シリアスや長い話は難しいですね。予想以上に遅れてしまいました。誠に申し訳ございませんm(__)m
修行を開始してから数日後、フェニックスとのレーティングゲームもついに明日となった。そして、その日もいつも通り全員と夜まで修行をした後、明日のために早めにベッドにみんな入っていった
そんな中、ルドガーは一人部屋の中で自分の神器の懐中時計、"骸殻者の証"【クルスニク】を眺めながら、あることを考えていた
『(どうやって俺は骸殻を発動させているのだろうか……。)』
それは、自分がどの様に骸殻になっているかという疑問であった
通常、骸殻を発動するためには時計と契約する事で力を得ることができる。しかし、骸殻を使い続けると“時歪の因子化”【タイムファクター】と呼ばれる状態になり、徐々に自分の体を侵食し最後は自分が“時歪の因子”【タイムファクター】となってしまうのである。
だが、ルドガーにはその兆しが無かったのである。また、前の世界の様に誰かを媒介にして契約しているのでも無いようだ。
『(この世界ではもう神器という別のものとして考えられているのか……)』
その後もいくら考えても分からず、骸殻を多様しないようにだけ決めて、時間だけが過ぎていった
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『…………ん?もうこんな時間か』
ルドガーがふと気が付くと最初に考え始めた時より随分と時間が経っていた
『明日はゲームだっていうのに駄目だな、さっさと寝ないと…………ん?あれは……』
ルドガーがベッドに入ろうとすると窓の外に見覚えのある人物を発見した。そしてルドガーは苦笑いを浮かべながら部屋を出て下の階に向かった
リアスside
私は一人、庭に置いてあるイスに座りながらある一冊のノートを読みながらあることを考えていた。その本はレーティングゲームをやるに当たっての自分で考えた戦術が書いてあり、頭の中には明日戦うライザーについて考えていた
業火の一撃に「不死身」と称される再生力。
確かに倒す方法はある。ライザーの精神力が尽きるまで倒すか、圧倒的な力で押し通せば不死といえど再生することはできなくなる。前者はライザーの精神が尽きるまでのスタミナが、後者は精神も肉体一撃で奪うくらいの力が必要となり、とてもじゃないが今の自分たちでは無理だろう
そこまで考えてふと台所に目をやると台所にイッセーの姿が見えた
「あら?起きたの?」
「あ、部長。こんばんわ」
「ちょうど良かった、少しお話しましょう」
さっきまでの落ち込んだ雰囲気を振り払うように明るい声を出す。
読んでいた戦術の書いてあるノートを閉じるとイッセーの視線がそちらに向いているのを感じた。本当にこの子は感情が顔に出やすいというか、素直だと思う。異性というよりは弟みたいで可愛がっている子だ。
「……正直、こんなものを読んでいても気休めにしかならないのよね」
「どうしてですか?」
「相手がほかの上級悪魔なら、これを読んでいれば戦いはできるわ。この本は研究された戦いのマニュアルだもの。問題はそこじゃないの」
「? じゃあ、いったい何が問題なんですか」
「ライザー本人よ。というよりもフェニックスが相手なのが一番問題なの」
さっきまで見ていた本の中から雄々しく翼を広げる不死鳥が描かれているページを探し、机の上に置く。
【ー不死鳥ーフェニックス について】
流す涙は如何なる傷をも治し、その身に流れる血を飲めば不老不死を手に入れられるという伝説すらある。フェニックスには聖獣と悪魔の相反する二つの一族がいるが、その能力はほぼ同じ。
――つまり「不死身」
その驚異的までの再生力の恐ろしさを悪魔はレーティングゲームによって思い知らされた。相手にする際は必ず最上級、または魔王級の悪魔を連れていくことを推奨する。
改めて自分たちが戦う相手の強さに絶句するイッセー。淡々と話している私でさえ、話せば話すほど勝てる見込みがなくなっていくような気がする。
陰鬱な雰囲気な漂い始めた時、誰かが近づいてくる音がした。普通の人間では暗く見通せなくても、悪魔である私の目はしっかりとその人物を写し出していた。暗闇に映える白いが一部黒い髪、そして鮮やかなライトグリーンの瞳、私たちオカ研の顧問であり私たちの中で一番の実力者、ルドガーだった。
「…………」
思わず手に力が入る。何故だろう?ルドガーを見ているといつも力が入ってしまう。この間もルドガーがソーナのことを呼び捨てにしているのを聞いたとき無意識に怒ってしまった。
「あっ!ルドガーさんも眠れないんですか?」
『ああ、ちょっとな。』
「……ルドガーさんは、ライザーが不死って言ったらどうしますか?」
思いつめた表情をしたイッセーが躊躇いながらも質問を投げかける。私もルドガーの答えに興味があった。悲観するのか、逆に興奮するのか
少しの間が空きルドガーは口を開いた。
『……さあな』
「「え?」」
私とイッセーは二人して間抜けな声を出してしまった
『俺は異世界から来たって言ったよな』
私とイッセーが頷いた
『俺は前の世界で色々な奴と戦ってきた。突然変異で大きくなったモンスター、テロリスト、時間を巻き戻して傷を癒す精霊、一発パンチ食らったら瀕死になる力を持った人間とかな。』
ルドガーの話を聞いて私達はその壮絶さに唖然としていた。
