Fate/Extra Summon   作:新月

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書き溜め分がなくなりました。
投稿ペースが落ちそうです。


ヒロイン達との邂逅

『うむ……奏者の話をまとめると、召喚獣と言う存在を呼び出し、それを戦わせ、クラスごとに争い勝者を決める……というのが【試験召喚戦争】なのだな!』

 

「うん、まあザックリ言うとそんな感じ」

 

今、僕達は保健室をでて、廊下を歩いている。

あ、ちなみに三人は霊体化して、他の人から見えないようになっている。

けどこれ、傍から見たら独り言いってるかわいそうな人だよね?

 

『それで、ご主人様はフィードバックシステムと言う、五感共有の実験の事故で、この聖杯戦争の中にいつの間にかいたんですよね?』

「そうなんだよねー……」

 

あのババアの実験のせいで、本当に面倒な事になったよ全く。

ちなみに三人には、既に召喚獣の特徴とかは話している。

そして……多分、僕の力がその召喚獣のおかげだと言うことも。

 

『人間よりはるかに強い力を持った己の分身と言えるもの……そして、科学とオカルトが混ざって出来た存在……似ているな、我々サーヴァントと』

「召喚獣が、サーヴァントに似てる?」

 

アーチャーが僕の話を聞いてそう呟いたけど、似てるって?

 

『我々サーヴァントは、あくまで過去の英雄の再現に過ぎん。そしてこの聖杯戦争は、電子の海の世界で戦う、いわば魔術と科学の混合世界……そう考えると、いくつか共有点がありすぎる』

 

確かに、アーチャーの言う通りそう言われると、似ている気がしてきた……

 

『その実験の失敗のせいなのか分からんが、恐らくマスターはその召喚獣と融合している状態なんだろう。つまり、今のマスターは擬似的な召喚獣と化している、と考えたほうがいい』

 

なるほど、つまりサーヴァントと共通点が多い召喚獣。

その存在と融合して、その力を僕が扱えるから、あの時人形と戦えたのか。

 

「けどさ、そんな事ってありえるのかな?」

『ふむ……召喚獣について私はそれほど詳しくはないが、この世界自体が電子の世界でウィザードは魂をプログラム化している事。そして、五感の共有はその存在との境界をあいまいにしていると考えれば、その様なことが起こっても不思議ではないのかもしれん』

 

そんなものなのかな?

そう考えながら歩いていると、階段の目の前まで既に来ていた。

一・二階は大体見たから、次は三階あたりを見て回ろうか……

 

「でも、ずっと疑問に思ってたんだけどさ……何で僕は急にこの格好になったのか分からないんだよね……」

『というと?』

「僕自身が召喚獣になってるのは分かったけどさ、そもそも召喚獣って、【試獣召喚(サモン)】って言わないと出てこないはずなんだよ」

 

だから、あの時知らない間に服が変わってたのに驚いた。

自分が召喚獣の格好をしてるって事は分かったけど、何が原因でそうなったのか分からないし。

 

『何ででしょうかねえ? バグの影響でしょか?』

『奏者が知らない間に呟いていたのではないか?』

 

そうだったかな?

あの時サモンって言ってなかったはずだけど、僕が気づいてないだけ?

けど、呟いたのに知らないって、なんか凄く馬鹿っぽい感じなんだけど……

はい、そこ。元々馬鹿だろ何て言わない。

 

そう電波を感じながら、僕は階段を上がっていった。

 

 

 

★☆★

 

三階の廊下の窓の外から校舎の外を見てみると、其処は予選の時とあまり変わっていない様で、はっきりとした違いが感じられた。

予選のときは作り物の、まるでペーパークラフトの中にいたような感じだったけど、今はしっかりと質量を持っているような感じがした。

それにしても、開いている窓から見た外の景色とか、入ってくる風とかの感覚は本当に現実と変わらないのが不思議だ。

 

 

『ところで奏者よ、その腕輪は何なのだ?』

「へ? 腕輪?」

 

廊下を歩いていると、セイバーがふとそんな事を聞いてきた。

腕輪って、僕の腕についている白銀の腕輪と、黒金の腕輪の事?

