Fate/Extra Summon   作:新月

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待っててくれた人ごめんなさい。
風邪と中間テストが重なって大変でした。

久しぶりの更新、番外編を二話分更新。


三回戦
ランサーのアルバイト(サーヴァント編)


 

「…………………………………………あー……」

 

 だーれもいないマイルームに、生命力の無い微かな声だけが響き渡る。

 いや、多少言葉に語弊があった。誰もいないなら声すら響いていないだろう。

 あれ? けど電話とかカセットとかの録音機とかがあったら普通に響く?

 テレビがあったらそれを付けっぱなしにするだけでも響くね。

 あれ、結構簡単に響くんじゃない?

 

 いや、そこはどうでも良かった。思いっきり脱線してるよ。

 

 うん、何処まで考えていたんだっけ?

 結構話し進んだような気がするんだけど……あれ、全然進んでなかった?

 あ、二行しか説明してないや。

 

 とにかく、誰もいない筈のマイルームに声が聞こえるのは何故か。

 その答えは単純。一人の少年がいたからだ。

 いたのにいないと言うのはおかしい?

 うん、そうだろうね。僕自身も普通に考えたらおかしいと思っていただろう。

 けれど、もし第三者が今のこの部屋の様子を見たとしたら、間違いなく誰もいないと勘違いしてしまうだろうね。

 たとえ一人の少年がいるにも関わらずに、だ。

 

 何故そう言いきれる自信があるのかというと、単に気配が無いから。

 その部屋からは、まるで生命の熱とも言えるオーラ的な何かが一切出てきていないんだ。

 

 唯一いる少年は、ただそこに寝転がっているだけ。

 まるで釣り上げられたあと適当な場所に放置されて、そのまま死んでしまった魚のような状態で床にいた。

 そんな彼からは、とても同じ生き物とは思えない程の生命力の無さしか、いやそれすらも感じられない。

 ケチャップを持ってきて適当に辺りにまき散らせれば、一瞬にして殺人現場の完成だ。

 

 それほどにまで、彼の生命力が雀の涙程も感じられなくなってしまっている理由は、ただ一つーーーーーー

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………………………

 ……………………………………………………………………………………………

 ……………………………………………………………………………………………

 ……………………………………………………………………………………………

 ………………………………………………………………………………………暇だ」

 

 

 

 

 単純に暇だったんだぜ☆

 

 

 

 

「…………」

 

「………………」

 

「……………………」

 

「…………うん。無いねコレは」

 

 文章にしたらおそらく400字原稿用紙なら二枚半近くも使っていたであろう脳内プロローグに対し、心底反省の意を込めながらそう呟く。

 無駄に壮大な文章を立てたにも関わらず締めくくりもまた酷い。

 まず何より僕のキャラじゃないし。☆なんて付けるの。

 一体僕は何処に向かってるんだろう、と自分で思った駄文だった。

 そもそも途中からしてグダグダだった気がする、いや実際そうだった。

 

 

「あー、やばい。本当にする事が無い……」

 

 二回戦決着の次の日。

 この日は例の参加者達に与えられる、休憩期間だった。

 僕達は今回クジの関係もあって、今日一日しか休みの日は取れない。

 

 取れないんだけど……もの凄ーく時間を持て余している。

 こんな風に無駄な思考をして時間を潰そうとする程、本当に暇でしかない状態だった。具体的に言うと、二週間以上ずっと何もしてなかった位。

 たとえ寝返りを打っても、“紅い布の掛かった玉座もどき”っぽいのと、“鳥居の乗った並べた机”と、“その他なんやらの残骸”位しかぶつからない。

 

 ……うん、結構当たるね。地味に痛いし。

 とにかく、人にはぶつからない。

 僕以外マイルームには誰もいない状態だった。

 

 

「セイバァ……キャスタァ……アーチャぁ……早く帰ってきてよぉー…………」

 

 セイバーとキャスターは何故か朝早くに起きて、

 

『ちょっと用があるから一緒に出かけてくるぞ! おとなしく待っておるのだ奏者!』

『夕方位には帰ってきますからー。あ、それと一人でアリーナにいって特訓しようとか思わないで下さいね? こないだ黒いのに襲われたばかりですし』

 

 とか何とか言って、僕を置いてどっか行っちゃったし。

 

 アーチャーは、昨日の“保健室薬品横領事件”の犯人として、

 

