機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

49 / 52
アークエンジェル対ドミニオンは?
キラ対カナードは?
セラ対フレイは?
シエル対ロイは?




PHASE46 一つの狂気の終わり

「くそっ!くそっ!くそぉおおおおお!!!」

 

 

当たらない

当たらない

当たらない

 

サーベルを振るう

かわされる

 

ビーム砲を撃つ

防がれる

 

ドラグーンで包囲する

抜け出される

 

どれだけ仕掛けても、全てやり過ごされる

それどころか、反撃を喰らってしまう始末

 

 

「うぁあああああああああ!!!」

 

 

ドラグーンを向かわせる

キラは、ライフル、そしてプラズマビーム砲を展開し、一気に四基のドラグーンを破壊する

 

サーベルで斬りかかる

 

 

「うぉおおおおおおおおお!!!」

 

 

カナードもサーベルで対抗しようとする

だが

 

 

「っ!」

 

 

「なっ!?」

 

 

振るおうとしたサーベルが、根元から叩き斬られた

フリーダムは、両手にサーベルを持っていた

そのことに、カナードは気づかなかった

 

カナードは、もう冷静でいられなかった

屈辱

それがカナードの心のすべてを満たす

 

 

「キラ・ヤマトぉおおおおおお!!!」

 

 

もう、憎む相手の名を叫ぶことしかできなかった

 

キラは両手のサーベルを振るう

ルースレスの四肢とメインカメラが切り裂かれた

コックピットを残して

 

 

「あ…あぁ…」

 

 

呆然とつぶやくカナード

 

フリーダムは、もう自分に興味を失くしたのか、どこかに飛び去っていく

 

 

「はは…は…」

 

 

こんなあっけなくやられるのか

あいつは、自分など眼中になかったのだ

どれだけあがいても、どれだけ自分を鍛えても

 

結局、上の存在にはかなわないということか…

 

 

「…」

 

 

もう、やることは決まっていた

憎んでいた相手に情けをかけられた

そんなことをされて残った命など、いらない

 

カナードは、コードを入力する

画面に映る、タイマー

 

 

「…俺は」

 

 

だんだんと減っていく残り時間

 

 

「何のために…」

 

 

ルースレスが、爆散した

 

 

 

「…!」

 

 

後方から爆音が聞こえてきた

機体を止め、後ろを見る

 

 

「…そんな」

 

 

先程戦っていた機体が、爆散していた

せっかく残った命を絶った

 

 

「…くっ!」

 

 

心にずっしりと何か重いものが乗っかる感覚がするが、ここで止まっているわけにもいかない

キラは再びフリーダムを進ませる

 

止めなければならないのだ

もう、こんなことは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撃ち合うドミニオンとアークエンジェル

ドミニオンのモニターには、撃ちぬかれていく友軍の艦が映されていた

デュエルのライフルで撃ちぬかれたドゥーリットル

バスターの砲撃、ジャスティスのミーティアで落とされていくアガメムノン級

 

アズラエルが絶望の声をとぎれとぎれに出す

 

もう、負けだ

ナタルは悟る

ここからの逆転はない

だとしたら、やることは決まっているのだが

 

 

「…」

 

 

ちらっとアズラエルを見る

この男がそれを認めてくれるかどうか…

それが懸念されていた

 

 

 

 

 

「…!来たな!クルーゼ!」

 

 

背中にはしる冷たい感覚

それは間違いなくそれが近くにいるということ

感覚に従って、ムウは機体を向かわせる

 

セラは、今、ザフトの機体と交戦中だ

ならば、セラが来る前に自分が決着をつける

セラに負担はかけさせない

 

 

「クルーゼ!」

 

 

いた

あの灰色の機体、プロヴィデンス

 

ライフルで狙撃しようとする

だが、プロヴィデンスは背後からの狙撃をかわすと、背中のバックパックからドラグーンを出す

 

 

「…!」

 

 

ムウは本能で機体を駆って、放たれるビームをかわす

 

 

「ムウか!セラ君から聞いたかな!?私の真実を!私の野望を!」

 

 

ラウが語り掛けてくる

ムウはシールドでビームを防ぎながら叫び返す

 

 

「ああ、聞いたさ!これが貴様の望みか!」

 

 

この混沌とした戦場

放たれる核

撃たれるジェネシス

 

 

「私のではない!」

 

 

ラウが、ムウの言葉を否定する

ムウの頭に疑問符が浮かぶ

 

だが、次のラウの言葉でその疑問は晴らされる

 

 

「これが人の夢!人の望!人の業!」

 

 

