ハイスクールD×D 黒の処刑人   作:夜来華

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なんなのよあれは──


本当に人間?


あんなの聞いた事も、見たことも無いわ──





第8話 聖と魔

 

ボロボロに負傷していた椿姫と匙を地面へ横並びに寝かすと、ひしぎは片膝を

地面へつけ、法力治療を開始した。

 

法力治療とは、生物全てに備わっている再生能力を自身の"(オーラ)"を分け与え、

サポートする事でトカゲの尻尾以上の再生能力が発動し、傷を瞬時に回復させる事が出来、

例えば切断された腕とかであっても、くっつける事が出来るのだ。

 

ただし、表面上は治っていても中身の部分は少し完治に時間は掛かり、

すぐさま激しい運動や、戦闘をすると傷が開く場合もある。

 

法力の能力を使えるのは人間の中でも"シャーマン"と呼ばれる特殊体質を

持った者達だけである。

 

ひしぎは、"シャーマン"では無いが、昔彼の助手であった"友"に教えてもらったのだ。

 

体中傷だらけで、血まみれであった二人の体は、温かな光が二人の体を包むと、

どんどん傷は塞がっていき、

 

「──これで、傷は全て塞がった筈です」

 

数秒後には傷ひとつ無い体になっていた二人──

 

「──痛みが消えた」

 

意識のあった椿姫は、体の状態が瞬時に回復したことに驚いていた。

ただ、匙の方は依然意識が戻っておらず、彼の顔を心配そうに覗き込むソーナ。

 

「ちょっと強くに衝撃を受けただけで、頭部には傷はありませんでした。

 もう少ししたら意識が戻りますよ」

 

壁とぶつかる瞬間に、咄嗟に匙は頭を守ったお陰で、傷1つなかったが、

思い切り揺さぶられたために意識が落ちたままであった。

 

法力治療を終えた、ひしぎは立ち上がると校庭の方に視線を向けた。

 

「──あまり、状況は芳しくないようですね」

 

激しい轟音が、断続的に聞こえて来て──激しい戦闘が繰り広げられているのが分かる。

 

「戦線へ向かう前に、少し結界を強化しておきます」

 

そう言って、学校の入り口まで歩いていきシトリー眷属達が張っている

結界に右手を触れさせた。

 

ひしぎの行動に怪訝を浮かべるソーナと眷属達。

 

すると、触れた場所から黒い雷の様なモノが一気に発生し──結界の色を黒の線へと

全て塗り替えたのだ。

 

「──っ!これは」

 

その光景に息を飲む彼女たち──そしてその結界に触れてみると、今の数倍以上の

強度が上がってるのを感じられた。

 

「すごい、これならコカビエルの攻撃にも耐えれるかもしれない」

 

結界の術式担当していた桃がポツリと呟いたのだ──防御結界が得意な彼女だからこそ、

瞬時にその強度理解できたのだ。

 

ひしぎはそのまま彼女たちを覆うように結界をもうひとつ作り出した。

 

「これで、しばらくは大丈夫です──」

 

彼女達はこの結界により外部から攻撃を受けても結界を張り続けられるようになった、

 

結界と、その強化を施したひしぎは身を翻し校庭に向かおうとすると、

 

「──待ってください」

 

最後まで彼の戦いを見ていたいと思ったソーナは、咄嗟に声を掛けてしまった。

 

内心、この場に残るべきか悩んでいると、

 

「会長、ここはもう大丈夫です。リアスさんたちの援護を」

 

「はい、この強度なら私達だけでも十分ですので、加勢してきてあげてください!」

 

椿姫と、桃に言われたソーナは決意した。

 

「わかりました、ですが何かあれば直ぐに連絡を──」

 

「はい」

 

「──では、ソーナ。参りましょうか」

 

彼女達のやり取りを最後まで見届けたひしぎは、校庭へ向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校庭ではケルベロスとの戦闘している間にバルパーの術式が完成、4本の聖剣エクスカリバーは

1本の聖剣となり、その膨大な力によって連動した術式も完成し、

20分後にはこの街全てを破壊する光が生まれる事になった。

 

その術式をコカビエルの魔力も絡んでおり、解除するにはコカビエルを倒さねばならなく

なっていた。

 

援軍は間に合わず、自分達でどうにかしないといけなくなった彼女達は一斉に

コカビエルに向かおうとすると、統合した聖剣をバルパーから渡されたフリードが

立ちふさがった。

 

「ヘイヘイヘイ!ボスと戦いたくば、俺様を倒してからにするんだな!

