その為武蔵や岡崎から撤退してきた艦隊を修復するための資材は地面に並べて置かれておりブルーシートによって覆われていた。

時折作業用の軽武神が資材を運び出し徳川艦隊の停泊地に向かって行く。

 そんな様子を武蔵野艦橋から酒井・忠次と“武蔵”が見ていた。

「いやあ、それにしてもコレだけの陸港を一年以内に作り上げるなんて、直政さんは凄いねえ」

「Jud.、 井伊直政といえば赤備えを率いる勇将として有名ですが築城に関しても優秀な方と記録されております━━以上」

「梅組の直政が機関部なのもそこら辺が理由?」

「それは分かりませんが襲名者は出来る限り襲名元の技術や生き様を倣うのが普通です━━以上」

 “武蔵”の言葉に忠次は頷く。

「ダっちゃんも無茶苦茶だったけど、こっちの忠勝さんも無茶苦茶だからねえ。

まさか鬼の四天王相手に正面からぶつかって勝っちゃうんだもんね」

「Jud.、 そうなると酒井様はおかしいという事になりますね━━以上」

「あー、ほら、俺はあれだよ。不良だから」

「その年で不良ですか━━以上」

 “武蔵”に半目を送られて忠次は苦笑する。

「そういえば修復の件、どの位掛かりそう?」

「話を逸らしましたね。

修復の件ですが品川が特に損傷が酷い為、修復と共に大規模な改築を予定しております。

その為『武蔵』として航行可能なのは一ヶ月ほど先になると判断しております━━以上」

 品川以外にも武蔵のほぼ全艦が損傷したため修復と共に改築が予定されている。

 その主な内容は装甲の強化であり、更に今後の戦闘の事を考え武装案も出ている。

「もし武蔵さんが武装したらどういう名称になるのかねえ?」

「本艦が武装した場合戦艦と言うより要塞のようになると判断しますので、準バハムート級要塞艦武蔵、でしょうか?━━以上」

「ネシンバラの奴がはしゃぎそうな響きだねえ」

 そう笑うと“武蔵”は目を伏せ頷く。

 そして平原の方を見ると梅組の連中が二つに分かれていた。

「お? 始まるみたいだよ。梅組もいつの間にかメンバーが増えて賑やかになったもんだ」

 そう言うと同時に照明弾が上げられ、両チームが一斉に動き始めた。

 

***

 

 先陣を切ったのはマルゴットだった。

 機殻箒に跨りスタートダッシュと共に上昇したマルゴットは空からホライゾンチームの動きを見る。

 ホライゾンチームのメンバーの位置を表示枠で味方に送ると上空を一回旋回し周囲を警戒する。

「索敵は戦闘の基礎だよねー。まあ向こうもやってるみたいだけど」

 遠く、東の方の空にナルゼが自分と同じように旋回しているのが見える。

 さて、そろそろ仕掛けるか?

そう思った瞬間、下から流体のミサイルが迫ってきた。

「おおっ!?」

 即座に加速し、ミサイルを振り切ると反転、攻撃が放たれた方向に硬貨弾を打ち込むと黒い影が此方を中心にして旋回する。

 その影が目で追いながら笑みを浮かべる。

「いきなり来ちゃう!? マリマリ!!」

 黒い影は此方の後方で止まり、手を振る。

「あったり前、戦いは先手必勝だぜ! それに同じ黒魔女、機殻箒の先輩に色々とご教授願いたいからな!」

「オッケー!! じゃあ、行くよ!!」

 上体を後ろへ逸らすと同時に加速し、空中でバク転をする。

そして一気に魔理沙の背後に出ると仮想照準で彼女を狙う。

「Herrlich!!」

 三連続の射撃を叩き込んだ。

 

***

 

「あら?」

 西のほうでマルゴットと魔理沙が相対を始めたのをマルガ・ナルゼは見た。

「いきなりNTRとはやってくれるじゃないの。あのだぜっ子魔女」

 マルゴットと訓練をしようかと思っていたがどうやら先を越された。

━━どうしようかしら?

