機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

46 / 52
いよいよ物語が佳境に入っていきます


PHASE43 交わされる約束

放たれた閃光

地球軍艦隊、連合のMSを飲み込んでいく閃光

セラたちはそれを目の当たりのする

 

閃光に飲み込まれて崩壊していく戦艦

塵となっていくMS

大量の人間が死んでいく

 

 

「…こんな」

 

 

キラがつぶやく

そんなキラの声は、出撃していた全員に聞こえている

 

 

「な…ん…。これは…」

 

 

ドミニオンは、何とか閃光を回避することが出来ていた

それでも、所々損傷を受けていて、戦闘継続は不可能

 

モニターに映った惨劇を見て呆然とつぶやくアズラエル

勝利の確信から絶望に変わっていた

 

 

 

 

ジェネシスの威力はすさまじいものだった

発射したザフト側でさえもその威力に驚かされていた

一人を除いて

 

 

「さすがですな、ザラ議長閣下。ジェネシスの威力、これほどのものとは」

 

 

ラウ・ル・クルーゼが、いつものとってつけたような笑みを浮かべてパトリックに声をかける

パトリックは鋭い視線をラウに向けて口を開く

 

 

「戦争は勝って終わらなければ意味がなかろう」

 

 

その言葉を聞いてラウはふっと微笑む

 

そうだ

それでいい

どこまでも自分の思う通りに動け

道化を演じ続けろ

 

今、誰よりもこの現実に屈辱を覚えているであろう奴のように…

 

 

 

 

 

 

「よくもまた核など使ってくれたな!」

 

 

「許さんぞ!ナチュラルども!」

 

 

地球軍艦隊が大打撃を受け、撤退していく

だが、ザフト軍はそれをさせない

 

再び核を撃たれた怒り

核をプラントに向けられた怒り

それらがナチュラルに向けられる

 

 

「あ…、うわぁあああああああ!!」

 

 

「死ね!」

 

 

ゲイツがビームクローをストライクダガーに突き立てる

クローが抜き取られ、少し間が置かれ、次の瞬間ストライクダガーは爆散していく

 

 

「何…を…!」

 

 

セラがこの光景を見て衝撃を受ける

 

逃げ出していく地球軍のMSをザフトが追撃していく

次々と落とされていくストライクダガー

この様子を見ていたキラが、ミーティアをパージして飛び出した

 

 

「やめろ!そんな、戦う意思のない人たちを!」

 

 

ライフルでジン、ゲイツの腕、メインカメラを撃ちぬいていく

 

 

「我らが勇敢なるザフト軍兵士諸君」

 

 

そんな中、スピーカーから流れてくる声

 

 

「父上…」

 

 

アスランが、その声を聴いて表情を歪ませる

 

 

「傲慢なるナチュラルどもの暴挙を、これ以上許してはならない!プラントに向けられた核!これはもはや、戦争などではない!虐殺だ!」

 

 

「この…!」

 

 

パトリックが声高々と演説している内容を聞いて、セラは珍しく怒りに包まれる

今、自分たちが放ったもの

それを理解して、それを言っているのか?

 

核を撃ったことが虐殺で、自分たちがしたことはそうではないのか?

 

 

「ふざけるな!」

 

 

自分の声は、パトリックには届くことはない

 

 

「そのような行為を平然と行うナチュラルどもを、決して許すことはできない!」

 

 

パトリックは言葉をさらに続ける

 

パトリックの言葉を受け、ザフト軍の勢いがさらに増していく

必死に逃げようとしているストライクダガーをジンのライフルが狙っている

 

 

「やめろ!」

 

 

それを確認したセラが、相手が撃つよりも先に引き金を引く

放たれたビームは、火を噴こうとしたライフルを撃ちぬく

 

 

「お前らがしていることも虐殺なんだって、なぜ気づかない!」

 

 

光の翼を広げて、サーベルを抜く

ジンやゲイツが固まっているところに機体を進ませる

コックピットは狙わない

武装や関節部分を狙ってサーベルを振りぬいていく

 

一瞬の間に、四機のMSを行動不能にする

 

 

「…!」

 

 

横からビームが放たれるのをかわす

 

 

「リーパーか!?」

 

 

ビームを撃ってきたのはリーパーだった

ライフルを連射しながらリベルタスに向かってくる

 

 

「貴様!シエルを攫った奴の仲間だな!」

 

 

スピーカーから男の声が聞こえてくる

 

シエル…?

