機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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いよいよ最終決戦です!


PHASE44 撒かれゆく業火

「もうすでに戦闘は始まっているわ。ジェネシスと核はまだ発射されてはいないけれど、それでも時間の問題よ」

 

 

コックピットに乗り込んだセラとシエルは、OSを起動させながらシモンズの話に耳を傾けていた

 

もう、ザフトと連合は戦闘に入っている

 

 

「二人とも、無茶はしないでね?二人の未来は明るいんだから」

 

 

「シモンズさん!」

 

 

シエルがシモンズを非難するように怒鳴る

シモンズはそんなシエルを見て笑っているが…

 

 

「…セラ」

 

 

セラは何も答えない

集中している

 

これから行う戦闘は、過去最大規模の戦闘となる

おそらく、これからの未来でも行われないような規模の戦闘となる

そして、ラウ・ル・クルーゼ

あの男とも決着を付けなければならない

 

 

「…大丈夫」

 

 

セラは、シエルが呼びかけてきていることにようやく気付いたのか、声を出す

その声は、どこか冷たく、心に刺さるような鋭さを持っていた

 

だが、シエルはそれでも怯まない

 

 

「…隊長と一人で戦うことは認めたけど、他はそうじゃないからね?」

 

 

モニターに映し出されるシエルの笑顔

それを見た瞬間、セラの心の中で何かがすとんと落ちた気がした

セラの顔にも笑みが浮かぶ

 

 

「…二人で…だろ?」

 

 

セラの答えにシエルが頷く

 

 

「…いちゃつくのは帰ってからにしような、二人とも」

 

 

「「!」」

 

 

アスランが通信に入ってきた

一体いつから通信をつなげていたのだろうか

 

 

「一人で戦う云々からだよね?」

 

 

「兄さんまで…」

 

 

キラにも聞かれていた

盗み聞きしたと責める気はない

自分たちを心配して通信をつなげてきたのだろから

 

 

「やれやれ…。お前たちは本当に場所を選ばないな…」

 

 

アスランのこの軽い言葉

セラはカチンときた

 

 

「そういうアスランこそ!カガリと何かあったんじゃない!?カガリも戦闘に出るみたいだし、アスランが何か思わないわけないだろ!?」

 

 

セラの反撃が始まった

 

 

「え!?いや…その…」

 

 

アスランの様子がおかしい

頬を染め、なにかあたふたしている

 

 

「…あぁああああ!やっちゃったよ!人には場所を選べとか言っておいてやっちゃったよこの人!どうせ通路のど真ん中でキスとかしちゃったんだろ!?」

 

 

「なっ…!?」

 

 

頬の赤みが増した

どうやら図星らしい

セラがそれを見てさらに追い打ちをかける

 

 

「まったく、人のことは言えないっての。昔からそうだよな~、アスランは」

 

 

かちん

アスランの中で何かが切れた

 

 

「何を言ってるんだ!セラだって昔から変わってないじゃないか!そうやって人を弄り倒して!」

 

 

「なんだよ!弄り倒して何が悪い!」

 

 

「自分がされた時は何も言えなくなるくせに!」

 

 

「何が言いたいんだ!?」

 

 

「お前だってシエルとどうせ何かあったんだろ!?」

 

 

「んなっ!?」

 

 

「シエルとキスしたりして、手をつないで格納庫に来たはいいけど、作業員の人に手をつないでるところを見られてからかわれたか!?」

 

 

「っ~~~~~~~~~~!!!」

 

 

…正しい

正しすぎる

先程のセラもそうだが、その光景を見ていたのでは?

