箱庭で語られる超越の物語   作:妖精の尻尾

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遅くなって申し訳ない。
実験のレポート出さないと大変なことになるので…

淡海の天魔の正体は明言されていない(はず)ですが、ここでは神父さんということにしておきます。

…あれ?いちゃこらしてないな、そう言えば…
つ、次ですよ次ィ!

あと割とシリアスだったり…
伏線も入れてかないとね!(白目


子離れ出来ないのはほどほどに

 ここは北区画の箱庭54545外門。コミュニティ『サラマンドラ』が本拠地を構える通称『煌焔の都』。そこには用途別に3層の壁が建てられており、3層目すなわち一番うちは貴賓用の宿舎となっている。しかし本来貴賓にあたる彼らはそこにおらず、隠れた名店とでも言うべきひっそりとした居酒屋にいた。

 

「カイン、あなたは妹とどのように話しているのです?」

「どうと言われても…」

 

 酒を呑んだせいか、顔を赤くしつつもどこか懇願するような響きで茶髪のほほがこけた優男が、同じくこちらもやや上気しており、柔和な顔立ちをした男に尋ねる。

 娘と交流(コミュニケーション)がほとんどない――というより避けられてる――黒円卓第三位『神を運ぶ者(クリストフ・ローエングリーン)』ヴァレリア・トリファとその相談相手である黒円卓第二位『死を喰らう者(トバルカイン)』櫻井戒。

 なお櫻井戒の妹は兄好き(ブラコン)だと一部で有名なため、たびたび親族との関係を良くしたいものたちから相談を受けている。

 

「うむ…。ぜひとも妹とのコミュニケーションのコツは聞きたいですな。」

 

 2本の角を生やした、赤髪の少しこわばった顔をした男がうんうんと頷いている。

 

「いやしかし…。コツと言うコツはなくてですね…、しいて言うなら日ごろの行いでしょうか?」

「日頃の、…行い……」

「う゛ッ、……サラぁ…」

 

 3人目の男は『サラマンドラ』のリーダーであるサンドラの兄マンドラである。…間違っても3人はこのような店にいるべき存在ではない。

 

「サラが出奔した今、サンドラに重荷を背負わせてしまって……。やはり少し話しかけづらい……」

 

 酒に酔ってグスグス泣いている(みっともない)男ども。そんな彼らの後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「……………と、これを頼む」

 

 かしこまりましたぁ、といって小柄な女性店員がぱたぱたと厨房へと走り去っていく。3人の知り合いと思しき人物は碧い髪をした青年。女顔が禁句(タブー)である中性的な顔立ちであり、首には斬首痕を隠すためのマフラーが巻かれている。

 

「おや、藤井くん。1週間ぶりくらいかな?」

「……………………おう、久しぶり」

「すごい間が空いたね。はははっ」

 

 戒に声をかけられどこかばつが悪そうにする藤井蓮。しかし声をかけられた以上無視は出来ないので、近寄ってきた店員に断って、彼ら3人のテーブルへ向かう。

 どこか周りをうかがっており、やや不審な様子が目立つ蓮は戒に小声で話しかける。

 

「……櫻井はいるんですか?」

「いや、来てないよ。…やはり螢の言う通りだったみたいだね。君が螢のことを避け」

「おや、藤井さんではないですか!!どうぞこちらへ!!」

「あ、ああ。久しぶり神父さん」

 

 戒が目を細め、蓮にある事実を言おうとし、それに蓮は身構えたが完全に酔った(出来上がった)ヴァレリアが割って入る。

 蓮は明らかにほっとした表情になるも、戒は追及をあきらめたわけではない。ゆえに蓮はやや居心地の悪い感じになる。

 

「………………すね、テレジアが………」

「…………あ、氷室先輩はな……………」

「……いてください、サンドラが………」

 

 そして酔っ払い2人(ヴァレリアとマンドラ)が蓮に絡んでいく。それを横目に戒はのんびり酒を嗜む。蓮から恨みがましい視線が送られるが、気づかぬふりをする。

 

「…おや、そういえばおひとりなのですか?」

 

 ヴァレリアが何気なく聞いた一言に、蓮はびくりと肩を震わす。そしてふて腐れたように返事を返す。

 

「べつにいつも一緒ってわけじゃない」

「…ん、でも…」

「やっと、見つけた藤井くん!」

 

 そこに戒が疑念を挟もうとするが、突如女性の声が響き渡る。やや鼻にかかる、普段ならここまで大きな声は出さない人物。

 

「げっ、氷室先輩…」

「むっ」

 