ザフトの、シエルの仲間だった人なのか?

 

ビームをかわしながらセラは間合いを整える

 

 

「…っ!」

 

 

「何っ!?」

 

 

そして、サーベルを振りぬき、リーパーの腕を斬りおとす

 

 

「このっ!」

 

 

ロイは、残ったもう一方の手にサーベルを持つ

そして、振り下ろす

セラは振り下ろされるサーベルを、とんでもない反射神経で反応し、機体を後退させてかわす

 

ロイが振り下ろしたサーベルが空を切る

 

 

「…っ!?」

 

 

「もうやめろ!」

 

 

セラはサーベルからライフルに持ち替え、引き金を引く

だが、ロイもそのビームに反応してかわす

 

だが、セラはすぐさまリーパーに接近

サーベルを振り下ろす

ロイはそのサーベルをシールドで防ぐ

片腕はもう使えないため、反撃に出れない

それどころか、だんだん押されていく

 

 

「ぐぅうううう…!」

 

 

「核を撃たれて、許せない気持ちはわかる!けど!」

 

 

セラは、もう一方のサーベルをとり、横に振りぬく

ロイは、その前に機体を後退させてかわす

 

 

「今、お前たちがしてることだって、核を撃ってきた地球軍と同じことをしてるって!何でわからないんだ!」

 

 

セラは声を出す

相手に届くように

相手がわかってくれるように

こんなことはおかしいと

伝える

 

 

「何を言っている!シエルを攫い、どうせ貴様らはシエルをもてあそんでいるんだろう!?」

 

 

「そんなこと…!」

 

 

セラの言葉は最後まで紡げない

リーパーががむしゃらにサーベルを振るってくる

 

 

「返せ!シエルを返せぇええええ!」

 

 

「くっそ!」

 

 

がむしゃらに振るわれるサーベルを、セラはサーベルを振るって根元を叩き斬る

 

 

「くっ!」

 

 

「そんなことない!シエルは…」

 

 

「うるさい!」

 

 

ロイに声をかけて、動きを止めていたリベルタスをロイは蹴り飛ばす

 

 

「ぐぅっ…!」

 

 

機体の体制が崩れる

ロイは、そこを狙ってライフルを構える

 

だが、セラはそれの回避には間に合うタイミングで機体を動かそうとする

 

 

「セラ!」

 

 

そこに、一人の少女の声が割り込んでくる

そして、リベルタスとリーパーの間に、シールドを構えながら入ってくる

 

 

「!」

 

 

「その声は…!」

 

 

ロイが、大きく反応する

引き金を引こうとしていた手の動きを止める

 

そして、今聞こえてきた声の主の名前を呼ぶ

 

 

「シエル!」

 

 

二機の間に入ってきたのは、ヴァルキリーだった

 

リーパーと交戦しているリベルタスをシエルは見つけた

そして、体制が崩れた所を狙われる

 

セラなら何とかなると頭ではわかっていたものの、体が勝手に動いてしまう

二機の間に入ってしまったのだ

 

 

「セラ、大丈夫!?」

 

 

「…あぁ」

 

 

シエルの問いかけに答えるセラ

シエルはほっと息をつく

 

 

「撤退するよ。もうここにいても…」

 

 

「わかってる」

 

 

二人が撤退しようとする

だが、当然それを止めようとする人物がここにはいる

 

 

「待て、シエル!なぜ!」

 

 

「…ロイ」

 

 

ロイがシエルに呼びかける

 

 

「お前…!そいつらに何かされたのか、シエル!」

 

 

「何もされてなんかない。騙されてもいないよ」

 

 

「っ!」

 

 

ロイがシエルに声をかけようとした言葉を先に否定される

 

 

「…何で…!」

 

 

ロイがリベルタスをにらむ

 

こいつが…

こいつがシエルを…!

 

 

「きさまぁあああああ!!!」

 

 

怒りのままにリベルタスに向かっていく

 

今まで傍にいたシエルを、こいつが奪った

オレノシエルヲ!

