機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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…ここまでヤキンの戦い長くするつもりはなかった

まだ…、まだ終わらんよ…!(泣)


PHASE47 崩壊

ヤキンの制御室では、ジェネシスの発射の準備が進まれていた

 

 

「照準ミラーブロック、換装まだか!?」

 

 

パトリックの怒鳴り声が執務室に響く

 

遅い

いつまでかかっている

あと少しで終わるのだ

地球を撃って、今度こそ終わらせるのだ!

 

 

「ザフトはジェネシスを停止しなさい!」

 

 

その時、執務室にあの歌姫の声が響き渡る

その声は、パトリックの声よりも皆の心に響くものだった

 

 

「核を撃たれ、その苦しみを知るわたくしたちが、同じことをしようというのですか!?」

 

 

モニターを見ると、エターナル

そして、クサナギがジェネシスに向かってきている

 

さらに、そのまわりでフリーダム、ジャスティス、ルージュにヴァルキリーまでもが艦を援護している

 

 

「撃てば癒されるのですか!?罪のない人々や子供たちを!これが正義と!?」

 

 

何を言っている

奴らは撃ってきた

ならば、我らだって撃ち返す

当然だ

 

 

「互いに撃つ砲火が何を生み出すのか、わからないのですか!?まだ犠牲が欲しいのですか!?」

 

 

ラクスの声が

今まで聞いたこともない、厳しく、張りのある声が響き渡る

 

パトリックを除く全員に、動揺という感情を与えた

 

 

 

 

 

 

セラとトールは、フレイの攻撃を捌きながら必死に呼びかけていた

 

 

「フレイ!もうやめろ!お前はどうして…!」

 

 

トールがセリフを言い切る前に、フレイは収束ビーム砲を撃つ

トールは放たれた砲撃をかわす

 

 

「うるさい」

 

 

トールの言葉に一言だけ返す

本当にうっとうしそうに返す

 

 

「だいたい、どうしてあなたたちはそこまで私に構うの」

 

 

フレイが、疑問をぶつける

さっきから、この二人は自分に攻撃を仕掛けてこない

防御に徹している

 

 

「私は、あなたたちの敵なのに」

 

 

「違う!」

 

 

フレイの言葉に、トールがすぐさま否定の言葉を返す

フレイがそれに戸惑い、一瞬動きを止める

だが、二人は攻撃を仕掛けてこない

 

動きを止めたその時に、攻撃すれば自分にダメージを与えられるというのに…

 

 

「…私をなめてるの?」

 

 

フレイの声に怒りが込められている

セラとトールの行動は、フレイに怒りを抱かせるものだった

 

 

「違う!俺たちは、フレイを助けようと…!」

 

 

「そんなこと、頼んでない。大体、あなたは誰なの?」

 

 

「…!」

 

 

トールは目を見開き、セラは苦虫をつぶしたような表情になる

 

予想はできていた

記憶が消されている

サイのこともどこか覚えていない様子だった

トールのことを覚えていないのもうなずける

 

だが、それならなぜ自分のことは覚えているのか

 

 

「私は、セラを殺す」

 

 

無機質な声で言い放つフレイ

 

セラは、ラウの敵

ならば、それは自分の敵と同義

 

 

「フレイ!本当に俺たちのことを覚えてないのか!?」

 

 

「同じことを言わせるな」

 

 

トールの呼びかけに冷たく返し、ムラサメに向かって対艦刀で斬りかかる

だが、セラはムラサメの前に立ちはだかり、サーベルで対艦刀を迎え撃つ

 

 

「くっ…!」

 

 

「忘れちまったのかよ!キラも、ミリィも、カズイも!」

 

 

スレイヴが後退し、対艦刀を構えなおす

そして、リベルタスに斬りかかっていこうとする

 

 

「サイのことも!」

 

 

「ッ!」

 

 

まただ

また、その名前

 

サイという名前を聞くと、何か心が穏やかになっていく

セラを殺そうという憎しみが薄れていく

そして同時に湧き上がってくる罪悪感

 

 

「…どうして」

 