 まぁ、もっともチョー素敵仕様になったエクスのカリバーちゃんと最高の俺様が

 合わさった事で、ボスに辿り着く前にお前らみんなチョンパしてやりますけどねぇ!」

 

4本の聖剣の力が合わさった一振りを使用できる事に興奮を感じているフリード、

元はエクソシストであった彼でも聖剣には憧れを持っていたらしく、

それが抑えきれずに、いつもより感情がハイになっていた。

 

フリードの持つ異形の聖剣を見たゼノヴィアは隣に並んでいた祐斗に話しかけた。

 

「なぁ、グレモリーの『騎士(ナイト)』、共同戦線の話が生きているならば、

 共にあれを破壊してもらえるか?」

 

その言葉に虚を付かれた祐斗

 

「──いいのかい?」

 

ゼノヴィアは不敵に笑い言い放った。

 

「最悪、あの聖剣の中核である『コア』の破片さえ回収できれば、修復は可能なんでな。

 それに、アレはもう聖剣であって聖剣でないモノ──使い手によってそれが聖剣なのか、

 そうでないかが変る──アレはもう異形の剣だ」

 

「くくく・・・確かに君たちから見れば、そう思えるかもしれないが、

 私にとっては最高の『聖剣』だよ」

 

彼女の言葉を聞いて苦笑するバルパー。

 

「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』の生き残り──いや、正確には貴方達に殺され、

 悪魔に転生したことで生きながらえている」

 

自身の過去をバルパーに告げる祐斗、その目は憎悪の炎を宿していた。

 

「ほぅ、あの計画の生き残りか。これは数奇な運命だな。こんな極東の地で会うことに

 なろうとは──縁を感じるな」

 

見る物すべてに嫌悪を与えかねない笑い方だった。

 

そして、そのまま祐斗に聞かせるように彼は語りだした。

 

自身は聖剣が大好きで、夢に出るほど愛おしく、幼少の頃からエクスカリバーの伝記に

心を躍らせ、将来は担ぎ手になる夢を抱いていたのだが、自身に聖剣使いの

適正がなく、絶望に落とされた。

 

そして彼は、聖剣を扱える者に憎悪、嫉妬を抱いていたのだが、次第にソレは薄まり、

逆に憧れを感じ始め、その想いは高鳴り──自身で聖剣の担ぎ手を人工的に

創り出す研究をはじめた。

 

──そして、彼は完成に至ったのだ、祐斗達のおかげで。

 

聖剣を使うに必要な因子がある事に気が付いた彼は、被験者をもう一度検査にかけた結果、

全員がその因子を持っていたのだが、エクスカリバーを扱えるほどの数値ではなかった。

 

そして、彼は1つの結論に至ったのだ『それを抽出し、集める事はできないのか?──と』

 

「──読めたぞ、聖剣使いが祝福を受ける際に体に入れられるもの──」

 

「ご名答、流石は聖剣使いの少女。因子を持っている者達から抜き取り、結晶を

 作ったのだ──ソレがコレだ」

 

そう言ってバルパーは懐からゴルフボールぐらいの大きさをした光り輝く球体を取り出し、

彼女たちに見せ、話を続けた。

 

これによって彼の研究は飛躍的に向上したのだが──教会の者はそれを異端とし、

研究材料、資料を全て回収し彼を排除したのだ。

 

「貴殿を見る限り、研究は続けられているという事か──ミカエルめ、私を断罪しておいて

 未だに聖剣使いを増やしているとは、まぁ、あの天使ならば因子を抜き出すにしても、

 殺しまではしない分、私より人道的と思えるが──所詮何かの犠牲無くば、

 何も生まれないのだよ」

 

愉快そうに笑うバルパー、それを聞いて全員が分かった──現時点で人工的な

聖剣使いを増やすには、犠牲を伴うという事を。

 

「──同志たちを殺して、聖剣適正の因子を抜いたのか?」

 

祐斗の言葉一つ一つに殺気が篭っている。

 

「そうだ、この球体はその時のモノだ、フリード達に3つほど使ってしまって、

 残ったのはコレだけだ」

 

「フフフ、俺以外の奴等は途中で因子に体が付いていかずに、みんな死んじまった!