 

 

「やめて!」

 

 

リーパーの進行を、横から機体をぶつけることで止めるシエル

ロイは体制を立て直して、ヴァルキリーと機体を向かい合わせる

 

 

「シエル!」

 

 

「私は決めたの!初めて見つけたの!本気で守ろうと思える人が!」

 

 

「っ…」

 

 

ロイの表情から驚愕の思いがにじみ出る

 

 

「そんな…。なら、お前は…。今までザフトで…、何を思って戦ってたんだ…?」

 

 

「…プラントを守ろうと戦ってきた。当然、仲間のロイも、守ろうって…。でも、違う…。本気で…、全力で、この人を…。セラを守りたい」

 

 

シエルが自分の意志をロイにぶつける

ロイは、目を見開かせる

全身が震える

瞳が震える

 

シエルは、自分たちを裏切った…?

 

 

「あ…あぁ…」

 

 

シエルが離れていく

あの忌々しい機体と共に

だが、ロイは動くことができない

 

拒絶された

シエルに、拒絶された

どうして

どうして

どうして?

どうして

 

 

 

 

 

 

「…あれでよかったのか?」

 

 

セラがシエルに聞く

先程の会話

あの機体は、自分たちに何度も襲い掛かってきた機体

その隊の中には、シエルもいた

 

そして、会話の内容からして、シエルとは親密な関係だったのだろう

どこか胸がもやもやする感覚を抑えながらセラは聞いたのだ

 

 

「…うん。ザフトにいた時は、ロイが一番大事だった。…そう思ってた」

 

 

シエルがそこで言葉を切る

二人の視界には、三隻の戦艦が見えている

 

 

「でも、今はもっと大切な人がいる。もっともっと守りたいって思える人が…、ね?」

 

 

「…そ」

 

 

シエルの言葉にどきっとしてしまうセラ

それを認めたくなくて、シエルの言葉にそっけなく返してしまう

 

 

「セラ?どうかした?」

 

 

「う…うるさい!ほら、着艦作業に移るぞ!」

 

 

セラは無理やり通信を切る

シエルは、セラの行動に首を傾げながらも、セラと共にクサナギに機体を着艦させた

 

 

 

 

 

 

 

ドミニオンの艦橋

艦隊の被害の報告を受けているナタルの横で、アズラエルが受話器を持って、怒り心頭といった感じで怒鳴り散らしていた

 

 

「ああ!そうだよ!これはのたくたやってたあんたたちトップの怠慢だよ!」

 

 

アズラエルが怒鳴っている横で、ナタルが新しい報告を受ける

 

 

「艦長、チャーチルより救援要請です」

 

 

「わかった。すぐに向かうと返信しろ」

 

 

味方の艦が救援を要請してきたのだ

ナタルはすぐに艦を向かわせようとする

だが、その会話を聞いていたこの男がそれを許さない

 

 

「救援?なんでこの艦がそんなことすんだよ!」

 

 

アズラエルがそれをさせない

 

 

「そんなことよりも、無事な艦はすぐに再度の総攻撃に出るんだ!補給と整備を急がせろ!」

 

 

「!」

 

 

アズラエルの言葉に、ナタルが硬直する

 

再度の総攻撃…?

それは愚策だ

 

 

「無茶です!わが軍がどれだけの被害を負っているか、理事にだってお判りでしょう!?」

 

 

「月本部から、増援も補給も来る!」

 

 

ナタルが異論を唱えるが、アズラエルはすぐさまそれを払いのけるように怒鳴る

 

 

「君こそ何を言ってるんだ!状況がわかっていないのは君の方じゃないか!」

 

 

何を…?

自分の方が…、わかっていない?