ラウが戻していたドラグーンを再び発射させる

ムウは機体をひねらせてビームをかわす

 

 

「他者より強く、他者より先へ。他者より上へ!」

 

 

「貴様の理屈だ!思い通りになど…」

 

 

「すでに遅いさ、ムウ。私は結果だ。だから知る!」

 

 

サーベルを合わせる二機

 

ムウの言葉を遮ってラウは叫ぶ

 

 

「自ら育てた闇に食われ、人はほろぶとな!」

 

 

ムウの動きが一瞬とまる

 

そうだ

ラウは、人の傲慢が生んだその結果だ

ラウの言葉が一瞬でも正しいと思ったその瞬間が、致命的な隙となってしまった

 

 

「…!」

 

 

周りを囲まれてしまった

逃げ場は、ない

 

一斉に放たれるビーム

それでも何とかかわそうと機体をひねらせる

そのおかげか、コックピット直撃という最悪の事態は避けられた

だがそれでも、ビームは片腕と片足を奪い、コックピットをかすめていた

 

破片が腹部に刺さり、負傷もする

 

負傷した体に鞭打って、ムウは機体を離脱させる

ラウは、追ってこない

 

 

「…くそっ!」

 

 

結局、自分は何もできなかった

自分よりも圧倒的に幼い少年に、後の役目を託すことに、ムウは大きい悔しさを感じた

 

 

 

 

 

 

フリーダム、ジャスティス、ルージュ、バスターにデュエルが、アークエンジェルのまわりに集まる

 

 

「マリューさん!」

 

 

キラがマリューに呼びかける

 

 

「必要な機体は補給を!ドミニオンは抑える。ジェネシスへ!」

 

 

マリューが命じる

キラとアスラン、カガリが同時に頷く

 

そして、その三機がジェネシスへ向かっていく

 

だが、バスターとデュエルは動かない

互いと向かい合って動かない

 

メインカメラを通して睨み合っていた

 

 

「第八兵装バンク閉鎖、サブ回路オンライン!ダーアグノーシス進行中!」

 

 

サイが、艦の損傷の対応を報告していく

 

 

「ストライク、帰投します!被弾あり!」

 

 

そして、ミリアリアがストライクの帰投を報告する

ストライクが被弾していると聞き、マリューがハッと目を見開く

 

モニターにムウの顔が映る

ヘルメットのバイザーにひびが入っており、コックピット事態に損傷があるのか

モニターには煙が映っている

 

 

「くそ…、クルーゼにやられちまった…。動きが鋭くなってやがる…。セラに…」

 

 

「報告は後です!整備班、緊急着艦用ネット!医療班待機!」

 

 

ムウの対応をするために、指示を出す

負傷もしていることも目に見えているので、医療班も待機させる

 

 

アークエンジェルが着艦体制に入る

それを見ていたあの男が、騒ぎ出す

 

 

「今だっ!撃てぇ!早くあいつを沈めろ!ローエングリン照準!」

 

 

アズラエルがこの隙にアークエンジェルを撃てと命令する

 

ナタルがバッとアズラエルに振り返る

オペレーターが迷いながらも、ローエングリンの発射準備を進めていく

 

だが

 

 

「…もう、やめよう」

 

 

「…は?」

 

 

一人のオペレーターが一言つぶやいた

その言葉を聞き、アズラエルが唖然となる

 

そして、すぐに正気に戻る

怒りと共に

 

 

「何を言っているんだ!貴様ら、もうやめるだと!?」

 

 

怒鳴り散らすアズラエル

撃て、早く撃てと命令しているが、従う者はいない

 

 

「…貴様らぁ!」

 

 

そして、再び拳銃を持つ

それにいち早く反応するナタル

 

一番最初にやめようと言ったオペレーターに拳銃は向けられる

アズラエルは、引き金に手をかけ…

 

 

「な…!」

 

 

引く前に、ナタルがアズラエルの腕をつかみ、照準をずらした

それでも引き金は引かれており、パンパンと発砲音が鳴り響く

暴発する銃弾だが、運よくクルーの誰にも当たってはいない

 

 

「なにをやっている!」

 

 

ナタルがアズラエルに怒鳴りつける

だが、アズラエルもナタルの襟をつかんで怒鳴り返す

 

 

「貴様こそ何のつもりだぁ!」

 

 

アズラエルがナタルの襟を引っ張りながら、つかまれた腕を離させようと抵抗する

ナタルはそれを抑えながら、命令を出す

 

 

「全員、退艦しろ!」

 

 

クルーが、一瞬戸惑って硬直する

だが、決定は早かった

すぐさま艦橋から全員が出ていく

 