 やっぱ、俺様は特別だから耐えられたわけよ!」

 

彼の口ぶりでは、他に因子を貰った者がいて、耐え切れずに全員死んだ事になる。

 

「バルパー・ガリレイ、お前は、自身の研究、自身の欲望の為にどれだけの命を

 もてあそんだんだ・・・・!」

 

怒りに震える祐斗

 

「ふん、そんなの数えていないな──よく知っておくんだ小僧。世の中には、

 何かの犠牲なくして、自身の夢や欲望を叶える事が出来ないと云う事を──な。

 この世は色々な人間の犠牲の上に出来ているのだ──小僧、貴様とて、

 同志の犠牲の上で脱走でき、生き永らえているのだからな。

 ──まぁ、この結晶は貴様にくれてやる。環境さえ整えば、結晶の量産できる

 段階まで研究は来ている──だから、その前の景気付けにこの街から破壊しよう

 そして、聖剣使いを量産し、統合した聖剣を用いてミカエルやヴァチカンに

 攻め込むとしよう──ああ、私を断罪した彼らに私の研究成果を見せ付けてやるのだ」

 

バルパーは唄うように続ける

 

「さぁ、戦争を再開しようではないか──」

 

バルパーがコカビエルと組んだ理由は、お互い天使を憎み、戦争の再開を望んでいる事。

 

バルパーの投げた結晶は祐斗の足元に転がっていき、祐斗は身を屈めてソレを

手にした。

 

哀しそうに、愛おしそうに、懐かしむように結晶の表面を撫でた。

 

「・・・・皆・・・」

 

祐斗の頬には涙が流れ落ち、その表情は悲哀に満ちていた。

 

すると、結晶が淡い光を発行し始め、その光は徐々に徐々にと広がっていき、

校庭を包み隠すほど拡大し、校庭の地面の各所から、光がポツポツと浮いてい、

人の形を生成していく。

 

彼を囲むようにして表れたのは、青白く淡い光を放つ少年少女達だった。

 

この戦場に漂う様々な力が、因子の球体から魂を解き放ったのだ。

 

「僕は・・・僕は!」

 

祐斗は彼らに懺悔するように言葉を搾り出した。

 

「ずっと、ずっと思っていたんだ、僕だけが生き残っていいのかと──。

 僕より夢を持った子がいた、僕より生きたかった子もいた。

 僕だけが平和な暮らしを過ごしていいのかって──」

 

淡い光を放った一人の男の子が微笑みながら、祐斗に語りかけた。

 

──泣かないで、僕達は僕達の意思で君を助けたかったんだ、だから"生きて"

 

その言葉に涙を流し続ける祐斗。

 

彼の表情を見て、少年少女達は顔を見合わせると、口をパクパクと

リズミカルに同調させていった。

 

「──聖歌」

 

一誠の隣で彼らを見守っていたアーシアが呟いた。

 

彼らは聖歌を歌っている、祐斗も懐かしむように口ずさむ。

 

この歌は被験者となり、辛い人体実験を乗り越えるために唯一希望と夢を

保つために手に入れたモノ──過酷な生活で唯一手に入れた生きるための糧。

 

そして、青白い光が祐斗を優しく、温かに包み込み──

 

昇華されていく彼らの魂は天へと昇り、ひとつの大きな光となって

祐斗を包み込んだ。

 

「──ああ、ありがとうみんな。これからは──一緒だ」

 

『神器』、所有者の想い、願いが、この世界に漂う『流れ』に逆らうほどの

劇的な転じ方をした時、『神器』は成長する。

 

──そして彼は『禁手(バランス・ブレイカー)』に至った。

 

皆に励まされた祐斗は、同志達と魂を一体化させ、昔達せなかった想い、願いを

胸に、自身の『神器』と魂を同調させ、カタチをなしていく。

 

彼の右手にには、神々しい光と禍々しい光両方を併せ持つ一振りが表れていた。

 