 

ナタルがアズラエルの言葉に混乱する

 

 

「あそこにあんなもの、残しておくわけにはいかないんだよ!」

 

 

アズラエルはプラントがある方向を指さし、そしてどかっと音を立てながら椅子に座る

ボタンを操作して、モニターに先程撃たれたあの兵器のデータを出す

 

 

「何がナチュラルの野蛮な核だ!あの兵器はあそこからでも地球を照準にして撃てる!」

 

 

モニターの画面を見ていたナタルは、はっ、とアズラエルの方に目を向ける

 

 

「奴らにこんなものを作らせる時間を与えたのは、お前たち軍なんだからな!何としても破壊してもらう…。あれとプラントを」

 

 

呆然としているナタルをにらみながら、アズラエルは叫ぶ

 

 

「地球が撃たれる前に!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方のアークエンジェルや、エターナル、クサナギの艦橋で通信をつなげて全艦にシモンズの説明が聞こえるようにしてジェネシスの説明がされていた

 

 

「発射されたのはガンマ線です。線源には核爆発を用い、発生したエネルギーを直接コヒーレント化したもので、つまりあれは巨大なガンマ線レーザー砲なんです」

 

 

エリカがジェネシスの発射の原理を説明していく

 

クルーたちが理解して頷く中、一部のクルーは意味を読み取れず首をかしげているのもいる

 

 

「地球に向けられれば…、強烈なエネルギー輻射は地表全土を焼き払い、あらゆる生物を一掃してしまうでしょう…」

 

 

シモンズが、ジェネシスの威力を表情を暗くさせながら解説する

その威力を目の当たりにしたセラたち

シモンズの説明でよく理解できなかったトールも含めて、納得したような表情になる

 

 

「撃ってくると思いますか?地球を」

 

 

そして、セラが皆に問うように口を開く

 

 

「…強力大量破壊兵器保持の本来の目的は、抑止だろ」

 

 

「…けど、もう撃たれてしまった」

 

 

バルトフェルドがセラの問いに答え、それに続くようにシエルがつぶやく

 

 

「人は、慣れるものなのよ…。もう、どちらも戸惑わないでしょうね…」

 

 

最後に、まとめるようにアイシャが言う

 

もう、ザフトも連合も

ジェネシスを、核を撃つことを戸惑わない

次の戦闘では、容赦なくどちらの兵器を使ってくるだろう

 

 

「…核も、あの光も…。もう撃たせてはダメだ」

 

 

沈黙の中、キラがつぶやく

 

 

「そうなってしまっては、もうすべてが遅い」

 

 

キラが、隣にいるアスランとカガリを見る

アスランとカガリは深くうなずく

 

やるべきことは、決まった

言葉を聞かなくても、もう全員の意志は一つになっていた

 

 

「…シエル?」

 

 

そこで、セラが気づいた

不安げに自分を見上げているシエルに

 

 

 

 

 

 

「ミラーブロックの換装は?」

 

 

「あと一時間ほどかかります」

 

 

「急がせろ」

 

 

今、ヤキンはジェネシスの準備を急いでいる

第二射ですべてを終わらせるために

 

 

「地球軍の動きは?」

 

 

「いまだ動きはありませんな」

 

 

パトリックの問いに、ラウが答える

パトリックは、その答えに嘲るように笑みを浮かべる

 

 

「月本部にも戻らず頑張っているか…」

 

 

「奴らも必死でしょう。こちらから仕掛けますか?」

 

 

ラウの提案に、パトリックは首を横に振る

 

 

「そんなことをせずとも、二射目ですべてが終わる」

 

 

「では、地球を?」

 

 

「月基地を撃たれてもなお、奴らが抗うのならばな」

 

 

パトリックの答えを聞いてラウが嗤う

もう少しだ

 

 

「…我らの勝ちだ。ナチュラルども」

 

 

違う

我々ではない

自分の勝利なのだ

もう変えることはできない

 

 

「次の戦闘、私と共に、彼女も出させてもらいます」

 

 

ラウがパトリックに告げる

パトリックはその言葉を聞き、鋭くラウをにらむ

 

 

「…あの女、本当に使えるのか?最新鋭の機体を奴に渡しはしたが、あの女はナチュラルだぞ?」

 

 

「大丈夫です。私が保証します」

 

 

「…まぁいい」

 

 

ラウがパトリックに頭を下げ、制御室から退室していく

 

許可はもらった

これで、後の懸念要素は二つになった

 

 

「セラ・ヤマト…、キラ・ヤマト…」

 

 

とはいっても、もう自分の勝利はほぼ揺るがないだろう

こちらには、切り札がある

 

 

「…ラウ」

 

 

「フレイか。ちょうどいいところに来た」

 

 

