~第三十章・『魔弓の騎士』 えーっと、これ、弓ですよね? (配点:弓手)~
小田原空港での戦いは徐々に北条側優勢になり始め<<結社>>の戦力は空港入り口まで押し返され始めていた。
曳馬周辺に陣を張っていた徳川の兵士たちも一部を曳馬防衛に残し北条の兵士と共に前線に向かっている。
「町の方は激戦みたいだけど、こっちは大分落ち着いてきたさね」
地摺朱雀の肩から町の方を眺めていた直政がそう足元に居る“曳馬”に話しかける。
「Jud.、 此方は上手く北条綱成様の部隊と連携できたおかげで優勢にたてました。ですが……」
“曳馬”が見上げた先には白の巨大艦が存在している。
あれが上空に居るせいで空港にいる北条艦隊は離陸できないでいるのだ。
「しかし……どういうつもりかねえ? あの船なら空港に居る艦隊を殲滅できるだろうに」
北条の哨戒艦隊が一瞬で壊滅したのは自分たちも見た。
空間転移砲撃が可能な航空艦。
正直無茶苦茶だ。
恐らくだがあの船一隻で小田原中を爆撃できるだろう。
だが敵は最初の一撃以降近づいて来た敵の迎撃のみを行っており、小田原に対して一切砲撃を行っていない。
「……敵の目的は小田原の攻撃ではない、という事でしょうか?」
「攻撃じゃないって、現に猟兵達が降下してきているさね」
「Jud.、 ですから“目的”では無いのでは?
小田原襲撃はあくまで“経過”。襲撃の先、いえ裏にこそ何か敵の“目的”があるのでは……」
そう“曳馬”が呟いた瞬間、空中で流体の光と、障壁が砕ける光が生じる。
━━流体砲撃!?
即座に対艦用の長銃を構えると上空を巨大な鳥のような物が旋回している。
「っち、機鳳かい!! 迎撃に出る! 援護頼んだよ!!」
飛翔器を展開させ上昇をすると同時に曳馬の対空砲が敵に向けて牽制砲撃を開始する。
曳馬の対空砲火を避ける為敵は大回りに旋回し、その進路上に狙いを定める。
相手はかなりの速度だが上手く進路を誘導できれば射撃を加えやすくなる。
敵の旋回に合わせて地摺朱雀の体を回し、タイミングを見計らって引き金を引いた。
衝撃と共に砲弾が放たれ敵を横から穿とうとするが、突如敵の翼より流体の刃が現れ砲弾が断ち切られ、逸れる。
━━近接戦闘用の武器かい!!
続けて射撃を行うが敵は急旋回を行い、攻撃を回避すると此方へ向かってくる。
翼の間から二発の流体砲撃が放たれ、それをよけるため上昇するが砲撃は此方を追尾してきた。
「誘導弾かい!!」
逃れられないと判断すると右腰のスカートを外し、落下させて砲撃に激突させる。
スカートに砲撃が当たり、攻撃が外れたのを知ると敵も高度を上昇させ更に接近してくる。
それに対して長銃を投げつけぶつけると敵は一瞬だけ速度を落とす。
その隙に急上昇を行い、上空で反転すると一気に降下して敵の上部に張り付いた。
「上を取ればこちらのもんさね!!」
拳を振り上げ、敵の背中を貫こうとした瞬間、鋼鉄の鳥が変形を始めた。
━━……これは!!
装甲が展開され、機鳳の足は伸び、両横からは腕が現れる。
その姿は巨大な人型であり、振り下ろした此方の腕を掴む。
敵はそのまま振り返ると此方を睨み付けてきた。
「……変形!! 武神だっていうのかい!!」
直後腹部を殴打され、地摺朱雀は落下して行った。
***
浅間・智は狭い路地を走っていた。
額には汗を浮かべ大通りが近づくと深呼吸をする。
そして大通りに出る寸前のところで壁の陰に隠れて周囲の様子を窺った。
辺りに敵の姿は無い。
だが……。
近くに落ちていた桶を広い、大通りに向かって投げると桶は地面に落ちる前に空中で砕けた。
そのすぐ後に大通りに飛び出し、遠方に向かって弓を放つ。
━━外れました……!!