 

わからない

どうしてこんな感情が浮かんでくるのか

サイ

サイ

 

 

「そんなの…、知らない!」

 

 

絡みついてくる感情を振り切って、リベルタスに向かっていく

セラもそれを見て、光の翼を展開してスレイヴに向かっていく

 

サーベルと対艦刀が合わさる

 

 

「フレイ!もうやめろよ!戻って来い!サイだって、お前のこと心配して…」

 

 

「うるさい!」

 

 

「…!トール!」

 

 

セラは反応できなかった

急に、スレイヴが力を緩めたかと思うと、ムラサメに接近していった

力を入れっぱなしにしていたため、サーベルが振り切られる

その分、方向転換するのが遅れてしまう

 

その空白の時間が、フレイにトールに近づく暇を与えてしまった

スレイヴがムラサメの目と鼻の先にいる

対艦刀を振り上げる

 

トールも慌ててサーベルを持つ

切り合わせるが、ムラサメは簡単に弾き飛ばされてしまう

 

フレイは追撃に出る

この先程から不快なことばかり言うこいつを、落とす

 

 

「知らない…」

 

 

あなたたちのことなんか、知らない

 

 

「知らない!」

 

 

サイのことなんて、しら…

 

 

『フレイ!大丈夫だったか!?』

 

 

「…!」

 

 

脳裏によぎる優しい声

 

フレイの動きが止まる

 

 

「…え?」

 

 

「…フレイ?」

 

 

セラとトールは、急に動きを止めたフレイの様子を見る

さっきまでの勢いはどこへ行ったのか

二人は戸惑う

 

一方フレイは、なぜだかわからないが、憎しみの感情が急激に薄れていくのを感じていた

 

 

「…何で?」

 

 

脳裏に過ったあの声

あの声の主がサイ?

 

 

「…サイ」

 

 

名前をつぶやけば、心が一気に安らいでいく

どうしてセラを憎んでいたのか

それすらも不思議になってくるほどに

 

 

「…憎かったのに」

 

 

セラを憎んでいたのに

理由はよくわからないが、セラという名を聞けば、心が燃え上がる感覚がするほどに憎かったというのに

 

今では、戦う気すらなくなっていく

 

 

「…サイ」

 

 

会ってみたい

 

 

「「!」」

 

 

フレイがぼそりとつぶやいた

会ってみたいと

 

記憶は戻っていないようだが、それでも

 

 

「…なら、俺たちと来いよ」

 

 

「え?」

 

 

トールがフレイに言う

 

 

「俺たちとこれば、サイにだって会える」

 

 

「でも私…。あなたたちの敵…」

 

 

「そんなの関係ないよ」

 

 

トールがフレイに声をかける

セラは何も言わずに見守る

 

フレイは自分を憎んでいる様子だった

なぜか今はおとなしくはなっているが、何かの拍子に

自分の声を聴いたと同時に、また憎しみがよみがえるということを懸念してのこの行動だ

 

 

「俺たちの所には、元々俺たちの敵だった奴だっているんだ。今更一人増えたって誰も気にしないよ」

 

 

トールがフレイの言葉にそう返す

 

 

「…いいの?」

 

 

行きたい

ラウの近くにいるときでも感じなかった

今頃自覚してきたこの心地いい感覚

もっと感じたい

 

この人たちの所に行ったら、もっとこれを感じられる?

 

 

「フレイ」

 

 

「…!」

 

 

底冷えするような低い声が聞こえた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エターナル、クサナギがジェネシスへ向かっている

 

 

「ジェネシス、射程距離内に入ります」

 

 

ダコスタが報告する

 

 

「主砲、ミサイル照準!」

 

 

「ローエングリン、照準!」

 

 

バルトフェルド、キサカがそれぞれ指示を出す

 

 

「「てぇっ!」」

 

 

同時に打ち出される砲撃とミサイル

これで、ジェネシスは破壊される

 

だが

 

 

「そんな!?」

 

 

「くそっ!厄介なもんを!」

 

 

アイシャが驚愕し、バルトフェルドが悪態をつく

 