と、疑いたくなるほど正しい

 

 

「…何やってるんだよ」

 

 

「トール?…まあ、いつも通りだよ」

 

 

「「兄さん(キラ)!何自分は関係ない風を装っているんだ!」」

 

 

「どうせ兄さんもラクスさんと何かあったんだろ!?」

 

 

「ラクスが大切にした指輪を渡されて、自分から頬にキスしたりとかしたんだろう!?」

 

 

「!!!!!」

 

 

…だからこの二人は何で(略

 

 

「なななななな…!」

 

 

「図星か!図星かキラ!」

 

 

「うわぁ!兄さんもいちゃついてるじゃないか!高みの見物なんてさせるものか!」

 

 

「…トール。これは一体…?」

 

 

「…いつものことですよ」

 

 

「やれやれ…」

 

 

三人のやり取りを聞いていた、ムウ、トール、ディアッカは呆れていた

そして、シエルと途中から聞いていたカガリは…

 

 

「「//////////////」」

 

 

赤面していた

 

 

「そろそろ出撃許可が出るわよ?気を引き締めてね?」

 

 

シモンズからそう通信が入る

通信をつなげて楽しそう(?)に会話を繰り広げていたセラたちの表情が一気に引き締まる

 

 

「皆…」

 

 

キラが、通信をつなげている全ての人たちに向けて言葉を言う

 

 

「絶対に、生きて帰るよ」

 

 

「当然」

 

 

「だね?」

 

 

「キラこそ、無理はするなよ」

 

 

「私としてはお前が心配なんだがな…」

 

 

「若いっていいねぇ…」

 

 

「ムウさんも十分若いじゃないですか」

 

 

「おっさんくさいぞ、おっさん」

 

 

上からキラ、セラ、シエル、アスラン、カガリ、ムウ、トール、ディアッカである

最後の最後まで締まらない

だが、それはそれでいいと思えてしまうのも事実

 

ハッチが開かれる

それは、エターナルとアークエンジェルでも同じことだろう

 

 

「シエル・ルティウス!ヴァルキリー、行きます!」

 

 

「キラ・ヤマト!フリーダム、行きます!」

 

 

「アスラン・ザラ!ジャスティス、出る!」

 

 

「カガリ・ユラ・アスハ!ストライク・ルージュ!出るぞ!」

 

 

「ムウ・ラ・フラガ!ストライク、出るぞ!」

 

 

「トール・ケーニヒ!ムラサメ、行きます!」

 

 

「ディアッカ・エルスマン!バスター、発進する!」

 

 

シエルたちが発進していく

そして、セラも…

 

 

「セラ・ヤマト!リベルタス、出る!」

 

 

リベルタスの象徴ともいえる光の翼を広げて戦場に降り立つ

 

後に、伝説ともいわれる解放者が、ここに現れた

 

 

 

 

 

 

 

ザフト、連合の戦闘に、もう一つの勢力が介入した

アークエンジェル、エターナル、クサナギの三隻

そして、そのMSだ

 

青き翼を広げた自由と真紅の正義は、強大な武装を手にして戦場に切り込む

 

 

「アスラン!」

 

 

戦場に入ったとたんにフリーダムに切り込んでくるMS

ルースレスとさっそく交戦に入るキラ

 

 

「わかっている!そのMSは任せたぞ!」

 

 

前からわかっていた

ルースレスは、キラしか狙おうとしていない

 

だからこそ、アスランはそのルースレスの相手はキラに任せることにする

キラが負けるはずがない

信じている

 

 

「キラ・ヤマト!今度こそ!」

 

 

「なんなんだ!あなたは!」

 

 

ルースレスから切り離されたドラグーンがフリーダムを襲う

キラはビームを掻い潜ってかわして、ミーティアのミサイルポッドを開き、発射させる

 

カナードはドラグーンでミサイルを迎撃

撃ち落とせなかった残りのミサイルは、サーベルで斬りおとしていく

 

 

「おまぇえええええ!」

 

 

「くっ!」

 

 

一方のアスランも、残りの三機との交戦に入っていた

だが、一機ではこの三機の相手は辛いものがある

 

 

「アスラン!」

 

 

「シエル!?」

 

 

そこに、シエルが駆るヴァルキリーが、アスランの援護に入る

アスランは驚愕する

 

 

「どうして…!?」

 

 

てっきりセラの援護に行くとばかり思っていたからだ

 

 