 向こうのチームで対空戦闘が可能なのはマルゴットと半竜だが、半竜の姿は無い。

どうやら何処かで捉まったようだ。

なら自分は……。

「対地攻撃かしら?」

 そう思っていると突如地上から射撃が放たれた。

それを加速で避けると地上を確認する。

「あら、あんたが私の相手?」

『ええ、そうなるわね』

 此処から十メートルほど西側にアリスが立っていた。

彼女の横には長銃を構えた人形がおり、先ほどの射撃はあの人形によるものだろう。

どうやら彼女も相方を取られて敵を探していたらしい。

『どうするの? やるの? やらないの?』

 そう訊いて来る彼女の頷く。

━━やっぱり良いわね。彼女。

 喧しくなく、それなりに気が利く。

出来る女と言う奴だろう。

━━ええ、良いわね。同人誌なら攻めも受けも出来る逸材よ。

 実は既に彼女の本を二冊ほど描いた。

それなりに評判は良く三作目を現在予定している。

「ええ、やりましょうか」

 二度旋回し、一気に急降下を行う。

 敵の獲物は人形の持つ狙撃銃。

どうやら対物用の大口径の物だが、あれ、訓練用弾でも当たったら死ぬほど痛いのではないだろうか?

 加速する風景の先、人形が弾を詰め終わり此方を狙う。

━━来る!!

 そう判断すると同時に体を横に倒し、放たれた銃弾を避ける。

━━貰ったわ!

 アレは単発式の狙撃銃。

敵の次の攻撃は間に合わない。

 そう判断し仮想照準で狙うとアリスが口元に笑みを浮かべている事に気が付いた。

『これでも頭脳派として売っているのよね』

 アリスが右手を上げると同時に彼女の周囲の平原が盛り上がった。

否、平原が盛り上がったのではない。

無数の体に草を巻いた人形が現われたのだ。

「ギリースーツ!? あんた、そんなもん作っていたの!?」

『ええ、人形ゲリラ隊よ。越南人形なんてどうかしら? さあ、皆、一斉射撃!!』

 号令と共に人形達が一斉に銃撃を放った。

 

***

 

 点蔵は遠くで只ならぬ銃声音を聞いた。

━━派手にやってるで御座るなあ……。

 皆訓練用に術式の威力を軽減したり、武器を訓練用のものに変えているがこの外道共は仲間に向かって下手したら死にかねない事をやっている気がする。

━━まあ、それでも大丈夫という信用があるのは喜ぶべきか……。

 さて、それよりも自分の事だ。

自分は現在最強の敵と相対してしまった。

その敵は一撃で此方を無力化することが出来、かつ此方からは攻撃が出来ない。

まさに最強。

ああ、今もその笑顔で自分のHPはガリガリ削られているで御座るよ!

「あの、点蔵様? どうなさったのですか?」

 そう強敵━━メアリが首を傾げ訊いて来たので慌てて背筋を伸ばす。

「い、いや何でも無いで御座るよ!!」

「? そうですか。ところで訓練はしないのですか?」

 出来るわけ無いで御座るよ!?

 というか自分、相対戦したら一撃で負ける自信がある。

現に自分の戦意はもう尽きている。

━━し、しかし、ここで負けたらメアリ殿が大将を攻撃可能に……!!

 いや、メアリ殿が全裸を張り倒す光景が思い浮ばないのだが……。

「そ、そうだ! しりとりで勝負で御座るよ!」

「まあ、それは楽しそうですね。どうせですので思っている事をしりとりにしませんか?」

「Jud.、 構わないで御座るよ」

 「では」とメアリが息を吸う。

「好きですよ、点蔵様」

「ふぉーーーーー!?」

 お、落ち着けぇ! 落ち着くで御座るよ! 自分!!

