ハイスクールD×D 黒の処刑人   作:夜来華

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圧倒的な存在感

見るもの全てに威圧感をかける鋭い眼光

暴風のように吹き荒れる放出された魔力

姉様から聞いていた、けど、実際に、それは──恐怖の塊でしかなかった。


第13話 レヴィアタン

鉛色でどんよりとした上空に、突如として転送魔方陣が出現し、

その中から黒いローブに身を包んだ魔術師ににた者達が、大量に出現し、

その数は勢いを増し、上空から、校庭の至る所までびっしりと人影らしきモノが

現れた。

 

そして其の者たちは一斉に掌、杖、などを新校舎にある職員会議室に向けられ、

魔力弾を生成し、一斉に射出した。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

一誠が気がついたときには、会議室の雰囲気がガラリと変わっていた。

 

ミカエルとガブリエルは窓の外を凝視し、サーゼクスとセラフォルーは

グレイフィアと真剣な面持ちでなにやら相談していた。

 

オーディンはさほど変わらず、イスに座りながら寛いでいた。

 

すると、自身に気がついたアザゼルがこちらに近づきながら声を

掛けて来た。

 

「お、赤龍帝の復活か」

 

その言葉に疑問を持った一誠は周囲を見渡してみると、動いている者と

停まっている者に分かれている事に気がついた。

 

各勢力のトップは全員動けており、他に動いている者は

 

ミカエルの加護を持つイリナ

 

イレギュラーな聖魔剣を宿している祐斗

 

聖剣デュランダルを発動させているゼノヴィア

 

戦乙女の祝福を持つロスヴァイセ

 

『白龍皇』であるヴァーリ

 

『赤龍帝』である一誠

 

一誠の手に触れていたお陰で動けるリアス

 

そして、気づかないうちにひしぎに"浄化"の加護を掛けられているソーナ

 

ソーナと同じように"浄化"の加護を持つ小猫

 

のメンバーのみだった、朱乃や椿姫、アーシアやシトリー眷属は全員

停まったままの状態だった。

 

「な、何があったんですか?」

 

流石の一誠もただ事ではない雰囲気を感じ取っていた。

そして、それに答えたのがアザゼル

 

「テロだよ。テ・ロ。ほら窓の外を見てみろ」

 

アザゼルは焦る様子を見せずに淡々と答え、一誠に窓を見るように言った。

一誠は言われるがままに窓に近づくと

 

──眩しい閃光が眼前に広がった。

 

「わっ!?」

 

突然の閃光に後ずさる一誠、そして眩しそうに目を窄めて窓の外を

見てみると

 

「──うそだろ・・・」

 

至る所に人影があり、その全員がこちらへ向けて攻撃を行っているのだ。

理解が追いつかない一誠に、アザゼルはまたも言葉を砕きながら

説明し始めた。

 

「世の中にはな、大きな勢力が手を結ぼうとすると、それを嫌がる連中は

 必ず存在するんだ」

 

今まで睨み合っていていた勢力が手を組む事によって、それらと

敵対している所が手を出しにくくなるのだ。

 

だからこそ、会談さえ潰せばその和平の道はなくなる──と、浅い考えを

持つ者がこういう行動を起こしてくるのだと、説明し。

 

今は3勢力のトップが自ら強力な防御結界を張っているため、

被害は出ていないといいながらも、長引くと不利になると言った。

 

理由は、先ほどの時間停止である。

 

彼らが調べた所、外に居る3勢力の軍勢たちは全て停まっており、

上級、最上級クラスが居ないにせよ、外に待機している全ての戦力が無効化されていた。

 

そして、その原因はリアス・グレモリーの『僧侶』ギャスパーのもつ『神器』

停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』が強制的に『禁手(バランスブレイカー)』状態にされ、

制御できずに暴走と云う形で発動させられたのだ・

 

本来なら使い手よりも上位の実力者は止めることができないのだが、時間が経つにつれ

出力が上がってきており、後数分もすればトップの内の誰かさえも

止めてしまうほど効力だった。

 

