機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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今までと比べたら長いです


PHASE33 葛藤

アスランは、ストライクとの怪我によりオペレーションスピットブレイクのメンバーからはずれ、一度プラントに戻ってきていた

 

 

「…?」

 

 

しかし、何やら様子がおかしい

国防本部のロビーに入ると、人が走り回り、話し声が大きく聞こえる

 

 

「…!ユウキ隊長!」

 

 

その時、人ごみの中から見つけ出した人物の名前を呼ぶ

レイ・ユウキ

アスランがアカデミー時代、お世話になった人

 

性格も穏やかで、よく悩みを聞いてもらった

 

 

「アスラン・ザラ!どうしてここに?」

 

 

アスランの姿を見て驚くユウキ

アスランは、今のこの様子の理由を聞くことにする

 

 

「それよりも…、これは…?」

 

 

ユウキは、アスランに聞かれて、合点がいったような表情になる

だが、その表情はどこか暗い

 

 

「…スピットブレイクが失敗したらしい。全滅という報告もある」

 

 

「えっ!?」

 

 

失敗?

あの作戦が?

 

信じられない思いがアスランの中で駆け巡る

 

 

「君には、もう一つ悪いニュースがある」

 

 

そんなアスランに、ユウキがアスランの耳元でつぶやく

 

 

「極秘で開発されていたモビルスーツが一機、何者かに奪取されたらしい…」

 

 

アスランは、はっと目を見開く

 

心当たりがあった

プラントにいくシャトルとすれ違ったあの影

それをアスランは見ていた

 

それだ

それに違いない

けど、一体誰が…

 

その答えを、ユウキはつぶやく

 

 

「それの手引きをしたのが、ラクス・クラインだということで、今国防委員会は大騒ぎになっている…」

 

 

「っ!?」

 

 

アスランは、めまいのような感覚に襲われる

 

 

「…ラクス?」

 

 

ラクスが?

そんな馬鹿な

あの穏やかで、優しくて、誰よりも笑顔が似合っていたあの少女が、なぜ?

 

アスランは走り出す

そんなはずがない

確かめる

本当に、彼女がそんなことをしたのかを

 

アスランの足は、オペレーションルームに向かっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やはり、サイクロプスであったか」

 

 

ウズミがつぶやく

その正面には、マリューとムウ、そしてキラが座っていた

 

命からがら脱出することに成功したアークエンジェルは、オーブに入っていた

 

 

「敵の情報をつかんでいたとはいえ、そのような手段に踏み切るとは…。常軌が逸しているとしか思えんな」

 

 

はっきりウズミがそう吐き捨てる

 

ムウは頷き、マリューは顔を俯かせる

 

 

「そして、これですか」

 

 

そう口を開いたキサカが、部屋にあるテレビの電源をつける

 

テレビで入っていた放送は、アラスカでの出来事のことだった

だが、多くの事実が隠ぺいされているのが手に取るようにわかる

 

サイクロプスによる犠牲すべてを、ザフトの仕業と言い切っているのだ

呆れてしまう

 

 

「わかっちゃいたけどさ…、堪らんね」

 

 

ムウが、弱弱しい笑みを浮かべながら、これまた弱弱しい声でつぶやく

 

 

「大西洋連邦は、中立の立場を取る国々へも一層圧力をかけてきておる。連合として参戦せぬ場合は敵国として見なすとな…」

 

 

マリューとムウの目が見開かれる

 

ここまでやるか

二人の気持ちは一音一句同じだった

 

 

「無論、オーブも例外じゃない。奴らはオーブの力を欲しがっている」

 

 

この場にいたもう一人の人物、カガリが言う

 

オーブの力は強大だ

さらに、宇宙へ上がるためのマスドライバーもある

連合は、のどから手が出るほど欲しがっているだろう

 

 

「…知っているであろうが、オーブはコーディネーターであろうがナチュラルであろうが、公平に接している」

 

 

ウズミが不意に口を開く

 

 

「一体、誰が何のために戦っているのだろうか…」

 

 

ウズミがそうつぶやく

 

 

「このままでは、コーディネーターとナチュラル。互いに滅ぼしあうしかなくなってしまう」

 

 

ウズミは、マリューの目をまっすぐ見る

 

 

「それが世界だというなら、従うか?」

 

 

「…」

 

 

マリューは、答えることができない

黙り込んでしまう

 

 