反撃が不発に終わったと分かると直ぐに走り出す。
背中に寒気を感じ、咄嗟に路地に飛び込むと何かが右腕を掠り、地面に矢が刺さる。
巫女服が破れ、軽く切れた肌に回復術式を付けた呪符を張り付けると額の汗を拭う。
━━高所を取られてますね……。
敵はどこか高所から此方を監視し、狙撃をしてきている。
此方も攻撃が放たれた方向に向けて反撃を放っているが、敵は狙撃後直ぐに移動をしているらしく中々捉えられない。
「今のままでは此方が不利……。思い切って攻撃を喰らうのを覚悟で反撃するのも一つの手段ですけど……」
敵の攻撃を即座に察知し反撃を撃てれば勝てるかもしれない。
勿論危険度が高いし、失敗する可能性がある。
なによりも……。
━━トーリ君を心配させる事は出来ませんよね。
自分に何かあったら彼を悲しませる事になる。
それはつまり彼の生命を左右させる事であり、軽々しく出来る事ではない。
━━あ、ごく自然にトーリ君が私を心配してくれるって思ってますね……。
彼は悲しんでくれるだろうか?
いや、彼の事だきっと凄く悲しむ。
いつもバカをやって、周りを振り回しているが彼は人一倍繊細なのだ。
問題はその悲しみが特別な意味でなのかどうかという事で……。
━━な、なに考えているんですかあ!!
頬が熱くなるのを感じて慌てて頭を横に振る。
今はそんな事を考えている場合じゃ無いだろう!
いや、今じゃなくても考えないで……。
「あ、また面倒な思考に……」
思わず苦笑してしまい、大きくため息を吐く。
さて、これからどうするかを考えよう。
敵は高所。
此方は動きを監視され、敵と同じ高さに移動することも出来ない。
この不利な状況を打破するにはどうすればいいのか……。
「より上を取る……ですね」
そう頷くと表示枠を開いた。
***
・あさま:『マルゴット、上から監視をお願いできませんか?』
・金マル:『例の狙撃者? いいけど敵の位置に心当たりあるの?』
・あさま:『Jud.、 恐らく敵は半径三キロ以内。恐らく常に此方を監視できる高所に居ます』
・金マル:『あー……。敵の武器、弓だよね? アサマチ級の狙撃者かー、見つけても近づくの大変そう』
・あさま:『見つけてくれるだけで大丈夫です。あとは此方で何とかしますので』
・金マル:『おっけー、やってみる!』
***
マルゴットは礼を言う浅間に笑みを送ると表示枠を閉じる。
隣に居たナルゼとアイコンタクトをすると浅間を中心に北側にナルゼが向かい、自分は南側を担当する。
魔理沙は途中で合流した北条・幻庵と共に小田原城周辺の哨戒にあたっている。
━━いやあ、さっきはビックリしたー。突然現れたから敵かと思って思わず金棒叩きこんじゃったよ!
おかげで幻庵の機鳳の装甲に傷を付けてしまったが「まあ、此方も悪かったし」と許してくれた。
うん、太っ腹!!
「それにしても陸戦型の機鳳かあ……。北条の軍事力、かなり高いかもねえ」
関東連合と戦争になっていたらかなりヤバかったかもしれない。
珍しく正純が戦争回避したおかげで色々助かった。
━━まあ、結局戦いに巻き込まれているけどね!!
さて仕事に専念しよう。
浅間を監視しているとなるとなるべく視界のいい場所が良い。
それで尚且つ移動が楽で逃走経路が豊富な場所……。
━━見張り台……?