ミサイルはほとんど迎撃されてしまったが、砲撃はジェネシスに命中した

だが、ジェネシスには傷一つつけることはできなかった

 

 

「ヤキンに侵入してコントロールをつぶす!」

 

 

その光景を見ていたアスランが、エターナルとクサナギに通信を入れて提案する

 

 

「時間がない…。急ぐぞ!」

 

 

「うん!」

 

 

「あぁ!」

 

 

アスランの声掛けにキラとカガリが返す

 

 

「キラ!アスラン!カガリさん!」

 

 

ラクスが心配して声をかける

画面の中のキラが微笑む

 

 

「ラクス、大丈夫。心配しないで」

 

 

キラはそう言って通信を切る

 

ラクスは、両手を握って俯いた

 

 

「…。まだ撃つぞ!出来る出来ないかじゃない!あいつらだけに負担をかけさせるな!」

 

 

「俺たちはできることをやる!ローエングリン、照準!」

 

 

バルトフェルドとキサカが、そう叫ぶ

自分たちにできることをやろうと声をかける

 

クルーたちが、それぞれの役割を果たしていく

ラクスもまた、顔をあげて、自分のすべきことを続けるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

アスラン、キラ、カガリは三人でヤキンに突入しようとしていた

ヤキンに近づけば近づくほど激しくなっていく三機を狙うビームや砲撃

必死に掻い潜りながらなおもヤキンに接近していく

 

 

「もうやめろ!こんな戦い!」

 

 

耐えかねたようにアスランが叫ぶ

 

 

「君たちも滅ぼしたいのか!?すべてを!」

 

 

そしてキラも叫ぶ

本当にこのまま撃つのか

どちらかが滅びるまで撃ち続けるのか

 

だが、返ってくる言葉は

 

 

「奴らが先に撃ってきたんだ!」

 

 

「ボアズには、弟もいた!」

 

 

憎しみを含んだ言葉ばかり

 

 

「くそっ…!」

 

 

思いが届かない

そんな苦しさを感じながらも、ついに三人はヤキンに突入することに成功した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…、ラウ…?」

 

 

フレイが声を震わせながらつぶやく

先程通信を通して聞こえてきたラウの声

 

聞いたことのない冷たい声

いつもの優しく温かい声とは違う

 

 

「よく働いてくれたね…、フレイ」

 

 

「ラ…ウ…?」

 

 

「!これは…!?」

 

 

そこで、セラも気がついた

背中にはしる冷たい感覚

これは…

 

 

「クルーゼ!」

 

 

見つけた

自分たちが固まっているところから少し離れたところ

こちらに向かってきている

 

 

「本当によく働いてくれた…」

 

 

「ラウ…、どうしたの…?」

 

 

囁きかけてくるラウに、フレイは疑問の言葉を返す

 

ラウは、怒ってる?

どうして?

セラを殺せなかったから?

あの人たちについていこうとしたから?

 

 

「これが、君の最後の役目だ…」

 

 

「!フレイっ!」

 

 

プロヴィデンスがライフルを向けてくる

狙いは、フレイ

 

セラがスレイヴの前でシールドを構える

 

だが、そこで違和感を感じる

小さな冷たい感覚

 

 

「…っ、しまった!」

 

 

気づくのが遅すぎた

プロヴィデンスが構えているライフルは、ただの囮でしかない

本命は…

 

 

スレイヴの斜め後ろに浮いているドラグーン…!

 

セラはすぐさまライフルをドラグーンに向けて、引き金を引く

だがそれは、ドラグーンがビームを発射するタイミングと同時で

 

 

「あ…」

 

 

トールが小さくつぶやく

 

ドラグーンがビームを発射して一瞬の間

 

スレイヴが一筋のビームに貫かれた

 

 

「…フレイ?」

 

 

爆散していくスレイヴ

つながっていた通信も切れる

 

 

「…フレイ?おいっ!ウソだろ!フレイっ!!」

 

 

「クルーゼぇええええええ!!!」

 

 