結界を張っているにも関わらず、敵は内部にいとも簡単に侵入してくる。

そして倒しても倒しても途切れる事無く、転移を繰り返してくる。

タイミングといい、テロの仕方、運用する戦力の規模を考えると、

内情を知っている者が手引きしている可能性があると指摘し、

このままずっと同じ事の繰り返しでは、現状ではまだまだ余力はあるが

いずれ体力、魔力が底をつき、敗北は目に見えている。

 

だからこそ、アザゼルは現状を打破するために提案をだした。

 

自分たちトップは下調べや結界の維持で動けないためここで囮になり、

ここでできる限り篭城戦を仕掛け、相手の黒幕の痺れを切れさせ、

出現した所に一気に殲滅する事。

 

そして、囮となっている間に数名が、ギャスパー・ヴラディの奪還する事。

 

奪還メンバーはリアスと一誠が立候補して、すぐさま作戦は開始された。

 

 

 

 

(ひしぎさんは・・・恐らく大丈夫ですよね)

 

内心、向かいの校舎の自室に住んでいるひしぎの安否が気になるソーナだが、

あの強さを見た後なので、生きているとは確信しているが、

危険人物である彼を敵が野放しにしておくか──答えは否だ。

 

どの勢力でも彼の存在、力を危惧している。

 

本人自身は気にしている様子ではないが、事情を知ってる身としては

心情に悪い。

 

本当ならば、すぐさま駆けつけたいところだが自分自身の力では一時的な突破は

可能だが、圧倒的な兵力の前に成すすべなく包囲殲滅されるのは目に見えていた。

 

だから今は彼の身を案じながら事態の打破を考えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

転移の準備をしている間、アザゼルはヴァーリに成功確率を上げる為に、

外に出て敵の注意を引き付ける様に指示をだし、

了承したヴァーリは『禁手化(バランス・ブレイク)』を発動させ、

全身白き鎧に包まれ、会議室の窓を開け、敵陣へ吶喊した。

 

稲妻の様な軌道を取りながら、敵を薙ぎ払い、切り裂き、一方的に

蹂躙を開始する。

 

敵も迎撃体勢をとるが、まったくスピードに追いつけず

その数を減らしていく──が、連続転送により敵が大量に転移してくる。

 

その光景を見ていたサーゼクスがアザゼルに向き直り

 

「アザゼル、先ほどの続きだ。神器を大量に集めて何をしようとしていた?

 『神滅具(ロンギヌス)』の所有者も何名か集めたそうだな。

 神はもういないのにどうして神殺しの武器を集めていたんだ?」

 

サーゼクスの意見はもっともであり、他の者もいつの間にか

アザゼルの答えを待っていた。

 

すると、アザゼルは首を横に振り否定した。

 

「いや、備えていたんだ」

 

「備えていた? 戦争を否定したくせに随分不安を煽る物言いですね」

 

あきれたようにミカエルが返す。

 

「さっき言ったように、俺はお前たちと戦争をするつもりは無かった。

 こちらからも戦争を誘発するような事はするつもりはない。

 ──だが、自衛の手段は必要だ。別にお前たちに備えてじゃなかった」

 

「と、いいますと?」

 

「──『禍の団(カオス・ブリゲード)

 

聞いた事もない組織の名前であり、サーゼクスとミカエルは説明を求めた。

 

アザゼルは隠す事無く、知っている情報を語りだした。

組織名、背景が判明したのはごく最近で、堕天使側の副総督であるシェムハザが

不審な行動を取る集団に目をつけ情報収集。

 

構成員の半数以上は3勢力の危険分子であり、中には『禁手(バランスブレイカー)』に

至った神器もち人間、『神滅具(ロンギヌス)』の担ぎ手も数人確認されていた。

 

「奴らの目的は、秩序の破壊と混乱だ。分かりやすい連中だろ? この世界の

 平和が気に入らない──ただのテロリストさ。ただ、最大級に性質が悪い。

 奴らの親玉が──『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』と『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の

 力を凌駕する最強で、最悪のドラゴンだ」

 

「──っ!」

 

アザゼルと一誠以外を抜いた全員が言葉を失っていたのだ。

 