それは、彼が『禁手』に至る事で発現させた、聖と魔を有する剣。

 

──『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)

 

それを手にフリードへ斬りかかり、戦闘を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育館の屋根の上で、一部始終を観察していたひしぎとソーナ、

本当はすぐさま参戦する予定だったのだが、横槍を入れれる雰囲気ではなかったため

ここで待機していたのだ。

 

「聖と魔を宿す剣ですか──相反する力を一つに、中々興味深いですね」

 

ほぼ有り得ないとされていた聖と魔の融合を裕斗はやってのけたのだ。

 

「ええ、この現代においては恐らく彼が初かと」

 

ひしぎの言葉に相槌を入れるソーナ、自身達は悪魔故に、聖の力を宿すモノには

触れれば怪我をする──だけど彼は、その常識を覆したのだ。

 

悪魔であっても聖剣を使役できる存在──それは、同族同士の戦いに置いても

アドバンテージを手に入れ、優位性を誇れる。

 

(そして、『騎士』だから余計に手に終えなくなりそうですね)

 

今後の事を見据えると、少し背筋に悪寒を感じたソーナ。

 

そして、二人の視線の先では、フリードと裕斗は斬りあっており、

途中からゼノヴィアまでもが参戦した。

 

4つの聖剣の特性を駆使して裕斗を翻弄するが、冷静さを取り戻した

彼に全て捌かれていた。

 

すると、ゼノヴィアは何かを唱え始めると空間に手を突っ込み、一振りの大剣を

取り出した。

 

「──っ!まさか、デュランダル!」

 

その剣を知っていたソーナは驚きの表情を隠せなかった

 

デュランダル──かの、聖剣エクスカリバーに並ぶ聖剣の一つであり、

破壊力においては、エクスカリバーを超えると噂をされている。

 

そして、このデュランダルは本物であり、本来ゼノヴィアはこの剣の担ぎ手であり、

エクスカリバーは兼任していたに過ぎなかったのだ。

 

ひしぎもその剣の名前は聞いた事があった。

 

「その名前でしたら、私も昔聞いた事があります──聖剣の中でも一番の暴れん坊だと」

 

触れるもの全てを切り刻み、担ぎ手であるゼノヴィアの言う事も聞かず、

危険極まりないので異空間に封印されていたのだ。

 

「私も、本物は初めて見ました──まさか、こんな所でお目にかかるとは」

 

対悪魔兵器の一つであり、悪魔ならば誰もが知っている剣。

 

「流石に、あの聖剣ではデュランダルには耐えられないようですね」

 

十分な力を要したエクスカリバーだが、本物の聖剣には敵わず、一薙ぎで砕き割られたのだった。

そして、入れ替わりに懐に潜り込んだ裕斗にフリードは斬られ、

鮮血を噴出しながら倒れこんだ。

 

そして、その光景を見たバルパーは何かを悟り、言い放とうとしたが、コカビエルの

光の槍に貫かれて絶命した。

 

その彼は、眼下にいるリアス達に何かを言いはなち、漸く腰を上げた。

 

「来い──リアス・グレモリーとその眷属達、俺を楽しませてくれ」

 

そうして、第2ラウンドが開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアスは一誠から力を譲渡してもらい、特大の滅びの魔法をコカビエル目掛けて放つが、

堕天使のオーラの源である光力を両手に集中させ、時間は掛かったが

その特大の一撃を防ぎきった。

 

「フフフ、フハハハ!いいぞ、今の一撃は中々痺れた!流石はサーゼクスの妹。

 兄に負けず劣らずの才能を持っているようだな!」

 

魔法を受けた際に全てを相殺しきれず、ローブはボロボロとなっており、

所々両腕に傷が出来ていた。

 

「その調子で俺を楽しませてくれ!」

 

両手に光の矢を生成すると、リアス目掛けて放つ──自身のキャパシティを超えて

撃った為、身動きが取れないリアスの眼前に朱乃が入り込み、防御壁を展開、

そしてそのまま、予め術式展開していた攻撃魔法を起動させる。

 

「雷よ!」

 

「次は貴様か!バラキエルの娘よ!」

 

天から降ってくる、雷の嵐を翼の羽ばたきによって消滅させる。

 

