機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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最高の機体を駆って、二人がぶつかります


PHASE39 因縁

それは、突然のことだった

 

 

「接近する大型の熱量を感知!戦艦のものと思われます!」

 

 

サイが報告する

敵襲に備えてMSの位置をどうするかという話が終わった直後だった

 

M1とヴァルキリーをクサナギ

ムラサメとバスター、ストライクをアークエンジェル

フリーダムとジャスティスをエターナル

リベルタスは修理が終わるまで保留と話がついた

 

そこへの敵襲

 

 

「距離700、オレンジ11、マーク18アルファ!ライブラリ、照合…」

 

 

サイが敵艦の所属を調べる

 

 

「…ありません!」

 

 

しかし、ライブラリに該当するものはなかった

つまり、その戦艦は新型艦ということ

戦闘力は未知数

 

マリューが第一戦闘配備を発令する

戦闘準備を進めながらも、戦艦がなにもせずに通り過ぎていくことを祈る

だが…

 

コロニー全体が揺れる

あの戦艦が攻撃を仕掛けてきたのだ

明らかなる敵対行為

 

 

「アークエンジェル発進!クサナギとエターナルは!?」

 

 

アークエンジェルの発進を指示するとともに、クサナギとエターナルの状態を確認する

クサナギは発進可能

エターナルは最終調整が完了していない

 

アークエンジェルとクサナギが港から発進していく

 

マリューがアークエンジェルの武装起動を指示

イーゲルシュテルン、バリアントが起動していく

 

そこで、敵艦から通信が入る

 

 

「こちらは、地球連合軍戦闘艦、ドミニオン。アークエンジェル、聞こえるか?」

 

 

通信で聞こえてくる声

聞き覚えのある声

なじみのある声

 

 

「本艦は反乱艦である貴艦に対し、即時の無条件降伏を要求する!」

 

 

「ナタル…!?」

 

 

その声の主の名前をつぶやくマリュー

その名前は、アラスカにつくまで、共に戦ってきた人物

対立することもあったが、とても心強い

不安になったときは、本人にはそのつもりはなかったかもしれないが、励ましてくれた人物

 

 

「艦長、敵艦の光学映像、出ます」

 

 

チャンドラが報告し、モニターに敵艦の姿が映される

 

 

「…!これは」

 

 

「アークエンジェル…?同型艦か」

 

 

その艦の姿は、色こそ黒っぽく、異なるものの、アークエンジェルとまったく同じ姿だった

 

 

「お久しぶりです、ラミアス艦長」

 

 

モニターに、相手の艦長の顔が映る

それは、間違いなくかつての戦友、ナタル・バジルールの姿

 

 

「ええ…」

 

 

「このような形でお会いすることになって…、残念です」

 

 

「そうね…」

 

 

どちらの声もどこか硬い

かつての仲間が、今は敵

それも、片方は裏切り者といっていい

 

 

「…アラスカでのことは、自分も聞いております。ですが、このまま降伏し、軍上層部ともう一度話を!私も、及ばずながら弁護いたします」

 

 

ナタルが、マリューを説得しようと必死に言葉をだす

このまま、彼女とそのクルーたちが裏切り者として扱われるのを見たくはない

そして、あの艦を撃ちたくない

 

 

「…ナタル、ありがとう。けど、でも、それはできないわ…」

 

 

だが、マリューは揺るがない

もう決めたのだ

戦い抜くと

自分だけ逃げ出すなんてできない

したくなどない

 

 

「アラスカのことだけではないの。私たちは、地球軍そのものに疑念があるのよ」

 

 

「…!?」

 

 

私たち…

つまり、全員がそうだということ

 

 

「よって、降伏、復隊することはありえません!」

 

 

言い切るマリュー

周りのクルーが笑顔を浮かべてマリューを見る

 

 

「ラミアス艦長…」

 

 

呆然と画面に映るマリューを見るナタル

そんなナタルをあざ笑うように、隣に座るアズラエルが話に割り込む

 

 

「はっははは!何をするのかと見ていたら、呆れますね艦長さん」

 

 

ナタルがアズラエルをにらむ

 

 

「言ってわかればこの世に戦争なんてなくなります。わからないから敵になる。そして、敵は撃たなきゃならない…」

 

 

「アズラエル理事!」

 

 

ナタルが出した名前にクルーが驚愕する

 

 

「アズラエル…!?」

 

 

「ブルーコスモスの盟主…」

 

 

「ルースレス、レイダー、フォビドゥン、カラミティ発進!」

 

 

アズラエルが命令を出す

そして、画面に目を向けて言う

 

 

「不沈艦アークエンジェル、そして、そちらにいるであろうセラ・ヤマト…。沈めて差し上げる…」

 

 

「セラ君…?」

 

 

なぜ、アズラエルがセラを狙っている?