「──そうか、彼女が動いたのか。『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』、オーフィスが。

 神が恐れ、この世界が出来上がったときから、最強の称号を持つ龍」

 

流石のサーゼクスも顔の表情を険しくされており、一誠にも事の深刻さが伝わった。

誰もが言葉を発せずいた部屋の中に、聞きなれない女性の声が割り込んできた。

 

「そう、オーフィスこそが我々『禍の団(カオス・ブリゲート)』の象徴!」

 

声と同時に部屋に光が生まれ、そのまま魔方陣を形成していく

それを見たサーゼクスが急いでグレイフィアに指示を飛ばし、リアスと一誠を

ギャスパーの囚われている旧校舎へ転送した。

 

「──レヴィアタンの魔方陣」

 

形成されていく魔法陣を見ながら、サーゼクスはそう呟いた。

他のものも表情を険しくさせながら、魔方陣を睨みつけていた。

 

そして、形成が終わりその中から褐色の肌で深いスリットに身を包んだ女性が

現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・さて、どうしたものでしょうか」

 

新校舎のむかい側にある校舎の屋上から、職員会議室の様子を観察している

ひしぎの姿があった。

 

既に周りには鮮血に混じって体の一部と思わせるような肉片が、撒き散らされており、

至る所に無惨に切り裂かれた魔術師たちの骸が転がっていた。

 

ひしぎは見つからないように、不可視の結界を張り彼らの眼をやり過ごして

状況の確認と、ソーナと小猫の生存を最優先で確認していたのだ。

 

そして、彼女たちは魔王達の結界に守られているため、

下手に救出するより、静観していたほうがいいと考えていた。

 

眼前に大量に沸いて出てくる敵の強さは、壬生の下級戦士から中級戦士と

いった混成部隊。

 

悪魔側の強さで言うと、中級から上級手前のクラスである。

 

現段階では突出した強さを持っている相手は、行き成り会議室に現れた

女性のみだった。

 

「これぐらいならば、私の出る幕は──ありませんね」

 

相手一人だったらあそこに居る各勢力のトップが何とかするだろうと

結論付けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現れた女性はカテレア・レヴィアタンと名乗り、先代魔王レヴィアタンの

血を引く者であった。

 

現魔王達は名を引き継いでいるが、血縁者ではなかった。

戦後、冥界では四大魔王が滅びた後、新たに魔王を立てようとしたとき、

血縁者ではなく、魔王にふさわしい器、即ち"強さ"を持った人物を選ぶことになったため、

この決定に意を唱え最後まで徹底抗戦を取ったのが、旧魔王の血を引く者達だった。

 

候補として8名ほど選ばれ、その中には血縁者はおらず、

最終的に4人の候補者が降り、魔王が決定したのだ。

 

疲弊しきった悪魔側には余裕が無く、種の存続を急務としていたため、

実力行使に出て抵抗する旧悪魔側の一門を冥界に隅まで追いやり、新政権を樹立したのだ。

 

そして、カレテアは3勢力のトップを見回す挑戦的な笑みを浮かべ

 

「我々、旧魔王派のほとんどの者達は『禍の団(カオス・ブリゲート)』に協力する事に

 決めました」

 

これは、現魔王派に対する宣戦布告でも有り、クーデターである。

テロリスト集団と共に現世界を破壊し、オーフィスを力の新世界の象徴として

奉り、再構築した世界を自分たちが仕切りなおすと宣言したのだ。

 

「ふん、小娘が・・・・あまり粋がるなよ? 所詮オーフィスの『力』が無ければ

 小童共に喧嘩を売ることさえ出来ぬくせに」

 

「なっ・・・・!オーディン!?貴様!私を愚弄するか!」

 

オーディンの呟きに、挑発的は表情から一辺、険しい表情をつくり

今にも攻撃を加えようとする雰囲気を爆発的に発生させた。

 

その瞬間、オーディンの後ろで待機していたロスヴァイセが、

彼を庇う様にして陣取る──その眼は先ほどの弱々しい眼ではなく、

歴戦の戦乙女を沸騰させる眼だった。

 

カテレアは、全身から魔力のオーラを迸らせ、ロスヴァイセも全身に術式魔法と

精霊魔法を無言で展開する。

 