「…君たちは若く、力がある。見極められよ。真に望む未来をな。…まだ時間はあろう」

 

 

「ウズミ様は、どうお考えなのですか?」

 

 

キラが、ウズミに問う

ウズミは、キラの方を見る

そして、その眼を見て感じる

 

成長した…

 

 

「ただ、剣を飾っておく状況ではなくなった…ですよね?」

 

 

ウズミが口を開こうとしたその時、別の声が聞こえる

 

全員が、声が聞こえた方を見る

そこには、肩まで茶髪の髪を降ろした少女

その眼は緑色で、声は、ハスキー気味だった

 

ウズミを除いた全員がぽかんとした表情をする

 

 

「…どうかしましたか?」

 

 

少女は、問う

ウズミはその様子を見て、ため息をつき、言う

 

 

「自己紹介はしておいた方がいい」

 

 

「あ、そうですね」

 

 

少女は、今気づいたと言わんばかりの表情を引き締め、笑顔で口を開く

 

 

「オーブ軍所属、整備担当のベラ・ヒビキです。これからは、あなたたちの艦や機体も整備させてもらうので、以後お見知りおきを」

 

 

少女は、言い終わるとすぐに、ぺこりと頭を下げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスランは、オペレーションルームの前までついていた

だが、中に入る踏ん切りがつかない

なぜなら

 

 

「何をしている!?ジブラルタルからも応援を出させろ!」

 

 

「無人偵察機じゃだめだ!今欲しいのは詳細な情報なんだよ!」

 

 

「そんな話は聞いていないぞ!どこからの情報だそれは!」

 

 

空気が殺気立っている

スピットブレイク失敗に加え、ラクス・クラインの反逆

無理もないが

 

 

「認識番号285002。アスラン・ザラ、議長の命により出頭いたしました」

 

 

国防委員長室まで早足気味に行き、手前にいる秘書に告げる

秘書は、どうぞと声をかけ、扉を開ける

 

扉の向こうでは、さらに濃くなった空気がアスランを襲う

 

その中心には、アスランの父

パトリック・ザラがの姿

 

大声で人びとに指示を出す

まさにリーダーにふさわしい姿だが、空気が重たくなってしまうのが玉に瑕だ

 

ひと段落ついたのか、部屋から人が去っていき、アスランとパトリックの二人になる

 

 

「父上…」

 

 

「なんだそれは?」

 

 

疲れた様子で背もたれに寄りかかるパトリックを気遣うように呼ぶアスラン

だが、パトリックは、自分の呼び方が気に入らなかったようだ

 

アスランは慌てて姿勢を正し、敬礼する

 

 

「失礼いたしました!ザラ議長閣下!」

 

 

パトリックは、そんなアスランを冷たい目で一瞥した後、口を開く

 

 

「…状況は認識しているな?」

 

 

「は…いえ、しかし…。信じられません…。あのラクスが…。そんなことを…」

 

 

パトリックは、ため息をつくとモニターを操作する

 

 

「見ろ。これは工廠の監視カメラの映像だ」

 

 

モニターに、ラクスともう一人

赤いザフトの制服を纏う人物

 

 

「この直後、フリーダムの奪取は行われた」

 

 

画像が拡大され、ラクスの顔が大きく映し出される

もう手遅れだと言われているようで、アスランは嫌だった

 

 

「お前は、奪取されたフリーダムの奪還と、パイロットおよび接触したと思われる人物、施設のすべての排除に当たれ。お前は、X09Aジャスティスを受領し、奪還が不可能な場合は、破壊しろ」

 

 

「ま…待ってください。接触したと思われる人物、施設を全てですか?」

 

 

アスランは、余りにも衝撃的な命令に疑問を持つ

全て排除?

いくら最新鋭の機体と言っても、MS一つにそこまで?

 

「フリーダムとジャスティスには、Nジャマーキャンセラーが搭載されている」

 

 

「…!」

 

 

Nジャマーキャンセラー?