「セラの方には、トールにムウさんもいる!」

 

 

シエルはアスランの疑問に答えながらライフルでこちらに接近しようとしていたレイダーを牽制

レイダーが動きを止めた所に、サーベルで斬りかかる

そのサーベルは空を切ってしまうが、それはシエルも折り込み済み

 

レイダーのミョルニルでの反撃を余裕をもってかわす

 

 

「セラは大丈夫!だから、今は!」

 

 

「…ああ」

 

 

シエルとアスランは、目の前の三機を見据える

五機は同時に飛び掛かった

 

 

 

 

「…あれは」

 

 

見つけた

ラウが言っていたあの機体だ

 

 

「…殺す」

 

 

 

「セラ…!」

 

 

この男も見つけた

シエルを誑かせた奴を

自分の隣にいるべき女を奪った奴を

 

 

「殺す!殺してやるぅうううう!!!」

 

 

 

セラとトールとカガリ、ディアッカ、そしてムウは、三機で混沌とした戦場に飛び込んでいた

キラたちは三人は連合のMSと交戦中

アストレイの三人娘はクサナギの護衛を行っている

 

セラがフルスピードで立ちはだかるジンやシグー、ストライクダガーを行動不能にしていく

他の三人は、ライフルでMSを落としていく

ディアッカは砲撃で戦艦を落としていく

 

 

「くっそ!ホントにこんなの…!」

 

 

トールがこの戦場の状況に悪態をつく

自分たちのまわりには、ザフトと連合のMSが入り乱れているのだ

全員が自分たちを落とそうとしている

 

 

「トール、後ろだ!」

 

 

「…!」

 

 

セラの言葉のおかげで何とか反応が間に合う

サーベルで、後ろから襲い掛かろうとしたゲイツを切り裂く

 

 

「気を抜くなトール!俺たち以外の奴らは全員敵なんだ!」

 

 

ムウがトールに怒鳴りつける

 

 

「は…はいっ!」

 

 

トールも何とか返事を返す

 

 

「…!散開しろ!」

 

 

セラが急に大声を出す

全員が反応し、散開する

固まっていたところ、正確にはリベルタスがいた所を砲撃が横切っていく

 

 

「…あれは?」

 

 

砲撃を撃ってきたMSの姿が見える

どうみても量産型のMSではない

 

 

「…セラ・ヤマト」

 

 

「!その声は…!」

 

 

自分の名を呼ぶ少女の声

セラには聞き覚えがあった

 

 

「殺す」

 

 

「何で!」

 

 

MS

スレイヴが対艦刀を構え、リベルタスに斬りかかってくる

セラも、両腰の二本のサーベルを構える

 

スレイヴが対艦刀を振り下ろす

セラは、サーベルをクロスにさせ、対艦刀を防ぐ

 

 

「何でお前がそれに乗っている!フレイ・アルスター!」

 

 

先程の声の主は、フレイだった

セラの他の、ディアッカを除く三人は唖然としている

だが、この場でそれはまずい

 

 

「おい!ぼけっとするな!」

 

 

ディアッカが慌てて声をかけながらミサイルを放つ

放たれたミサイルは、こちらにライフルを向けていたストライクダガーたちに命中する

 

 

「どうしたんだよ!フレイって誰だ!?」

 

 

「…俺たちの仲間だったんだ。…それが、どうして?」

 

 

ディアッカの問いにトールが答える

 

こうして話している間も、リベルタスとスレイヴ

セラとフレイがぶつかり合っている

 

 

「でも今は、それを考えてる場合じゃないだろ!」

 

 

ディアッカのその言葉に、三人がはっとする

そうだ

今、自分たちは…

 

 

「…そうだな、今はジェネシスを!」

 

 

四人が再び進もうとする

だが、その動きを止める事態が起こる

 

 

「ああああああああ!お前がセラかぁあああああ!」

 

 

二機が離れているその瞬間、リベルタスに向かっていく黒い影

 

 

「っ!こいつ!」

 

 