だが、そんな疑問もしまう他なかった

 

ドミニオンから四機のMSの発進が確認される

ドミニオンからも攻撃が仕掛けられた

 

 

 

 

「キラ・ヤマト!フリーダム、いきます!」

 

 

「アスラン・ザラ!ジャスティス、出る!」

 

 

「シエル・ルティウス!ヴァルキリー、行きます!」

 

 

「ムウ・ラ・フラガ!ストライク、出るぞ!」

 

 

「ディアッカ・エルスマン!バスター、発進する!」

 

 

主力のMSが発進していき、その後にトールが駆るムラサメ、アストレイが発進していく

 

 

「おらぁああああああ!」

 

 

「生け捕りってもよ!」

 

 

「ボディが残ってさえいりゃぁいいんだろ!?」

 

 

あの四機は、フリーダム、ジャスティス、ヴァルキリーを見つけると他のMSを無視して三機に向かっていく

 

戦闘の幕があがった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ…、すでに始まっているか…」

 

 

戦闘宙域とは逆の港付近に、ヴェサリウス、他二隻のナスカ級がいた

ラウがモニターに映る戦闘の様子をみてつぶやいた

 

 

「エターナルの他に三隻…。一つは足つきですが、戦闘中のもう一隻は地球軍側なのでしょうか?」

 

 

残りの一隻は、船体に何かが引っかかったのか、動けないでいる

 

 

「…私とイザークで情報収集にあたる。ロイは艦内で待機していろ」

 

 

「隊長ご自身でですか?」

 

 

ラウがだした提案に目を見開く、副官アデス

 

 

「あぁ。あの機体は、この艦にあるのだろう?」

 

 

「!あれを出されるのですか!?しかし…!」

 

 

「大丈夫だ。スペックはすでに頭の中に入っている。シミュレーションもすでにしている」

 

 

アデスが未だ心配そうにラウに声をかけるが、ラウはそれを無視してクルーたちに指示をだす

そして、パイロットスーツに着替えるために、ロッカールームに向かっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦内が揺れる

セラは必死にその揺れに耐えながらもリベルタスの調整を行っていた

 

 

「くそっ!ホントに繊細だな、この機体は!」

 

 

高性能ゆえの繊細さ

戦闘では凄まじい能力を発揮するものの、こうして不調を起こすと治すのに時間がかかってしまう

 

再び揺れる艦内

今、戦況がどうなっているのか気になってしまう

 

 

「シモンズさん!そっちはどうですか!」

 

 

「もう少し…と言いたいけど、わからないわね!」

 

 

復調の兆しこそ見えているものの、いつ動かせるかはいまだ見えない

もんもんとする気持ちを抑えながらキーボードを叩き続けていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!こんな武装を隠していたのか!?」

 

 

キラが悪態をつきながら機体を駆る

こんな武装とは、ルースレスから分離した小型の物体だった

その物体は縦横無尽に動き、敵にビームを繰り出す

 

ドラグーンシステム

小型の攻撃端末、ドラグーンを無線誘導することで、オールレンジ攻撃を可能にするシステム

ガンバレルの次世代システムだ

 

そのドラグーンがフリーダムを襲う

 

 

「…くっ!」

 

 

全方向から発せられるビームの嵐を潜り抜け、隙を見つけながらライフルの引き金を引く

 

これはもう、フリーダムとルースレスの一騎打ちの状態だ

 

 

「キラッ!」

 

 

アスランがキラを気にして通信をかける

だが、キラにそれに答える余裕はない

 

こうしている間にも全方向からビームが降りかかっている

 

キラは容赦なく通信を切る

これを潜り抜けて敵機に攻撃を仕掛ける

膨大な集中力が必要だろう

 

キラは、ライフルからサーベルに持ち替える

そして、ルースレスに向けて機体をはしらせる

 

