箱庭で語られる超越の物語   作:妖精の尻尾

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書いてたらメルクリウスが暴走し始めて、あまりの気持ち悪さに吐きそうになった作者です




※コーヒーを口に含んで読むことをお勧めします

「―――……ねえ、レン?」

「……どうした、マリィ?」

「…幸せだね、すっごく…」

「――ああ、そうだな…。…でもな、」

 

「『一度死んだはずなのに生きててもいいのか』でしょ?レンの渇望(いのり)も分かるよ。一心同体だったときもあるし。レンはあんまり好きじゃないみたいだけど、わたしはレンの渇望、好きだよ?」

「…一度なくして、戻ってくるのならそれは価値がないのも同然。別にマリィと皆のことを否定してるわけじゃないけど、そう言った以上なんだか気まずくてな…」

「レン」

 

「わたしはレンにまた会えて嬉しかったよ。レンは嬉しくないの?」

「…そんなわけない」

「ならね、自分の気持ちに、素直になればいいんだよ。これからはずーーっと、ずーーーーっと、―――……一緒だよ」

 

「―――……なあ、マリィ?」

「どうしたの?…ゥンン!?」

「…プハッ…愛してるよマリィ」

「ん、もう…急にされるの恥ずかしいんだからね…」

「こんな笑顔で、そんなにも可愛いこと言うマリィが悪い」

「むぅ…、レンってばずるいんだから…。…私も、レンのこと大好きだよ」

「また君に会えて嬉しかった。ああ、もう、君のことは決して放さないよマリィ」

 

「うん、だからねレン?わたしのこと、しっかり抱き締めてね」

 

「…前は顔赤くするだけだったのに…。…誰かに聞いた?」

「うん、カスミがね、レンがこう言ってきたらこう返せばいいよって、教えてくれたの」

「はぁ…まったく…香純のやつめ…」

「カスミのこと、怒っちゃだめだよ?」

「分かってるって…。」

「…また悩んだり、困ったりしたら、わたしに言ってね。レンはわたしの男なんだから、わたしのこと頼りにしてね?」

 

「…なあ、マリィ?」

「…なあに、レン?」

「…幸せだな…」

「…うん…」

 

 

◆◇

 

 

「モゲロ」

「どうしたんじゃ一体」

「いや、急に言わなければいけない気がしてな…」

「なるほど、いつも通りのおんしじゃな」

 

 東区画の箱庭第7桁外門のサウザンドアイズ支部店。そこに第四天カール・クラフト=メルクリウスと、東区4桁以下には並ぶものなしと言われる白夜叉がいた。

 

「にしてものう、…おんしがマルグリットに避けられてるのなんぞ、いつものことじゃろう?」

「いや違うのだよ、白夜の。黄昏の浜辺にいたころは、マルグリットに歌をお願いしても歌ってもらえていたが…。最近は私の顔を見るなり遠くへ行こうとするのだよ。……いいや、それは私に探し出してほしいという女神なりのアピールか。ふふふ、ならば愛しのマルグリットよ、特異点の彼方まで…………なれば永劫…………………………跪かせていただき………………」

「(ホントどっか行ってくれんかのう…)」

 

 暴走した水銀(ストーカー)にうんざりする白夜叉。

 ラインハルトがどうしてこんなやつを友だと認めているのか、不思議でしょうがなく思う。叶うならば早く誰かに――藤井蓮…は無理だとして――例えばラインハルトとかに引き取ってほしいと切に願う。

 

「ふむ…、わが友がこちらに来ていると聞いたのだが…。…やはり来ていたようだな」

 

 噂をすれば、というやつかのう、と白夜叉はひとり呟く。ラインハルトのやや疲れたような顔に少し同情する。

 というより軍神を体現したような、まさしくカリスマの権化であるラインハルトにそんな顔をさせる変態(メルクリウス)に戦慄する。…同時にラインハルトが普段から彼に多大な迷惑をかけられていることを改めて感じる。

 

「すまないな、白夜叉よ。わが友カールはこちらで預かろう」

「……ああ、女神マルグリットよ……………あなたの抱擁に………………那由他の果てまで…………ギャンッ!!」

「…ああ、いや、気にしなくていい。…おんしも大変じゃのう。」

「ああ、全くだ…」

 

 普段は黒ウサギをいじくり、彼女を苦労人ポジションに据える白夜叉だったが、この男を相手にするときだけは苦労人になる。そして拳骨で水銀の意識を沈めた獣と白夜叉は、互いにメルクリウスの被害者として無言のうちに慰めあう。

 そこへ黒髪の、和服を着た女性が訪れる。

 

「ハイドリヒ卿!!こちらにいらしていたのですね!」

「ザミエル……いや龍明か。どうしかしたのか?」

「私は御身に忠誠を誓ったもの。ゆえに、ハイドリヒ卿のお傍にいるのです。……それとハイドリヒ卿…その、前からお呼びくださってたようにザミエル、…とお呼びください…(エレオノーレが一番良いのですが……ゴニョゴニョゴニョ)」

「ふむ…そうか、そういう理由か。しかし……以前までの卿ならば、私に自分の願いを言ってくることなどなかったが……なるほど。変わったな、ザミエルよ」

「はっ、申し訳ありません!!」

「いやいや、構わん。私は私に反逆するものも好むゆえ、気にするな。それに卿はそちらのほうが好ましいぞ?」

「こ、好まし……っ!!」

「さて、では帰るぞ、エレオノーレ」

「なっ、なっ……」

「ふむ、こう呼んだほうがいいのだろう?」

 

 途端、その女性――エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ――は赤面し、言葉も出ず、口をパクパクさせる。

 急展開するその事態に白夜叉は呟かずにはいられなかった。

 

「…なんじゃ、これは…。付き合いたてのカップルかっ」

 

 

◆◇

 

 

「むっ、藤井くんがだれかといちゃついてる…。これはマリィちゃんの気配…!!」

「急になに言ってるんですか、氷室先輩」

「行かないと。あとのことは任せたよ、綾瀬さん」

「えっ、ちょっ、ちょっと……。……なに勝手にどっか行ってるんじゃこらー!!残された私のことも考えんかーい!!!!」




ハイドリヒ卿は天然だと思ってる(確信
そしてザミエルはなんだかんだ初心(断言

…あっ、kkkの延長なんで『心まで処女(笑)』ではないです
一応愛を分かってますんで

4/22
読み返したらザミエルが獣殿にここにいる理由を話してなかったのでちょい加筆

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