セラがその声を聴き、目を向ける

リーパーがこちらに向かってきていた

サーベルを振りかぶっている

 

 

「くそっ!今はお前に付き合ってる暇は…」

 

 

セラも、サーベルを振り切る

 

 

「ないんだ!」

 

 

「ぐぅっ!」

 

 

リーパーのサーベルがリベルタスのサーベルのパワーに負ける

後ろに飛ばされるリーパー

 

だが、そこでセラは動きを止める暇はなかった

迫ってくる砲撃を横に機体を動かすことで回避

回避したところに、スレイヴが対艦刀を構えているが、それは読んでいた

対艦刀とサーベルを斬り合わせる

 

 

「セラぁあああああ!!!」

 

 

だが、そこに機体の体制を立て直したリーパーが向かってくる

セラは、もう一本のサーベルを取り、リーパーとも鍔迫り合いを開始

 

 

「ぐぅううううう…!」

 

 

二機の力が一気にセラに襲い掛かる

必死に手に力を込め、押し負けないようにする

 

 

「セラ!…くそ!ディアッカたちは行って!」

 

 

「トール!」

 

 

「こいつらは俺とセラが!だから早く!」

 

 

ムウがトールの言葉を聞き、考え込む

そして

 

 

「わかった」

 

 

「おっさん!?」

 

 

「少佐、トールは!?」

 

 

ムウがトールの提案を呑む

ディアッカとカガリがそれに食い下がるが

 

 

「俺たちはジェネシスに向かうぞ。アークエンジェルも先に進んで行っているはずだ」

 

 

ムウはその言葉に取り合わず、進んでいく

ディアッカとカガリも、ついていこうとする

ふと後ろを見る

トールが駆るムラサメが、戦闘を繰り広げている三機に接近していっていた

 

 

 

 

「セラ!」

 

 

「!トール!?何で…くそっ!」

 

 

トールがこちらに接近してくる

それを止めたいセラだが、スレイヴが対艦刀で斬りかかってくる

 

セラは、対艦刀をシールドで防ぎ、もう片方の手に握られているサーベルを振るう

スレイヴが振るわれたサーベルを、後退することでかわす

 

 

「…!」

 

 

そこで、死角からリーパーがこちらにライフルの照準を向けていることに気づく

セラがシールドで防ごうとする

だが

 

 

「おおおおおおおお!!」

 

 

「トール!?」

 

 

トールがサーベルでリーパーに斬りかかっていく

ロイは接近してくるムラサメに反応し、ライフルからサーベルに持ち替えて迎え撃つ

 

 

「こいつは俺が抑える!だからセラはそいつを!」

 

 

「やめろトール!お前じゃ、そいつを相手にするのは無理だ!」

 

 

セラがスレイヴを振り切ってトールの援護に行こうとする

だが、フレイはリベルタスを逃がそうとしない

収束砲、ライフルなどの遠距離攻撃を連発し、リベルタスをムラサメに近づけさせない

 

 

「くそっ!邪魔を…!」

 

 

「セラ!俺は別にこいつを倒すと言ってるわけじゃない!足止めをするって言ってるんだ!」

 

 

トールがサーベルを振るいながらセラに言う

 

 

「無理はしない!ただ生き残ることに専念する!」

 

 

トールは訴える

セラに、自分の戦いに集中しろと

自分は大丈夫だと

 

 

「あぁああ!!」

 

 

セラは後頭部をかきむしる

 

 

「ミリアリアにはこのことを報告するからな!帰ってからどうなったって知らないからな!」

 

 

「上等!」

 

 

セラは、トールがリーパーの相手をすることを認める

 

 

「友達が頑張ってるんだ…」

 

 

対艦刀を振りかぶってこちらに接近してくるスレイヴを見据える

 

 

「早々に終わらせる!」

 

 

セラはサーベルを振りぬく

サーベルと対艦刀が、ぶつかり合った

 

 

 

 

「邪魔をするな!俺はセラを殺すんだぁああああ!!!」

 