 

「はっ!馬鹿が!」

 

 

ルースレスを駆るカナードが、フリーダムの行動をあざ笑う

まさか突っ込んでくるとは

 

愚策としか思えない

 

フリーダムにビームの嵐を振りかける

 

 

「…なにっ!」

 

 

だが、キラは機体をひねらせ、後方からくるビームをかわし、前方からビームはシールドで防ぎながらルースレスに接近

 

 

「ちぃっ!」

 

 

カナードは腰のビームサーベルに手をかけ、サーベルで斬りかかってくるフリーダムを迎え撃つ

二機は鍔迫り合い

 

そこで、キラは気づく

ドラグーンの動きが鈍いことに

 

 

「…そうか」

 

 

他の行動をしている間は、ドラグーンの動きが鈍る

それが、相手の弱点

倒す手立てに困っていたキラに、この事実は希望を与えた

 

ルースレスはフリーダムから離れ、再びドラグーンで攻撃を仕掛ける

フリーダムに降りかかるビームの嵐

キラとカナードの戦いは、一進一退で進んでいった

 

 

 

 

「キラ!キラ!?くそっ!」

 

 

通信を切られたアスランは、ルースレスを除いた残りの三機を、シエルと共に相手していた

だが、シエルがレイダーとカラミティの二機に襲われ、防戦一方になっている

援護に行きたいが、こちらもフォビドゥンに取り付かれ、中々援護に向かえない

 

シエルも善戦してはいるが、二機の猛攻で防ぐのに手いっぱい

遂に、レイダーのミョルニルが命中体制を崩してしまう

 

 

「くっ…!」

 

 

さらに、絶妙なタイミングでのドミニオンの援護

無数のミサイルがヴァルキリーに襲い掛かる

 

だが、シエルも負けられない

機体を無理やり横に動かしてミサイルをかわす

 

だが、ミサイルは凌いだものの、かわした直後にカラミティがこちらをロックする

 

コックピットに響く警告音

シエルもそれに気づくも、遅い

 

 

「これで、終わりだぁ!」

 

 

カラミティがヴァルキリーに砲撃を撃つ

 

 

「させるかぁ!」

 

 

だが、そこに割り込む影

 

 

「アスラン!?」

 

 

ジャスティスが、カラミティとヴァルキリーの間に割り込み、砲撃をシールドで防ぐ

そのままカラミティに向けて突っ込み、接触したところで爆発

 

ジャスティスのシールドは使い物にならなくなり、カラミティの砲口が一つ使えなくなる

 

ジャスティスが損傷したと見るや否や、レイダーがジャスティスに襲い掛かる

だが、シエルの援護射撃でレイダーが後退していく

 

 

「アスランっ」

 

 

「大丈夫だ…」

 

 

パイロットには特にダメージはなさそうだ

こちらの戦闘は、そろそろ佳境に入りそうだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!なんだ…これは?」

 

 

ムウは、アークエンジェルの援護をしていた

 

だがその時、背筋に奔る冷たい感覚

馴染みたくなどないが、馴染みのある感覚

それに注意を向けた

 

 

「…まさか!」

 

 

そこで、ムウはある人物の存在に思い当たる

ムウはストライクを戦闘宙域とは別の方向に向けた

 

 

「おい!どこいくんだよおっさん!」

 

 

急にどこかに行き始めたムウを見て、ディアッカが慌てて声をかける

 

 

「おっさんじゃない!…ザフトがいる!」

 

 

「!」

 

 

ザフト…?

だが、なぜそんなことがわかるのだろうか

 

 

「くっ!」

 

 

ディアッカは機体をストライクについていかせる

もし、ムウの話が本当ならば、かなり厄介な状況になるからだ

 

 

 

 

 

「落ちろ!キラ・ヤマトぉおおおおおお!」

 

 

「はぁあああああああ!」

 

 

フリーダムとルースレスの戦いは、さらに激しさを増していた

ドラグーンを掻い潜って攻撃を仕掛けるキラ

だが、その攻撃は命中しない

 

 

「お前は…」

 

 

カナードは一度、ドラグーンを戻す

 

 

「お前は俺がぁああああああ!」

 

 

サーベルでフリーダムに斬りかかる

キラも、サーベルで迎え撃つ

 

