Angel Beats! AFTER BAD END STORY   作:純鶏

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EP19 ― the mist is growing thicker

 《2011年5月25日07時20分頃:男子寮第3棟の3200号室》

 

 

 

 朝に朝食を食べ終えた私は、ふとカレンダーを見た。

 今日は5月25日。今日で、結弦くんと出会って2か月になる。

 

 

(もう2ヶ月になるのか……あっという間にもう6月になっちゃうなぁ) 

 

 時間の流れというものは早く感じてしまうものだけど、それだけに嫌なことだってある。

 カレンダーをめくると、4の数字を囲うように赤い蛍光ペンで丸が書いてある。その日は試験日。来週から中間試験だ。

 

 

「…………はぁ」

 

 

 ため息をひとつついてしまった。なにせ来週から試験が始まる。憂鬱にならないわけがない。

 でも、ただそれだけの理由ならため息なんてつかなかったかもしれない。

 

 そりゃ学校に行くことは面倒だけど、それ以上に何かしらの不安を抱えているせいなのかな。なんだか学校に行くというだけで、気が重くなってしまうなぁ。

 

 いつものように服を着替えて、 寝癖をとかし、可愛らしい髪紐で髪を結んで、カバンを持つ。いつもの日常へと私は歩き出すしかない。

 部屋にいる彼、結弦くんに“行ってきます”の言葉を告げずに。私は部屋を飛び出していく。

 

 歩く。長い階段を下り、扉を開ける。今日も外は晴れていて、風を感じさせられる。周りに誰もいないことを確認し、カバンを放り投げ、梯子を下りてカバンを拾った。

 

 

 学生寮を出て学校へと歩き始めた私は、ふと足を止めて学生寮の方へと振り返る。不安な気持ちが、私の意志を揺らすように歩ませようとする足を止めさせた。

 

 きっと、5階にある私の部屋で彼はまだ眠っている。何も知らずにこれからもずっと眠っているんだと思う。いつもの日常が変わるわけないと信じて。

 

 だからこそ、心が弱い彼だからこそ、私が守らなければならない。生徒会長に会わなければならない。

 

 私達人間はいつだって自分にとって大切なものを失わないように生きている。

 だけど、それは容易なことじゃない。簡単なことじゃない。

 それに、大切なものでさえいつか失ってしまうものもある。大切なものがこの先失わないなんて保証はどこにもない。

 

 だけど、失うものが何であれ、彼だけは失いたくない。誰にも奪わせなんかしてやらないと私は誓ったんだ。そう、誓ったんだけど……

 

 ……それでも、自分で自分の明日を選ぶことは、もう叶わないかもしれない。明日がどうなるかなんて分からないし、どうにもならないかもしれない。

 だって、自分の明日を選ぶ権限はもう誰かに支配されているのだから。自分が明日を選んでいるつもりでも、今を選んでいるつもりでも、選択肢なんてものは目の前に提示されて与えられたものしか選べない。学校なんてそんなものだ。ここにいる限り、選択肢は与え続けられるだけなんだ。

 

 

 生徒会長の持つ権限。知らないわけじゃない。先生にも劣らないような威厳や権力。絶対的支配者のような風格も持っている。そんな生徒会長に逆らうなんて、昔は考えられなかった。

 

 でも今は違う。生徒会長に違和感を覚えた今なら。私は学校へと歩めることだってできる。

 彼の明日を生徒会長に奪われてしまうかもしれないのなら。私は……

 

 私は顔を上げ、止まっていた足を動かして歩き出す。

 彼のことを想って、学校へと進んだ。

 

 

(待ってて、音無くん! 帰ったら、一緒に……)

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 《2011年5月26日08時40分頃:学習棟の第3棟の3階西男子トイレ》

 

 

 自分のクラスから逃げるように、柔沢に連れられては3階の男子トイレの中へと入った。柔沢が手を離したと思うとすぐにトイレの中の窓の方へと歩いては、閉まっていた窓を開けていた。どうやら柔沢はトイレの中の臭いはあまり好きではないのかもしれない。

 

