機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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前半はともかく、後半は強烈なキャラ崩壊を起こすと思われます…


PHASE36 戻る絆

「モルゲンレーテより、モビルスーツ!」

 

 

「!なんですって!?」

 

 

アークエンジェルの艦橋

サイが報告する

光学映像で、そのモビルスーツを映す

 

 

「え?」

 

 

「これは…」

 

 

そのMSは…

 

 

「…スピリット?」

 

 

どことなくスピリットに似ていた

 

 

 

 

 

 

 

セラは、機体を駆りながらつぶやく

 

 

「…ひどいなこれは」

 

 

モニターで見るのと、実際に目にするのは全然違う

今セラの目の前に広がる光景は、セラの心にかなりくるものがあった

 

 

「でも、そうも言ってられない」

 

 

セラは、腰にあるサーベルを抜いて、目にもとまらぬスピードで、陸すれすれをかける

リベルタスの通り道にいたMS,ストライクダガーは全てどこかしらに損傷を受ける

 

セラは、ペダルを強く踏み、機体を上昇

ライフル二丁を構え、地上にいるストライクダガーに照準を合わせる

引き金を引き、ストライクダガーのメインカメラを正確に撃ち落とす

 

一機、二機、三機とストライクダガーが戦闘不能に陥っていく

 

地上から、ストライクダガーがライフルを撃ってくる

セラは、それを何の苦も無くかわし、収束ビーム砲を構える

放たれた砲撃は、地面をえぐり、砂煙を巻き上げる

 

視界がふさがれたストライクダガーの動きが止まる

その隙にセラは急降下

両手にサーベルを持ち、まわりのストライクダガーを切り裂いた

 

 

「…っ」

 

 

セラは再び上空に飛び立つ

リベルタスが立っていた場所に、何発かのビームが当たる

 

この短時間に暴れすぎたか、かなりの数の連合のMSがこちらに狙いを定めている

 

 

「…なら、この機体の本領を発揮しようか」

 

 

リベルタスの背中のリフターが展開され、そこから

 

赤い光の翼が広がった

 

 

「…あ」

 

 

「なんだ…これは…」

 

 

リベルタスの背中から現れた光の翼は、敵味方関係なく魅了する

そんなことを露知らず、セラは機体を駆る

 

サーベルでメインカメラを落とし、ライフルで四肢を撃ちぬく

 

オーブが、乗れるパイロットがいないだろうという理由で廃棄しようとしたリベルタスの機能をフルに使い、思うように動かしていた

 

 

「おい!なんだよありゃぁ!」

 

 

アークエンジェルの方でも、急に参戦してきたリベルタスへの動揺を隠せない

ムウが、通信をつないでマリューに尋ねてくる

 

 

「わかりません!少なくとも、敵ではないということしか…」

 

 

マリューだって、あの機体のことは何もわからない

しかも、こうして話している間にもあの機体は、連合のMSの数を減らし続けているのだ

 

 

「ともかく!今はあのモビル―スーツを友軍機と判断して!」

 

 

マリューの号令に従うクルー

だが、全員が気になっていた

 

リベルタスのパイロットのことを

 

セラは機体にまったく傷をつけずに連合のMSを戦闘不能に陥らせ続ける

 

地上に降りたリベルタスに、一機のストライクダガーがサーベルをもって突っ込んでくる

セラは、その斬撃を簡単にかわし、サーベルを持った方の腕を斬りおとす

機体を後退させ、ライフルを撃ち、もう片方の腕を撃ちぬいた

 

ここまで撃退した機体はもうすでに三十を超えているだろう

 

 

「さっきから何なんだよ!お前はぁ!」

 

 

「っ!」

 

 

好きに暴れているリベルタスが気に入らなかったのか、クロトが駆るレイダーが機関銃を連射しながら接近してくる

セラは、機体を後退させながらそれを避ける

 