 黒円卓第六位『太陽の御子(ゾーネンキント)』氷室玲愛。彼女は蓮の態度に不満を持ったのか、憤慨しながら近づいていく。

 それに対して蓮は困ったように一歩ずつ退いていく。また玲愛は臆することなく彼にずんずん歩みを進める。

 

「…ねえ、ふじ」

「おおテレジア!少し話したいことがあるのですが!」

「………」

 

 酒場がやたら緊張(シリアス)な空気に包まれていき、ついに玲愛が壁に追い詰められた蓮に話そうとしたその瞬間。ヴァレリアが割って入った。

 そして全員ガラスが割れるような音を幻聴する。

 

「…ちょっと…」

 

 俯いて肩を震わす玲愛に蓮はおろおろしながら、慌てる。

 しかしこれだけでは蓮の受難は終わらない。

 

「おぃーす。…あれ蓮じゃん、どうしたんだよおい。それに氷室先輩もいるし」

「司狼、お前もか…」

 

 空気を読まず――というより仕方がないが――酒場に入ってきた肉食な感じ漂う青年に、蓮は困った顔を見せる。

 

「どうしたん氷室先輩?そんなに肩震わせちゃってさぁ。…ん、もしかして蓮へのアプローチだったりしってぇー?」

「ちょ、おま、ばか、」

 

 にやにやしながら玲愛をからかうように言うその青年、遊佐司狼に対し蓮はさらに慌てる。

 

「ていうかさ、蓮、俺もお前に話あるんだわ。…お前の自滅因子(アポトーシス)としてな」

「…っ!?」

 

 さりげなく爆弾を投下した司狼に蓮は絶句する。さらに司狼から告げられることに心当たりがあるのか、言葉が出ない。

 けれどこちら(遊佐司狼)の爆弾よりも先にあった爆弾(氷室玲愛)が爆発した。

 

「ああもう!みんなうるさい!わたしは、藤井くんと、話したいの!特に、あなたは黙ってて!遊佐君、君も!」

「そ、そんな…藤井さんなら私としても許可できますが、しかし……親離れと言うのは……」

「なにヒスってんだよ先輩………ってゲッ」

 

 おもむろに一枚のカードを取り出す。それはラプラスの紙片であり、恩恵(ギフト)を収納出来る代物。

 カードを出した以上、それは恩恵(ギフト)の発動を意味する。玲愛が発動する恩恵(ギフト)は、かつて彼女が神州以前旧世界において果たしていた役割を限定的に現世へと現すもの。

 

壺中聖櫃(ハイリヒアルヒェ)不死創造する生贄祭壇(ゴルデネエイワズ・スワスチカ)

 

 座が存在しないこの箱庭では流出位階は創造位階の広域拡大版といって差し支えないものになっている。また特異点は生じず、自由にオンオフを切り替えることが出来る。

 玲愛が諏訪原市において疑似流出として行ったこれ(・・)は、修羅道(グラズヘイム)が全世界を覆うという役割があった。

 そしてそれを元として生まれた伝承『氷室玲愛』は恩恵(ギフト)として周囲にいる任意の人物を一定時間修羅道(グラズヘイム)へととりこむことが出来る。

 それはさながら白夜叉によるゲーム盤と似たようなものである。

 

 玲愛が恩恵(ギフト)として聖櫃を発動しようとして、けれど

 

「こんなところで騒ぐな。まったく…」

 

 玲愛に司狼が無間神無月に取り込まれた。

 蓮が天魔として、自身の覇道で宇宙(第六天)内に異界を作り上げていた過去。その力は玲愛同様、自在に構築できるフィールド型の恩恵(ギフト)『無間神無月』として存在する。

 

『そこで頭冷やしてから出てくるんだ、いいな?』

「うぅ…わたしは悪くないのに…」

「ああ、とんだとばっちりだぜ」

『お 前 た ち に 言ってるんだ!』

「はーい…」

「へいへい」

 

 あいつらは…と呟きながら蓮は頭をおさえる。それに戒は同情の目を向ける。…ヴァレリアは潰れていたが。

 旧世界で親友(自滅因子)先輩(毒舌電波)に振り回されてた苦労人気質は治っていなかった。

 

 

 

 

 

――――そして、どこかでギシッ…と何かが壊れそうな不吉な音が鳴った




黒円卓で出てないのはアホタルにマッキー、あとベアトリスか…
ん?これで全員ですよね?(真顔

次は時間軸を無視してデート編と思ってます。
ので1,2週間は空くかと。
まあ遅くなりそうなら短いのを投稿していきますので。

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