「──っ!私をあの者と一緒にするなっ!!」

 

激昂した朱乃は、雷を連発するが、全て翼によって薙ぎ払われていく。

 

バラキエル──堕天使の幹部の名前であり、『雷光』の二つ名をもつ雷の使い手。

単純な戦闘力では、総督であるアザゼルに匹敵するほどの力の持ち主であり、

朱乃はそんな彼の娘であり、とある事情から決別し悪魔となった。

 

リアスは漸く動けるようになったと同時に、朱乃を援護すべく、

滅びの魔法を連発して彼の逃げ道を奪おうとするが、

 

「先ほどの威力ではまだしも、こんな威力じゃ蚊すら殺せんぞ!」

 

そう言って朱乃の雷を翼で軌道を変え、リアスの方に。

リアスの魔法も翼で消滅させず、弾き朱乃の方に飛ばした。

 

「きゃ!」

 

「くっ!」

 

一瞬の事で、咄嗟に防御術式を展開するが直撃を受け、

二人とも地上に落ちる。

 

その様子を見ていた、ゼノヴィアは一気に走り出し、祐斗の隣を通り過ぎ

 

「一緒に仕掛けるぞ」

 

と呟き、デュランダルをコカビエル目掛けて振るが、一瞬で反応した彼は手に

光の剣を生成すると、その一撃を止めた。

 

「やはり、この輝きは本物──しかし、当たらなければどうという事はない!」

 

もう片方に担いでいた『破壊の聖剣』を放とうとするゼノヴィアだが、

コカビエルは空いている手で魔法の波動を放ち、彼女の体を浮き上がらせると、

そのまま腹部に蹴り入れ、吹き飛ばす。

 

「ぐっ!」

 

吹き飛ばされたゼノヴィアは一旦、空中で姿勢を立て直し、地面へ着地すると、

再度突撃を掛ける──今度は裕斗もタイミングを合わせ、同時に斬りかかった。

 

「ほぅ!聖剣と聖魔剣同時に来るか!いいぞ!面白い、実に面白いぞ!

 そのぐらいでなければ俺は倒せんぞ!」

 

空いていた、もうひとつの手にも光の剣を生成し、二人同時の剣舞を

捌いていく。

 

4つの剣を2本の剣でうまく捌いていき、剣の技量さえも祐斗、ゼノヴィアより

高かった。

 

ゼノヴィアの上段攻撃、裕斗の下段攻撃の同時攻撃を斜めに跳ねるだけで回避し、

反撃を入れようとしたその時──小猫が拳を打ち込んだ。

 

「ぬぅ!」

 

予想外の追撃に合い、何とか光の剣をクロスさせ直撃は防いだものの、

剣は砕かれ、土煙を上げながら、吹き飛ばされる衝撃に足で踏ん張りながら、

数メートル彼らと距離を開け停止した。

 

「まさか、こんな力があったとは──やはり戦闘では何が起こるか分からんな!」

 

吹き飛ばされたコカビエルの顔は歓喜に震えていた──ただの打撃で

これほど飛ばされたのは戦後初だったのだ。

 

「──そら!これはソノお礼だ!」

 

両手に剣をもう一度生成し、翼を鋭い刃物化させ、小猫に突撃を掛けた。

コカビエルの突撃スピードは遥かに予想を超えた速度であり、祐斗とゼノヴィアは

小猫を守ろうとするが、一瞬で彼女は切り刻まれ吹き飛ばされ、

地面に叩き付けられた彼女の体からは鮮血が噴いていた。

 

「小猫ちゃん!」

 

「余所見する余裕はあるのか!」

 

コカビエルはそのまま、隙を見せた祐斗の腹部に膝をめり込ませ、崩れ落ちた所に

もう一度蹴りが入り、彼は耐え切れるはずもなく地面へ転がった。

 

その勢いのままゼノヴィアを斬りつけるが、デュランダルと『破壊の聖剣』で

受け止められるが、そのまま翼を駆使して体中を切り裂いた。

 

「くそっ・・・!」

 

体中血飛沫を上げながら崩れ落ちるゼノヴィア。

 

「死ね!」

 

ゼノヴィアに止めを刺そうと光の剣を振りかぶるコカビエル

 

「──させない!聖魔剣よ!」

 