 ……って当たり前か。トイレの中の臭いが好きなヤツなんて皆無に等しい。どちらかというと、トイレの芳香剤が好きという感じのやつならいそうだが。

 

 

「少し落ち着いたか? さて音無、いったい何があったのか話してくれ。このままじゃ、クラスリーダーとしてクラスの収拾をつけることもできないし、何よりお前の動揺ぶり。いったいどうしたんだ?」

 

「……すまない。ちょっと教室の中で色々あってさ。取り乱してしまったんだ。今は大丈夫だ、もう落ち着いたよ」

 

「そうか、まぁ落ち着いたのならよかったけどよ。それで?」

 

「実は、朝霧が昨日から行方不明なんだ」

 

「朝霧が行方不明だとっ!? 大丈夫なのかそれ?」

 

 

 オレの言葉を聞いて柔沢はひどく驚いている。そこまでは予想していなかったと言わんばかりの表情を浮かべている。

 

 

「わからない……昨日も学生寮には帰ってこなかった、みたいだ。それと今日の朝に教室には行ったんだがやはり来てなかった」

 

「それじゃあ、事故とかケガとか何かあったかもしれねぇな。医療棟にはいなかったのか?」

 

「それも思って医療棟にも行ったんだが、誰もいなかった。朝霧がいそうなところは一応全部行ってはみたけど、未だに見つかってないんだ」

 

「そうか、そりゃあ大ごとだ。無事だと良いが……」

 

「それで朝霧の知り合いに聞いてもみたんだが、朝霧を知らないって言われるし……なぁ柔沢、何か朝霧に関して知らないか? 特に昨日とか、朝霧と会わなかったか?」

 

「朝霧か……そういや昨日は教科書を忘れてE組のやつに英語の教科書を借りたんだが、HRが終わって返しに行ったときにはたしかもういなかったな。あ、でも…………」

 

 

 柔沢はそう言って、急に口を止める。

 どうしたんだろうか? もしかして、史織に関して何か思い出したのだろうか?

 

 

「でも、どうしたんだ?」

 

「……そういえば、俺が屋上にいた時にふと見えてな。やけに緊張した表情で生徒会室の近くを歩いているのを見かけたんだ。あんまりあそこって用がない時は通らないところだから。ちょっと、な。多分だが朝霧は……生徒会室に行ったのかもしれない」

 

「それは本当か? じゃあ、生徒会室に行って生徒会の誰かに聞けば、何か分かるかもしれないということか」

 

 

 柔沢に聞いて良かった。まさか、こんなとこで朝霧の情報を得られるとは思いもしなかった。よほど友だちだと言っていた三河より柔沢の方がまともで役に立つ。やはり、女子の付き合いっていうものは上辺だけなんだなと改めて実感させられる。

 

 さて、柔沢の情報によると、昨日の夕方に朝霧は生徒会室に行っていたようだ。それなら次は生徒会室に向かっては、手当たり次第に生徒会のNPC達に聞くのが一番だ。多少なりともそこで朝霧に関して何か分かるかもしれない。

 

 

「いや、生徒会の人間ならむしろ朝霧がどこにいるのか。もしくは生徒会長なら朝霧の行方を把握しているかもしれない。それか未だに誰にも見つかっていないのなら、もしかしたら生徒会室に朝霧がいる可能性もあるな」

 

「は? どういうことだ? なんで生徒会室に朝霧がいることになるんだよ?」

 

 

 柔沢の言っている意味が分からない。なんで朝霧が生徒会室にいることになるのか。行方を知っているならまだしも、今も生徒会室にいるとか変な話過ぎる。

 

 

「あくまでの話だけどな。実際に生徒会が朝霧の所在と関係しているかどうかは謎だ。だがな、少なからずとも生徒会が朝霧の居場所に関与してる可能性は大いにあると思う。それこそ、生徒会と朝霧で何かあったと考えないと、学校に来ていない理由が思いつかないからな」

 

「そうなのか? なんでそう思えるんだよ?」

 

「音無も知ってるかもしれないが、生徒会はこの学校での最高峰の組織。学園での立場では、ほぼトップに位置していると言っても過言じゃない。ある意味、生徒会に入れば学園ではある程度やりたい放題出来るようになるんだよ」