 

ロイが仮の咆哮をあげながらムラサメに突進していく

サーベルを振りぬく

 

トールは、それをしっかりと見極めてかわす

 

トールとロイ

その実力は、圧倒的にロイの方が上だ

能力もロイが上

経験ももちろんロイが上

 

だが、今ロイはセラへの怒りで動きが直線的になっている

それでもトールにとっては脅威なのだが、そのおかげで戦えている

 

 

「足止めするとは言ったけど…」

 

 

トールもサーベルを構える

 

 

「別に、落とせる隙があったら落としてやるからな!」

 

 

トールがロイに勝つためには、その直線的になっている動きをつくしかない

それができるか

 

二機がぶつかりあった

 

 

 

 

 

 

フリーダムとルースレス

その戦いは熾烈さを増していっていた

 

サーベルがぶつかり合う

離れた所を、ドラグーンがフリーダムを襲う

それを掻い潜りながらかわし、ライフルの引き金を引く

 

 

「くそっ!何で貴様は落ちないんだ!」

 

 

カナードが怒鳴る

何度やっても、何度やっても

目の前の存在は落ちない

 

とったと思っても、次の瞬間には健在の状態で自分に襲い掛かってくる

 

 

「キラ・ヤマトぉおおおおおお!!!」

 

 

なぜだ

自分は努力を怠らなかった

辛い訓練を乗り越え、自分を何かと利用してこようとする者たちに怒りを覚えながらも耐えた

全ては、目の前の存在を殺すため

 

 

「…まだ足りないというのか」

 

 

カナードがぼそりとつぶやく

 

 

「まだ、貴様に届かないというのかぁあああああ!!!」

 

 

「っ!」

 

 

カナードが咆哮をあげた瞬間、ドラグーンの動きが鋭くなる

キラはその鋭くなったドラグーンの動きに戸惑いながらも必死に機体を駆りながらビームをかわし続ける

 

 

「くそ…!急に動きが…!」

 

 

ドラグーンの動きで、キラはルースレスに近づけない

近づこうとすれば、ビームに阻まれる

 

 

「っ!」

 

 

そこで、ビームの一射が、ミーティアの右側部分を捉えた

 

 

「くそっ!」

 

 

キラの判断は迅速だった

ミーティアをパージする

その瞬間、ドラグーンのビームがミーティアを貫く

ミーティアが爆散するが、キラは見向きもしない

 

この戦いで、ミーティアは逆に邪魔になってしまう

このドラグーンを回避するには当然小回りを利かせなくてはいけない

だいたい、ミーティアは一対一での戦闘ではお荷物だ

 

キラはライフルでルースレスを撃つ

 

 

「無駄だ!」

 

 

だが、それも容易くカナードは交わす

再びフリーダムを襲うビームの雨

 

それを掻い潜ってルースレスに接近し、サーベルを振るう

つばぜり合う二機

その時だった

 

 

「…!」

 

 

閃光が見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

「照準ミラーブロック換装、間もなく終了します!」

 

 

その報告を聞いて、パトリックは立ち上がる

 

 

「目標点入力。月面、プトレマイオス・クレーター、地球軍基地」

 

 

パトリックが、次の照準を伝え、オペレーターがそれを繰り返して確認する

 

 

「奴らの増援艦隊の位置は?」

 

 

「グリーンアルファ五、マーク二であります!」

 

 

連合の増援艦隊の位置を聞いて、パトリックは確信した

 

 

「我らの勝ちだな…。ナチュラルども…!」

 

 

「第七宙域、突破されます!」

 

 

その時、勝利を確信していたパトリックにそう布告が伝えられる

 

 

「あとわずかだ!持ちこたえさせろ!」

 

 

もう少しなのだ

もう少しでこの争いは終わる

自分たちの勝利で、戦争が終わるのだ

 

なのに、何をやっている?ふがいない

 

 

「では、私も出ましょう」

 

 

ラウがパトリックにそう声をかけ、制御室から出ていこうとする

パトリックはその後姿を見送る

 