 

「な…!?貴様ら!ぐっ!」

 

 

アズラエルがクルーを止めようとするが、ナタルはアズラエルを必死に止める

 

 

「いいか!この艦から脱出したら、アークエンジェルに向かえ!」

 

 

「艦長は!」

 

 

ナタルがこの艦から脱出した後の針路を指示する

それを聞いたクルーの一人が、ナタルを気遣う

 

 

「私のことはいい!早く行け!お前たちは生き残れ!」

 

 

クルーの表情が悲しく歪む

だが、何かを振り切るように、その場から去っていった

 

無重力空間の中、取っ組み合う二人

だが、わずかに腕の自由を取り戻したアズラエルが、ナタルの腹部に拳銃を当て、引き金を引いた

 

 

「ぐぅっ…!」

 

 

うめき声をあげ、アズラエルを拘束していた力が緩む

アズ会えるがナタルを突き飛ばす

腹部から出る血が、無重力の中に飛び散る

 

 

「こんなことをして、どうなるかわかってるんだろうな!」

 

 

アズラエルも、艦橋から出ていこうとする

だが、ナタルはそうはさせない

艦長席の脇にあるスイッチを押す

すると、艦橋の出入り口のシャッターが閉まる

 

アズラエルが、何事かと驚き、ナタルへ振り返る

 

 

「あなたは、ここで死すべき人だ…。私と共に!」

 

 

「なんだとぉ…!」

 

 

アズラエルがナタルに拳銃を向け、引き金を引く

 

 

「ぅあ!」

 

 

今度は銃弾が肩をかすめる

アズラエルは、この艦の仕組みを良く知らない

シャッターを開けて脱出するには、開け方をナタルしか教えてもらうしかないのだ

 

殺しては、ここから出られなくなる

だから、アズラエルは足や腕を狙っていく

 

 

「ドミニオンから脱出艇…!?艦を放棄するようです!」

 

 

サイからの報告に、マリューの目が見開かれる

 

遂に、状況を理解したのか

もう、これ以上戦うことに意味はないとわかったのか

 

これで、ナタルは戻ってくる

そう思った

 

 

「ふざけるんじゃないよ…。ドアを開けろぉ!」

 

 

ドミニオンでは、未だにアズラエルはナタルからシャッターの開け方を聞き出せないでいた

モニターを見ると、接近してくるアークエンジェル

アズラエルの恐怖感は、ピークに達した

 

 

「こんなところで、死んでたまるかぁ!」

 

 

アズラエルが、艦の機器を操作し始める

その機器は、艦のことをあまり知らないアズラエルが唯一使い方を知っている兵器

ローエングリン

 

 

「アズラエル!やめろ!」

 

 

アズラエルが何をしようとしているのか察したナタルが、アズラエルを止めようとする

だが、体が痛み、上手く動けない

 

 

「僕は勝つんだ…」

 

 

何やら不気味にぶつぶつつぶやきながらキーボードを叩く

ローエングリンの照準を設定する

 

 

「そぉぅさ…。いつだってぇ…」

 

 

「貴様ぁああああああ!」

 

 

ナタルが叫ぶ

だが、アズラエルは止まらない

 

そして、腕を振り上げる

 

 

「沈め!この疫病神がぁ!」

 

 

勢いよく手を振り下ろし、一つのボタンを押す

発射スイッチを

 

発射される巨大な砲撃

砲撃はまっすぐアークエンジェルの艦橋に向かっていく

 

 

「艦長!」

 

 

それは、アークエンジェルの艦橋にいるクルー全員に見えていた

放棄されたと思われていた艦からの奇襲攻撃

 

 

「回避!」

 

 

マリューが命じるが、それは

 

 

「間に合いません!」

 

 

絶望が押し寄せる

ここで、死ぬ?

 

砲撃が、艦橋に当たる

その時だった

 

白い影が、艦橋の前に躍り出る

その影が、ローエングリンを受け止める

 

 

「…え?」

 

 

白い影

ストライクは、シールドでローエングリンを防ぐ

だが、巨大な砲撃を前に、シールドが蒸発していく

 

 

「…はは」

 

 

アラートがひっきりなしに鳴り響く中、ムウは笑っていた

これで、守れる

愛するものを、守れる

 

 

「やっぱ俺って…」

 

 

不可能を、可能に…

 

 

ストライクがローエングリンを防ぎ切った

だが、それと同時にストライクも爆散する

 

マリューが、呆然と先程までストライクがいた場所を眺める

そこには、何も残っていない

よく見ると、ストライクの残骸が残ってはいるが、それだけ

 

 

「あ…あぁ…!」

 

 

声が漏れる

涙がこぼれる

 

なぜ

なぜ

脳裏に浮かぶいたずらっぽい笑顔

いつも自分が辛いときに、慰めてくれた存在

 

 

「…っ、ムウぅうううううううううううううう!!!!!!!!!」

 

 

ドミニオンの中では、二人の表情が対照的だった

アズラエルの表情は、絶望に染まっており

ナタルの表情は、笑みが浮かんでいた

 

 

「…あなたの負けです」

 

 

「…!」

 

 

アズラエルの頭の中が、カッとする

 

自分の…負け?