『フフフ、もう先輩ったらお茶目さんなんだからー。こーんなイタズラをしちゃうなんて、可愛いですねー。けど、ちょっとお仕置きしないとですねー。そんな訳で、明日一日借りますねー」

『うん落ち着こう桜君!? 最早台詞が全部棒読みになってるし、何より目が獲物を狙うハンターのそれになってるんだが!? いや仕方がなかったんだ!? マスターを勝利に導く為にはもうコレしか思いつかなくて正直自分でも正義の味方としてどうかと思ったんだがほらマスターあまり優秀とは言えないし苦肉の策でああゴメンマスター決して君に責任転嫁をするつもりではただ思った事がちょっと口から出てしまいああハンカチ片手に持って振りながら見送らないでさよーならーって何処の昔のアニメの最終回とか桜の引きずる力が何故か予想以上に強すぎるて抵抗が出来なくてこのままじゃ保健室に閉じアアア』

 

 と、もの凄くいい笑顔な桜さんに連行されていってしまい、保健室に籠り切りだし。

 何故かその時のアーチャーの顔は、死刑台に向かう囚人のソレだったのが謎だけど。

 

 

「まあアーチャーのやっちゃった事も、元を辿れば僕の実力不足のせいだし、アーチャーなりに考えて僕の役に立とうとしてくれた事なんだよね……」

 

 むしろそのおかげで僕は勝利する事も出来たし、逆に感謝するべきかもしれない。仕える人の為に自分の身をあえて汚すって感じだったし。

 まあけど、それはそれとしてやっちゃった事は普通に悪い事なので、アーチャーには一日掛けて桜さんに謝罪してはもらおう。

 本当はマスターである僕が謝りにいくべき事なんだろうけど、桜さん本人から言ってきた事でもあるし仕方ない。

 

 

 

 とにかく、暇だ。そして寂しい。

 

 コレならエネミー相手に特訓でもしてきた方がよっぽど有意義なんだろうけど、キャスターに一人では行かないでと釘を刺されちゃったし。

 アーチャーはともかく、二人は校内の何処かにはいるから、何かあったとしてもすぐに駆けつけるようにはしたいから、との事らしい。

 確かに誰かと一緒にいれるだけでも心強いけど、それならどっちか片方は残っていて欲しかったかなーって思う……

 そう言ったら、乙女にはいろいろあるんですよーとか言われたから、もう男の僕は引き下がるしか無いし……

 

 

「あーもう……何か無いかなー……」

 

 図書室にでも言って情報集めておく?

 けど、こないだ行った時に殆どデータは端末に写し終えちゃったしなあ……

 なら姫路さん達と話す?

 でも、三人ともかなり疲れている様子だったし、邪魔しちゃ悪いかも……

 

「って、あ。そーだ、そういえば……」

 

 とある事をふと思い出すと、僕はおもむろに起き上がり、端末をカチカチと操作する。

 そうしてアイテム欄を表示すると、そこにある物が追加されているのを確認した。

 

「あったあった。そういえば、“クッキーの材料”を遠坂さんから貰ったんだっけ」

 

 確か何時だったか、お金が無くて結構ヤバい状態ですって遠坂さんとの話になった時に、

 

『はあっ? あなたそんなバカな状態になってんの? お金足りなくて礼装もアイテムも買えないですじゃ話にならないじゃないの! しかも食べ物すらなくて飢え死にしそう? いやホントにもうバカでしょ、バカの極みでしょ! 覚悟がどーより以前の問題じゃないの! はあ、何でこんな間抜けな奴が瑞希の友達なのかしら……全くもう。じゃあこれ上げるわよ、クッキーの材料。これで自分で作って少しはお腹の足しにしなさい。か、勘違いしないでよね! 別にアンタの為に上げた訳じゃないんだから、ただたまたまアリーナの探索中に拾っちゃって、私はお菓子とかあまり作らないから正直邪魔にしかならないから、その在庫処分に困っていただけで、アンタの為になんかこれっぽっちもーーーー(以下略』

 

 とまあ、そんな感じで半ば押し付けられるような感じで渡されたんだった。

 何故にアリーナにそんな物まで落ちてるんだろうか、と疑問に思いながらも、ありがとうって言ったらうっさいっ! っ怒鳴られちゃったっけ。

 

「けど、クッキーかぁ…………」

 