 

「そうだったのか……知らなかったよ」

 

 

 そんな話、この世界に来てから初めて聞く。

 でも何故か納得してしまうところもあった。たしかに、以前この世界にいた立華も直井も色々なことをしていた。普通の学校の生徒会とはかけ離れた活動をしていたことは多々ある。当時としては生徒会長だけ異質ではあったが、生徒会自体が異質な存在であることもありえない話じゃない。

 

 

「そりゃあ、生徒会だって教師には逆らえないかもはしれないが、この学園の理事長と校長の意向もあってか、生徒会が生徒全般の統括をしているんだ。そんな立場の人間達であるなら、一般生徒を退学や停学にすることだって不可能じゃない。最悪、面倒事を起こした場合は生徒会が生徒を監禁する……こともあるかもしれないって噂だ」

 

「いやまさか。それに噂だろ? どちらにしたって、生徒会室に行けば朝霧の情報が少しでも得られるわけだな。それじゃあ、朝霧が何かしらの理由で停学処分を受けている可能性もあるということか」

 

「そうだな。確かに、その可能性はあるかもしれねぇな」

 

「じゃあとりあえず、今からでも生徒会室に行ってくるよ」

 

「えっ!? 今から生徒会室に行くのか? 今はやめておいた方がいいぞ。生徒会長もいるし、とりあえず今はもう少し様子見をしてからにしないか? 俺の知り合いにも生徒会の人間はいるし、そいつに事情を話して朝霧のことを聞いた方がきっと良いと思うぞ」

 

 

 オレが今から生徒会に行くという一言で、柔沢はひどく慌て始めた。今は授業中だから、面倒事になると思ったのだろうか。たしかに、授業中に生徒会室に行って行方不明の女子いませんかと聞きに行くのは、普通の学生なら考えないことだろう。

 でも、オレは違う。人間という存在であるオレは普通の学生なんかじゃない。それに、このまま待ってろと言われたところで待てるほどの余裕は自分にはない。生徒会長がいるのなら、それで充分だ。

 

 

「そうかもしれないが、やっぱりここでじっとして待つのはもう無理なんだ。それに、さっきも教室で朝霧のことでいっぱいいっぱいになってしまって、クラスメート達に当たり散らしてしまったしな」

 

「そうだったのか……だから教室が騒がしかったんだな」

 

「ああ、今も朝霧のことが心配で仕方がないんだ。だからさ、生徒会長にでも聞いて朝霧の行方がどこか確認してくるよ。きっとオレなら……大丈夫だろうし」

 

「……そうか。なら、もう止められないな」

 

 

 柔沢は元気なく、オレの顔を見る。オレが生徒会室に行くことが不安なのだろうか。

 たしかに、柔沢の話を聞いている限りでは、生徒会は普通ではないのかもしれない。それ以前に、あの生徒会長は普通のNPCじゃないのは確かだ。NPCである柔沢が、生徒会に何かしらの不安を抱いていてもおかしくはない。

 

 オレはトイレを出て、西階段のある方角を目指す。生徒会室は第1棟だ。今いる第3棟から階段を下りては渡り廊下を歩いて向かうのが一番近い。

 

 

「音無っ!」

 

「ん? どうした?」

 

 

 階段を下りようとすると、柔沢が後ろから呼びかけてきた。どうしたのだろうか?

 

 

「言おうか迷ってたんだが、やっぱり言うぞ。本当はここ最近、紫野生徒会長がおまえを探してたんだ。何が理由で探していたのかは知らないが、紫野という男が必死におまえを探していた。きっと、只事じゃない。あの生徒会長が自ら出て来るのは、尋常じゃない気がするんだ」

 

「生徒会長が? オレを?」

 

「だから、もう一度考え直してくれないか? 生徒会長に会うのだけは、危険な感じがして……音無がこの学園からいなくなっちまうんじゃないかって。そう思えて、正直不安なんだ」

 

「……そうか。あの生徒会長、オレを探していたのか……」

 

 