何を言っているんだ

貴様のせいで、狂ってしまったというのに

 

 

「お前ぇええええええ!!」

 

 

ナタルの襟をつかみ、振り回して、投げつける

ナタルの体が無重力の空間の中で回転する

 

もう、アズラエルがしていることは、ただの八つ当たりだった

 

 

「ローエングリン、照準…」

 

 

アークエンジェルでは、ドミニオンを葬ろうと、マリューが指示を出していた

 

 

「くっそぉおおおおおお!!!」

 

 

もう、生き残るすべはない

それでも、認められない

アズラエルは、ひたすらにナタルの急所以外の箇所を撃ち続けていた

もしかしたら、ナタルが逃がしてくれる

そう妄想にも似た希望をもって

 

だが、ナタルは口を開かない

アズラエルを、ここで葬り去るため

 

 

「撃てぇ!マリュー・ラミアスぅ!」

 

 

ナタルが叫んだのと、砲撃が撃たれたのは同時だった

艦にアラートが鳴り響く

それが、何を意味するのか理解したアズラエルが、前方を見る

 

向かってくる巨大な赤い砲撃

恐怖に染まる顔

 

ナタルは、それでも笑みを浮かべていた

 

そして、砲撃は

そんな二人を飲み込んでいった

 

 

 

 

 

 

 

「…?」

 

 

セラが、横を向く

今は、スレイヴと交戦中だった

だが、何かを感じ取った

 

…悲しみ?

それとも、喜び?

 

わからない

 

 

「…!」

 

 

意識を一気に引き戻す

スレイヴが、収束砲をこちらに向けていたからだ

 

機体を横にずらし、砲撃をかわす

反撃しようと、ライフルを向ける

 

 

「…え?」

 

 

引き金を引こうとすると、スレイヴが横に移動した

スレイヴがいた場所を、ビームが横切っていく

 

 

「セラ!」

 

 

「トールか!?」

 

 

トールが来たことに驚く

リーパーはどうしたのだろうか

 

 

「お前、何で…」

 

 

「シエルが相手してる!」

 

 

シエル?

シエルも、どうしてここに

 

セラが再び思考に入りそうになるが、振り切る

今は、フレイを

 

 

「…セラ、このパイロットは」

 

 

トールは、リーパーと交戦に入る直前

スレイヴのパイロットとセラの会話をわずかに聞いていたのだ

 

 

「…フレイだよ」

 

 

「…そうか」

 

 

だからこそ、セラの答えに驚かない

 

 

「なら、とっととサイの所に連れ戻そうぜ!サイに頭を下げさせてやるんだ!」

 

 

トールが軽い口調で言う

セラが、呆気にとられたような表情になるが、すぐに笑みを浮かべる

 

 

「…そうだな」

 

 

セラとトール

そして、フレイの戦いが再会される

 

 

 

 

「はぁっ!」

 

 

リーパーがサーベルを振り下ろす

シエルはそれをシールドで防ぐと、すぐにサーベルを振り上げる

ロイはそれに反応し、後退してかわす

 

この二人の腕は、全くと言っていい互角だ

だが、機体の性能がまるで違う

つい最近ロールアウトされた最新鋭の機体と、高性能といえども、少し旧型ともいえる機体

 

シエルが優勢に戦いを進めていた

 

 

「このぉおおおお!!」

 

 

そして、ロイの動きも単純だった

シエルを殺そうとなんて考えていない

 

取り戻す

 

ロイの頭の中にあるのは、それだけだった

 

 

「シエル!戻って来い!今なら間に合う!」

 

 

「何に…、間に合うの!?」

 

 

シエルがライフルを向けて、撃つ

ロイはビームをかわし、ライフルを撃ち返す

 

 

「シエル!お前は騙されてるんだ!利用されてるんだ!」

 

 

「何回も言わせないで!そんなことない!」

 

 

ロイは、全くの的外れなことを言う

ロイは知らない

いや、認めたくないのだ

 

シエルが、セラという男に好意を向けているということを

 

 

「シエル!」

 

 

サーベルで斬りかかってくるヴァルキリーを迎え撃つ

だが、それは間違いだった

 

 

「!」

 

 

サーベルを斬り合わせ、鍔迫り合い

だが、リーパーが押されていく

 

当然のことだ

機体のパワーは圧倒的にヴァルキリーの方が上なのだから

 

リーパーが弾き飛ばされる

 

 

「…っ!」

 

 

機体の体制を整える

だが、ヴァルキリーがこちらにライフルを向けている

 

…シエルが、自分を殺す?