 

『うむ。あった時から気になっていたが、その黒いほうの腕輪から、なんかこうちくちくするのだ』

『あ、確かに私も思ってました。なんか尻尾の先がピリピリするーってみたいな』

「黒金の腕輪から?」

 

黒金の腕輪は、実験のときにババア長から貰った腕輪だ。

なんか特殊召喚フィールドとか言ってたっけ。

……あれ? 

そういえば確か葛木先生も僕の腕輪から変なコードが感じられるって言ってなかったっけ?

 

 

そう考えていると……

 

「ごきげんよう」

「へ? あ、ごきげんよう……?」

 

考えに夢中になっていたせいか、目の前にいつの間にか誰かがいて挨拶をしてきた。

その子は褐色の肌に紫色の髪をしていた。

いきなりの挨拶で僕の返事もまた変な感じに……ん? なんかデジャブ?

って、確かこの子は予選の時にあった……

 

「またお会いしましたね……」

「あ、うん、そうだね。えーと……」

 

あれ、名前なんだっけ?

 

「自己紹介がまだでしたね。私は【ラニ】。貴方と同様、聖杯を手に入れる使命を負った者」

「あ、うん。ラニね、覚えた」

 

にしても……よく見ると、この子肌の露出の多いよね……

思わず大きく開いている胸元に視線がいってしまう。

今ここにムッツリーニがいたら、確実に最高の一枚を絶妙なアングルでとってくれるのに……っ!!

 

「……今何か考えませんでしたか?」

「いや、全然」

 

キッパリとそう言った。

いや、危なかった~。

あやうく心の欲望が口から出るところだった。

 

 

「…………」じ~

「え、な、何?」

 

何か急に黙ったかと思うと、ラニは僕の方をジ~っと見てきた。

うう、何かこんな美少女に見つめられるのって、何か恥ずかしい……

 

「……やはり、あなたは何か違う。何処か他の人達と異質な……」

「異質……? あ、もしかしてこの格好の事?」

 

そっか、僕の体は召喚獣と融合してるから、他の人達とは違う。

多分そのせいで、ラニには異質と思われたんだろう。

 

「いえ。あなたがその格好になる前に、既に異質な感じはしていました。その格好のせいでは無いと思います」

 

え? 違うの?

じゃあ、一体なんだろう?

 

「あ、じゃあこの腕輪の事?」

 

そう言いながら、僕はさっきセイバー達と話していた黒金の腕輪を見せた。

予選のときに、既に葛木先生が感じてたらしいし。

 

「それは……少し、貸してもらってもよろしいですか?」

「あ、うん。いいよ」

 

そう言って、僕ははいっと言いながら黒金の腕輪をはずしてラニに渡した。

ラニはその腕輪を時折裏表に回しながら、全体を観察していた。

 

「これは……変わった礼装ですね。見たことも無い術式で構成されています」

「術式?」

 

何か良く分からないけど、ラニにとっては珍しいものらしく、その腕輪から目を離さずにそう言った。

 

「この腕輪から、常に異常なコードが発動されていますね。見たところプロテクトの一種のようですが」

「え? プロテクトって、どんな?」

 

アーチャー達から、ウィザードの事についていろいろ教えて貰った時に、ついでに礼装やコードキャストの事についても教えてもらっていた。

けど、その腕輪は実験のときに学園長から貰っただけで、魔術とは関係無い筈だし、特殊召喚フィールドって言ってただけなんだけど……

 

「予選期間のとき、あなたはかなりの早い段階で、脚本から脱却しませんでしたか?」

「脱却……? ああ、自我を取り戻すって事だね?」

 

確かに僕は、この世界に来たときから既におかしいって気づいていたけど……

保健室で桜さんが言っていた、記憶を奪われていた覚えも無いし。

 

「恐らく、この腕輪から出ているコードは精神的に作用する物の無効化。つまり、洗脳と言った類に対するアンチプログラムになっていますね」

「え、そうだったんだ」

 

あー、だから僕だけ自我を取り戻していたのか。

それで、腕輪の持っていない姫路さんは、完全に記憶を書き換えられていたと。

 

「……しかし」

「うん?」

「これは私の感じていた違和感の正体ではありません。それに……」

 

え? これも違うの?

後、それに?