小田原の各所には見張り台が設置されている。
あそこなら市街全域を監視できるし移動も楽だ。
直ぐに小田原の地図を開き範囲を限定する。
すると北側にある二つ、そして南側にある一つが該当した。
「ガっちゃん! 北側の見張り台、お願い!!」
『Jud!! 見つけたらおまけで射撃を叩き込んでやるわ!』
こちらも南側の見張り台に向かう。
あまり近づきすぎると怪しまれる為、距離をとりながら望遠術式を使う。
遠く、小さな見張り台を良く見ると弓を構えた女騎士が立っている。
━━居た!!
直ぐに浅間に連絡しようとすると女騎士と目が合う。
「!?」
━━バレた!? この距離で!?
直ぐに旋回し、距離をとろうとするがそれよりも早く矢が放たれる。
高速で放たれる矢から逃れられないと判断すると“黒嬢”を盾にするように横倒し、衝撃に備える。
矢は“黒嬢”の左スラスターを貫き、スラスターは砕けて炎上した。
落下する“黒嬢”を制御しながら望遠術式を覗いた時には敵は屋根伝いに南に駆けていた。
***
『ごめん! やられた!! 敵は南側に走って行ったっぽい!!』
「そっち、大丈夫ですか!?」
『大丈夫、大丈夫! 何とか立て直したから!!』
マルゴットの無事にそっと胸を撫で下ろすと直ぐに地図を開く。
マルゴットが知らせてくれた位置から更に南側、そのあたりに存在する狙撃に適した場所……。
━━……ここです!
南側の広場にある教会。
ゼムリア出身の人間も多い小田原には七燿教会の教会がいくつか存在している。
その一つがあそこにあったはずだ。
問題はどうやって近づくかだか……。
「ペルソナ君! 近くにいますか!?」
***
エンネアは教会の鐘の裏に隠れると周囲の様子を窺った。
先ほど魔女に見つかったので即座に場所を移した。
その為敵の位置を見失った。
あの巫女の狙撃能力は凄まじい。
だが先ほどから観察してみたところ彼女の身体能力自体はいたって普通だ。
この短時間で遠くまで移動してはいないと思うが……。
━━少し待とうかしら?
冷静に、相手が出てくるまで待つ。
狙撃手にとって我慢強さも重要な能力だ。
巫女が居たあたりを監視しながら東の方を少し見る。
報告によると東側でアイネスが敵と交戦し、勝利したものの負傷後退したらしい。
そのせいで東側の戦闘が停滞、いや劇場地区で押し返され始めているという。
━━攻め落とすのが任務じゃないけど、押し返されるのは癪ね。
主が居る限り敗北はありえないだろうが極力不安要素は排除すべきだろう。
その為にもそろそろ彼女とは決着を付けよう。
「……動いた!」
路地から巫女が飛び出し此方に向かって走り出す。
それを弓で狙うが巫女は直ぐに違う路地に飛び込む。
次だ。
次、路地から飛び出して来たら終わらせる。
息を潜め、集中をする。
しかし巫女は中々路地から出てこず思わず眉を顰めた。
━━どうしたのかしら?
隠れて勝負を捨てたのか?
それなら此方から打って出るだけだが……。
直後、路地から垂直に何かが飛び出た。
「!!」
バケツ頭だ。
上半身裸にバケツを被った大男が路地から跳躍し、長屋の屋根に着地する。
大男の腕の上には巫女が立っており、大男は屋根の上を一気に駆け出す。
━━路地で合流したのね!!
向かってくる敵を迎撃するために弦を引き絞り、巫女の胸に狙いを定める。
向うも此方に向かって弓を構えた。
「気が付かれていた。流石ね」
弦から手を離し、矢が放たれる。
それと同時に巫女も矢を離し、二つはやや此方側の地点で激突して砕けた。
「向うの方が速い!!」
航空艦を沈めるだけの力を持つとの事だが、嘘ではないようだ。
破壊力と速度では向うの方が上。
だが連射力ならどうだ!!