一触即発の空気が流れ──

 

「カテレアちゃん・・・どうして・・・」

 

セラフォルーがポツリと呟いた。

 

「セラフォルー!私から『レヴィアタン』の座を奪っておきながら、よくも

 抜けぬけと・・・・!正当な血筋である私こそが、魔王にふさわしかった!」

 

「カテレアちゃん・・・」

 

「まぁ、それも今日で終わりです!貴方を殺し、私が真の魔王レヴィアタンであると

 名乗りましょう──簒奪した罪は重いですよ? 貴方の一族を根絶やしにする事さえ

 生ぬるい・・・!だから、溺愛してる妹を貴方の目の前で殺してあげます!」

 

狂気を宿した瞳でセラフォルーからソーナへ視線を動かした。

 

「──っ! 確かに貴方に悪い事したと思ってる! だけどソーナちゃんは

 関係ない」

 

咄嗟にソーナの前に移動し盾になろうとするセラフォルー

 

「ね、姉様!」

 

困惑した声を上げるソーナ、本来ならばソーナがセラフォルーの盾になるべきだったのだ。

セラフォルーの身に何かがあった場合、現魔王側に『レヴィアタン』を受け継ぐ人物は居ない。

現政策は今の魔王達4人でギリギリ回っており、一人でも掛けると冥界の

バランスが崩れる事を意味するのだ。

 

「自身の身を第一とお考えください!」

 

ソーナは必死に懇願したが

 

「いやだ、ソーナちゃんが居なくなったら、この世界に私の生きる意味なんて無いんだよ」

 

「えっ・・・」

 

「それにね、姉は妹を守るために生まれてきたんだよ?

 だから、私に貴方を守らせて」

 

そうソーナに微笑みかけ、セラフォルーも全身に魔力を解放した。

その瞬間、部屋一帯の温度が急激に下がり、無機物のテーブル、窓、イスなどが一瞬にして

音を立てながら凍り始めた。

 

「──っ! 忌々しい魔力量です!」

 

魔力の猛吹雪に当てられたカテレアは全身から冷や汗をかきながら、

その場に踏みとどまった。

 

「ほれ、それが貴様とセラフォルーの力の差じゃ。現実を見よ。

 ──魔王の器は強さに比例しておるのじゃ。『レヴィアタン』の座は元より

 貴様に合わぬ」

 

その様子を感じ取ったオーディンが失笑する。

 

「北欧のくそ爺が! 冥界側の事情に口を挟むなぁぁぁあ!」

 

その瞬間、カテレアは一気に空中を蹴り、オーディンへ向けて疾走し

魔力を滾らせた拳を振りぬいた。

 

しかし、その拳は届く事無く、ロスヴァイセが瞬時に展開した堅牢な防御方陣に阻まれる。

カテレアはそのまま振りぬいていない拳に魔力弾を生成し、邪魔な

彼女を先に葬ろうとした瞬間、目に入ったのは、

ロスヴァイセの周囲に無数の攻撃方陣が展開しており、既に発射寸前の状態と成っていた。

 

「速い・・・!」

 

流石にこの距離で全弾直撃を受ければ、只では済まないと瞬時に悟ったカテレアは

魔力弾を消し、防御方陣を張りながらバックステップで後退した。

 

「──撃ち抜け!」

 

ロスヴァイセ発した言葉により、ありとあらゆる性質と属性を兼ね揃えた光の奔流は

一瞬にしてカテレアを飲み込み、轟音と共に会議室の窓を破り、外で射線上にいる

魔術師達をも蒸発させ、学園を覆う結界にまで伸びると極太の砲撃は止んだ。

 

「流石と云うべきか、アンタの護衛は優秀だな」

 

咄嗟の判断力、魔力量、そして四大元素を元にした砲撃に、アザゼルは素直に

賛辞をおくる。

 

だが、ロスヴァイセの真剣な表情を浮べたまま、会議室の窓枠に近づき、

外の上空を見上げると

 

「今のは流石に危ない所でした。咄嗟に判断を間違えていたら

 どうなっていた事やら」

 

