機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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いいタイトルが思いつかない上での苦し紛れです…


PHASE29 叫び

ザラ隊の母艦、クストーの一室で、イザークとディアッカがいた

その表情は少しいらだっている

 

 

「あいつは一体どういうつもりなんだ!」

 

 

「だよね。ホントに補給も受けちゃってさ」

 

 

イザークとディアッカがいらだっている理由

それは、アスランが決めたこれからの方針だった

 

足つきがいる証拠をつかむための、オーブ侵入

だが結局証拠をつかむことはできなかった

なのに

 

 

「足つきはオーブにいる…か。何を根拠に言ってるのかな、あの隊長さんは?」

 

 

確かに、足つきがオーブにいるなら間違いなく自分たちが待ち伏せしている海峡を通るだろう

だが、足つきは本当にオーブにいるのか?

 

 

「これでここに二日だ!もし違ってたら、もう奴らはここから遥か彼方だぞ!」

 

 

イザークは怒鳴りながらもアスランのことが気になっていた

気に入らない、が、アスランの優秀さは認めている

気に入らないが…

 

だからこそ、この判断がわからない

 

 

 

「どうする?隊長のとこ行ってなんか文句の一つでも言ってくる?」

 

 

ディアッカがにやにやしながらイザークを見て言ってくる

 

 

「…いや、いい」

 

 

イザークはディアッカにそう告げて、ソファに寝転がる

 

まぁ、アスランが何の根拠もなくこんなことはさせないだろう

もし失敗したとしても、それはそれで面白い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

 

マリューが扉をノックして、部屋に入る

その両隣には、ナタルとムウがいた

 

 

「待ってたよ。座りたまえ」

 

 

この部屋にいた人物

ウズミがマリューたちに、ソファに座るように勧める

 

マリューたちは、ウズミの言葉に甘えてソファに座る

 

 

「…それで、この度私たちをお呼びしたのは?」

 

 

マリューたちは、今回、ウズミに呼ばれてここに来た

だが、その理由は知らされていない

 

 

「ふむ…」

 

 

ウズミは、両手を組んで、何かを考えるようなそぶりを見せる

そして、意を決したようにマリューたちをまっすぐ見る

 

 

「これは、君たちにとって、選択権がある。受けるも断るも自由だ。願わくば、受けてもらいたいのだが…」

 

 

ウズミがさらに続けようとする

マリューたちは、一体何をさせられるのか、とつい身構えてしまう

 

 

「地球軍所属、セラ・ヤマト少尉を除隊させ、その身柄をオーブに預けてほしい」

 

 

「…は?」

 

 

マリューの思考回路が、一瞬止まった

マリューだけではない

ムウとナタルもだ

 

 

「あ…、あの…。それは、一体…?」

 

 

「言葉の意味だよ、ラミアス艦長。セラ・ヤマト少尉をここに置いていってほしい」

 

 

復活した思考回路を働かせる

セラを置いていく?

 

そんなこと…

 

 

「そんなこと、できるはずありません!彼はもう、我々の貴重な戦力なのです!」

 

 

マリューよりも先に、ナタルが口をはさむ

 

実際、セラを置いていくなどできない

セラは、エースパイロットと言える存在なのだ

それを置いていくことなど、できやしない

 

 

「…」

 

 

ウズミが、どこか思い悩むような表情になる

 

 

「詳しいことは言えんが、彼は本来地球軍にも、当然ザフトにも。属すべき存在ではないのだ」

 

 

「どういうことでありますか?」

 

 

ムウがウズミに聞き返すが、ウズミはその問いに答えない

 

 

「詳しいことは言えぬのだ。もしこのまま連れていくと決めているのなら、それでも構わん」

 

 

ウズミは思い出す

この会談の直前に来た、ハルマの言葉を

 

 

『ウズミ様の言う通り、あの子がアラスカに行くことは避けた方がいいのかもしれません。一応止めてみてください。ただ、もしそれがかなわないのなら…』

 