 

「恐らくこのコードは、この腕輪の本来の機能ではない。何らかの影響で、バグが発生して出来た偶然の産物でしょう。このままだと、この礼装は完全に壊れてしまいます」

「え? そうなの?」

 

あちゃー、どうしよう。

まあ壊れたとしても、正直今まで気づかなかったんだから、大して問題と言うわけでもないし……

 

 

「よろしければ、暫くこの腕輪を預からせてもらってもいいでしょうか?」

「へ? 構わないけど……なんで?」

「この見たことの無い術式に興味があります。それに、もしかしたら私の力で直せるかも知れません」

「え? 本当?」

 

それは僕にとっても嬉しい事だけど……

なんか、僕だけ得してしまっている気がする。

 

「はい。代わりに、この腕輪のデータは取らせて頂きますが……」

「ああ、それだったら構わないよ。むしろお礼を言いたいくらいだし」

「…………」

「え、何?」

 

そう言うと、またラニは黙り込んで、僕の方を見てきた。

え? なんかまずい事言ったっけ?

 

「いえ……ただ、ここまで警戒心の無いマスターも珍しいと思いましたので……」

「あれ? もしかして、何気に馬鹿にされてる?」

 

何か僕、最近会う人殆どに馬鹿にされてる気がするんだけど……

 

 

「それでは――――」

 

ビュオッと。

そう言いながら彼女は僕に背を向けようとして、窓から強めの風が吹き、スカートがめk

 

「ぶふぉっ!?」

『『『ぶっ!?』』』

 

は……はいてない、だと……!?

 

「――――ごきげんよう」

 

そう言いながら、彼女は何事も無かったかのように立ち去っていk―---いや待て待て待て待て

 

「ちょっと!? 何であなたはいてないんですか!?」

 

我慢できなかったのか、キャスターだけが霊体化を解いてラニにそう突っ込んだ。

そういうラニ本人は何を言われたのか分かっていないようで……

 

「はいていない……とは?」

「下着ですよ下着!! なにやらかしちゃってんですかあなたは!? ご主人様を誘惑するつもりですか!?」

 

キャスターに指摘されたラニはああ……と呟いて、

 

 

 

「必要ありませんから」

 

きっぱりと。

そう言い切った。

 

「「『『…………』』」」

 

「それでは、ごきげんよう」

 

そう言ってラニは、今度こそ背中を向けて去って行った。

 

「ちょ!? ご主人様血!? 鼻血!?」

 

あ、やばい。

さっきの光景が頭の中で何度も再生されて、鼻血が止まりません。

もしあれを見たらムッツリーニだけでなく、FFF団全員が瀕死状態になってしまっていただろう。

かくいう僕もムッツリーニじゃないのに、既に出血大量でかなりやばい。

あ、眩暈が……

 

「ご主人様ぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

 

 

 

★☆★

 

 

 

『全くご主人様は!! あんな女の下品な姿を見て、気絶するなんて!!』

「いやー、ごめん」

 

まさか一日も経たない内に、また保健室に厄介になるとは思わなかったよ。

あ、まださっきの光景が……

 

『ご主人様ぁ?』

 

うん。さっきの無かった事にしよう。

キャスター達の視線がさっきから痛い。

いやー、不幸中の幸いか、さっきの光景を姫路さんに見られなくてよかったよ。

もし姫路さんがいたら…………………………………………………………………………………三途の川っていくら必要だったっけ?

 

『それよりマスター。姫路瑞希と言う女性を探すのだろう?』

「あ、うん」

 

そうだ……姫路さんが居るかどうか探さないと。

姫路さんは、あの試験を突破できたのだろうか……

正直、僕の時があまりにあんまりだから、無事に切り抜けられたかどうか心配だった。

 

「あとは、ここだけだね……」

 

僕は屋上の扉の前まで来ていた。

既にここ以外の階は隅々まで探した。

もしここにも居なかったら……

頭に浮かんできた嫌なビジョンを払うように、僕は頭を横に振って気持ちを落ち着かせた。

 

「じゃあ、あけるよ……」

 

そう呟きながら、僕はキィっと小さな音を立てながら、静かに屋上の扉を開けた。

 

そこには――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ……良く出来てるのね、温かいし。あれ? おかしいわね、顔が赤くなっているような気がするけど……」

 

「えっと……あの……」

 

 

 

――――綺麗な百合の花が咲き乱れていた

 

いや、違う……そうとしか言いようが無かったんだ。

この言葉以外に、どう目の前の状況を表したらいいか、馬鹿な僕には分からなかったんだ。

 

