機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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少し短いです


PHASE35 友の和解

オーブ、オノゴロ島

その上空で、三機と四機がぶつかり合っていた

 

 

「でぇえええええい!」

 

 

「うぉおおおおおお!」

 

 

キラがサーベルを抜いて、カナードが対艦刀で迎え撃つ

何度も剣を合わせる二機

 

 

「キラ!」

 

 

そこに、アスランがライフルを撃って援護する

ルースレスは、フリーダムから離れる

 

だがそれは、カナードにとって気分を害することだった

 

 

「ちっ…。何度も何度も…」

 

 

カナードは、ビーム砲をジャスティスに向ける

 

 

「邪魔をしやがってぇええええええ!!!」

 

 

アスランは、放たれたビームを、機体を後退させることでかわす

 

さらに、ジャスティスの影に隠れるようにしていたフリーダムがジャスティスの下から現れる

キラは、ルースレスに向けてビームを撃つ

 

カナードは、そのビームをかわす

 

 

「…っ!」

 

 

続けて他方から撃たれたビームをかわす

だが、そのビームを撃ったのは…

 

 

「邪魔するなオルガ!」

 

 

カラミティを駆る、オルガだった

 

 

「うざいんだよ!」

 

 

さらにオルガは、フォビドゥンにもビームを撃つ

そのビームを、フォビドゥンはリフターを展開させ、曲げる

 

 

「え?」

 

 

「こいつら、味方を平気で!?」

 

 

キラたちが敵の行動に驚いている中、四機は何と交戦状態に入ろうとしている

 

 

「うざいのはお前だ!オルg…!ぐぅ!」

 

 

「がっ!」

 

 

「うわぁ…!」

 

 

すると、ルースレス以外の三機の動きが、急に鈍り始めた

キラたちが疑問を浮かべながら三機を見る

 

 

「…ちっ、時間切れか。ほら、撤退するぞ」

 

 

「くっそ!」

 

 

「…え?撤退していく?」

 

 

シエルが、口を開く

四機が撤退していったのだ

 

だが、キラはそれだけではないと感じていた

あのルースレスから放たれたもの

…殺気

 

 

『次は逃がさない』

 

 

「…!」

 

 

キラは、ぶるっと体を震わせる

戦闘中も感じていた、自分への殺気

絶対に殺してやるといわんばかりの強烈な殺気

 

 

「…キラ?」

 

 

「…大丈夫」

 

 

気遣うように声をかけてくるシエルに返事をかえす

 

あの機体は、誰が乗っているのだろうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アズラエルは、イライラしていた

オーブを攻撃し始めてから、もうずいぶん経つ

予定では、とっくにオーブ攻略が終わっているはずなのだ

 

 

「…まだ落ちませんか?おかしいですねぇ…」

 

 

椅子の手すりをとんとんと指で叩きながら言う

艦の艦長が、振り返ってアズラエルに口を開く

 

 

「ご自慢の新型。思ったより働いてはいないようですが?」

 

 

アズラエルに、憤りの表情が顕著に表れる

 

そう、あの四機が抑えられてしまってるのもいらだっていた

あれだけ金をかけて作り出したものを…

 

確かに、あの四機と戦っていた三機も最新鋭の機体なのだろうが…

 

 

「ルースレス、レイダー、フォビドゥン、カラミティ。帰投します」

 

 

「…何っ!?」

 

 

オペレーターの報告に、艦長が驚きの声をあげる

 

アズラエルは、舌打ちする

時間切れか…

くそっ、役立たずが…

 

そう心でつぶやきながら

 

しかし、まさかカナードまで戻ってくるとは

まぁ、あの三機を一機で相手するのはさすがに無理か…

 

意外に戦況を判断できていたアズラエルは、カナードは一旦置いておくことにする

だが、他の三人は別だ

 

 

「はぁ、艦長さん、撤退です。全軍撤退」

 

 

艦長が、目を見開いてアズラエルを見る

アズラエルは、それを気にもせずに続ける

 

 

「どうせ、ダガーだけではどうにもなりません。オーブの底力、思った以上のものだ…」

 

 

後半の言葉は、素直に感心しつつ、いら立ちを含ませた声で言う

 

 