 

『あの子の好きにさせてください。私たちは、あの子を信じてますから…』

 

 

ウズミはマリューの返答を待つ

だが、どこかでマリューの返答はわかっていたのも事実だ

 

 

「ウズミ様。この提案は、受けることはできません」

 

 

拒否

わかっていた

だが…

だが

 

 

「らm「しかし、ウズミ様が、何を心配なさっているのかはわかりませんが」」

 

 

ウズミの言葉を遮るようにマリューは続ける

 

 

「セラ・ヤマト少尉は、我々が、しっかりと守って見せます」

 

 

マリューの目が、これは本気だと告げている

ムウも、ナタルも

あいつを死なせるわけがないと告げている

 

ウズミは、ふっと笑みを零す

 

 

「そうか…」

 

 

ウズミは、マリューたちに感謝を告げる

 

 

「頼むよ、ラミアス艦長。感謝する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラは格納庫にいた

そこで、トールの主張を聞いていた

これからは、自分も戦闘に出ると

 

 

「大丈夫ですって!シミュレーションだってばっちりなんですから!」

 

 

今までトールは、時間が許す限りひたすらシミュレーションをやってきたのは知っている

だが

 

 

「シミュレーションと実戦は違うんだよ?トール」

 

 

キラがトールに告げる

 

 

「まぁ、こいつが二機出られるってのは助かるけどな…」

 

 

「ん、どうしたんだ?」

 

 

そこで、ムウが格納庫に入ってきた

マリューやナタルとどこかに行ってたようだが

 

 

「少佐。この坊主が、これからは自分もこいつに乗って戦闘に出るっていうんですよ…」

 

 

言いながら、マードックはスカイグラスパーの二号機を指さす

 

ムウは、へぇっとつぶやき、笑みを浮かべながらトールに歩み寄る

 

 

「…本気?」

 

 

ムウはトールに問いかける

笑みは浮かべているが、その眼は真剣そのものだ

 

 

「はい」

 

 

「死ぬかもしれんぞ?」

 

 

「それでもです!セラやキラ、それに少佐だって頑張ってるんだ!俺だって、力になりたい!」

 

 

ムウはトールの目を見る

本気だ

 

ムウは、ふぅっと息を吐く

 

 

「ま、いいだろ。ただ、スピリットやストライクの支援と、上空監視だけだぞ?」

 

 

「…!はいっ!」

 

 

ムウの言葉に表情を輝かせ、返事をするトール

それとは裏腹に、心配そうな表情のセラとキラ

トールは、そんな二人の顔を見て二人の肩を叩きながら口を開く

 

 

「大丈夫だって!少佐の言った通り、支援だけなんだからさ!」

 

 

「けど、トール…」

 

 

「キラだけじゃない。俺たちより幼いセラだって頑張ってるんだ」

 

 

トールは、ムウと視線を交わした時のような真剣な目でセラとキラを見る

だが、ふっと、何かいたずらを考えた時のような表情に変わる

 

 

「そ・れ・に!息子を守るのは、親の役目だろ!」

 

 

「久しぶりだなそのネタ!久しぶりすぎて忘れてたよ!てか、誰がお前の息子だぁ!」

 

 

結局最後は締まらないセラたち

だが、これはいつものことで、セラたちを安心させていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ついに、出航する時がやってくる

セラとキラは、マリューに上部甲板に出ろと指示されたため、その通りにしていた

 

 

「セラ!キラ!」

 

 

「ん?」

 

 

「カガリ?」

 

 

甲板に出るとすぐに、カガリがこちらを呼びながら駆け寄ってくるのが見えた

 

 

「カガリ、どうして…?」

 

 

キラが、なぜカガリがここにいるのか聞こうとする

だが、カガリはそれに答える前に、後方を指さす

 

 

「あ…」

 

 