祐斗の叫びの答えた剣は、コカビエルの足元から剣山のように地面から刀身が生え、

咄嗟に後方に飛び、回避した彼の周辺を聖魔剣で固める。

 

「無駄だ!」

 

幾重にも張り巡らされた剣群は、コカビエルの翼によって全て砕かれた。

 

「その程度の強度では、閉じ込める事は不可能だ!」

 

祐斗は、攻撃態勢と整える前に肩へ切りかかろうとするが、

コカビエルは剣を消し、二本指の間に刀身を挟み止めた。

 

「──なっ!でも、まだだ!」

 

空いている片方の手に聖魔剣を生成し、切りかかるが、こちらも

空いているほうの手で同じように止められた。

 

「──っ!これはどうだ!」

 

口元に器用に剣を生成し、柄の部分を口に咥え振るった──

 

流石に虚をつかれたコカビエル咄嗟にバックステップを使い、後方に

回避したが、避け切れておらず頬に線の切り傷が出来た。

 

「しかし、よくも貴様ら仕える主を亡くして、お前達神の信徒と悪魔はよく戦う」

 

そのコカビエルの一言に追撃しようとした祐斗含めて全員固まる。

 

「・・・・・どういうこと?」

 

リアスの呟きに、コカビエルは心底笑い始めた。

 

「フフフ、フハハハハハ!そうか、そうだったな!お前達下々には真相が

 語られていなかったんだな!なら、冥土の土産だ、教えてやる。先の三つ巴の戦争で、

 四大魔王と共に神も死んだのさ!」

 

彼は愉快そうに語った──神が死に、その世界の均衡を守るべく、彼ら三大勢力のトップは

神の死を隠したのだと。

 

人間は神が居なくては心の均衡、法や定めすらも機能しない不完全な者といい、

どこから漏れるか分からないからこそ、堕天使、悪魔さえも

下々の教えるわけにはいかなかったと言い放つ。

 

各陣営は戦後の疲弊状態は凄まじく、人間に頼らねばならなかった為の措置だった。

 

その言葉にアーシアと血溜まりに沈んでいたゼノヴィアは放心状態となる。

彼女達は今の今まで神の存在を信じて生きてきたのに──全てを否定された。

 

「そんな中途半端に、振り上げた拳を下げることなんて、くそ喰らえだ!

 ふざけるな!俺たちは負けていなかった!あのまま継続していれば、

 我ら堕天使の勝ちだったんだぞ!人間の『神器』に頼らねば生きていけない

 堕天使に何の価値がある!だからこそ俺たちは立ち上がったのだ!」

 

部下の大半を戦争で亡くしたアザゼルは『二度目の戦争は無い』と言い放ち、

各陣営も疲弊しきり、神と魔王を失ってまで継続する理由は無かったのだ。

 

耐え難い屈辱を味合わされたコカビエルは持論を強く語り

 

「だから俺一人でも戦争を再開する。お前達の首を土産に、あの日の再現を!

 俺達堕天使が最強だと、サーゼクスやミカエルに見せ付けてやるのだ!

 ──だから、お前達はその礎と成って──死ね」

 

コカビエルは空中に羽ばたくと、両手で特大の光の槍を生成する。

 

「──まずは、貴様ら二人だ、跡形も無く消し飛ばしてやる」

 

血まみれの小猫と放心しているアーシア目掛けて、槍を振り下ろした。

 

「小猫!アーシア!」

 

咄嗟に動ける者、朱乃、一誠が駆け寄ろうとするが光の槍の速度の方が速く

彼女達の脳裏に絶望が走る。

 

大きな光と共に、轟音が立ちこめ、周囲に居たゼノヴィア、祐斗、朱乃、一誠は

その余波で吹き飛ばされた。

 

数メートル吹き飛ばされた彼らの目に写ったのは、立ち込める煙とクレーター。

 

「──そ、そんな」

 

動けなかったリアスは腰を落とした──最愛の眷属が殺されたのだ。

 

「コカビエルゥゥゥゥ!!!!」

 

涙を流しながら、元凶を睨み付けるリアス。

 