「このままでは全滅しますよ…」

 

 

「…全軍撤退!信号弾をあげろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急に撤退していく連合

信号弾をあげられるのも見えていた

 

 

「…何で?」

 

 

シエルがぼそりとつぶやく

戦況は、あちらが有利だったはずだ

あの四機がなぜか撤退していったため、ここからどう展開していくかはわからないが

少なくともここで撤退していくほどではない

 

キラは、そう不思議に思いながら、ジャスティスと向き合った

 

 

「…援護は感謝する」

 

 

シエルは、キラとアスランが旧知の中だと知っていた

邪魔にならないよう、機体を陸に降ろそうと離れていく

 

 

「だが、その真意を…、改めて、確認したい」

 

 

アスランは、目を閉じる

 

もう、決めたのだ

 

アスランは、ハッチを開いた

 

 

「俺は、その機体…。フリーダムの奪還、あるいは破壊という指令を、本国から受けている」

 

 

アスランの言葉を聞き、キラの体に力が入る

また…、戦うことになるのか?

 

あの時の光景がよみがえる

 

 

「だが、俺は今。お前とその友軍に、敵対する意思はない」

 

 

キラの体に入っていた力が、はっ、と一気に抜ける

 

 

「…話がしたい。お前と…!」

 

 

「…アスラン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕日があたりを照らす中、機体に乗っていたすべての人間が、コックピットから降りてくる

その表情は、全て共通していた

 

どの表情も、疲労が目に見えていた

 

 

「皆!よくやってくれた!」

 

 

カガリは、そんな皆を労う言葉を発する

そして、上空から降りてくる二機が目に入った

 

 

「…っ!」

 

 

フリーダムと、もう一機の赤い機体

あの赤い機体が、フリーダムを援護していたのは見た

 

ヴァルキリーの存在は、キサカから知らされた

パイロットがシエルだということも

 

だが、あの機体は何なのだろうか?

 

カガリは、二機が降りた場所に走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キラとアスランが、コックピットから降りてくる

地に両足をつけ、お互い目を合わせる

 

そして、同時に足を踏み出した

 

一歩ずつ二人の距離が縮まっていく

もう二度と、交わることがなかったはずの二人が、近づいていく

 

 

「彼は敵じゃない!」

 

 

キラが、アスランに向けて銃を構えるオーブ兵を諌める

 

そして、二人は立ち止まり、向かい合った

 

 

「…」

 

 

「…」

 

 

だが、互いは口を開かない

話したい

その気持ちは一緒だが、何を話せばいいのか…

 

 

『トリィ』

 

 

その時、キラの肩にトリィが止まる

トリィは首を傾げながらキラとアスランを交互に見る

 

まるで、挨拶くらいはしたら?

と、言っているように…

 

 

「…やぁ、アスラン」

 

 

やや間が空いたものの、キラが口を開く

 

 

「…キ…ラ…!」

 

 

お互いがかたくなる

このまま、どれだけ時間が経ってしまうだろう

そう思った時

 

 

「おまえらぁああああああ!」

 

 

カガリが、二人に駆け寄る

そしてその勢いのまま、二人の首に抱き付いたのだ

 

キラとアスランが、勢いに押され一瞬表情を歪める

 

 

「このっ、ばかやろぉ!」

 

 

カガリは、涙を浮かべながら笑う

その様子を見ておかしく思ったキラとアスランが、笑みを浮かべて目を合わせる

 

本当の意味で、二人が再会した瞬間だった

 

 

 

 

 

キラは、格納庫で、今回のオーブ侵攻についてアスランに説明していた

アスランは、絶句する

 

 

「しかし、それは…」

 

 

オーブが目指しているのは、確かにすべての理想だ

だが、このままでは国が滅びてしまう

連合が、このまま何度も攻めてくるのならば、オーブは間違いなく落ちる

 

 

「うん、大変だってことはわかってる…」

 

 

キラだって、アスランの言うことはわかっている

 

 

「けど、仕方ない。僕も…、その通りだと…。カガリのお父さんの言う通りだと思うから…」

 

 

キラは、さらに続ける

 

 