体中至る所に火傷を負い、せっかくのドレスがボロボロになっていたが

カテレアは健在だった。

 

そのまま無言で追撃に出ようとしたロスヴァイセ

 

「ロスヴァイセよもうよい。今回のわしらは外部の者じゃ、それ以上手を出す必要は無い。

 後はこやつらにまかせよ」

 

「──わかりました」

 

オーディンの言葉に頷きロスヴァイセは後退した。

 

「先手は取られてしまったが、ここは俺がやるか、サーゼクス、ミカエル、手を──」

 

アザゼルが一歩前に出て言い終わる前に別の声が割り込んだ。

 

「──私がカテレアちゃんをやります」

 

宣言したのはセラフォルーだった。

彼女はそう言うと、ソーナから離れ会議室の窓際まで来た。

 

「あの子がああなったのは私の責任でもあるから──だからけじめは付ける。

 だから誰も手出ししないで」

 

そういい残し、カテレアの待つ上空へ飛んでいった。

 

「お姉様・・・・」

 

ソーナはそう呟き、視線で姉の姿を追った。

カテレアが『禍の団』に協力するようになったのは原因は一概にも

セラフォルーだけの責任ではない、9割がた現政策の所為でもあるのだから。

 

それでも、彼女は負い目を感じていた。

 

だからこそ、彼女の相手は自分がしなければ成らないと悟ったのだ。

そのまま地面を蹴り、カテレアと同じ高さ目で飛び数メートル距離を取って

対峙した。

 

「──決着を付けようか、カテレアちゃん」

 

「──っ!貴様・・・!」

 

カテレアの瞳に映るのは──セラフォルーの顔には何の表情も浮かんでいなかった。

ただ真っ直ぐに漆黒の瞳で自身を映していた。

 

それを見た瞬間、カレテアの本能が危険信号を最大音量で鳴らしていた。

 

──危険だ、と。

 

いつもの彼女は何処に居てもどんな時でも、笑顔を絶やさなかった。

それは彼女を知っている者達は全員が知っていた──だが、

 

(今までとは全然纏う雰囲気が違う──違いすぎる!)

 

表情では何とか取り繕う事ができたが、内側から氷漬けにされるような

感覚に陥っていた。

 

それを振り払うかのようにカテレアは周囲に4つの攻撃魔方陣を展開させ、

闇属性を纏わせ、手の平をセラフォルーに向け4砲門同時に一斉砲撃を仕掛けた。

 

「消えなさい!」

 

真っ黒でマンホールの蓋とおなじ位の大きさの4つの砲撃は、セラフォルーに

向かってのび

 

──自身に迫り来る砲撃に焦る事無く、全身から魔力オーラを

迸らせ静かに呟いた

 

「──凍てつけ」

 

迫り来る4つの塊は、セラフォルーの少し手前で見えない壁にぶつかったと思うと、

着弾部分から魔力の砲撃が一気に凍り始めた。

 

そして一瞬にして周囲に浮かぶ攻撃魔方陣さえも凍ってしまい

 

「なっ・・・・」

 

何の動作もせず、ただの一言だけで自身の攻撃を止められたことに

驚きを隠せなかった。

 

「──っ!まだまだこれからです!」

 

もう一度新たな魔方陣を生成し、今度は自身の周囲とセラフォルーの四方に

先ほどの4倍の数を展開し、砲撃魔法ではなく、砲弾魔法に切り替え一斉に射出した。

 

バレーボールぐらいの大きさの弾は、セラフォルーの死角を含めた四方八方から

音速で襲い掛かるが、やはり、彼女に当たる一歩手前で全て凍らされ、

地上へ落下していく。

 

セラフォルーは一切防御魔方陣を使っていない、ただ自身の周囲に魔力を放出している

だけであり、その魔力に接触したカテレアの砲弾が勝手に凍りついているのだ。

 

それほどの力の差が彼女たちの間にあったのだ。

 

隙など与えないつもりで絶え間なく攻撃を続けるが、魔力壁を突破出来ていなかった。

 

敵の親玉を完全にセラフォルーが抑えており、その隙にオーディンとロスヴァイセ、

停まった者を除き、他の者達は全員校庭に降り立った。

 