「ふん、たかが眷属の一人や二人死んだだけで、そんなに憤るな。

 俺なんて100人は居た部下は、戦後にはたった10人だけだったんだぞ。

 ──たったそれだけで絶望など、甘すぎる。

 安心しろ、眷属全員皆殺しにした後、お前は最後に殺してやる。

 ──ああ、どんな声で泣くかが楽しみだ」

 

愉快そうに表情を歪めるコカビエル。

 

「──さて、お次はそこで放心している赤龍帝の小僧達だ」

 

爆心地を凝視しながら放心している一誠と裕斗に向けて、同じように

特大の槍を生成する。

 

「──じゃあな、赤龍帝。貴様の力はもう少し体験してみたかったんだが、

 とんだ期待はずれだ」

 

そう言い放ち、槍を投擲するモーションに入るコビカエル、すると──

 

「──ん?」

 

先ほど放った爆心地の煙から人影が薄っすらと浮かび上がってきていたのだ。

 

すると、煙の中から黒い1本の腕が出てきて、煙を払った。

 

煙の中から現れたのは、全身黒づくめの男、腰には大刀が納められており、

無表情のままコカビエルを凝視していた。

 

「──何者だ貴様」

 

「・・・・」

 

何も答えない男、その後ろには放心のままのアーシアと、治療が施されていた

小猫の姿があった。

 

「──答えろ!」

 

得体の知れない気配を感じた、コカビエルは光の槍を男──ひしぎ目掛けて

投擲した。

 

ひしぎは避けるそぶりも、慌てるそぶりも見せず、腰にかけていた大刀の

柄に手を掛け、居合いの形を取った。

 

──そして

 

「──コレが貴方の初陣です『夜天(やてん)』」

 

そう、大刀に語りかけると鞘から見えていた刀身が光り輝き、

 

──そのまま大刀を振り抜いた。

 

光の槍は一瞬でその光の斬撃に砕き割られ、そのままコカビエルヘ

 

「ぬう!」

 

自身の槍が砕かれた瞬間、その中から光の洪水が見え、咄嗟に本能で体を

捻ったが──

 

「うおおおお!」

 

光の放流を避け切れず、右腕の付け根から下と、片方の翼全てを両断された。

翼と腕を失い、空中でのバランスが取れなくなったコカビエルは、

苦痛を声に出しながら地上に落下した。

 

「──な、なにが起こったの」

 

状況が把握できないリアス、その瞬間ソーナが隣にの来た。

 

「リアス、今のうちに眷属達に応急処置を」

 

「で、でもまだ戦いは」

 

「いいえ、もう決着も付いたも同然です」

 

ソーナの視界に映るのは、地上に落下したコカビエルが切断面を必死に抑えており、

その傍までひしぎは既に移動していた事。

 

(よほど小猫さんがボロボロにされた事に、怒ってるみたいですね)

 

ひしぎの醸し出す雰囲気を読み取ったソーナは、少し心が痛くなった。

 

(──っ、どうして痛みが?)

 

その痛みがどういったモノか、まだ把握できていないソーナ。

 

──それは小猫に対しての嫉妬だった。

 

そんな事を今まで感じた事が無かったため、困惑しながらも、倒れている

ゼノヴィアや小猫の介抱を始めた。

 

 

 

「き、貴様!よくも俺の翼と右腕を──っ!」

 

憤怒の形相をしたコカビエルが震える両足に力を入れ立ち上がった。

 

「──殺してやる!殺してやるぞ!」

 

残った左手で光の剣を生成し始めるコカビエル、流石に痛みにより

集中力が続かないのか、先ほどまで一瞬で造り上げた剣でさえ、時間が掛かっていた。

 

それを無表情で見つめていたひしぎは、顔を少し振り返りながら小猫の

様子を視界に入れ──向き直り、漸く喋りだした。

 

「──しかし、貴方も不運ですね。私の教え子に手を掛けるとは、

 もう、楽に死ねるとは思わないでください」

 

 




こんにちは、夜来華です。

始めに、ひしぎさん無双を期待していた読者様、本当に申し訳ございません。

今回最初から介入させてもよかったのですが、木場君の『禁手』イベントが
合った為、話の構成上どうしても外せなかったので、こういう構成に
なりました。

本当に期待していた方、すみません。

感想、誤字脱字、一言頂けると嬉しいです。

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