 自慢じゃないけど、僕は一般家庭程度の家事ならこなせる自信はある。(まあ、さすがにアーチャーには劣るけど)

 料理なんかはその一つで、パエリアとかは大の得意で好物で、自分で作って食べたりする。

 けど、殆どお菓子作りの経験はあまりないんだけどなあ……

 

「けど、それでも数回はやった事はあるし……うん、いける、かな?」

 

 僕はそう呟きながらヨシッと立ち上がる。

 どうせ他にやれる事は無いんだし、だったら試しに作ってみようか。

 ……失敗したとしても、さすがに化学薬品使ったレベルのヤバさまではいかないだろうし……

 

 うまくいったなら、セイバー達が帰って来た時に食べてもらうのもいいかもしれないなー。

 

 そう思いながら、マイルームの扉を開けて僕は家庭科室を探しに出て行ったーーーー

 

 

 

 ★☆★

 

 

 

「……で、コイツ等が今回のシフト担当か?」

「ああ、この二人が君に取っての後輩だ。仲良くやってくれたまえ」

 

 月海原学園、地下一階。

 食堂と購買部がある所で、今日の俺のアルバイト場所でもある。

 その場所で俺は今、ムカつくマーボー神父の紹介で、赤いドレスの嬢ちゃんと狐耳のキャスターと会っている所だった。

 

「まあ、キャスターは前に会った事あるからいいとして……そっちの赤い嬢ちゃんは初対面か。俺はランサーだ、よろしく頼むぜお二人さん」

「うむ。今日はよろしく頼むぞ青タイツ」

「はい。改めてよろしくお願いしますね駄犬」

「全然よろしくされてねーんだが。第一声から罵倒ってどういう了見だおい」

 

 初っ端からいきなりのケンカ腰の言葉に、速攻で額に怒りのマークが浮き上がる。

 何故か脳裏に“毒舌シスター”なる言葉が浮かび上がってきたが、同時に思い出してはいけないと魂が訴えかけているので忘れる事にする。

 

「はっはっは。さっそく仲が良さそうで何よりだ」

「どこをどーいう目で見たらそんな感想出んだ? てめえ脳みそ腐ってんのか、この性悪神父ッ!?」

「はっはっは。褒められたようで何よりだ。お礼にホットドックをやろう」

「褒めてねーしそして何でピンポイントでソレをチョイスするッ!? てめえ俺に恨みでもアンのかッ!?」

「何、恨みは無い。単純に楽しんでいる」

「地獄に堕ちろや究極ドS神父ゥッ!!!」

 

 それはともかく、とマーボー神父は続ける。

 野郎……完全にスルーしやがった……ッ

 

「今日の仕事は購買部の店員と食堂の清掃だ。今はまだ人はまばらだが、昼頃にはかなりの人数がやってくるだろう。清掃はその前に終わらせ、購買部の方はその時間は特に注意するように。ちなみに今回から、この制服着用が義務されたのでちゃんと着るように」

 

 いくつか注意事項と、新しく作られた三人分用の制服を渡した後、ではなと言ってドS神父は笑いながら去っていきやがった。

 まあ、いたらいたらでスッゲーイラつくから、いねーのは万々歳なんだがよ……

 しっかし、このメンツか……俺はそう思いながら、嬢ちゃん達二人の方に視界を移す。

 

「むう……しかし何故服を着替えなくてはならぬのだ? 正直このバイト用の制服とやらは地味すぎて、余には似合わん。せめてもっとこう、派手なのは無いのか?」

「しかたないですよ、我慢して下さいセイバー。考えても見て下さい……売店に買い物に行ったら、“筋肉ムッキムキで、全身ピッチピチの青タイツを着た野郎が接客”してるのを想像してどう思います?」

「ああー」

「実際それで苦情が来て、それのせいで急遽バイト中制服着用が義務づけられたらしいです。朝っぱらからあんなもの見せ付けられるくらいなら、この地味な服の方が何十倍もマシでしょう?」

「確かにそうだが、それは完全にこっちはとばっちりではないか。つくづく周りに迷惑かける駄犬よな」

 

 落ち着け……落ち着くんだクーフーリン。

 心の底から怒りの炎が沸き上がりそうなのは分かるが、こんな奴らでも一応一緒にアルバイトをする仲間だ。

 しかも今日のバイト内容に売店員という接客業もある。

 愛想が大事なその仕事で、初っ端から険悪状態っつーのは非常によろしくない。ましてや騒動を起こすなんてなんてもってのほかだ。

 

 この二週間のアルバイター生活で、その程度の事は嫌という程分かっているからな!