「ま、マジで天使で御座るなあ、メアリ殿」

「長閑な日には二人でピクニックに行きたいですね」

・● 画:『いま物凄い勢いで検索ワードのトップに“あの忍者”が来たんだけど、あんた、なにしたの……?』

 表示枠を消し、冷や汗を掻く。

「ね、ね、ね……」

 今さらになって点蔵はしりとりで勝負すると行った事を後悔するのであった。

 

***

 

 立花・誾は実は今日の訓練を楽しみにしていた。

 宗茂様と堂々と相対できる数少ない機会。

今日は全力でぶつかってみよう。

そう思っていたのだが……。

「……なんで、私の相手が貴女なんですか! 本多・二代!!」

 正面、槍を地面に立てた本多・二代を指差すと彼女は首をかしげる。

「ふむ、拙者始まる前にちょっとイメージトレーニングをしていたらスタートダッシュに遅れ、コレはいかんで御座ると思い相手を探していたら誾殿を見つけたので御座るよ」

「な、なぜ私の所に来たのですか!? まだ相対戦が始まっていない人たちも居たでしょう!?」

「Jud.、 その理由は簡単で御座るよ」

「……何ですか?」

「拙者と誾殿は親友で御座るから!」

 思いっきり地団駄を踏んだ。

・立花嫁:『宗茂様、宗茂様!! この女、勝手に人の事親友発言してきましたよ!?』

・立花夫:『ははは、良かったですね誾さん。友達、増えたじゃないですか』

 此方にも選ぶ権利はあると思います! 宗茂様!!

━━く、落ち着きなさい! 立花・誾!!

 そうだ、寧ろ好都合ではないか?

 今この女は蜻蛉スペアにロックを掛けている。つまり割断や割打は出来ない。

なら!!

 格納用の二律空間から“十字砲火”を呼び出す。

「おお、本気で御座るな! 誾殿!!」

「Jud.、 ご安心を、当たっても痛くないので」

━━痛くないどころか一瞬で全て終わるので!!

 そう笑みを浮かべると同時に二代を狙った。

「“十字砲火”!!」

 直後、前方の平原が吹き飛んだ。

 

***

 

━━ノリノリですね、誾さん!

 遠くで生じた“十字砲火”の爆発を見てそう立花・宗茂は頷いた。

「……おい、あれはいいのか?」

 そう訊いて来たのは自分の相手、ノリキだ。

「Jud.、 誾さんも攻撃を非殺傷モードにしているでしょうし何よりも相手があの副長です。万が一という事は無いでしょう」

 「それにしても」とノリキの事を見る。

「貴方が来るとは」

「俺じゃ不服か?」

「いえ。ですが珍しいとは思いました」

 此方の言葉にノリキは頷く。

「今度武蔵が行くのは関東、小田原だ。あそこは俺にとっても因縁が深い。だから……な」

 そういえば彼は北条出身だ。

 今の状況に彼なりに思うところがあるらしい。

「成程、そう言うことでしたら……」

 槍を構えるとノリキも構える。

そしてほぼ同時に駆け出した。

 

***

 

 平原を駆け抜ける赤い影があった。

 伊達・成実だ。

 彼女は一直線に敵の本陣に向かい、ある敵を狙う。

それは……。

「浅間神社の巫女」

 自分のアルバイト先の上司だが彼女の狙撃能力は脅威だ。

 今は“曳馬”が彼女を引きつけており自分はその隙に接近、浅間・智を撃破後総長を潰す予定だ。

 迎撃は来ない。

 否、皆それぞれスタートと同時に動き始め相対戦を始めたため此方に気付いていても来れないのだ。

そうよっぽどスタートダッシュに遅れていない限り……。

『おおっと、ここからは行かせませんよー』

 居た。

 スタートダッシュに思いっきり遅れたのが。

青い機動殻を身に纏った従士殿は此方に向かって手を振っている。

「……はあ」

 目が合ってしまった以上無視は出来ないのだろう。多分。

━━まあいいわ、速攻で潰しましょう。

 即座に二本の顎剣を取り出し投擲。

機動殻の首に叩き込むが……。

『あ、あいたぁー!?』

 弾かれた。

 流石の防御力。関節部を狙っても駄目か。

『い、いきなりですねー!! いいですよ! 負けませんよー!!』

 機動殻が走り始める。物凄くゆっくりと。

 それを迎撃するため取り合えず三本顎剣を投げつけてみた。

『あ、あ、あいたぁー!!』

「…………」

 今度は四連射。

『あ、あ、あ、あいたぁー!!』

「…………」

 今度はちょっとリズムを変えて。

『あ、あい、あ、あいたぁー!?』

 顎剣がぶつかる度によく鳴る楽器に次の攻撃を叩き込もうとしたら機動殻が慌てて手を振った。

『あ、あの!? もしかして楽しくなってませんか!?』

「そんな事無いわ」

 五連続。ちょっとだけリズムを取って。

『あ、あ、あい!? あ、あいたぁーーーー!!』

 青空の下、金属の弾かれる音と少女の叫びが木霊した。

 

