中継基地に入るとその惨状に思わず誰もが顔を顰めた。
崩れ落ちた建物、焼け焦げた屋根、あちこちに広がる赤黒い染み。
建物の壁や柵に負傷した兵士たちが背凭れ、遠くの方ではビニールシートを掛けられた地区がある。
「俺たちが来た頃には既に大きな被害を受けていた。それから十回以上の襲撃に耐えてきたが、そろそろ限界そうだ」
一行の先頭を歩くアガットはそう言うと振り返る。
「それにしても、お前までいるとはな。お目付け役はどうした?」
「ミュラー君なら墜落地点で防衛部隊の指揮を執っているよ。
今頃ティータ君と一緒に通神設備の設置をしているんじゃないかな?」
「ちょっと待て」
そう言うとアガットは足を止め、眉を顰めた。
「ティータが来ているのか?」
「ああ、僕たちと一緒に船に乗ってきた」
アガットは“何で連れてきた?”と視線でエステルに訴えかけるとエステルは苦笑する。
「通神設備の設置にはZCFの人間が必要だったんだ」
ヨシュアの言葉にアガットは頭を掻く。
「だからってあいつが……はぁ、まあいい。どうせあいつが強引についてきたんだろ?」
やや諦めたようにため息を吐くと北門側から走ってくる姿が見えた。
黄色い大きなリボンを付けた少女で彼女は一直線に此方に向かってくるとエステルに飛びついた。
「エステルちゃん! 久しぶり!!」
「わ、わ! アネラスさん!?」
「あー、言い忘れてたがこいつも一緒だ」
アネラスと呼ばれた少女はエステルから離れるとヨシュアとオリビエに笑顔を送る。
「ヨシュア君も、オリビエさんもお久しぶりです!」
二人と挨拶を終えると彼女は「おやや? 見ない顔がいっぱい」と梅組一同を見た。
そして暫く全員を眺めているとある場所で固まる。
「か、か……」
体を小刻みに震わせ、「何事だ?」と皆が思った瞬間、笑顔を浮かべた。それはもう、物凄い。
「可愛いーーーー!!」
***
「は!?」
なんかヤバいと思った瞬間には掻っ攫われていた。
顔面を腕で覆われ、そのまま後ろへ押される。
「ぐへへ、可愛いなあー」
ようやく状況が飲み込めた。
今自分は遊撃士アネラスとやらに抱きしめられ頬ずりされている。
「こ、これは一体……?」
抱きしめられながらそう苦しそうに言うとアネラスがハッと我に返る。
それから慌てて此方から離れて恥ずかしそうに苦笑した。
「い、いやあ、ここ最近可愛いエネルギーに触れてなかったからつい」
うん、この人危険人物だ。
私の中で危険人物ランキングの上位に入った。
ちなみに最上位がそこで「わ、私だって可愛いわよーん!!」と謎の対抗している馬鹿だ。
「とりあえず時間が無いから俺たちだけ自己紹介しておく。
俺はアガット・クロスナー。本部所属の遊撃士だが関東方面に配属になった。
で、こっちが……」
「同じく本部から関東方面に派遣されたアネラス・エルフィードです! さっきは御免ねー」
「本来なら小田原で開催される予定の多国間会議で顔合わせする筈だったんだが、この事態だ。
外部との連絡が上手く行かないから独断で動いたが、これからはお前たち武蔵支部の指示に従う」
そう言い終えると今度は正純が口を開いた。
「武蔵アリアダスト教導院の本多・正純だ。
私たちは現在崩落富士の地下にある遺跡に向かっている。
怪魔と<<結社>>の目的は恐らく遺跡にある概念核。
私たちは奴らより早くそれを確保する必要がある」
「遺跡の入り口はここから近い。できれば案内したいが……」
アガットは辺りを見渡す。
この戦況で遊撃士が抜けるわけにはいかない。
むしろ助けが必要なはずだ。
「アガット殿、ここから遺跡まで近いと言ったが具体的にはどのくらいで御座るか?」