一人は黒髪のツインテールで、赤い服を着た女の子。

彼女の目の前にいる女の子の頬を片手で触りながら、顔を近づけていた。

 

もう一人は、その女の子になすすべも無く流され、思うが侭にされているピンク色のふわふわした髪の女の子。

赤い服の子の行動に、恥ずかしそうに目を背けようとし、顔を赤らめていた。

 

なんて幻想的な光景なんだろう……

僕は自然とそう思ってしまっていた。

さながら僕は、この幻想の花畑に誘われたミツバチと言ったところか……

 

 

「感触もリアルね……服の中はどうなのかしら……」

「ちょ、やめて下さ――――っ!?」

 

 

――――あ。

僕が目の前の光景にボーっとしている内に、ピンク色の髪の方の女の子が、僕の方に気づいてしまった。

その時の顔は今でも忘れない……まるで自分の大切に隠していた宝物が、見知らぬ誰かにばれてしまったときのような……

 

――――最低だ、僕は

 

何がミツバチだ……

僕は彼女達にとって大切な時間を汚してしまった。

彼女達にしてみれば、僕は大切な花を枯らしに来た害虫そのものじゃないか……

 

――――戻ろう

 

僕のした事は、決して許されるものじゃない。

恐らく、僕が立ち去っただけでは、さっきまでの大切な時間と言うのは取り戻す事は出来ないのだろう。それでも、ここに居続けるよりはずっとましだろう……

 

そう、自分の犯した罪を悔いながら、僕は静かに扉を閉め――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああっ!!??? 

明久君違うんですううううううううううううううううううううううううううううっ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

――――ようとしたら、ピンク色の髪の人、ていうか姫路さんが一瞬で距離を詰めて必死に固定した。

うわ、てか早。

 

 

「ごめん姫路さんっ!! 僕が悪かったからっ!! 直ぐ帰るからっ!!」

「だから違うんですっ!! あの人が急にーーーーーーーーーっ!!」 

 

「え、ちょっと何がどうなって……へ? マスター? 彼女が? 嘘……え、だってそれじゃあ……」

 

姫路さんはそう叫びながら、必死に扉を引いて閉じないようにしてきた。

うわ、意外と力強い。

いや、今の召喚獣と融合した僕なら簡単に閉めれるけど、その衝撃で姫路さんが怪我しちゃうかも知れないし、どうしよう。

 

「え!? ちょっと待ってよっ!? じゃあ今べたべた体を触ってた私って……っ!?」

 

「ホントごめんっ!! 邪魔をしてホントに悪かったから!! どうぞごゆっくりっ!!」

「だからホントに違うんですっ!! 誤解なんですーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

 

やばい。

姫路さんがあまりの恥ずかしさに多分混乱している。

一刻も早く僕はここから立ち去ったほうがいいだろう。←(こいつも冷静ではない)

あ、けど扉一回閉めないと直ぐ姫路さん追ってきちゃいそうだし……

 

「うむっ!! なかなか面白い女子達よ。さっきの絡みは見事であったぞ! もはや芸術の域と言っても過言では無い!!」

 

いつの間にか霊体化を解いて、セイバーが隣に立っていきなりそう言い出した。

何しに出てきたの!?

余計場が混乱するだけじゃないか!?

 

「余は可愛いものが愛でるのが大好きだ!! さっきのを見て黙っていろと言うのは無粋であろう!」

 

あーそうですか。

 

 

 

 

「……わ」

 

わ?

黒い髪のツインテール、ていうか遠坂さんが、何かを言おうと――――

 

「忘れなさあああああああああああああああああああああああああああああああああいっ!!

今見たの記憶全部消滅(ロスト)しろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

 

「きゃあああああああああああああああああああああああああああっ!!?」

「うわあああああああああああああああああああああああああああっ!!?」

 

完全に冷静さを失った遠坂さんが、指からなんか黒いの出して狙撃してきた。

てか、何あれ!?

 

 

 

そうやって、暫く屋上は混沌の世界となった……

 

 

『おい、一体どう収拾つけるんだ、これは……』

 

最後のアーチャーの声がやけにむなしく屋上に響いていた……

いや、聞こえてるの僕くらいだけど。

 

 




副題【ヒロイン達との邂逅】改め――――【恥女達の騒乱】

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