ミカエル、ガブリエル、サーゼクスは残っている者達を守るために新校舎に

結界を新たに張り直した。

 

サーゼクスから周りの魔術師の排除を任かされた祐斗、ゼノヴィア、小猫とソーナは

2組ずつに分かれて、敵の中へ吶喊していく。

 

イリナとグレイフィアは結界を張る3人の護衛としてその場に待機、アザゼルは相手を

取られた鬱憤を晴らすかのように、上空を縦横無尽に飛びまわりながら

敵を減らしていく。

 

流石の魔術師たちも『白龍皇』と堕天使の総督であるアザゼルを相手に、

転移スピードが追いつけず、徐々に徐々にと数が減っていく。

 

頼みの綱のカテレアもセラフォルー相手に苦戦中で、敵側の指揮の低下は

否めなかった。

 

そして漸くセラフォルーが"動いた"

 

「もういいよね──カテレアちゃん」

 

その呟きと同時に足場にしていた魔法陣を蹴りる、その瞬間に彼女の姿がかっ消え、

気づいたときにはカテレアの目の前まで一気に距離を積め、右手で彼女の右手を

掴んだ。

 

「は、放しなさい!無礼者!」

 

手をつかまれて漸く自分が"捕まえられた"と認識したカテレアは

体を大きくゆすり、無理やり彼女の手を離させた。

 

元よりセラフォルーは彼女の手を軽く掴んだだけだったので、手を

引っ込めて距離をとった。

 

その表情は変わらず無表情である。

 

一方カテレアの方は触れられた事の嫌悪感を思い切り表情に表していたが、

体の異変に漸く気がついた。

 

「右手が動かない・・・?」

 

いくら右手を動かそうとしても動かなかった。まるで、右手の神経が切られたような

感じで感覚すらなかったのだ。

 

「セラフォルー!私の右手に何をした!」

 

「壊死させただけだよ」

 

さらっと、彼女は答えた。

 

「なっ・・・!」

 

触られた部分のドレスを左手で引きちぎって見てみると、褐色だった肌の色が

濃くて薄暗い紫色に変貌していた。

 

一瞬冷たいと感じた程度だったのに、その部分の神経と骨と肉が

壊死していることに気がつき、完全に生きている部分と遮断されてしまったので、

完全に右手が使い物にならなくなった。

 

(ここまでの差があるとは・・・・!悔しいですが)

 

完全に力の差を読み間違えていたことを悟ったカテレアは逆に思考が

段々と冷静に戻ってきていた。

 

目の前にいるセラフォルーはこちらをじっと見据えながら沈黙して

こちらの出方を待っている。

 

(何を考えている・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

(ごめんね、カテレアちゃん──)

 

セラフォルーは別に彼女に対して、情けを掛け様とは思わなかった。

最初からカレテアを()るつもりで望み、ただ単に、少し長くてかなりの

集中力の要る魔法の詠唱の為に時間稼ぎを行っているだけだった。

 

本来なら、大技一発で消し去る事が可能なのだが、その技の余波で

サーゼクス達3人が強力な結界を張っていても破壊してしまう恐れがあるのと、

校庭には自身の妹とその友達の眷属達もおり、巻き込まない自身は無く、

彼女たちを殺してしまう可能性があるからだ。

 

──それに彼もこの学校のどこかにいてるはず

 

あの時愚痴を黙って聞いてくれた存在を思い出し、迷惑を掛けないように

自制をかけたのだ。

 

(そろそろ、仕込みは終わり)

 

 

 

 

 

嫌な雰囲気を感じ取ったカテレアは咄嗟に胸元に隠して二つのビンを左手に隠し持った。

すると、セラフォルーが右手の掌を彼女に向け

 

「──出ておいて、『氷の氷槍(ダイヤモンド・スピア)』」

 

そう言葉を発した瞬間、

 

「がっ!?」

 

カテレアの全身に内側から食い破られるかのような激しい激痛が走った。

すると、体の至るとことから皮膚が盛り上がり、全身を絶え間なく刺激する。

 