それは…、つまり

 

 

「そんな!なぜ!?プラントは、全ての核を放棄すると!そのためのNジャマーだったのではないのですか!?」

 

 

アスランは、パトリックに食って掛かる

だが、パトリックは冷たく返す

 

 

「勝つために必要となったのだ!あのエネルギーが!」

 

 

パトリックは、もう用はないとアスランを下がらせる

 

 

「お前の任務は重大だぞ。心してかかれ」

 

 

という言葉をアスランに残して

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キラッ!」

 

 

「うわっ!」

 

 

キラが、艦内を歩いていると、急に現れた影が襲い掛かってきた

といっても、抱き付かれただけなのだが

 

 

「カガリ?」

 

 

抱き付いてきたのはカガリだった

 

 

「お前…!死んだと思ってたんだぞ!?」

 

 

カガリはキラを大声でなじる

だが、その声は震え、喜びが多く含まれている

 

キラはふっと微笑み、カガリを抱きしめ返す

 

生きてる

そう、生きてる

 

カガリとまた会えた

少し甘い空気が流れかかったその時

 

 

「…あ」

 

 

「「え?」」

 

 

誰かの声

キラとカガリが、声が聞こえた方向を見ると、そこにはベラと名乗っていた少女が

 

 

「あ…その…」

 

 

「「…」」

 

 

ベラは、目に見えておろおろしている

キラとカガリは固まっている

 

そのままの体制で

 

 

「あの…、大丈夫です。誰にも言いませんから…。では」

 

 

ベラが立ち去る

 

いや、ちょっと待て

このままいかせたらまずいのではないか?

 

 

「「まって(まて)ぇええええええええええ!!!」」

 

 

キラとカガリはすぐさま離れ、全力でベラを呼び止めた

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、そうだったんですか。そうなら最初からそう言えばよかったのに」

 

 

「お前が早とちりしてとっとと行くから言えなかったんだよ…」

 

 

「あら?ですけど、抱き合ったまま止まってましたよね?」

 

 

「余りの出来事に固まってただけだ!」

 

 

カガリとベラが、漫才のようなやり取りをしている

キラは苦笑いをしながらそのやり取りを聞いている

 

 

「それにしても…」

 

 

「「?」」

 

 

「身分差のある恋も面白いと思ってたのに…。残念です」

 

 

「お前なぁ!」

 

 

ベラが、本当に残念そうな表情で言う

カガリが本気で突っ込む

それを面白そうに見るベラ

 

キラはそれを見て思う

 

まるでセラみたいな人だなぁ

 

 

 

 

「それで、ヒビキさんは、何しに来たんですか?」

 

 

「ベラで結構ですよ、キラさん。私は艦と機体の整備を担当しているんですけど…。艦の中を探検してみたくなっちゃって♪」

 

 

「…え」

 

 

それでいいのかオーブの整備担当

 

 

「ていうか、私はお前のことなんか知らないぞ」

 

 

カガリが言う

カガリが知らないというのは、おかしい

なんて言ったって、カガリは代表の娘なのだ

 

 

「私、つい最近に配属されたんです。それに、あなたは知らなくとも、ウズミ様は知っていらっしゃったでしょう?」

 

 

確かに

殺気の会談に入ってきた時、ウズミはベラのことを知っていた様子だった

彼女はウソはついていないのだろうか

 

 

「さてと。私は、艦の探検を続けますね?」

 

 

ベラはそう言って、キラとカガリの進行方向とは違う方向にむく

 

 

「愛の語らいを邪魔したらまずいですし?」

 

 

「「違う!」」

 

 

同時に否定するキラとカガリを、かわいらしく微笑みながら一瞥してから去っていくベラ

 

 

「…なんだったんだろ」

 

 

「…知るか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ…、やってらんね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見るに堪えない姿になってしまった邸宅

ここは、とてもきれいな花が咲き誇っていた

その中心には、いつも彼女がいて…

 

アスランは、邸宅のまわりを見渡す

どこも、元の姿からは想像できないほどに変わり果ててしまった

 

 

「…あ」

 

 

そんな中、一瞬見えたピンク色の影

 

…ラクス?

 

いや、そんなはずはない

彼女は、今反逆者として追われているのだ

こんなところにいるはずはない

 

だが、アスランと、そしてラクスと

深いかかわりがあるものが現れる

 

 

『ハロ!ハロ!』

 

 

「っ、え?」

 

 

ラクスはいなかったが、ハロはいた

 

…て

 

 

「ハロ!?」

 

 

『ハロ!ハロ!マイド!』

 

 

ハロは、そのままどこかに跳ねていく

アスランは、急速に進行していく事態についていけず、反応できなかった

気づくと、ハロを見失ってしまった

 

 

「…あ」

 

 

アスランは、ハロが先程まで跳ねていた場所を見て、気づいた

そこは、花壇

そして、その場所に咲いていたのは、白いバラ…

 

 

 

 

 

アスランはあの後すぐ、駆け出した

そして今、ある劇場の前に来ていた

その劇場の名前は、ホワイト・シンフォニー

あの白いバラの名前だった

 

 

「ラクス…」

 

 

ここに、ラクスがいるのか?