そんなはずはない

傍にいるべき男を殺すはずなどない

だが、シエルは銃を向けている

 

 

「…シエル」

 

 

何をしている?

お前は俺のものだ

 

何をしている?

お前は俺のものなんだ

 

そんなこと、させない

 

 

「っ!」

 

 

ロイのSEEDがはじけた

 

放たれるビーム

ロイはそれを

 

片足を犠牲にすることで防いだ

 

 

「…!」

 

 

実は、放たれたビームはメインカメラを狙ってのものだった

だが、それでもこの射撃で戦闘が終わりだと思っていた

 

ロイは、それを凌いだ

 

驚いている暇はない

リーパーがライフルを撃ちながら、もう片方の手にサーベルをもって接近してくる

 

 

「…おいたがすぎたよ、シエル」

 

 

「…!」

 

 

底冷えするような低い声

ロイが発したとはとても思えない声

 

 

「お前は俺のなのに…。裏切るなんて…」

 

 

「何を…!」

 

 

二機がサーベルを斬り合わせる

だが、パワーで負けているリーパーはすぐに後退していく

 

 

「お仕置きだよ…」

 

 

ロイがライフルを撃つ

シエルはシールドで防ぐ

 

 

「…」

 

 

シエルは考えていた

 

正直、ロイを殺したくはない

ロイは、恋愛感情は持ってないにしろ、自分のことを気にかけてくれた仲間だったのだ

優しく、気にかけてくれた

 

 

「…っ」

 

 

それが、今は

 

 

「シエル、最後のチャンスだ。そこをどいてくれ。俺は、セラを殺しに行く」

 

 

誰?

この人は誰なの?

 

自分が知っているロイとは全くの別人

自分の大切な人に、間違いなく牙をむくであろう今の精神状態

 

もう、覚悟を決めるべきなのだろうか

 

 

「…ロイ」

 

 

「なんだ?どいてくれるのか?」

 

 

声に狂喜が込められている

ロイは、信じていた

シエルの目が覚めたのだと

 

これで、自分の手にシエルが戻ってきたのだと

 

だが

 

 

「…あなたを、殺す」

 

 

「!?」

 

 

シエルの低い声

 

聞いた途端、ヴァルキリーが接近してくる

さっきまでのスピードとは全然違う

比べ物にならない

 

だが、ロイには反応できていた

かわすために、ペダルを踏む

 

だが

 

 

「!」

 

 

振り下ろされるサーベルをかわしきれず、左腕が斬りおとされてしまう

 

ロイの操縦のタイミングは完璧だった

なら、何がいけなかったのか

 

ロイの操縦技術にリーパーが追いつけなかったのだ

 

そこを、今のシエルが見逃すはずがない

リーパーを蹴り飛ばし、体制を崩す

そこに、急速に機体を接近させ、サーベルを振り上げる

 

 

「…シエル」

 

 

ロイの目の前で、サーベルを振り上げているヴァルキリー

シエル

 

ロイの顔には、笑みが浮かんでいた

シエルが、自分を殺すはずがない

そう信じて…いや、盲信していた

 

 

「ははは…、笑える冗談だな、シエル…」

 

 

サーベルが、もう目の前まで来ている

 

だが、そこで止めるんだろう?

俺には分かっている

俺には分かっている

俺にはw…

 

 

振り下ろされたサーベルが、リーパーを一刀両断にした

 

 

「…」

 

 

爆散していくリーパー

 

まだ、迷いがあったのか、コックピットからわずかにはずしてしまった

だが、動力部分には当たっていた

その証拠に、機体は爆散している

 

 

「…セラは」

 

 

セラの援護に向かおうとする

だが、そこで思い直す

 

セラなら、ジェネシスへ行けと言うだろう

 

 

「…っ!」

 

 

シエルは機体をジェネシスへ向ける

セラなら大丈夫だ

 

自分は、自分にできることをやろう




ムウさんとナタルさんは原作通り
そして、シエルさんが勝ちました

あと少しで終わりそうです

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。