トールが、今起きた現実を受け入れられず、フレイに呼びかけようとする

セラは目の前でフレイを撃ったその人に怒りの咆哮をあげながら、

サーベルを抜き、光の翼を展開して向かっていく

 

 

「はっ!」

 

 

ラウが嘲笑をあげながら残りのドラグーンを切り離す

降りかかるビームを舞うようにしてかわし、サーベルをプロヴィデンスに振り下ろす

ラウもサーベルで迎え撃つ

 

 

「トール!お前は戻れ!」

 

 

「…」

 

 

鍔迫り合いの状態の中、セラはトールに指示を出す

だが、トールは何も答えない

 

 

「トール!…くそっ!」

 

 

もう一度呼びかけるが、反応はない

セラがトールに近づこうとするが、ドラグーンの嵐もついてくる

これでは、近づけてもトールを落としてしまう

 

 

「トール、戻れ!早くっ!!」

 

 

再び呼びかける

反応は、ない

 

 

「ミリアリアとの約束、守らなくてもいいのかっ!?」

 

 

「…っ!」

 

 

その言葉に、トールはやっと、反応する

 

 

「ミリアリアと、生きて帰るって約束したんだろう!?」

 

 

「…ミリィ」

 

 

ミリアリアの名をつぶやく

そうだ

この機体に乗ることを決めた時、自分は何をした?

約束だ

生きて帰ると、ミリアリアと約束した

 

 

「…っ!」

 

 

トールの虚ろだった瞳に、わずかだが力が戻った

すぐにトールは機体をアークエンジェルの方に向けて戻っていく

 

セラはそれを見て、ホッと息をつく

だがすぐに気を引き締めて、プロヴィデンスに向き直る

 

 

「…お前、どうして」

 

 

「フレイのことかね?最初からこうするつもりではいた」

 

 

「!」

 

 

最初からこうするつもり?

それは、つまり…

 

 

「君を落としてくれるならそれでも良かったのだが…。無理そうだったので、当初の予定通り、君の目の前で彼女を落とさせてもらった」

 

 

セラの歯がかみしめられる

そのあまりの力に、歯茎からわずかに血が出るほど

 

 

「っ!」

 

 

一瞬

そう言っていいほどの速さで、セラはプロヴィデンスに斬りかかった

しかしラウはそれに反応する

 

 

「お前は…!お前だけは!!」

 

 

「…」

 

 

セラの声に憎悪の念が込められる

それを聞き、ラウは笑みを零す

 

どうせ人は、互いに憎み合い、殺し合う

そんな未来しかない

それが証明されたような気がしたからだ

 

 

「いくら叫ぼうが今更っ!」

 

 

ラウもドラグーンで反撃しようとする

 

二人の最後の戦いが始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしておるのだ!あんな小娘やナチュラルの艦など、さっさと落とさんか!」

 

 

パトリックの大声が響き渡る

モニターには、ジェネシスを破壊しようと奮戦するクサナギとエターナルの姿

パトリックにとっては忌々しい意外表現し難いものだった

 

 

「…ラクス様」

 

 

迷いが込められた小さなつぶやき

それは、パトリックの耳にも届いていた

 

不機嫌を隠さない目で、つぶやいた兵を睨む

その兵はモニターに目を向けていて、パトリックの視線に気づかない

それがパトリックの神経を逆なでした

 

 

「照準入力開始!目標、北米大陸東岸地区!」

 

 

「議長…!?」

 

 

ユウキが信じられないといった目をパトリックに向ける

今、目の前にいる人物は、地球を撃つと言ったのだ

 

それは、だめだ

それだけは、やめさせなければ

 

 

「ジェネシス照準、目標、地球…。大西洋連邦首都、ワシントン…」

 

 

ユウキ以外の兵も、地球を撃つことに抵抗があるのか、オペレーターの復唱が、どこか不安げなものだった

だが、それを読み取ったパトリックがさらに大声で叫ぶ

 

 

「何をしている!これですべてが終わるのだぞ!」

 

 

撃てば、終わる

戦争が、終わる

 