サーベル同士がぶつかり、すれ違う二機

キラは、ライフルをルースレスにむける

ルースレスは撃たれたビームをかわし、再びドラグーンを分離

 

そのまま襲い掛からせる…所だった

 

 

「…!なにっ!?信号弾だと!」

 

 

動きを止めるカナード

撤退命令が出された

 

 

「…ちっ。ここまでかよ」

 

 

何とか、切れてしまいそうな理性を保ちながら機体を艦に向けて進ませる

 

 

「…次は。…次こそは!」

 

 

次こそは殺してみせる

そう自分に言い聞かせながら

 

 

 

 

 

「…撤退か」

 

 

あの後、クサナギが動けるようになり、ドミニオンに攻撃を仕掛ける

ドミニオンもその攻撃を回避し、アークエンジェルに攻撃を仕掛けていくが、どれも回避されるか迎撃されていく

そして、状況の不利を感じ取ったのか、撤退していった

 

 

「さすがの状況判断ね…」

 

 

つい、相手の艦長に称賛の言葉をつぶやいてしまう

だが、これで戦闘に一段落がついた

 

 

「おい。フラガとエルスマンはどうした?」

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムウとディアッカは、機体を並べて周囲を警戒しながら進んでいた

 

近づいている…

今も背筋に奔っている感覚がそう告げている

むこうも。こちらの存在がわかっているだろう

 

 

「…!」

 

 

「「くるぞ!」」

 

 

そのセリフは、ラウと同時のタイミングで発せられた

前方に二機の機影

 

 

「デュエル…、それに…」

 

 

「なんだよ、ありゃぁ…」

 

 

一機はデュエルだ

だが、もう一機はわからない

 

グレー一色と言っていい外観

 

ZGMF-X13Aプロヴィデンスが、二人に襲い掛かる

 

 

 

 

 

「…」

 

 

ダコスタが、コロニーメンデルの研究施設の中に忍び込んでいた

バルトフェルド、そしてマリューに調べてほしいと頼まれたのである

 

 

「…戦闘?」

 

 

耳に入ってくる戦闘音

退避すべきなのだろうが、まだめぼしいものは見つかっていない

 

 

「…?これは…」

 

 

そんな時、見つけた一つのファイル

ダコスタは、そのファイルの中身を見る

 

 

「…!」

 

 

大きく目を見開いたダコスタ

そのファイルを抱え、隠しておいた飛行艇に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このっ!クルーゼ!」

 

 

「またこうして戦えるとはなぁ!ムウ!」

 

 

ストライクとプロヴィデンスがサーベルで切り結ぶ

だが、パワーに押し切られてしまうストライク

 

 

「ぐっ!」

 

 

「この程度か、ムウ!」

 

 

「なにをっ!」

 

 

 

 

 

「俺が行きます」

 

 

「リベルタスの不調は何とか出来たわ。私が保証する」

 

 

一方、アークエンジェルでは、セラが発進準備を進めていた

いつまでたっても戻ってこない、ムウとディアッカの様子を見に行くのだ

 

 

「ヴァルキリーも大丈夫。私も行く」

 

 

「ダメだ。地球軍がいつ戻ってくるかわからない。シエルはここで待機してて」

 

 

ついていこうとするシエルを制し、一人で向かおうとするセラ

そんなセラを、心配そうな目で見る

 

 

「…シエル、俺は大丈夫だから。約束しただろ?おいて行ったりしないって」

 

 

「…うん」

 

 

シエルが頷くのを見て、セラはレバーを倒す

 

 

「セラ・ヤマト!リベルタス、発進する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっさん!」

 

 

明らかに押されているムウを援護しようと機体を向かわせようとするディアッカ

だが、その前にデュエルが立ちふさがる

 

 

「こんのぉおおおお!」

 

 

イザークが怒りむき出しでバスターにミサイルを発射させる

ディアッカも全火力でミサイルを迎撃

 

 

「よくもディアッカの機体で…。このナチュラルがぁあああああ!!!」

 

 

イザークがバスターにサーベルで斬りかかる

ディアッカはサーベルをかわす

 

 

「…イザーク」

 

 

この覚悟はできていた

こうなるのもわかっていた

だが…

実際に周知の仲の人と戦う

その辛さは想像以上のものだった

一体、キラとアスランはどれだけ辛い思いを味わったのだろうか…

 