二代の言葉に「そうだな」と呟くと崩落富士の方を見る。
「走って二十分程、全力疾走ならその半分で着けるだろう。敵に会わなきゃだがな」
「正純」と二代が言うと正純は頷く。
「ここに数名残し、他は遺跡まで前進する。
二代、編成は副長であるお前に任せる」
「Jud.」と二代が頷くと正純はアガットに手を差し出す。
「徳川はこの事態の打開に協力を惜しまない。共に最善を尽くそう」
その言葉にアガットは頷き、正純の手を取って力強く握手を行った。
***
「第三飛行部隊壊滅!! 第三十八戦闘人形隊との交信が途絶!!」
ノバルティスは次々に伝えられる悪い報告に僅かに眉を顰めた。
現状の戦力で敵に対抗できるとは思っていなかった。
敵に対して此方の戦力は僅かなものだ。
だがそれでもある程度は戦えると思っていたが……。
「あの巨竜がよくないねえ。あんなものを隠し持っていたなんてズルいとは思わないかね?」
誰に言うのでもなくそう独り言を口に出すと苦笑する。
あれは完全に予想外だ。
いや、怪魔があのような戦力を持っていた事は巫女殿から聞かされていたがここで持ち出してくるとは思っていなかった。
此方は<<方舟>>にアーシャの二隻だけ。
更にアーシャは現在攻撃能力が無く、機竜隊の空母として運用している状態だ。
とてもじゃないが攻勢には回れない。
「……目的は時間稼ぎだ。可能な限り敵との交戦を避け、戦力を温存したまえ。
いざとなったらαも出すが稼働時間的にあまりあてにできないねえ」
アイオーンαは現状<<結社>>が所有する最強の兵器だが至宝からのエネルギー供給を失っているため長時間の稼働が出来ないでいる。
一群程度なら容易く撃破できるだろうが波状攻撃を受けたら終わりだ。
━━さて、どうしたものか……。
「博士、例の特務艦を発見しました」
兵士からの報告で「ふむ」と横に浮かぶ表示枠を見る。
そこには墜落した曳馬が映っており、徳川の兵士たちがその周辺で陣を形成している。
「如何致しますか?」
「彼らの近くにいる部隊は?」
「例の機体が二機。どちらも長時間の戦闘で損傷していますが戦闘は可能です」
彼らの存在は我々の計画を狂わせる可能性がある。
━━ここで叩いておくべきかね?
倒せなくても時間稼ぎが出来れば十分だ。
そう判断すると部下に指示を出した。
「二機を向かわせたまえ。少し彼らを驚かせてやる事にしよう」
***
曳馬の甲板からティオは地上の様子を見ていた。
曳馬周辺には徳川の部隊が展開され、防備を固めている。
自分は甲板から彼らの支援砲撃をする予定になっており、足元に置かれたエーテルバスターを横目で見る。
「一応防壁の外側に罠を張っておいたわ」
そう言いながら甲板に出てきたのはパチュリー・ノーレッジだ。
彼女は此方の横に立つと気怠そうに手すりに寄りかかる。
そのまま暫くお互いに無言でいるとパチュリーが此方を横目で見る。
「魔導杖、使いこなしているみたいね」
「え? あ、はい」
「英国にも使い手がいるわ。レミィ……レミリア・スカーレットのお気に入りの生徒の内二人が使っているのを見たわ」
「おそらくテスターですね。正式な実戦運用の為各地に魔導杖テスターがいる筈ですから」
「そう」と言うとパチュリーはまた沈黙した。
さて、どうしよう?
相手が話題を振ってくれたのだ。
今度は此方から話題を振るべきなのではないだろうか?
「あの、パチュリーさんはどこで魔術を学んだのですか?」
「さあ、どこだったかしらね?」
「え?」と目を丸くするとパチュリーは苦笑しながら首を横に振る。
「ああ、別に煙に巻こうっていうわけじゃないのよ?