ラクスに会ったら、自分はどうするのだろうか

 

 

「…」

 

 

この手に持っている拳銃で撃つ?

それとも、見逃す?

 

葛藤しながら、アスランは劇場の中に入っていく

 

声が聞こえる

歌声が聞こえる

とてもきれいな声

久しぶりに聞いた、彼女の声

 

奥に奥に入っていくごとに、歌声が大きくなっていく

そしてたどり着く

ホールに入るための扉

 

アスランは、開けた

 

前方に見える舞台は、スポットライトに照らされている

そして、当然舞台の上のいるのは

 

 

「ラクス」

 

 

そこに、ハロがラクスに近づいていく

 

 

「あら、ピンクちゃん。…やはり、あなたが連れてきてくださったわね。ありがとうございます」

 

 

ラクスがアスランの存在に気づく

アスランは、部隊までかける

そして、ラクスの前で銃を構えた

 

 

「…どういうことですか?これは」

 

 

「お聞きになったから、ここに来たのではないのですか?」

 

 

ラクスは、何も否定しようとしない

 

 

「では!本当なのですか!?スパイの手引きをしたというのは!」

 

 

「スパイの手引きなどしてはおりません」

 

 

…え?

 

 

「キラにお渡ししただけですわ。新しい剣を」

 

 

「…キラ?」

 

 

 

 

 

 

「そっか、アスランに会ったんだ」

 

 

キラが、カガリから話を聞いて理解する

 

 

「あぁ…。あいつ、後悔してたぞ、お前を殺してしまったって」

 

 

「…そっか」

 

 

キラは、あの戦いを思い出す

自分も、アスランも

どうにもならなかった

止まらなかった

互いへの憎しみが

 

 

「…よかった」

 

 

「え?」

 

 

キラのつぶやきに、カガリが反応する

カガリはキラを見る

 

 

「アスランが生きてて、よかった」

 

 

キラは、素直に喜んでいる

カガリは、そんなキラを柔らかい笑みで見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何を言ってるんですか?だって、キラは…」

 

 

「あなたが殺しましたか?」

 

 

びくっと体を震わせるアスラン

 

そうだ、キラは自分が殺した

唯一無二の親友を、自分は殺した

 

 

「大丈夫です。キラは生きています」

 

 

ラクスは、そんなアスランに微笑みかける

だが、アスランの頭は混乱していた

 

 

「うそだ!」

 

 

うそだ!うそに決まってる!

だって…、キラは…!

 

 

「一体、どういうたくらみ何ですか!?ラクス・クライン!」

 

 

アスランは、おびえるように震える

目から涙がこぼれだす

 

 

「そんな…馬鹿な話を…!あいつが…、生きているはずがない!」

 

 

キラが生きている

もしそうならば、また苦しまなければならない

 

友達と戦う苦しみを、再び味わわなければならない

 

アスランは、それがどうしようもなく怖い

 

 

「マルキオ様が、わたくしのもとにお連れになりました。キラも、あなたと戦ったと言っていましたわ」

 

 

未だに混乱している表情のアスラン

ラクスは、アスランに再び続けて口を開く

 

 

「言葉は信じられませんか?では、ご自分でご覧になったものは?」

 

 

アスランは、ラクスの言葉の意味を飲み込めない

 

 

「久しぶりに戻ってきたプラントを、あなたはどう思われましたか?」

 

 

アスランはたじろいでしまう

今のプラント

言葉にはしづらいが、何かが違っていた

 

そして、思い出す

父のあの眼と言葉を

 

 

「アスランが信じて戦うものはなんですか」

 

 

ラクスの言葉が、的確にアスランの心を貫いていく

 

 

「いただいた勲章ですか?」

 

 

…違う

 

 

「お父様の命令ですか?」

 

 

違うっ!