だが、ユウキにはそうは思えなかった

なぜだかはわからない

撃てば、間違いなくこちらの勝利で戦争は終わる

そのはずなのに…

 

 

「議長、この戦争、すでに我々の勝利です」

 

 

ユウキがパトリックに進言する

必死に訴える

 

 

「もう、これ以上の犠牲は…!」

 

 

出す必要はない

そう告げようとした

 

言えなかった

最後まで、告げられなかった

 

ユウキの腹部から血が噴き出す

ユウキの目の前で、パトリックが銃をユウキに向けていた

銃口からは煙が上がっていた

 

 

「撃たねばならんのだ…、撃たれる前に…」

 

 

脅迫概念に囚われているように、虚ろに言うパトリック

パトリックは、コンソールに向かう

その前に座っているオペレーターを押しのけ、コンソールを操作し始める

 

 

「敵は滅ぼさねばならん!なぜそれがわからん!」

 

 

パトリックの操作を見ていたひとりの兵が、ぎょっと目を見開く

パトリックは、ジェネシスの発射シークエンスを進めていたのだ

 

友軍にも告げず

 

 

「議長!射線上には、わが軍の兵が!」

 

 

今、撃ってしまえば、友軍の兵も犠牲にしてしまう

だが、今のパトリックにとってそれは些細にも届かないものだった

 

 

「勝つために戦っているのだ!みな、覚悟があろう!」

 

 

そして、これは勝つために必要なことなのだ

ならば、ジェネシスに巻き込まれて死んだとしても、それは正しいこと

なぜならば、勝つために必要なのだから

犠牲になることくらい、覚悟していないはずがない

 

パトリックがさらに操作を進めていく

 

 

「…うぅ」

 

 

ユウキが、最後の力を振り絞って、パトリックの姿を視線に収める

 

止めなければ

 

ユウキが、懐から拳銃を取り出す

それを見ていた、パトリックに抗議していた兵が目を見開く

だが、ユウキを止めない

パトリックに報告しない

 

この男もわかっていたからだ

こんなこと、間違っている

 

ユウキは、引き金に指をかける

その間にも、操作を進めていくパトリック

早くしなければ、地球が撃たれてしまう

 

引き金を、引いた

 

直前、パトリックがこちらを向いた

気づかれた

だが、それは引き金を引いた後のこと

 

パトリックの腹部を銃弾が貫く

無重力の空間に、力なくパトリックの体がゆらゆらと揺れる

 

ユウキの意識が遠のいていく

もう、力が入らない

自分の最後だ

 

だが、やりきった

守り抜いた

罪のない多くの人々を

 

ユウキの顔に笑みが浮かぶ

意識が闇に包まれる

 

最後に見たのは、制御室に入ってくるアスラン含む、三人の姿だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トールは、アークエンジェルに向かっていた

ミリアリアとの約束を守る

その思いだけがトールを動かしていた

 

 

「…!」

 

 

バルカンが、トールに撃ちこまれる

トールはすぐさま機体を後退させる

 

 

「…レイダー」

 

 

バルカンを撃ちこんできたのはレイダーだった

 

クロトは、未だ無事だった

だが、帰るべき母艦を失い、機体のバッテリーも切れ、飲んできた薬の効果も切れかけていた

 

 

「あっははっはははははっははは!!」

 

 

もう、クロトには状況を判断する能力はなかった

だから、目の前からムラサメが消えていたことも、そこまで気に留めなかった

 

あれ?何であいつがいないんだ?

まあいいや

それよりも、僕は生き残るんだ

こんなところで死んでたまるか

死ぬくらいなら殺してやる

さあ、後何人殺したら僕を助けてくれる?

おしえt…

 

 

トールが、サーベルでレイダーを一刀両断にする

なぜだか、レイダーは何もしてこなかった

最初のバルカンはともかく、それ以外は何も仕掛けてこなかった

 

 

「…」

 

 

トールは再びアークエンジェルに機体を向ける

 

 

何が起こったかわからぬまま落ちたクロト

四人全員が、最後を迎えた瞬間だった




いつまでかかるのか!
作者にもわからない

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