「オーブが地球軍側につけば、大西洋連邦はその力を利用して、プラントを攻めるよ…。そして、それはプラント側についても同じことだ…。ただ、敵が変わるだけ…」

 

 

「だが…!」

 

 

アスランが、キラを止めようとする

勝ち目のない戦いに、足を踏み入れようとするキラを止めようとする

 

 

「戦わないですむ世界ならいい…」

 

 

キラが、不意につぶやく

 

 

「そんな世界に、ずっといられたなら…。けど、戦争は広がるばかりで…」

 

 

キラは、そこで言葉を切り、アスランを見る

 

 

「だから、僕は戦うんだ」

 

 

キラは、立ち上がる

 

 

「それに、セラだってそうすると思う」

 

 

「…!…セラは」

 

 

「生存は確認されていない…」

 

 

アスランの問いに、カガリが答えた

アスランは。表情を俯かせる

 

 

「もう、作業に戻るよ。攻撃、いつ再開されるかわからないから」

 

 

「一つだけ聞きたい!」

 

 

立ち去ろうとするキラを呼び止め、アスランも立ち上がる

 

 

「フリーダムには、Nジャマーキャンセラーが搭載されている。それをお前は…」

 

 

「ここであれを何かに利用しようとする人がいるなら、僕が撃つ」

 

 

アスランの言葉に、即答するキラ

キラは、その言葉を最後に作業に戻っていく

アスランは、そんなキラを見送ることしかできなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベラは、キラとアスランのやり取りを、フリーダムの装甲の点検をしながら聞いていた

二人の間に流れる空気は、まだどこかぎこちないものの、分かれた以前のものに限りなく近いものだった

それを感じ、安心するベラ

 

そして考える

これから、アスランはどうするのか

 

キラは、オーブと共に戦うだろう

だが、アスランはどうするのか

 

願望を言うなら、キラと共に戦ってほしい

 

ベラも、あの四機の情報は知っていた

 

連合の攻撃は間違いなく再び再開されるだろう

だとしたら、あの四機は間違いなく攻めてくる

シエルも、最新鋭の機体を手に入れてキラの力にはなるだろうが、それでも二人だけでは四機と戦うのは辛いものがあるだろう

 

 

「…ま、アスランの意志によるよな」

 

 

「ベラ!ちょっとこっちを手伝ってくれ!」

 

 

「はぁい!今いきまーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ、準備はよさそうですね」

 

 

アズラエルが艦長に問う

 

 

「オーブからは、再三会談の要請が来ておりますが?」

 

 

「あー、もうダメダメです、そんなの」

 

 

アズラエルは、手をぶらぶらと振りながら否定する

 

 

「この戦力で落とせなかった国なんて、消えてもらった方が後々のためでしょう?」

 

 

艦長が、アズラエルをにらみながら口を開く

 

 

「こちらの準備はまもなく整う。問題なのは、そちらなのでは?」

 

 

睨まれたアズラエルは、まったく堪えていない

 

 

「おっと、これは失礼。…では、早々に始めましょうか。お仕置きも、もう十分でしょうし」

 

 

 

 

 

 

 

ガラスの向こうで、三人があがき苦しんでいる

カナードは、そんな三人を見て、ふんと鼻をならす

 

使えない三人だ

確かに、あの三機は強力だったし、落とすのは骨だろう

だが、それでも戦えていた

あの三機を落とせなくとも、一機が軍本部を攻めれば終わるはずだったのだ

 

そこで、自分が行くという選択肢はカナードにはない

 

 

「…キラ・ヤマト」

 

 

こいつは、自分の手で討つ

そして、その次は

 

 

「…セラ・ヤマト、お前も」

 

 

この二人を殺す

そして、証明するのだ

自分が、真の強者だということを

決して失敗作などではないということを

 

 

「証明してやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、オーブに侵攻しようとする連合軍

キラは、フリーダムに乗り込もうとする

 

 

「キラ!」

 

 

そんなキラを、アスランは呼び止める

 

 

「このまま戦ってもオーブに勝ち目はない!わかってるだろう!?」

 

 

アスランは、キラに呼びかける

何とか思いとどまってほしいと

 

 

「うん、たぶん、みんなもね…」

 

 

だが、キラの目は揺るがない

決して、諦めようとしない

 