 以前会った時に、紫野は言っていた。

 “キミに用ができれば、僕が出向けばいいわけだ”と。

 つまり、紫野会長はオレに用ができたことになる。オレに対して何の用なのかは分からないが、いくら考えたところで生徒会室に行くことには変わりはない。もしかしたらオレに対しての疑いの念を抱き始めてきたのだろうか。オレに対して何か聞きたいことが出来たのかもしれない。

 

 

(それにしても……大袈裟なやつだな)

 

 

 でも、柔沢の言いたいことは分からないでもない。あの生徒会長に会えば、他とは異質な人間だというのは分かる。きっと、異質なだけにオレを心配しているのだろう。

 だけど関係ない。どんなことになろうとも、この学園から消えることはない。そもそも消えたくても消えられないんだ。消える方法があるなら教えて欲しいくらいだからな。いなくなることは、絶対にありえない。

 

 

「でも、行くよ。オレにとって朝霧は、史織は大切な人なんだ。このまま待っているつもりもないし、それにオレなら大丈夫だ。何があってもここからいなくならないからな」

 

「でも……」

 

「心配するな。きっと夕方までには朝霧の行方も分かるだろうし、柔沢にも会いに行くから。そしたら、柔沢に入部届をもらいたいんだ。まだ部活には入部してないからな。だから……柔沢は部室で待っててくれないか」

 

「……そうだな。確かに、生徒会長に会ったら殺されるわけじゃないし、朝霧もどこかにいるはずだもんな。ちょっと神経質になり過ぎてたか。それに、音無が部活に入ってくれるなら、入部届も用意して待ってなきゃいけねえな」

 

「ああ。だから入部届、用意しといてくれよ」

 

「わかった。じゃあ夕方、戦研部の部室で待ってるな」

 

 

 そう言って、柔沢は教室の方へと向かって歩いて行った。

 さぁ、オレも生徒会室に向かおう。

 

 きっと……史織もどこかで待っているはずだ。

 

 

 

   ×    ×    ×    ×

 

 

 

 学習棟の第1棟の3階にある生徒会室前まで来た。以前は、柔沢から逃げるように自分の教室からここまで来た。その時のことを思うと、ここに来たのは約1ヶ月ぶりになる。あまり思い出したくはないけど、久しぶりだ。

 

 さて、今は授業中だったな。普通の学生なら授業はさすがに受けるはず。そう考えると、ここには生徒会長だけがいるに違いない。それに、変に他の奴に関わって来られるよりかは、生徒会長と2人きりの方が気楽だ。今思うと、授業中にこの生徒会室に来て良かったのかもしれない。

 

 とりあえず、生徒会長である紫野に会ったら史織のことを問いたださなければいけない。柔沢の話を聞いて、なんとなく生徒会が何かしら史織の所在に関して関与している可能性が高いことはわかった。それなら、生徒会長も何かしら史織について知っていることがあるはずだ。

 きっとオレのことに対しても色々と聞いてくるかもしれないが、あくまでNPCに過ぎない生徒会長なんだから、そこまで危惧する必要もない。

 

 

『どうだ? 決心はついたか?』

 

「なんだナツキ。喋れるんじゃないか」

 

『まぁ授業中だからな。こんだけ静かなら俺の声も聞こえるだろ』

 

「たしかに、それもそうだな」

 

『それ以前にオマエが落ち着いていることの方が大きいけどな』

 

「ああ……正直、自分でもこんなに落ち着いているのには驚いてるよ。教室でちょっと暴れたから、スッキリしたのかもな」

 

『へへへっ。そりゃあ、ちげぇねぇ! とは言っても、教室には余計に行き辛くなっちまったけどな。まぁ、前回のことも忘れてたし、何とかなるだろきっと』

 

「……そうだな。今回もそうだと、いいんだが」

 

 

 正直、現実世界だったら関係を修復することは難しい状態にはなっていた。きっと、自分が今後教室に行くことは永遠に叶わなくなっていたんだろうな。

 でも、この死後の世界ではどんなことをしようとも、関係は壊れない。関係を修復できるあたりは、良くも悪くもNPCといったところなのかもしれない。

 

 ……まぁ、NPC達が関係を修復した状態で関わってきたところで、自分自身があんなことをしてしまって、それを引きずらないわけがないんだがな。

 