激痛により空中の魔方陣が維持できなくなり地上へ落下するカテレア。

完全に受身が取れない状態で運よくだが背中から落ちたが、その衝撃で肺の

中に溜まった空気と鮮血が口から吹き出す。

 

「ガハッ」

 

痛みで思考が乱れ、意識が飛びそうなのを気力で繋ぎ止め自分自身の体に

何が起こっているのかを確認する為、頭を持ち上げぼやけた視界に映ったのは

 

体の至る所から無数の氷の氷柱(つらら)が"生えていた"

 

内部から肉を突き破り、褐色だった肌を鮮血に染め剣山の様にそびえ立っていた。

 

セラフォルーが初めて空中でカテレア対峙したときに、既に仕込が開始されていた。

放出した魔力で視認出来ないぐらいの氷の種を生成し、

こちらへ攻撃をしている最中に、それを彼女の周りに散布させ、目や耳、鼻から

一気に侵入させ、血管に入り込み全身へその種を循環させる。

 

魔力操作された氷の種は血管の中でお互いくっ付き合い徐々に肥大化していき、

ある程度の大きさになった瞬間に、セラフォルーの合図と共に、

外へ突き出ようとする力を生み出し、人体の内側を突き破って外に出たのだ。

その結果が、今のカテレアの成り果てた姿である。

 

「あ・・・・・あぁぁぁぁぁ!」

 

漸く事態を飲み込めたカテレアは己の体を食い破った氷に恐怖を抱き、

顔を歪ませて悲鳴を上げた。

 

表情一つ変える事無く上空から見下ろしているセラフォルー。

ただ、手には氷で出来た剣が握られていた。

そして彼女はそのまま剣を構えこちらに向け落下してくる。

 

(来る!・・・・どうにかしないと・・・!)

 

未だに内側から鈍い音と共に骨を砕き、肉を食い破る氷が増え続けており

 

(このままでは・・・死ぬ・・・!何もしないまま死ぬのは──嫌!)

 

心の底まで恐怖に染められたカテレアは、必死に左手を動かした。

腕を動かすたびに、ノコギリのようなもので肉を切られている痛みが走る。

 

それでも、彼女は最後の力を振り絞って握っていた二つの瓶を

血と涎でベトベトになっていた口の真上へと持ってきて、握りつぶした。

掌にガラスが食い込む痛みを我慢し、指の間から滴る己の血と、

真っ黒な"蛇"の形をしたナニカと透明の液体が口の中に入り込み、喉をならした。

 

3つの液体を飲み込んだ瞬間──すぼみ掛けていた目を見開き、

セラフォルーの剣が自身の喉へ到達する瞬間に体を思い切り右へ寝転がせ、

一回転したのち立ち上がり、地を蹴りそのまま距離を取った。

 

その行動のお陰で体に生えていた氷の氷柱は全て粉砕し、体には付いておらず、

食い破られた体中の傷は全て塞がり再生していた。

 

ただ、避けた拍子に剣の刃がかすり首筋には一線の傷があり血が流れていた。

 

地面へ剣を付きたてたままのセラフォルーがカテレアの方に向き直り、

その回復ぶりをみて悟った。

 

「フェニックスの涙ね」

 

「ご名答です。流石ですねこの薬は。あれほどの傷を一瞬にして

 治療、再生してしまうなんて」

 

そう、胸元に隠していた瓶の一つはあのいかなる傷をも瞬時で回復させる

『フェニックスの涙』だった。

 

彼女たち『禍の団』は裏ルートでこれを入手していたのだ。

 

「──そう、でも。貴方と私の力は歴然。直した所で、結果は見えてるよ?」

 

セラフォルーの言葉通り力の差は歴然であり、直した所で"先ほど"のままでは

また瞬殺される既知感が頭を過ぎるが──カテレアは不敵に微笑んだ。

 

そして、もう一度全身に魔力を迸らせると──先ほどとは大違いの

膨大な魔力のオーラは噴出した。

 

その質量はセラフォルーにも引けを取らない位になっていた。

 

「──その"力"、そのオーラ」

 

異常なまでに膨れ上がった魔力にこの戦いで漸く表情を

動かしたセラフォルー

 