 

 …………あれ、俺英霊だよな……?

 

 

「あー……とにかく、いくつか文句はあるようだが、とりあえずさっさとそれに着替えてこい。昼前には清掃は終わらせなきゃならねえんだからな、時間はねえぞ」

「むう、仕方ない……いささか不本意だが、これもバイトを成功させるため、我慢するとしよう……」

「ところで、仕事の流れはどうするんですか? 全員で清掃をしてから、売店に移るんですか?」

「ん? そうだな……」

 

 俺はそう呟きながら、食堂全体と購買部を見渡していく。

 ……ふむ。昼のピーク時までいくらか時間があるからか、まだ人の数は少ない……が、全くいない訳じゃない。

 恐らく購買部付近をウロウロ回っている数人は、店員が出てくるのを待っている奴らだろう。

 無論清掃の方も、食事の連中が来る前に急いでしなきゃいけないが……購買部の方を開けっ放しというのは不味い。

 

「……よし。売店の方に一人、食堂の清掃が二人の振り分けだ。とりあえず、俺が購買部の方をやるから、嬢ちゃん達が清掃頼むわ」

 

「「ええ〜〜〜〜〜〜〜〜っ」」

 

「露骨に嫌な表情すんなおい」

 

「だってそれ、明らかに余達の方が大変ではないか!」

「食堂の清掃と言っても、ここはかなり広いんですよ! 床の掃除やテーブル拭き、イスの整頓やその他諸々! それをか弱い女性に丸投げなんて最低じゃないですか!?」

 

 もの凄い分かりやすい不満オーラを出しながら、文句を垂れる二人。

 端から見たら、完全に子供の駄々っ子だった。

 

「おいおい、じゃあお前等に接客なんか出来んのか? 客と会話するっつーのは中々難易度高くて、素人には簡単に出来ねーよ。俺はお前等より経験があるから、そこをやろうっつってんだよ」

「むっ、バカにするな!! 余の美貌を持ってすれば、それ位朝飯前だぞ! 普段着が全身青タイツの男よりは絶対な!!」

「そうです!! 私のこの美しさがあれば、簡単に野郎どもの財布なんてユルユルです! 赤い槍持ったチャラそうな男なんかは特に!!」

「お前等一々俺をディスらなきゃ会話出来ねーのかオイ」

 

 しかしまあ……と、改めて嬢ちゃん達を見る。

 なるほど、自分で言うだけあって、容姿はかなりの上玉と言えるだろう。

 確かにこれなら嬢ちゃん達の言う通り、男が接客するより売り上げが多少上がるかもしれねえな。

 

「はあ……しょうがねえ、じゃあお前等のうち片方が購買部の方をやれ。残った方が俺と清掃、これでいいだろ」

「ええー、野郎と一緒っていうのもちょっと……」

「いい加減にしろやテメェ等」

 

 ハイもう決定!

 そう言って手をパンパン叩くと、渋々ながらも二人はハーイと返事をした。

 

「では、余が接客という事で構わんな? 余は皇帝だ、大衆との会話など日常茶飯事だった。故に、適任であろう?」

「はあ? 何言ってるんですか。王様が玉座に座って話すのとは訳が違うんですよ。ここは気が回って対応が出来る私がするべきです」

「………………」

「………………」

 

 

 スッーー←(剣を構える)

 スッーー←(鏡を構える)

 

 

「こんなとこで殺り合おうとしてんじゃねえよボケェッ!!?」

 

 ヤベェ、先行き不安すぎる…………

 

 

 ★☆★

 

 

 〜30分経過中〜

 

 

「まずバターを溶かしてー、砂糖を振るいに掛けてー……」

 

 

 ★☆★

 

 

「ーーーーよし、こっち側の床は終わったな。キャスター、テーブルの方はどうだーっ!」

「あー、いま全体の四分の一が終わった所ですねーっ」

 

 よし、清掃の方はまあまあいいペースで進んでるな。

 この調子でいけばお昼前までには十分間に合うだろう。

 

「さて……そういや、赤い嬢ちゃんのほうはどうなってんだろーな?」

 