するとレイダーは、ミョルニルで仕掛けてくる

巨大な鉄球がリベルタスに迫る

セラは鉄球をかわす

そのまま鉄球からのびるひものようなものをサーベルで斬る

 

 

「なにっ!」

 

 

武装を一つ失ったレイダー

セラはサーベルを抜き、とじていた光の翼を再び展開し、レイダーに接近しようとする

 

 

「何やってんだよ!このやろう!」

 

 

カラミティが、砲門をリベルタスに向ける

全火力が向けられるリベルタス

セラはレイダーへの接近を諦め、カラミティから放たれる様々な砲撃をかわす

 

砲撃を器用にかわしながらライフルでカラミティの砲門を狙い撃つ

オルガは砲火を浴びせることばかりに集中しているせいで、そのビームに反応することができなかった

 

 

「なんだとっ!?」

 

 

怯んでいる隙にセラはサーベルでカラミティの左腕を切り裂いた

 

 

 

「なんだ…あれは…」

 

 

アスランがレイダーとカラミティを圧倒しているリベルタスを見てつぶやく

こっちで戦っていたルースレスとフォビドゥンが、リベルタスに向かっていくが、リベルタスの機動力に翻弄されている

 

自分たちが苦戦していたあの四機を

同時に相手取ったわけではないとはいえ、あそこまで簡単に…

 

 

「…」

 

 

シエルは、今、二機を相手しているリベルタスを見つめる

あの動き方

ライフルよりもサーベルを多用するくせ

 

 

「…まさか」

 

 

シエルはリベルタスのパイロットが気になった

 

 

「…シエル。今は、それを考えるのはやめよう」

 

 

「…キラ」

 

 

キラに自分が考えていたことを当てられたことに驚くが、それも当然だとも思う

キラは、あの人とずっと一緒に戦ってきたのだ

自分と同じことを考え付いて当然だろう

 

 

「うん、わかってる」

 

 

「…そっか。僕とアスランは地上のモビルスーツを何とかするから、シエルはあのモビルスーツを援護して」

 

 

リベルタスは、今四機に囲まれている

どの期待も損傷を受けているせいか、動きが鈍い

そのおかげでリベルタスも四機の猛攻をかわし続けているが…

 

 

「わかった。頼むよ、キラ、アスラン」

 

 

 

 

「っとぉ!ホントになんだよ!四機で一機をいじめるかよふつう!」

 

 

悪態をつきながら必死に機体を駆る

 

 

「…!」

 

 

そしてついに、一つのビームが機体をかすめる

さすがに限界が近づいている

 

 

「くっそ!」

 

 

セラは何とか隙を見つけて収束ビーム砲を構えようとするが、その隙が中々見つからない

 

 

「…え?」

 

 

不意に、砲火がわずかに緩む

理由はわからないが、これはチャンスだ

ビーム砲を放つ

砲撃はルースレスとフォビドゥンが固まっているところに向かう

ルースレスは後退して、フォビドゥンはリフターを展開し、ビームを曲げる

 

だが、二機が防御態勢に入ったおかげでついにリベルタスに向けられていた砲撃の嵐が止む

息はつけないが、それでも一つの危機を凌いだ安心感で息をつく

 

 

「…?」

 

 

そこに、背中にわずかに感じる衝撃

敵ではない?

 

モニターで見ると、ヴァルキリーが、リベルタスの背中を守るようにライフルを構えながらカラミティとレイダーの前に立ちはだかっている

 

 

「…セラ?セラなんでしょ?」

 

 

「…さぁ、どうでしょう」

 

 

短い会話

久しぶりに、セラとして聞くシエルの声

 

 

「…後でお説教だからね」

 

 

「いや、なんでだよ」

 

 

シエルと会話している

それがセラを安心感で包む

 

もう、一人じゃない

もう、大丈夫だ

 

 

「…背中は任せて」

 

 

「了解。すぐに片づけて援護に行くから」

 

 

二機は、同時に反対方向に進んでいった

 

 

 

 

「…セラ・ヤマトだな」

 

 

今、こちらに向かってくる、翼を広げた機体

それに乗ってるのは間違いなく奴だ

 

 

「殺す…。殺してやる!」

 

 

 

あの対艦刀を構えている機体…

何だ

何かを感じる

 

殺気か?