ラウも出るのなら、確実にこちらの勝ちだ

月基地を撃たれても、抗ってきても奴が止めてくれる

それに、奴が太鼓判を押していたあの女も、奴らのMSを抑えてくれている

 

 

「終わりだ…」

 

 

 

 

 

 

パイロットスーツに着替えて、薬を飲み込む

ラウの老化を抑える薬

 

だが、これを飲むのも、これで最後になるだろう

 

 

「そう…、これで最後だ」

 

 

全てを、今日終わらせる

自分が

自分の手で

 

だが、その前に

そのためにも

 

 

「終焉のための糧になってもらおう…。セラ君」

 

 

コックピットに乗り込む

この前の戦闘では、ラウもどこかドラグーンを使うことに慣れていなかった

だが、今回は違う

万全の、完璧な状態でこの戦いに出る

 

 

「ラウ・ル・クルーゼ。プロヴィデンス、出る!」

 

 

戦場に燃え盛る業火

憎しみをまき散らす存在が

 

 

「発射!」

 

 

二射目の閃光と共に

 

 

 

 

 

 

 

「…これは」

 

 

セラの目の前で爆散していく地球軍の戦艦

のびる閃光

向かう先は

 

 

「月基地か…!」

 

 

セラは知らないが、この射線上には地球軍の増援艦隊が存在していた

当然、その艦隊は…

 

 

「くそ!何でこんなこと!」

 

 

閃光のことを気にしていないのか、スレイヴがリベルタスに襲い掛かってくる

 

 

「くっ…!フレイ!フレイ!返事しろ!」

 

 

「…」

 

 

返事は返ってこない

一体どうしてしまったんだ?

フレイは、コーディネーターを憎んでいたはずだ

なのに、今はザフト側として戦っている

 

 

「フレイ!聞こえてるなら…」

 

 

「うるさい」

 

 

セラの言葉を遮って収束砲を撃つ

セラは最後まで言葉を言えず、砲撃を回避する

 

 

「何でだ…!何があったんだ!」

 

 

もっと、フレイを気にするべきだったのか?

フレイのことを気にしてやるべきだったのか

 

自分を殺すと言っている

ここまでフレイを堕としてしまったのは自分なのか

 

 

「フレイ!何でだ!俺のことが憎いのはいい!けどこのままじゃ…!」

 

 

「黙れ」

 

 

フレイが対艦刀を振り下ろす

セラはサーベルでそれを抑えながら口を開く

 

 

「サイも!」

 

 

「…サイ?」

 

 

セラは後退する

 

 

「…?」

 

だが、スレイヴは動かない

何だ?

どこかに異常があったのか?

 

 

「…サイ」

 

 

フレイはつぶやく

自分の心に引っかかるその名を

 

 

「サイ…、サイ…」

 

 

心が温かくなるその名を

 

 

「…サイ」

 

 

眼鏡をかけた地味そうな少年

だが、自分を一番気にかけてくれた少年

 

 

「…違う!」

 

 

だが、フレイは振り切る

自分は今、ラウのために戦っている

 

 

「サイなんて…」

 

 

知らない

 

 

フレイは対艦刀を強く握り、リベルタスに接近する

セラもサーベルで迎え撃つ

ぶつかり合う

 

フレイの心に変化が起こっている

セラはそれに気がついていた

 

フレイに何が起こっているのかはいまいちわからない

だが、サイのことは気にかけているのか?

 

もし、ここでフレイの傍にいるのがサイだったら…

 

 

「…俺は」

 

 

だが、ここでそれを言っても始まらない

サイがここにいないのなら、自分がサイの代わりに説得し。サイのもとに連れ帰る

 

 

「連れて帰るからな!フレイ!」

 

 

一旦離れるセラ

そして、両手にサーベルを構える

 

もう一度接近

二本のサーベルと対艦刀が、ぶつかり合った




フレイさんはどうなるでしょうか!
そして、ロイさんと交戦に入ったトールの運命は!?

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