 まだそれほど時間は経ってないが、すでに何人かは並んでいたからな。

 ちゃんと接客出来てんだろうな……ちょっと様子を見るか。

 そう思い、俺は床を掃除していたモップを一旦置いて、購買部の方に戻っていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあっ、そこの者!! よく見るがよい、この“麗しの幸運の彫像”を!! このフォルム、この神々しさッ!! 最っ高の芸術作品であろう!? なんとこの彫像、部屋に飾っておくだけでその持ち主のリアルラックを上げてくれるという優れものだ!! 今ならコレを、わずか100,000PPTでーーーー」

 

 

「はいストォ———————————————————————プッ!!!!!」

 

 

 

 

 現在進行形の悪徳商法にカットインする俺!

 

 

「む、何をするランサー。そなた、清掃の方はどうしたというのだ?」

「いやお前が何やってんのぉッ!!? 何詐欺まがいな商売やろうとしてんだ!? つーかその彫像どっから持ってきた、そんな商品リストに無かったよな!?」

「それはそうだろう、これは余が自ら作り上げたモノ。故に、世界に一つしか無いひっじょぅ〜〜〜〜〜〜にレア物だ。本来価値など付けれぬほどなのに、これでもかなり値段を下げたのだぞ」

「知らねーよッ!! そもそも自分の手作り品を売ろうとしている時点で間違ってんだよぉッ!!」

 

 駄目だッ!?

 コイツに接客させるのはマジで向いてねえッ!!

 

「ええい、交代だ交代ッ!! キャスターッ!! お前が購買部に入れ!!」

「なぬっ!? まだ一つも売れてないのだぞ!!」

「売れなくて当然だボケェッ!!!」

 

 やっベエ……頭が痛くなってきやがった……

 

 

 ★☆★

 

 

 〜40分経過中〜

 

「生地を混ぜた後ー、冷蔵庫でしばらく寝かせてー……」

 

 

 ★☆★

 

 

「うっし、これでテーブルは殆ど終わったな。セイバーッ!! そっちはどうだーっ」

「うむ、床の方ももう少しで終わるのだーっ」

 

 よし、清掃の方は殆ど終わって問題ないな。

 予定より少し早めに終わりそうだが、昼頃には購買部の方が忙しくなるからな、そっちに集中した方がいい。

 

「しっかし、あの狐の嬢ちゃんはちゃんとやってんだろーな……?」

 

 正直、赤い嬢ちゃんの奴の後だから、かなり心配だ。

 なんか似た者同士っぽいし、あっちも何かやらかしてそうだ……

 一応、こっちも様子を見ておくか……

 俺はそう思い、テーブルを拭いていた台拭きを片付けて、嫌を予感がしながら売店の方に向かっていった……

 

 

「……うむ。では、“焼きそばパン”と牛乳を一つ」

「はい。焼きそばパンと牛乳一つずつですね」

「後、エーテルの欠片を三つに、強化体操服を貰おうかの」

「はい。エーテルの欠片を三つに、強化体操服一つ。以上ですね?」

 

 ほう、ちゃんとやってんじゃねーか。

 見た所受け答えもキチンと出来てるし、商品の確認もしていて文句の付けどころも無い。

 さすがに杞憂だったかと、俺は安心して————

 

 

 

 

 

 

 

「はい。では、合計で“10,000,000PPT”で————」

 

 

 

「ストップ、ザ、フォ————————————————————————クスッ!!!!!」

 

 

 

 ーーられるかぁッ!!? 

 やっぱり問題だらけじゃねーかッ!!!

 

 

「はあ? なんですかランサーさん、何か文句でも? 接客態度には問題ない筈ですが」

「いやそこじゃねーよッ!!? 一番の問題は態度より値段だよ値段! 何だその法外な金額、どう見てもこの商品でその値段はねーだろ!? 5,000もかからねーよ5,000もッ!!」

「違います、商品の値段じゃありません。殆ど“私の笑顔”を見た見物料です」

「スマイルゼロ円にしとけよッ!!? つーかボッタクリにも程があるわボケええええええええええッ!!!」

「さっきからボケェしか言ってませんけど、ちょっと言葉のボキャブラリー少なすぎません?」

「知るかああああああああああああああああああああああああッ!!?」

 

 

 マジヤッベエ……胃が痛くなってきやがった……

 

 


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