 

 

「うぉおおおおおお!」

 

 

ルースレスが対艦刀を振りかぶりながら接近してくる

セラは機体を急停止

間合いを測りながら、サーベルを一閃

ルースレスの対艦刀が、根元から斬りおとされた

 

 

「なにっ!?」

 

 

怯んだルースレスの右腕を斬りおとし、そのまま蹴り落とす

 

そして、今度はこっちに接近しているフォビドゥンに狙いを移す

サーベルからライフルに持ち替え、引き金を引く

 

フォビドゥンはリフターを展開し、撃たれたビームを曲げる

 

 

「くそっ、ホントに厄介な機能だな」

 

 

歯をかみしめながらフォビドゥンをにらむ

さらにフォビドゥンはプラズマ砲、フレスベルグを放つ

セラは、そのビームをかわそうとするが

 

 

「!このっ!曲がるか!」

 

 

ビームが曲がり、リベルタスに向かってくる

それを見て、再び機体を横にずらす

さすがに二度は曲げれないのか、ビームはそのまま通り過ぎていく

 

セラは、ニーズヘグを振り下ろそうとするフォビドゥンを蹴りを入れて突き飛ばす

 

 

「ぐぅっ!」

 

 

コックピットに伝わる衝撃に耐えながらひるむシャニ

その隙に、セラはサーベルでニーズヘグを切り裂く

 

 

「なっ!?」

 

 

「まだだ!」

 

 

さらにサーベルを一文字に振るう

リフターに損傷を受けるフォビドゥン

堪らず撤退していくのが見える

 

ルースレスも撤退して、こちらの二機の戦闘は終わった

あとは

 

 

「シエル!」

 

 

機体を、二機相手に奮闘しているヴァルキリーに向けた

 

 

 

 

「くぅ…!」

 

 

必死に機体を駆って交戦するシエル

カラミティとレイダーがヴァルキリーに猛攻を仕掛ける

何とか今のところ機体は損傷を受けていないが、そろそろ危なくなってきている

 

 

「シエル!」

 

 

「…!」

 

 

スピーカーから、セラの声が流れてくる

どうやらあっちの戦闘は一段落ついたようだ

 

セラが収束砲を放つ

レイダーとカラミティが左右に分かれてよける

 

 

「シエルは黒い方を!」

 

 

「わかった!」

 

 

シエルは、レイダーにサーベルで斬りかかるレイダーはその斬撃をかわして機関砲を撃つ

その機関砲をかわしながらライフルを撃つ

レイダーはかわすが、かわしきれずに右足にビームがあたり、爆散する

 

怯んだレイダーに体当たりを仕掛ける

レイダーは、そのまま撤退していく

そのレイダーの上に、カラミティが乗り、共に撤退していった

 

 

「…」

 

 

リベルタスがカラミティの砲門にさらに損傷を与えたのだ

シエルは、そんなリベルタスを見る

一部、砲撃がかすったところが熔けているが、あの四機を一機で相手してそれだけの損傷で済んだのだ

そのパイロットは只者ではないだろう

 

 

「…セラ」

 

 

「まだ戦闘は終わってない。話は後だ」

 

 

真剣な声質に、シエルは気を引き締められる

そう、まだ連合自体は撤退していないのだ

 

二人は、機体を連合のMSの舞台に向けていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キラとアスランは、あの四機の相手をシエルと謎のMSに任せてアストレイの援護に来ていた

キラは後方でライフルでストライクダガーの武装を撃ちぬく

アスランは、二本のサーベルを合わせてハルバートにし、ストライクダガーに斬りかかっていく

 