私にとっての魔法というのは生まれた時から、自然に備わっていたものでね。
使えることが当たり前だったのよ」
彼女は生粋の魔法使いだ。
彼女の居た世界では魔法使いという種族になるには捨食や捨虫の魔法を習得し長い命を得た存在の事を言う。
それはつまり人間ではないという事であり、どちらかと言えば妖怪や悪魔に近いという事だ。
多くは人間から魔法使いになるが、ごく稀に魔法使いの子供として魔法使いが生まれることがある。
彼女の両親について僅かに興味が出たが、それをまだ出会って間もない自分が訊いていいのか悩む。
「……まあ、私は色々特殊だったから両親から魔術を習うのではなくほぼ独学だったわ」
「特殊……ですか?」
自分でも予想外に口に出してしまったことらしくパチュリーは少し固まる。
やがて口に出してしまったのだからしょうがないと判断したらしく此方を見ずに話し始めた。
「生まれながらの魔法使いとして生まれた私だけど残念ながら両親の期待には応えられなかったの。
莫大な魔力を生まれながらにして持つことが出来たけれどその代償として体は病弱になってしまった。
満足に魔術を扱えず、身体能力も人間以下の私に両親は失望してね。
碌な修行もさせられず、ほぼ放置状態よ」
「…………」
「で、なんか両親の事とか自分自身の事とか色々と頭に来たから家出した」
「はい?」
「両親の魔導具やら魔術書やら全部持ち逃げして旅に出た。
その途中で魔法の基礎を学んで、足りないところは独学で。
色々と研究しながらふらふらしてたら良さそうな図書館見つけてそこに住み始めたのよ。
まあ、そのあとその図書館に持ち主が居て、そいつに何度も出ていけと言われたけど全部無視して私の物にしたわ」
なんというか。
なんというか意外と波乱万丈な人生を送っている。
いや、百年以上生きている魔女なのだ。
様々な経験や知識を持っていてもおかしくは無い。
━━見た目で判断してましたね。反省です……。
というか今思ったのだが徳川には年齢詐欺多すぎないだろうか?
比那名居天子や魂魄妖夢も自分よりも全然年上だ。
幻想郷出身者と話すと年長者と話しているように感じる事が多い。
勿論彼女たちから話を聞き、学べるのは自分にとって良い事なのだがどうにも違和感を感じてしまう。
━━幻想郷では年齢とか関係なさそうですよね。
人間の方が少数派なのだ。
寿命の事など気にしている人物は殆どいないだろう。
そう思っていると甲板にはたてが現れ、辺りを見渡すと術式符を展開させ携帯式の通神機を取り出した。
「今から索敵を始めるわ」
***
術式符が砕け宙に散ると意識を集中させる。
額に携帯式通神機を押し当て俯瞰映像で辺りの索敵を開始した。
まずは曳馬周辺。
そこから徐々に索敵範囲を広げ、広範囲を探る。
見えるのは一面に広がる灰色。
辺りは不気味なほど静まり返り、敵の姿は全く見えない。
━━嫌な予感がするわね……。
墜落してから結構な時間が経過しているにも関わらず敵の姿がまったく見えない。
怪魔がまったく居ない地点に運良く墜落したのか?
いや、それは都合が良すぎる。
だとすると……。
「……このあたりの怪魔が殲滅された後とか?」
だとすると一体何に?