 

「さて、そろそろ行くか」

 

『ああ、行って来い。ただ、不安もあるけどな。未知数なNPCである生徒会長と会うことでどんな事態になるか。朝霧のことを聞いて、オマエがどうなるか。ほんとのことを言うと、柔沢も連れて行った方がまだ安心できたんだが……』

 

「きっと大丈夫だと思うけどな。生徒会長だって話せば分かるヤツだと思うぜ。それに朝霧のことだって、どんな状況であろうとも生きてはいるんだから、落ち着いて対処できるはずさ」

 

『んー、まぁそうか。たしかにオマエもあの時とは違ってけっこう冷静ではあるはずだからな。きっと、生徒会長とだって上手く切り抜けられるかもしんねぇな。ま、残念なことに俺の声は聞こえないだろうから途中でアドバイスをしてやることはできないが、健闘を祈ってるぜ』

 

「ああ、頑張って来るよ」

 

 

 あれ? なんだか、試験面接でもする勢いだな。そんな状況じゃないんだけどな。

 

 一呼吸して、生徒会室の扉をノックする。少し緊張が走るあたり、本当に今から面接でもするのかなと思えてきてしまうなこれ。

 

 

「はい。何かな?」

 

「失礼するぞ」

 

 

 中に入ると、以前見た顔の男子がイスに座って何かを書いている。たくさん積まれた紙が机の上に置かれていて、必死にペンを急がせている。いかにも、忙しいという雰囲気を紫野という男は醸し出していた。

 

 

「あれ? 君は、音無!? おっ、まさか君の方から僕に会いにきてくれるとはね。手間が省けたよ。君の所在が全く不明だったからね。見つけるのに手を焼いていたんだよ」

 

「そんなことより、朝霧はどうした?」

 

「え? あさぎり? 誰かなそいつは?」

 

 

 とぼけたような表情を浮かべる紫野に対して、少しイラっときてしまう。実際覚えていないのかもしれないが、さっきまで忙しそうにしてたのに、なんか急に上機嫌みたいな態度がバカにしているように感じてしまう。

 だが、落ち着かないといけない。落ち着いて聞かないといけないんだ。少しでも冷静でいなければ、朝霧の行方を見つけるのも叶わなくなってしまうかもしれない。

 

 

「わからないのか? 昨日の夕方、ここに女子が来たはずだ。あんたはここにいなかったのか?」

 

「昨日の夕方? ああ、あの女子か。ふふっ、そうだね。確かに僕のところに来たね」

 

「知っているのか? なら、その子は今どこにいるんだ?」

 

「どこにいる? ふふふっ、今はもういないよ。ここには、ね」

 

「……どういうことだ?」

 

 

 すると、ペンを机の上に置いては、急に不敵な笑みを浮かべる。初めて見る紫野の笑顔。まるで抑えられないような、こぼれてしまったような笑み。尋常じゃなく、不気味で異常な、笑い方。

 急に紫野は、右手の親指を立て、他の指は曲げた状態で親指を紫野自身の胸に突き立てた。

 

 

「ふっ、ふひゃひゃひゃっ!! だって……そいつなら、僕が昨日の夜にぶち殺してやったよ!!」

 




19話:the mist is growing thicker  ー  “霞はどんどん濃くなっている”


今回でついに、生徒会長の本性が音無の前で露わになりましたね。
最初は生徒会長の登場シーンはここからだったのですが、
少しずつ裏でどう動いているのかが分かった方が良いと思い、
今まで本編にちょくちょく出していきました。

さてさて、今後どうなっていくのか気になりますね。
これからが今回の本編の終盤部分になっていきます。
音無と生徒会長がどうなっていくのか。

しかし、申し訳ないことに次回からは朝霧視点の話になります。
何故、朝霧は生徒会長に殺されたのか。朝霧は何をしてたのか。
まぁ、なんとなく分かる人もいるかもしれないですが。

ということなので、
次回から4話分ほど朝霧エピソードとなります。
しばらく物語の時間はストップしますね。

本編が気になる方はEP24を読んだ後に朝霧編を見るのもいいかもしれないですね。

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