二人の動きを捉えれる者はいなかった

 

 

「…キラ」

 

 

そんな中、アスランが通信をつなげてキラに話しかける

 

 

「…あの機体に乗っているのは」

 

 

「アスラン」

 

 

キラは、アスランの言葉を止める

 

アスランが言おうとしたことを、キラにはわかっていた

だが、今はそのことを気にしている場合ではないのだ

まだ連合の軍勢は撤退していない

侵攻を続けているのだ

 

 

「…ん?」

 

 

そこで、まずアスランが気づいた

 

 

「…あれ?」

 

 

次に、キラが気づいた

 

 

「…な」

 

 

アークエンジェルにいるサイも気づく

 

連合のMSの反応が、急速に減っていることに

 

 

 

 

「セラ!後ろから接近!」

 

 

「わかってる!」

 

 

「あ、やっぱりセラなんだね!?」

 

 

「なっ!誘導尋問!?…って!こんなこと話してる場合じゃないって!」

 

 

戦闘中とは思えない会話を展開させながら、破竹の勢いで敵MSの武装を奪っていく

 

 

「なんだよこれは…!」

 

 

「ちょっ…!」

 

 

連合のパイロットが、あまりの勢いで迫ってくる二機に恐怖を抱く

だが、そんなことは二人にとっては関係ないこと

 

 

「絶対絶対ぜっっったいに、この戦闘が終わったら説教だからね!?」

 

 

「あぁもう、何でもいいから今は戦闘に集中しようや!」

 

 

「「うわぁあああああああ!!!」」

 

 

正直、二人はこの二機を撃退したことは覚えていないだろう

他の機体のことも、頭の中から抜け落ちているはずだ

 

…哀れ

 

 

 

 

 

 

 

「なんなんだ…。なんなんだこれはぁ!」

 

 

イラつきが止まらないアズラエル

 

こんなはずではなかった

こんなはずでは…

 

本当なら昨日のうちにオーブを落としているはずだったのだ

今日だって、あの翼を広げた機体さえ現れなければ…

 

 

「…どうしますか?あの四機の損傷は、一度基地に戻って修理しなければならないレベルですが」

 

 

「わかっている!くそっ…!全軍撤退!オーブはもういい!」

 

 

アズラエル、連合に残された選択肢はもうオーブを諦めるというものしかなかった

 

 

 

 

 

 

「…あ」

 

 

セラは、打ち上げられた信号弾に気づく

連合は撤退していくようだ

 

大分損害を与えられた

そのまま基地に戻っていってもらいたいものだが…

 

 

「セラ」

 

 

シエルから話しかけられる

モニターには、ヴァルキリー、その後方にフリーダムとジャスティスが映し出されていた

 

 

「…あ」

 

 

シエルから宣告された、説教

言われた時は戦闘に集中していて気にも留めなかったが

 

 

(やばいやばいやばいやばいやばいやばい)

 

 

今更になって恐怖心が浮かび上がってくる

しかも考えてみれば、アークエンジェルにはミリアリアという鬼母もいるのだ

 

…死ぬんじゃなかろうか

 

 

「あー…、その…。この機体、モルゲンレーテに戻してくるから!」

 

 

「あ、セラ君、聞こえる?その機体なんだけど、アークエンジェルに収容してもいいからね」

 

 

「シモンズこのやろぉおおおおおお!!!」

 

 

狙ったとしか思えないタイミングで入ってきたシモンズの通信に怒鳴り返す

 

当然シモンズは狙ってなどいないので、セラになぜ怒鳴られたのかわからずあたふたしているのだが

 

 

「ほらセラ。早く戻るよ」

 

 

「いやだ!俺はまだ死にたくないっ!」

 

 

「「…」」

 

 

セラは、シエルに引っ張られる形でアークエンジェルに向かっていく

 