ラウが探そうとしていた人物

フレイがラウの前まで来ていた

 

 

「君の出撃許可は取れた。次は、君も出撃してくれ」

 

 

ラウの言葉を聞き、フレイの表情がぱぁっと明るくなる

 

 

「本当に?」

 

 

落ち着いた声で聴くが、その声には多分な喜びが含まれている

そんなフレイの様子に笑みを浮かべながらラウは答える

 

 

「ああ。だから君は、あの機体の整備にいきたまえ」

 

 

フレイはラウの言葉に頷き、格納庫へと向かっていく

その後姿を見ていたラウは、さらに笑みを深めていく

 

 

「そうさ…。せっかく君にはチャンスを…、力を与えたんだ…」

 

 

そう

彼女を見つけ、ラウは選んだ

こいつには、自分の手足になってもらおうと

だから、ラウは与えた

力を

彼女が望む力を

 

だから

 

 

「しっかりと働いてもらおう…、フレイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イザークは、待機室のソファに座り込みながら大きく息を吐いた

その様子を、シホが心配そうに見つめる

何かを言いたげにしているが、中々言い出せずにいる

 

イザークは、そんなシホの様子に気づいていた

だが、たまりにたまった疲れが、それを聞くことさえ拒ませていた

 

 

「…シホ」

 

 

「!は…、はいっ」

 

 

それでも、さすがに我慢が出来なくなったイザークがシホに声をかける

シホは、急に声をかけられて飛び上がるように反応する

 

 

「言いたいことがあるのなら、言え」

 

 

どこか冷たくも感じるイザークの声

シホは、その声に戸惑いを覚える

 

 

「…いえ…、その」

 

 

シホは、自分が言いたい言葉を紡げない

 

 

「…その」

 

 

「…はぁ」

 

 

その様子を見て、イザークはため息をつく

別に怒っているわけではない

だが、シホにはそうは取れなかったらしい

 

 

「シホ、俺は別に怒ってなどいない。だから、言いたいことがあるのなら遠慮なく言ってくれ」

 

 

イザークの言葉にはっと、イザークを見るシホ

それに、イザークにはシホが言いたいことがわかっていた

 

 

「…隊長のお母様のことなんですが」

 

 

「…」

 

 

やはりか

 

イザークがここに来る前、母親のエザリアと話したのだ

どこか興奮しているような声でイザークにジェネシスの二射目のことを告げた

 

母は、ジェネシスを撃つことに戸惑いなど覚えていない

ナチュラルを滅ぼすことに戸惑いを覚えていないのだ

それが、イザークにとってはショックだった

 

 

「大丈夫だ」

 

 

「え?」

 

 

だが、そんなことは関係ない

確かに、ナチュラルを滅ぼすことはイザークとて止めるべきだと思っている

しかしそれは、自分の役目ではない

 

 

「俺たちは何としてもプラントを守る。ジェネシスのことは、奴らが何とかしてくれるだろうさ」

 

 

「…隊長?」

 

 

シホがきょとんとした表情でイザークを見る

 

そうだ

そのことに関しては、あいつらが何とかしてくれる

ディアッカが

アスランが

シエルが

その他の仲間たちと一緒に戦うだろう

 

 

「俺たちのすべきことは、一つだ」

 

 

自分は、プラントを守る

改めて決意を固めた瞬間だった

 

 

 

 

 

 

 

 

「地球軍艦隊、進行を開始します!」

 

 

アークエンジェルから、通信が入った

セラとシエルが、はじかれたように反応する

 

 

「シエル、急ごう」

 

 

セラがすぐさま格納庫に向かおうとする

 

 

「待って」

 

 

だが、シエルがセラの腕をつかんでセラを止める

セラはシエルを不思議そうな目で見る

 

 

「シエル?」

 

 

セラはシエルに問いかける

シエルはまっすぐにセラを見て、口を開いた

 

 

「私は…、セラを守るから」

 

 

「…」

 

 

「絶対に、守る」

 

 

シエルはまっすぐに言う

何の返還もない

自分の気持ちを正直にセラにぶつける

 

 

「…ありがとう」

 

 

セラは、シエルにお礼の言葉を告げる

だが

 

 

「でも、あいつとは俺一人でやらせてくれ」

 