『だがそんな中でも俺は生き抜くことが出来た。それは、守るべき者、そして仲間がいたからだ。
守るべき者がいたから強くなれた。
仲間がいたから支えあった。
だからどんな敵と戦った時もあまり考えた事が無いんだよ』
その言葉はとても重みがあるように思えた
本当は私たちのように弱音を吐いて欲しかった。あるいは不死ごとき問題ないと勇気づけて欲しかった。……私たちでも勝てるんだって言って欲しかった。
私は不安だったのだ。
修行をすればするほどルドガーより弱い自分を思い知らされた。未熟な王では見捨てられるのではないかと思い、彼が自らの元を去ることに焦りを覚えた。
話を聞く限り彼の傍には私よりもっと強い人たちがたくさんいた。そんな私に落胆するんじゃないか、そんな気持ちで一杯だった。彼と接した時間は短かったけれど、ルドガーはいつの間にか私にとって大切な心の支えになっていた。
この感情がどんな物なのか分からない。それでも大切な存在であることは変わりない。
考え込んで黙り込む私と二人の間で流れる微妙な緊張感を破ったのはまたもイッセーの質問だった。
「そういえば部長、俺ずっと気になってことがあったんですよ」
「なにかしら?」
「どうしてライザーのことを嫌っている……っていうか、今回の縁談を拒否してるんですか?」
予想していたとはいえ、余り触れて欲しくないことを聞かれて思わず溜め息が出る。それを説明するには結構内面を掘り下げないといけないから。
ルドガーも何も話さずこちらをじっと見てくる。意を決して私は口を開き始めた。
「……私は【グレモリー】なのよ」
「え?ま、まあ確かに」
「いえ、改めて名を言ったわけじゃないのよ。私はあくまでグレモリー家の人間でどこまでいってもその名が付き纏うってこと」
なるほどとうなずくイッセーとルドガー。少し経った後、イッセーは自分の考えを纏めるように話した。
「つまり、部長は【グレモリー家のリアス】としてではなく、【ただのリアス】として見てもらいたい。ただのリアスという一人の女の子として、認めてもらいたいってことですよね?」
「ええ、そうよ。私はグレモリーに誇りを感じているわ。でもそれは私自身を殺している。私はグレモリーを抜きとして私を愛してくれるヒトと一緒になりたいの。……残念だけれどライザーは、私のことをグレモリーのリアスとして見ているわ。そしてグレモリーのリアスとして愛してくれる。それが嫌なの。それでもグレモリーの誇りは大切なものよ。矛盾しているけど、それでも私はこの小さな夢を持っていたいわ」
名家としての誇りと個人として見て欲しいという思い。そして「リアス」個人を愛してくれる人と一緒にいたいという小さな夢。
私にとっては全てが大切で、これらがあるから今の私がいる。
「俺は部長のこと、部長として好きですよ」
照れたように頬をかきながらそう告げるイッセーはやっぱりかわいかった。素直な眷属に対する愛しさがこみあげる。
……ルドガーは何て思うのかしら。下らないというのだろうか、それとも
私を認めてくれるのだろうか
そこでようやくルドガーが話し始めた。
『……俺は、【ルドガー】である前に【クルスニク】でなければならないと思っている。【クルスニク】の名を継いだ者としての義務だと思っている』
「っ……」
やっぱりルドガーの答えは想像していたものだった。確かに私はグレモリー家のリアスとしての義務を果たしていない。純血悪魔を絶やさないためにも、悪魔の未来のためにもこの結婚は大事だということは理解している。
それでも、心のどこかが納得しないのだ。
ルドガーは目をつむり一言一言絞り出すように話し続ける。
『だが……それでもリアスに覚悟があるならば、その夢を持ち続けるべきだと思う。お前は意思の無い人形ではないんだからな。俺はそういうリアスの方が、好きだぞ』
「っ!」
沈んでいた気持ちが晴れていき、顔が熱くなるのが分かる。何でもないように言ってくるのが余計に恥ずかしい。
胸がうるさいほど高鳴っていた。ルドガーの笑顔が頭から離れない。
『さて、もうそろそろ解散だ。これ以上は明日に支障が出るからな』
そう言うとルドガーはイッセーを部屋に戻した。不意打ちのような形で彼の言葉は私の悩みを全て吹き飛ばしてくれた。
弱くてもいい、みっともなくても自分を信じることを諦めてはいけなかった。
もう、不安は無かった。そして、ルドガーはこちらを向き
『おやすみ、リアス』
「ええ、おやすみ、ルドガー」
そう言って私はとても気持ちよく部屋に戻っていった
『…………お前は俺のようになってはいけない』
ルドガーが最後に呟いた言葉と悲しげな表情に気づかないまま……
side end
『【グレモリー】としてではなく【ただのリアス】として、か。』
ルドガーは今の会話であることを思い出していた
『(兄さん…………)』
もし、自分が【クルスニク】ではなかったら。ユリウスと殺しあいをしなくてもよかったのでは、と考えてしまうのである
『(いや、それよりもリアスの事だな)』
頭を振りリアスの事を考える
『(これ以上、俺のようにならないように防がないとな……)』
そう考えながら、ルドガーはゆっくりと瞳を閉じていった。
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