スピーカーから聞こえてくるシエルと、恐らくセラであるだろう人物のやり取り

それについていけないキラとアスランも、遅れてアークエンジェルに向かっていった

 

 

 

 

 

 

 

セラ以外の三人が、コックピットから降りる

格納庫には、すでにアークエンジェルのすべてのクルーが集まっていた

当然、この艦に収容された新しい機体に興味をもってだ

 

セラは、モニターに映し出される光景を見て、絶句する

そして、悟る

 

袋叩きにあうと

 

 

「…こうしてもいられない。覚悟を決めろ!」

 

 

自分に言い聞かせるようにつぶやき、ハッチを開ける

そして、コックピットから降りていく

 

キラ、アスラン、シエルの三人は、やっと降りてきたかというような呆れた表情

それ以外は、口をあんぐりと開け、呆気にとられた表情

 

セラはそれを見て、何か言わねばと思考する

 

 

「あー…、えっと…」

 

 

そして、セラはぺこりと頭を下げる

 

 

「セラ・ヤマト。ただいま生還いたしましたぁ」

 

 

…何も返事が返ってこない

顔をあげると、キラたち三人は、なぜか耳をふさいでいる

そしてそのほかの人たちは、プルプルと震えている

 

 

「あ…あの?」

 

 

「「「「「「「「「「「「「生きてるなら、連絡くらいしろやこのやろぉおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」」」」」」」

 

 

格納庫中に響き渡る怒声

セラがノックアウトされたのは、当然の話だ

 

 

 

 

 

セラが次に目を合わせたのは、アークエンジェルの医務室だった

シエルが自分が寝ているベッドの横の椅子に座り、キラとアスランとカガリがシエルの横で立っていた

 

 

「おはよう、セラ」

 

 

「…おはよう…ございます」

 

 

言葉を詰まらせてしまうセラ

なぜなら、アスラン以外の三人の笑顔が、とても素敵なものだったからだ

そう、とても素敵な笑顔を浮かべているのだ

 

 

「あのぉ…、あなた様達は、なぜそんな素晴らしい笑顔を浮かべていらっしゃるのでしょうか…?」

 

 

声を震わせ、びくびくしながら聞くセラ

だが、三人はセラの問いに答えない

 

それどころか、笑みを更に深め、背後に何やら黒いものが噴き出てきたようにも見える

 

 

「あ…あ…あぁ…」

 

 

「セラ?そんなことよりも言うことがあるよね?」

 

 

シエルがセラに言う

セラはさらに体をびくつかせる

 

怖い…

怖すぎる…!

 

 

「ごめんなさい!生きていたのに連絡もせずに、しかもアークエンジェルが入港してからも変装してごまかしたりして申し訳ございました!」

 

 

「え?変装って何?」

 

 

「え?」

 

 

「え?」

 

 

え…、もしかして、ベラの変装はばれていなかった…?

 

 

「へぇ…、変装かぁ…」

 

 

「なんだ?そこまでして私たちに会いたくなかったのか?」

 

 

シエルとカガリがさらにセラに詰め寄る

キラは…

二人の凄味におされ、退避していた

さっきまでは、シエル側だったというのに…

 

 

「ねぇ…、どうして変装までして姿を現したくなかったのか…。教えてくれる?」

 

 

「っ!」

 

 

シエルに聞かれたことに、セラが大きく反応する

 

 

「…?」

 

 

セラの様子が急におかしくなったことにシエルは気づく

体を震わせているのは変わっていない

だが、表情がどこか違う

セラを纏う空気がどこかさっきとは違う

 

 

「ん?セラ、どうした?」

 

 

カガリもそれに気づいたのか、セラの様子を聞く

だが、セラは震えるだけで何も答えない

 

 

「…セラ?」

 

 

シエルも、セラを心配して聞く

 

 

「…ごめん。それは、聞かないでくれるか」

 

 

絞り出すような声で言うセラ

 