矢を五本取り出し、高速で順番に放つ。
それが終われば即座に次の五本取り出し放つ。
まるで機関銃の如く矢を放つと大男は駆ける速度を上げ、直撃しそうになる矢だけを巫女が弾く。
だが徐々に弾き切れなくなり、一発が大男の右肩に当たった。
だがそれでも止まらず敵は此方に向かってくるので、僅かに焦りを覚えた。
既に敵は南側の広場近くまで接近してきており、このままでは到着される。
弦を限界まで引き絞り、敵を狙う。
「喰らいなさい!!」
敵が広場に到着する瞬間、全力の矢を放つ。
矢は音速を超え、敵に向かって飛来するがその瞬間に大男が跳んだ。
矢が家屋を砕き、衝撃が生じると大男はそれを利用し跳躍距離を伸ばす。
そして最高高度に到達した瞬間、巫女を投げた。
「……何ですって!?」
巫女が宙を飛ぶ。
長い髪を青空の下で靡かせながら、彼女は上空で弓を構える。
━━空中で攻撃する気!?
此方も即座に矢を構える。
互いの視線が交差し、時間が遅くなったかのように感じる。
頬を汗が伝い、顎から零れる。
滴が石の床に落ち、跳ねた瞬間矢を放った。
「!!」
「会いました!!」
互いの矢が一直線に放たれる。
矢は空中ですれ違い、一瞬だけ大気が揺れるのが感じられる。
そして交差が終わった直後、結果が生じた。
此方の矢は巫女の脇腹を掠めて切り裂き、巫女の矢は此方の弓に当たって僅かに逸れる。
顔の横を矢が通過し、背後で突き刺さると頬から血が流れ始めた。
━━……勝った!?
巫女は宙で苦悶の表情を浮かべており、体を丸めると落下を始める。
周囲に耐衝撃用の術式を多重展開させながら彼女は教会の屋根に落下し、屋根を砕きながら内部へと落下していく。
一際大きい音と共に教会の中から避難していたらしい人々の悲鳴が聞こえ、暫くすると静かになる。
一連の結末を見届けるとゆっくりと息を吐き、頬の血を右手の甲で拭う。
「……危なかったわね」
最後の一撃。
此方が負けていてもおかしくはなかった。
己の運の良さに感謝しながら振り返ると屋根に空いた穴の方を見る。
「さて、仕事はしっかりと終わらせないとね」
***
辺りが霞んでいた。
視界の殆どが白くなって良く見えない。
音もこもって聞こえまるで自分がここに居ないかのようだ。
再び意識が途切れそうになるのを感じると腕を何とか動かし、術式を起動させる。
「!!」
衝撃が体の内側から生じ、体が一度大きく痙攣する。
そして吐き出すように息を吐くと咳き込む。
━━き、気付け用の術式……、流石にきついですね……。
内側から頭を殴られたようでかなり辛いがお蔭で意識がはっきりしてきた。
衝撃吸収術式を使ったとはいえ、教会の屋根を突き破って落ちてきたのだ。
全身が激しく痛み、上手く動けない。
まず自分の様子を確認する。
体中に傷が付き、巫女服はあちこちが破れており、胸からへそあたりまで露出してしまっている。
幸い骨折はしていないらしく動くことは可能だ。
周りには教会に避難していたらしい人々が遠巻きに此方を見ており、神父が「だ、大丈夫ですか!?」と訊ねてくる。
「え、あ、だ、大丈夫……だと思います」
兎も角立ち上がろう。
そう思った瞬間、天井に空いた穴から敵が飛び降りてきた。
「不味い!」と思い、武器を探すが砕けた天井から見える柱に“片梅”が引っ掛かっており取る事が出来ない。
「詰み……ね」
敵はそう言うと弓を構え此方の頭を狙う。
鼓動が跳ね上がり、息が止まる。
絶体絶命だ。
どうあがいてもこの先の死を回避できない。
「……遠目に見て思ってたけど、美人ね」
敵はそう笑みを浮かべると表情を改める。
「鉄機隊が隊士、<<魔弓>>のエンネアよ」
「……武蔵アリアダスト教導院、浅間神社巫女浅間・智です」
「戦えて光栄だったわ」とエンネアは頷くと弦を引き絞る。
終わったと思った。
最後は意外と呆気ないものなんだなーとどこか他人事のように感じ、恐怖心はどこかに行ってしまっていた。
━━あ、トーリ君の事どうしよう?