考えれば考えるほど不安が高まり、必死に索敵する。
曳馬から東へ離れた所、索敵限界地を見た瞬間、白い装甲が目に入った。
「敵!!」
咄嗟の言葉に皆が緊張する。
「どこからだい!?」
書記の言葉に答え、声を上げる。
「東! 敵は大型の白い奴!! 凄い速度でこっちに来てるわ!!」
***
ティオは直ぐに手摺から身を乗り出し望遠術式を展開した。
はたてが指さした方向を見れば遥か遠くに土ぼこりを上げながら接近してくる姿が確認できる。
「見つけました!! 映像、回します!!」
迫ってくるのは白い装甲を持つ虫のような兵器だ。
円形に近い胴体から二本の長い腕と足を生やし、此方に一直線に向かってくる。
その映像を見た下で指揮を執っていたミュラーは驚愕の声を上げる。
「トロイメライか!!」
「<<結社>>の戦闘人形ですか!?」
エーテルバスターを構えながら下のミュラーに訊くと彼は首を横に振る。
「古代の、<<大崩壊>>以前の兵器だ!! リベールの異変の際に戦った!!」
「古代兵器だって!? ロマンを感じる!!」と後ろで武蔵の書記がはしゃいでいるがそんな場合じゃないと思う。
横ではパチュリーが既に魔方陣を展開し迎撃の構えを取っており、また下でもアデーレや妖夢が艦内から飛び出しミュラーと共に戦闘に備えている。
通神設備を建設していたティータも一旦艦内に戻った後、レンと共に携帯式の対戦車兵器のような物を担いで出てきた。
此方の備えは万全だ。
「撃退してみせます!!」
***
━━変だ……。
そうネシンバラは思った。
古代兵器との対決と非常に心躍るイベントだが妙に引っ掛かる。
敵が正面から来すぎているのだ。
<<結社>>には訓練された猟兵や高度な兵器があるが、兵力はあまり多くない。
その為彼らは常に相手の裏を掻き、大事な時には正面からくる。
そんな彼らが馬鹿正直に突っ込んでくるだろうか?
あの兵器への自信か?
いや此方には特務級が待機しており、さらに徳川の精鋭兵もいる。
━━何か策が?
万全の備えをしている敵に対して取るべき行動は限られている。
例えば奇襲をかけ、此方の陣形を崩すなど……。
「姫海棠君! もう一度索敵を!!」
「わ、わかった!!」
慌ててはたてが索敵を再開すると彼女は目を見開いた。
「まずい! もう一機居る!!」
「やっぱり!! どこからだい!?」
「真上よ!!」
そうはたてが言った瞬間、眼前に白い塊が落下してきた。
塊は曳馬の甲板を砕き、その衝撃で周囲に居た人々が転がる。
そして起き上がり何が起きたのかを確認すれば甲板の中央に巨大な古代兵器が立っていた。
***
「先輩! エステルちゃん達、出発しました!!」
中継基地の西門上でアネラスの報告を聞くと基地に残ったメンバーを確認する。
基地に残ったのは浅間神社の巫女とやたらと露出の高い女、あと商人二名と半龍と百足型の機動殻を身に纏った手足が機械の女。
さらにオリビエやシェイクスピア、クロスベルの警察という赤毛の男だ。
━━戦力としては十分だな。
残ったのは主に後衛や重装備のメンバーだ。
他は遺跡の入り口へ向かい突撃を開始している。
ここに来なかったメンバーもいるらしく彼らは墜落した曳馬の防衛にあたっている。
その中にティータが居るらしいが……。
「ったく、大人しく小田原で待っていればいいってのに……」
心配事を増やしてくれる。
ここを任せて曳馬の墜落地点に行きたいがそんな我が儘を出来るはずがない。
「フフ、ティータ君が心配って顔をしているね」
「…………」
いつの間にかに横に立っていたオリビエがいやらしい笑顔を浮かべて此方を見ている。
「もう何年もあっていないんだろう? 君も彼女もいろいろ思う所があるはずだ。
さあ! その甘酸っぱい青春真っ盛りの胸の内を僕に明かしてごら…………ぼ、暴力反対!!」
五月蠅いので胸倉掴んでおいた。
手を離すと「もう、相変わらず暴力的なんだからー」と気色の悪い声出したので拳を振り上げておく。
「お、落ち着こう!! ほら、あっち、敵さんが来てるよ!!」
オリビエが指さした先を見れば確かに敵が来ていた。
それも大群で。
「敵が来まーす!! みなさん、準備をお願いします!!」とアネラスが大声を上げると基地一気に騒がしくなる。
「腕、鈍ってねーだろうな?」
「それについては心配ご無用。こっちは内戦やらでそれなりに荒事を体験していたからね」
「いざとなったらか弱い僕は君の背中に隠れるよ」と旧友がおどけて見せたので口元に笑みを浮かべる。
不謹慎かもしれないが久々の再開で内心盛り上がっている。
さて、やるぞ。
大剣を肩で担ぎ向かってくる白の群れを睨み付ける。
そして振り返り待機している仲間たちを見ると左手を拳にして掲げた。
「蹴散らすぞ!!」
「Jud!!」
「応!!」
それから五分後、中継基地は怪魔の大群との交戦を開始した。
***
中継基地を出て十五分もすれば崩落富士の麓に存在する巨大な洞窟が見えてきた。
先頭を走る二代が後続のメンバーに近くの岩の後ろに隠れるように指示を出すと一同は急ぎ身を顰めはじめる。
そして二代は岩から身を乗り出し辺りを窺うと「妙で御座るな」と呟いた。
「何が妙なんだ?」
そう正純が問うと銀が答える。
「……敵の気配がない。情報では<<結社>>の部隊が既に到着していた筈だ」
「<<結社>>が既に遺跡内部に突入しているからかもしれません。此方も思い切って正面から突入しますか?」
宗茂の言葉に皆が顔を見合わせる。
敵が遺跡に入っているなら時間がない。
多少の危険は覚悟で突撃するべきか?