 

「…っ、イザーク!」

 

 

「!」

 

 

つい、通信をつなげて相手のパイロットに声をかけてしまった

デュエルの動きが止まる

 

 

「…ディアッカ。本当にディアッカなのか?」

 

 

「あぁ」

 

 

「っ!その貴様が、なぜナチュラルと共にいる!どういうつもりだ!」

 

 

イザークがディアッカに怒鳴りつける

 

 

「生きていたことはうれしい…。だが、事と次第によっては、貴様でも許さんぞ!」

 

 

やはり、こうなってしまうか…

心の奥ではわかっていたこと

だが、それでも望んでいた

イザークと分かり合えることを

 

いや、まだだ

まだわかりあえる

まだ話し合えるチャンスはある!

 

 

「…銃を向けずに話をしよう。イザーク」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日こそつけるかね!?決着を!」

 

 

「このっ!」

 

 

ラウが余裕を含んだ声をムウにかけてくる

 

ムウはラウの言葉を振り払うようにサーベルで斬りかかる

 

 

「だが、君では私に勝つのは不可能だ!」

 

 

「なんだとっ!」

 

 

言い返すムウの目の前で、相手の機体の背中から何かが飛び出してくるのが見える

 

 

「っ!」

 

 

その物体、ドラグーンがストライクに襲い掛かる

ムウは機体を必死に駆って、向けられるビームの嵐から抜け出す

 

 

「はっ!」

 

 

ラウが、そんなストライクを見てあざ笑う

今のは、本気でストライクを撃とうとしたものではない

 

それなのに、目の前の機体は必死にかわそうとしているのだ

ラウにとっては滑稽で仕方がない

 

 

「やはり君はその程度だ!諦めたまえ!」

 

 

「うるせえぞ、このやろぉ!」

 

 

声を荒げながらも冷静さを保って、ライフルをプロヴィデンスに向ける

 

 

「これで終わりだ、ムウ」

 

 

「なに…!?」

 

 

まったく反応できなかった

いつの間にか包囲していたドラグーンが火を噴く

四肢がもがれ、ビームがコックピットをかする

 

 

「ぐわぁああああ!?」

 

 

何の抵抗もできずに、墜落していくストライク

 

 

「やはり、運命は私に味方しているようだ…」

 

 

ストライクにとどめを刺そうと、ライフルを向ける

 

 

「…!」

 

 

そこに、ラウの背筋に冷たい感覚が走る

ムウを感じる時よりも大きく感じるその感覚

 

 

「ムウさん!」

 

 

「!セラ!?」

 

 

ラウの視界には、リベルタスの姿

 

セラはライフルを撃って、ストライクからプロヴィデンスを遠ざける

プロヴィデンスが後退していくのを見て、セラはムウに再び声をかける

 

 

「ムウさん、撤退してください!その機体の状態では何もできません!」

 

 

はっきりと言い切るセラ

ムウは、今の機体の状態を見る

四肢がもがれ、奇跡的に生きているバーニア

 

 

「…わかった。バーニアは何とか生きてるから、単独で戻れる」

 

 

「わかりました!急いでください!」

 

 

ストライクが艦に戻っていく

 

セラは、機体をプロヴィデンスに向ける

 

 

「…なんだ、こいつは」

 

 

目の前の機体から発せられる気迫

気を抜くと気圧されそうになる

 

 

「…!」

 

 

目の前の機体からドラグーンが分離

セラは機体を後退させて、ドラグーンの襲撃を回避

 

 

「…セラ・ヤマトか?」

 

 

「誰だ!?」

 

 

急にかけられる声

通信ではない

頭の中に直接かけられる声

 

セラはその現象にわずかに動揺させられる

 

 

「私か?…私は」

 

 

ラウは、セラが現れたことを知り、そして決意する

目の前のこいつを、絶望に落としてやろうと

 

 

「ラウ・ル・クルーゼ。君のおかげで生まれてきた存在だよ」

 

 

「…え?」

 

 

ぶつかり合う二人

それは、この二人が生まれてきたその時から、決められていたことだった




悩みましたが、クルーゼさんの機体はプロヴィデンスです
武装に変化はありませんが、リベルタスに対抗できるパワーとスピードがついています

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