四人は、この話題には触れないことに決める 

 

 

「…うん。もう聞かないよ」

 

 

シエルが、セラを安心させるように言う

セラが、それを聞いてほっとするように息を吐く

顔色も、どこか戻っているようだ

 

 

「…」

 

 

「シエル?」

 

 

セラが、シエルに見つめられていることに気づく

 

 

「…っ」

 

 

「え…」

 

 

そして、抱き締められた

 

 

「あ…え…え?」

 

 

「…よかった」

 

 

シエルがぼそりとつぶやく

 

 

「生きてて…、ホントによかった…!」

 

 

「…シエル」

 

 

涙声でつぶやくシエル

セラは、震えるシエルの髪を優しくなでる

 

キラたちは、ここにいるのは無粋だと悟り、医務室から出ていく

 

残ったのは、セラとシエルの二人

 

 

「セラが、落とされたって聞いて…!心配して…!」

 

 

「うん。ごめん…。ごめん…。」

 

 

シエルに謝ることしかできないセラ

 

 

「…もう、大丈夫。シエルから、離れたりしないから…」

 

 

今度はセラがシエルを安心させるように言う

そして、何やら出口から聞こえてくる

話し声が

 

 

「おいキラ。もっとしゃがめ」

 

 

「アスラン…、さすがにこれ以上は…」

 

 

「お、キラ!何やってんだ?」

 

 

「なっ!」

 

 

「トール…!大声出さないで…!?」

 

 

「「…」」

 

 

セラとシエルは身を離し、微妙に開けられた扉を見る

 

 

「ん、何やってんだ?」

 

 

「セラとシエルがいい雰囲気なんだ」

 

 

「面白そうだから、覗きだな」

 

 

「…君って、真面目な印象だったんだけど」

 

 

「アスランはちゃんとした馬鹿だよ」

 

 

「なっ!馬鹿とは何だ!」

 

 

「ほんとのことを言っただけじゃないか」

 

 

「お前に言われたくはない!」

 

 

「ちょっ!どういう意味なのそれ!」

 

 

「そのままの意味だよ!」

 

 

「なんだとぉ!」

 

 

「なんだよ!」

 

 

「ねぇ、お二人さん」

 

 

「「なに(なんだ)!?…あ」

 

 

キラとアスランがひょんなことでヒートアップしていき、誰かに話しかけられてイライラをぶつけながら同時に振り向く

だが、そこで二人の怒気が一気に冷めていく

 

二人に話しかけた人物

医務室の扉に手をかけながらしゃがんでいた二人を見下ろしていた人物

セラ・ヤマトがそこにいたのだ

 

 

「覗きかぁ…。ずいぶん面白いことしてるね?俺も混ぜてほしいなぁ?」

 

 

「あ…その…」

 

 

「セラ…、落ち着け…」

 

 

キラとアスランがガタガタ震えはじめる

その姿は、つい先ほどシエルとカガリに震えていたセラと重なっていた

 

 

「まぁ、混ぜれるわけないよねぇ?だって、俺を覗いてたんだんだからなぁ…?」

 

 

「「あ…あ…」」

 

 

「覚悟は…できてるよな?」

 

 

「「…戦略的撤退!」」

 

 

「逃がすかぁ!」

 

 

逃走劇を開始するキラとアスラン

それを追いかけるセラ

それを見ることしかできないシエルとトール

 

 

「「…ははは」」

 

 

目を見合わせて苦笑いする二人だった

 

 

 

ちなみに、追いかけっこしていた三人は、マリューの雷をその身に受けていた

当然、アスランもである

 

それを見ていたクルー全員にくすくす笑われたのは別の話




どうでしょうか…?
この小説のキラとアスランは、幼少時代、セラと共に色々やっているという設定です
この三人のやり取りは最初からかなり書きたかったんです!


それと、章関係の話です
PHASE28が、抜けていましたので、修正しました

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