自分が居なくなったら彼死んじゃうかもしれないし、仮に乗り越えたとしてもあの外道どものストッパーが居なくなるのは不味い気がする。
あ、でも衣玖とかいますし……あーでも衣玖、喜美と一緒の時結構はっちゃけてますし……。
いやいや! 殺される直前まで何悩んでるですか!?
もっと色々考えることはあるだろう!
えーっと例えば……。
━━やっぱりトーリ君の事ですよねえ……。
色々なものに蓋して、そのまま死んでしまう。
何ともまあ浅間・智らしいといえばらしいのか?
━━まあ、兎も角最後までちゃんとしませんとね。
それが彼への“想い”であり、この敵に対する最後の抵抗だ。
***
━━死の前にそんな表情が出来るなんてね……。
エンネアは弓を構えながら浅間・智を称賛した。
今彼女は気が付いてないだろうが非常にいい表情をしている。
此方をしっかりと見返し、強気な笑みを浮かべている。
その色の違う瞳には力強い意志が感じられ、自分を貫く覚悟と誰かへの想いが感じられる。
━━武蔵という所はとても良い場所みたいね。
彼女の表情は仲間を心から信じているからこそできる。
きっと彼女が死んだら多くの人が悲しむのだろう。
だが、だからこそ……。
「悪いけど手加減はしないわ。しっかりと、確実に責務は果たす」
せめて痛みを感じさせないようにしよう。
狙うのは頭。
即死をさせようと決意し、弓を強く引き絞った瞬間━━━━砕けた。
「え?」
眼前で砕ける弓。
大きく逸れた矢。
何が起こったのか一瞬判断が遅れ、思わず立ち尽くした。
何故、砕けた?
何故、このタイミングで?
━━そうか! あの時!!
最後に交わした攻撃。
あの時に浅間・智の放った矢が此方の弓に当たり深刻なダメージを与えていたのだ!
「……仕方ない!!」
護身用の短剣を引き抜き浅間・智に止めを刺そうとする。
だがその直後に教会の扉を砕いてバケツ頭の大男が現れた。
「ちぃ!!」
大男は近くにあった長椅子を此方に投げつけ、それを避けると短剣を此方に突撃してくる大男に投げつける。
ナイフは大男の右脚に刺さり動きを止めるが此方は武器を失った。
更に先ほどまで遠巻きに見ていた避難民たちが浅間・智を庇う様に立ちはだかり形勢が逆転した。
━━まったく! ツイて無いわね!!
大男の横をすり抜け教会の入り口側に逃げると振り返る。
「この勝負、引き分けって事にしましょうか!!」
避難民の間から頷く浅間・智を確認すると外に飛び出す。
一気に広場を駆け抜け撤退を行うと自然と笑みを浮かべてしまった。
「やれやれ、後でデュバリィに睨まれてしまいそうだわ」
今回は最後の最後で引き分けた。
次に会う時、それがきっと彼女との決着の時。
それまで再戦を楽しみにしていよう。
そう思いながら路地に飛び込み、そのまま撤退するのであった。
***
椅子に腰掛け、教会の神父に治療をしてもらいながら浅間・智は己の幸運に感謝した。
最後の最後で助かった。
正直いまでも生きているのが信じられないくらいだ。
治療を終えた神父に感謝の言葉を述べると教会の入り口側を見る。
そこでは避難民たちがペルソナ君と共にバリケードを作っておりこれなら当分ここは安全そうだ。
━━それにしても、最後の方トーリ君の事しか考えてませんでしたよね……私。
思い出すと頬が熱くなる。
そろそろ危険域なんじゃないかと自分でも思う。
━━ま、まあ、あれです! その事は後でミトも道連れで考えるとして……今は取りあえず。
上を見上げ、天井の穴から見える青空に目を細める。
「何とか凌ぎましたよ。トーリ君」
対エンネア戦。次は鉄機隊のアイドル戦です!