 

 

「ラクス…!」

 

 

これ以上、彼女に言葉を重ねてほしくなかった

これ以上は、今まで積み重ねてきた自分のすべてが壊れてしまいそうだったから

だが、構わずラクスは続ける

 

 

「そうであるならば、キラは再びあなたの敵となるでしょう。そして、わたくしも…」

 

 

「…っ!」

 

 

アスランは、俯けていた顔をあげる

 

目の前の少女は、圧迫感すら感じさせる表情をアスランに向けている

いつものぽやぽやとした彼女の面影すら感じられない

 

ラクスは、アスランに歩み寄っていく

アスランは、一歩後ずさる

 

 

「敵だというのなら、わたくしも撃ちますか?」

 

 

ラクスはそこで言葉をいったん切り、さらに力を込めて言う

 

 

「ザフトのアスラン・ザラ!」

 

 

アスランは、ラクスのまっすぐな目から、目を逸らしてしまう

 

 

「…俺は」

 

 

迷う

迷う

 

 

「ラクス様!」

 

 

どこかから、声が聞こえる

と、同時に銃声

 

アスランは、反射的にラクスをかばう

弾丸は外れたようだが、一体なにが起こったのか不思議に思う

 

 

「ご苦労でした、アスラン・ザラ。さすが婚約者ですね。おかげで探す手間が省けました」

 

 

数人の黒服の男が、二人に近づいてくる

 

アスランは、察した

自分は、つけられていたのだと

そして、それを命令したのは、自分の父だと…

 

 

「さ、お退きください。彼女は国家反逆罪の逃亡犯です。射殺も許可されています」

 

 

「馬鹿な…!?」

 

 

父は、そこまでするつもりなのか!?

都合の悪いものは、全て消し去ってしまう

それが、父のやりかたなのだろうか

 

ラクスを背後におきながら、後ずさる

そこに、再び銃声

だが、それは、アスランとラクスを狙ったものではなかった

 

 

「ぐわっ!」

 

 

「!?」

 

 

黒服の男の一人が、血を出しながら倒れる

驚愕するアスランだったが、男たちが驚いているうちにラクスを連れて物陰に隠れる

 

次から次へと男たちが倒れていく

そして、最後の男が撃たれ、倒れた

 

 

「…ありがとう、アスラン」

 

 

ラクスは、かばってくれたアスランにお礼を言い、離れる

そして、ラクスの傍に、赤毛の男が近づく

この男が、彼らを撃ったのだろうか

 

 

「もうよろしいでしょうか。我らも行かねば…」

 

 

「そうですね。話したいことは全て話しましたし、行きましょうか。皆さんも、ありがとうございました」

 

 

さらに、物陰から出てくる男たち

一体何者なのだろうか

ラクスを守ったことは事実だろうが…

 

 

「キラは、地球にいます。お話しされてはどうでしょうか?あなたの友達と…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスランは、ジャスティスに乗り込んでいた

OSは全て設定し終えていた

ジャスティスのスペックも全て頭に叩き込んでいる

 

キラは、地球にいる

ならば、フリーダムも地球

 

 

「…」

 

 

自分に与えられた任務は、フリーダムの奪還

そして、それにかかわった人物、施設の排除

ならば、自分は再びキラと戦わなければならないということになる

 

 

「…俺は」

 

 

決める

決めた

自分は…

 

自分がすべきことは

 

 

「アスラン・ザラ!ジャスティス、出る!」

 

 

真紅に染まった機体が、宇宙に飛び出していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、オーブは未だに中立を貫いているのですか…」

 

 

連合の会議室に広がる話を聞いていた金髪の男が、ぼそりとつぶやいた

そのつぶやきは、ここにいる全ての人物に聞こえていた

 

全員が黙り込む

金髪の男は、この場にいる全員を牛耳っていると言っていい存在なのだ

 

 

「いけませんねぇ…。みんな一生懸命戦っているのに…、人類の敵と」

 

 

「やめもらえないかアズラエル。私たちは、我らはブルーコスモスではないのだ」

 

 

アズラエルと呼ばれた男は、謝りながらも、全く反省していないようなそぶりを見せる

 

ムルタ・アズラエル

ブルーコスモスの盟主で、連合を裏で操っている存在といっていいだろう

 

 

「しかし、オーブも地球の一国家です。連合に協力すべきなのですよ。違いますか?」

 

 

男たちは、顔を俯かせる

アズラエルは、やれやれといった感じで提案する

 

 

「なんでしたら、僕の方でオーブとの交渉を引き受けましょう」

 

 

「…いいのかね?」

 

 

「ええ。あれのテストができるかもしれませんし。それに…」

 

 

アズラエルは、その顔に笑みを浮かべながら続ける

 

 

「確かめたいこともありますし…ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ベラの正体は…
もうわかっていますよね?(笑)

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