そう考えているとアマテラスが全身の毛を逆立て、唸り始めた。
その様子にイッスンは首を傾げ相棒に問う。
「ん、どうしたよ? アマ公?」
「……血の匂いですわ」
体を緊張させたのはアマテラスだけではない、トーリの隣に居たネイトも眉を顰め遺跡の入り口を睨み付ける。
「新しくておびただしい……人間の血の匂いがしますわ」
その言葉に全員、遺跡の入り口の方を向くのであった。
***
遺跡の入り口に近づけば近づくほど血の匂いが強くなっていた。
湿り、粘りつき、不快になる匂い。
死臭だ。
遺跡の入り口から匂う死臭はアマテラスや自分以外にも感じ取れる程になり、こういった匂いに慣れていないであろう正純や衣玖、エリィは顔を顰めていた。
「……我が王」
「大丈夫だ。ちゃんと、何があっても受け止めるからよ」
遺跡入口前にある大きな岩。
この先から凄まじい死臭が漂ってくる。
この先はきっと地獄だ。
そんな場に繊細な王を行かせたくないが、進まないわけには行かない。
「俺達が先行する」
ロイドがそう言うと男性陣が先行し始める。
そして岩の先に向かった直後、ロイド達が立ち止まり息を呑んだ。
「……なにが?」
天子の言葉にロイドは眉を顰めながら振り返る。
「敵は……いない。だが、これは……」
天子と顔を見合わせ、正純とホライゾン、そして王を誾に任せると前進する。
立ち止まる男性陣の間を抜け、凄まじい死臭を嗅ぎながら前に出ると灰色の大地に赤黒い池が広がっていた。
━━これは……!!
地獄だ。
広がる赤黒い池は人の血。
入り口前には様々な物が飛び散っており、所々に“人だった物”が散乱している。
あまりに酷い。
圧倒的な暴力の跡、獣に蹂躙された大地。
「智、後で清めをお願いいたしますわ」
『……Jud.』
恐らく<<結社>>の部隊がここに居たのだろう。
彼らは“何か”に襲われ、蹂躙された。
<<結社>>の強化猟兵は決して弱くは無い。
寧ろ各国の精鋭兵並の実力だ。
それがここまで一方的に蹂躙されたとなると……。
「これをやった存在がまだ近くに居るはずですわ!!」
直後、山の斜面を滑り降り近づく物があった。
それは山肌を八本の巨大な足で蹴り、宙を飛ぶ。
「皆、散るで御座る!!」
二代の言葉と共に一斉に散開すると先ほどの岩を砕き、着地する姿がある。
巨大な二対の鋏。
四本二対の脚。
円形状の胴体後部から生える巨大な尾を持つ白い怪物。
━━蠍!?
蠍型の大型怪魔が眼前に現れた。
崩落富士の戦いその3。RPGでいう所の中ボス戦みたいな展開です。