それをみたカテレアは愉快そうに笑い、答えた。

 

「素晴らしいでしょ? この力はオーフィスがくれたモノなの。

 これさえあれば、例え力の差が開いてたとしても同等──いえ、それ以上の

 力を得ることが出来るのです──そして、今まででは使えなかった

 技すら可能となる」

 

カテレアは右手で首筋にある傷を掌で押さえ、血を大量に付着させる。

 

「今日、この場所でこの力を使い私は貴方を超える──!」

 

セラフォルーは、このまま彼女の思うままに行動させては拙いと悟り、

剣を構えて地蹴り疾走する。

 

「無駄です!」

 

心の臓を狙った突きを左手で剣を握られ難なく止められた。

セラフォルーは断じて手を抜いたわけじゃない──だが、止められたのだ。

先ほど触れられるま気づかなかった彼女には今回のセラフォルーの動きは"視えて"いたのだ。

 

そして握った手からは普通ならば刃を握っているため、触れている部分は斬れ

血が出るものだが、彼女の手からはそれすらなかった。

 

「──っ!」

 

止められた事実に、時間上0.1コンマだが勢いすら止めてしまった事により

彼女に隙を見せてしまう。

 

そして、カテレアはその隙を見逃さずに

 

「準備は整いました!」

 

剣を止めた左手を大きくしならせ、剣を弾き──自身もまた

バックステップにより、セラフォルーから大きく距離をあけ、自身の血が大量についた

右手で地面を叩いた。

 

「──我、レヴィアタンの血を引く者! 古の血の盟約により、

 封印されし『終末世界の象徴』よ!今こそ、その楔を解く!

 汝、我に従い、その力をもって我を守護し、我の敵を討ち滅ぼせ!

 ──我呼びかけに応えよ!『陸の魔獣王(ベヒーモス)』!」

 

カテレアの血で描かれた召喚魔方陣は、見るもの全ての視界を遮るような

光を放ち、濃い魔力を帯び、その瞬間魔方陣から魔力を纏った暴風が吹き荒れる。

 

セラフォルーは勿論、魔術師、それらを相手にしていたアザゼルとソーナ達は

身に重圧を感じるほどの魔力質量に動きを止めた。

 

「まさか・・・・」

 

サーゼクスは有り得ないと言った表情を作っていた。

 

「ほぅ・・・まさか、アレを召喚できるようになっていたとは」

 

旧校舎の窓際から静観していたオーディンの顔にも余裕が消えていた。

 

「おいおい・・・冗談だろ・・・」

 

アザゼルも全身から冷や汗を流しならが、魔方陣を凝視していた。

なぜなら、魔王すら凌駕する魔力質量を持った存在が、召喚魔方陣の

向こう側から近づいてきているのを肌が感じ取っていた。

 

徐々に徐々にとその存在は出口へ近づいてきており

 

 

 

その"魔獣"は一歩

 

 

 

また一歩と前進

 

 

 

魔方陣から鋭く漆黒の二本角が姿を現し

 

 

 

狼を沸騰させるような顔つきで──口にはびっしりと並んだ鋭い牙

 

 

 

四足歩行でありながら上半身に強大な体格を持ち

 

 

 

前足後足には、枷があり途中で切れている鎖を引きずりながら

 

 

 

カテレアの3倍以上の全長があり、ゆっくりと姿を現した

 

 

 

圧倒的な威圧感、魔力質量

 

 

 

陸の魔獣王(ベヒーモス)』はゆっくりとその獰猛な口を開け

 

 

 

「オオオオオオォォォォンン!!!」

 

 

 

轟音とも取れる咆哮を放ちながら──セラフォルーと対峙した。

 

 

 

 




こんにちは、夜来華です。

ひしぎの戦闘を想像していた方、申し訳ない。。。
完全に彼は気配を隠している話です。

やっぱり原作の主要キャラが動く場合、どうしても彼の存在感が
薄くなってしまう。

今回は原作乖離でレヴィアタン対決です。
原作やアニメでやっぱり戦って欲しかったので・・・書いてみました。
後、ロスヴァイセさんが既に強キャラ扱いです。

感想、一言頂けると嬉しいです。


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