 

それでも、セラにも譲れない思いがあった

シエルの目が揺らぐ

 

 

「別に、シエルを信用してないわけじゃない」

 

 

シエルの口が開きかけたのとかぶせてセラが言う

 

 

「ただ、あいつは…」

 

 

セラも、自分の気持ちに正直に言葉に出す

シエルは、瞳を揺らがせながらセラを見る

 

 

「…死なないよね?」

 

 

「死なない。今度は、この約束は守る」

 

 

セラとシエルの目が合う

互いが互いを見つめ合う

どれだけ見つめ合っていただろうか

 

二人にはとても長く感じた

不意に、シエルが動き出す

 

 

「なら、これはその約束の証ね…」

 

 

「え?…!」

 

 

シエルが、セラの唇をふさぐ

セラは、今起こった事態に驚き大きく目を見開く

だが、唇から伝わってくるぬくもりに心をゆだねる

 

たっぷり十秒

唇を重ねた二人は離れる

その顔を真っ赤に染めて

 

 

「…約束、守ってよ?」

 

 

シエルが上目遣い、目を潤ませ、さらに頬は染めてと殺人三コンボをセラにぶつけてくる

本人はまったくの無意識だが、セラには自分を殺そうとやってるんじゃないかと思えてくる

 

 

「わ…、わかってる」

 

 

答えはどもってしまったが、その気持ちは本物

絶対に生きて帰る

シエルをおいてなどいけない

 

 

「絶対に、生きて帰ろう」

 

 

セラとシエルは、手をつないで格納庫に向かった

 

ちなみに、そのまま格納庫に入ってしまった二人

シモンズやその他作業員に当然目撃され、からかわれてしまったのは別の話

 

 

 

 

 

 

 

「地球軍艦隊接近!パイロットはモビルスーツに乗り込んでください!」

 

 

ヤキンにも当然、地球軍艦隊の接近は知られていた

ロイは、流れた放送を聴き、俯けていた顔をあげる

 

 

「出撃か…」

 

 

ロイは帰投した後、一人でソファに座っていた

 

 

「…シエル」

 

 

考えていたことは、当然シエルのこと

ロイは、シエルに恋愛感情を抱いていた

シエルの方はどうかはわからないが、それでも将来自分と結婚する

そう決まっている

だから、ロイはそう考えていた

たとえ、シエルが自分にそういう感情を抱いていなくても、自分の傍にいてくれると

 

なのに

 

 

「なんなんだ…あいつは…!」

 

 

シエルはセラと呼んでいた

セラとは、シエルにとって何なのだろうか

シエルは、そのセラという人物に…

 

 

「違う…!」

 

 

違う

シエルは、自分の隣にいるべきなのだ

自分のなのだ

 

 

「…俺のシエル」

 

 

そう、彼女は自分のだ

誰にも渡さない

そう、誰にもだ

シエルを奪った奴はそれ相応の罰を与えよう

 

 

「…殺す」

 

 

セラを、殺す

 

ロイの目には、混沌とした闇が渦巻いていた

 

 

 

 

 

 

「調子はどうだい?フレイ」

 

 

「大丈夫。機体に問題はない」

 

 

「そうか。私は最初からは出れない。だから、君は好きに暴れてていい」

 

 

フレイとラウが、通信を通して会話する

フレイは早く出撃したいとうずうずしている

 

 

「私もすぐに出れるとは思うが…。まあ、その前に標的を落としてもいい」

 

 

「…セラ・ヤマト」

 

 

ラウが狙っている人物

ラウに害を与える人物

 

 

「…私が殺す」

 

 

フレイは、声に憎しみを込めながらつぶやく

ラウは笑みを浮かべてフレイに言う

 

 

「そうしてくれ」

 

 

そう言って通信を切る

見ると、他のMSが発進していく

フレイも、ペダルを踏み、レバーを倒す

機体にぐぐぐと力が入っていくのがわかる

 

 

「フレイ・アルスター。スレイヴ、出る」

 

 

フレイが駆る、スレイヴが出撃した

標的は、一人

 

 

「セラ・ヤマト…」

 

 

「殺す」




フレイとロイ…
どうなるんでしょうね?(笑)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。