***

 

平原のちょうど中央。

少しだけ大地が隆起した場所で白の半竜と朱の武神が向かい合っていた。

「あんた、成実の方に行かなくていいんさね?」

「Jud.、 拙僧は厄介な相手を止めるのが優先だ。そして……」

 半竜が朱の武神の肩に乗る片腕義腕の女を指差す。

「貴様ぁー! 武神は卑怯であろう!!」

「は! 武神持込禁止ってルールは無いさね!」

 「ぬう、確かに」と半竜は頷く。

「まあいい。拙僧なら地摺り朱雀を足止め出来るであろう」

「たいした自信だね。一人でこの地摺り朱雀を止めれるってかい!?」

「勿論。今の拙僧はパワーアップ中であるからな!」

 「パワーアップ」と首を傾げると半竜は誇らしげに胸を張る。

「先日、詰んでいた姉系エロゲーをやってみたところ。コレがまた良作でな。思わず徹夜でプレイしてしまったのだ。

故に、拙僧はエロゲーによってパワーアップ中だ!!」

 誇らしげにそう宣言する半竜に対し大きな溜息を吐くと直政は地摺り朱雀の右腕を上げた。

「……そうかい、じゃあ。死ね! ウルキアガ!!」

 そして大型レンチを振り下ろし、叩き潰した。

 

***

 

 平原の南方、少し窪んだ場所に伏せている少女が居た。

 青く長い髪を地面に垂らし、望遠術式で戦場の様子を窺っている彼女は笑みを浮かべる。

「ふふ、伊達副長、貴女の狙いは良かったわ。だけど、貴女は一つミスをした!」

 それは。

「奇襲するなら徹底的にコソコソしないと!!」

『あのぅ、それ、あまり誇れないんじゃ……』

 浅間の言葉に首を横に振る。

「甘いわね、浅間。やるなら絶対に勝つつもりで!

まあ、本当はこれ、忍者がやるべきなんでしょうけどどっかの忍者が惚気て遊んでるから仕方なく私がやってるのよ」

『じ、自分のせいで御座るか!?』

 忍者の表示枠だけ消して浅間に訊く。

「敵の様子は?」

『えっと、大体皆相対戦を始めました。数名はまだ相対戦してませんが』

 その程度誤差の範囲内だ。

 ならそろそろ自分も動く頃合だろう。

「ネンジの奴、どこら辺?」

『えーっと、ちょっと待ってください……あ、居ました!

うわあ、ペルソナ君とネンジ君、良く分からない方法で相対してますよ……』

 浅間から表示枠に地図が送られて来、それに目を通す。

━━よし、ついてる!

 二人が相対してるのはここの近くだ。

 相対戦中に乱入してはいけないというルールは無い。

ならば……。

 腰に差している機殻剣の柄を掴む。

この剣は緋想の剣の代用品であり、緋想の剣は例の事以来浅間神社で封印されている。

━━肩慣らしにはいいわね。

 この訓練で少しでもこの機殻剣に慣れておこう。

 そう心の中で頷くと表示枠の浅間を見る。

「浅間、一発派手なのやって。それと同時に動く」

『Jud.』と表示枠が消え、暫くすると対艦クラスの矢が敵本陣近くに向かって放たれた。

 地響きが起き、着弾したのを知ると同時に立ち上がる。

 白いスカートを靡かせ、赤眼の少女が帽子を押さえながら不敵に笑みを浮かべた。

「さあ、主役の登場よ!!」

 そう言い、少女━━比那名居天子は一気に駆け始めるのであった。

 

~第一部・関東騒乱編~




梅組合同訓練その1。今回はキャラの顔見せみたいな感じです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。