 

「でも、勝ち目がないから戦うのをやめていいなりになる。そんなことは絶対にできない」

 

 

キラは、そのままコックピットに乗り込んでいく

ハッチを開く直前、キラが口を開いた

 

 

「ありがとう、アスラン。話せてよかった」

 

 

「…!キラ!」

 

 

ハッチが締まり、フリーダムが発進していく

 

 

「…アスラン。何してるの?」

 

 

「…シエル?」

 

 

俯いているアスランに、シエルが話しかける

 

 

「そうだぜ?俺たちもいこうや」

 

 

「ディアッカ!?お前…」

 

 

ディアッカまでオーブにいることに驚くアスラン

だが、そんなことを気にしてはいられない

二人はアスランに、一緒に戦おうと視線を向けてくる

 

 

「…俺は、あいつを…。あいつらを死なせたくない」

 

 

アスランの心は、決まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回よりもどこか勢いよく攻めてくる連合

必死に耐え忍んでいるという感じの戦況を、ウズミは苦々しい表情で見つめていた

 

 

「ウズミ様」

 

 

そんな時、シモンズがいつの間に来ていたのか

ウズミに話しかける

 

 

「…なんだ?」

 

 

「リベルタス。作業が完了しました」

 

 

「!」

 

 

ウズミの目が見開かれる

 

もう少し、もう少しと作業時間が伸びてきたリベルタスが、完成した

 

 

「…そうか。彼を、導いてやれ」

 

 

「…はい」

 

 

 

 

 

セラは、モニターに映される戦況を見ていた

フリーダム、そして、途中から加わったジャスティスとヴァルキリーはあの四機と互角に戦っている

だが、他がいけない

連合の量に押されている

このままでは押し切られるのも時間の問題だ

 

 

「…くそっ」

 

 

何もできない

機体がない今の自分は、何もできない

 

もどかしい

もどかしすぎる

 

 

「…!」

 

 

ぽんっと肩を叩かれる

セラは勢いよく振りむくと、そこには

 

 

「シモンズさん?」

 

 

「ちょっと、来てくれるかしら?」

 

 

 

どこに連れてかれるのだろう?

不思議に思いながら、シモンズについていくセラ

 

そして、一つの扉の前についたとき、シモンズが振り返った

 

 

「この中には、あなたの望むものがあるわ」

 

 

「…!」

 

 

自分が望むもの

それは、一つしかない

 

 

「ウズミ様からの伝言。『君がこれからどうするのか。それは君の自由だ。私にそれを止める資格はない。だが、もし君が戦うことを選択するのならば、この機体が、君の力になることを願う』」

 

 

「…ウズミ様」

 

 

自分のことを、そこまでわかっているとは思わなかった

最初から、こうしようと考えていたのだろうか

 

 

「え、どうするの?」

 

 

笑顔を浮かべながら聞いてくるシモンズ

セラも、笑顔を浮かべてシモンズに言う

 

 

「そんなの、言わなくてもわかるでしょう?」

 

 

セラは、扉を開けて、中に入る

 

その中には、巨大な影

 

 

「…モビルスーツ」

 

 

自分が望んだもの

守るための力

 

セラは、自分の髪を縛る

 

コックピットに乗り込み、OSを立ち上げながらスペックを確認していく

 

 

「…これはすごいな」

 

 

ヴァルキリーに、核動力が使われていたため、この機体も核で動くことの予想はついていたのだが…

この機体のパワーがすごい

なんでこんな機体を作り出したんだか…

 

 

「よし、いきますか」

 

 

OSの立ち上げも終わり、発進準備が整う

天井が開かれる

 

 

「セラ君!発進許可は取ったわ。いつでもいいわよ!」

 

 

「了解!」

 

 

シモンズの言葉に返事を返す

 

 

「セラ・ヤマト!リベルタス、発進する!」

 

 

ペダルを踏み、機体が急激に加速しながら浮かび上がる

 

外に出て、戦況を見渡す

オーブの軍勢が明らかに押されている

 

セラの視界に、連合のMSにやられそうになっているアストレイが入った

そこに機体を向かわせた

 

 

オーブの反撃が、始まった




次回は、セラの無双になると思われます

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