カガリが指をさした方に、いた

自分たちの両親

ガラスに縋り付きながら、セラとキラの名前を呼んでいる

 

 

「何で!何でお前、会ってあげなかったんだよ…!セラに伝言まで頼んどいて!」

 

 

「…今は、会いたくないんだ」

 

 

自分の手は、何人もの手を奪ってきた

それに、両親に会ったら、言ってしまいそうだった

『どうして、自分をコーディネーターになんかしたの?』と

 

それは、絶対に嫌だった

 

 

「…わっ!」

 

 

急にカガリが抱き付いてきたことにキラは驚く

 

 

「お前!絶対に死ぬなよ!」

 

 

「…うん。大丈夫。大丈夫だから」

 

 

…俺は、やっぱりいらない子なのね

 

セラは心の中でつぶやきながら立ち去ろうとする

その途中で、両親を見ると

ウズミと共に、何やら慌てふためいていた

 

それを見て、思い出した

カガリは一国のお姫様だった

慌てるのも不思議じゃないな…

 

そこで、両親がセラがこちらを見ていることに気がつく

セラは、笑顔で両親に手を振る

両親も涙を浮かべながら手を振り返してくれる

セラは、その様子に涙をこぼしそうになりながらも耐え、艦の中に入っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラが格納庫の中に入って少しすると、艦が揺れた

発進し始めたのだろう

キラも格納庫の中に入ってくる

 

 

「発進したようですね」

 

 

「そうだな。何にもなきゃいいんだが」

 

 

セラとマードックが会話する

そこに、トールが近づいてくる

 

 

「それが一番いいんでしょうけどね…」

 

 

「ザフトは来ますよ。領海を出たらすぐ」

 

 

トールが言う言葉を否定するように、キラはストライクのコックピットに乗り込みながら言う

 

 

「…ま、そうだろうな」

 

 

セラも、そう言ってスピリットのコックピットに乗り込む

 

 

「おいおい、なんだy『第一戦闘配備!第一戦闘配備!』…て!まじかよ!」

 

 

それは、近いうちに起こる悪夢の前哨戦の始まりの合図だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、領海を出てすぐのことだった

 

 

「レーダーに反応!数五!」

 

 

艦橋の中に緊張がはしる

その反応の正体は、報告を待たずして、皆がわかっていた

 

 

「機種特定!イージス、ブリッツ、デュエル、バスター、あの一機です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…戦闘?」

 

 

シエルは、艦内に入った放送でこれから起こることを理解した

これからセラたちは、戦うのだ

自分の仲間だった人たちと

 

 

「…」

 

 

心が痛む

痛むが、それよりも

 

 

「セラ…」

 

 

死んでほしくない

そう思うことはひどいことなのだろうか

仲間のことよりも、敵であるはずの存在を心配してしまうのは

 

 

「…!」

 

 

両手を握りしめ、胸に抱きしめる

シエルにできることは、祈ることだけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスランたちは、足つきに接近していた

今度こそ討つ

これは、誰もが思っていることだった

 

 

「…!煙幕!?」

 

 

ロイが、驚きの声をあげる

足つきから煙幕がまかれる

これでは、足つきの姿を捉えずらくなる

 

と、そこに、戦闘機二機

そして、スピリットが煙を裂いて出てきた

 

 

 

 

 

 

「無理はするなよトール!」

 

 

「あぁ、わかってる!」

 

 

セラはトールに一言かけてからスカイグラスパー二機と分かれる

セラはブリッツとリーパーにライフルを撃ちながら接近する

 

 

「くっ!ニコル!援護頼む!」

 

 

「はいっ!」

 

 

ロイも、サーベルを抜きながら、ビームを避けて接近してくる

ニコルは、機体を後退させる

 

セラは思考する

リーパーが前に出てきた

つまり、ブリッツは後方で支援射撃か

機体性能から考えて当然の策だな

だが

 

 

「さすがに、シエルよりは上手くないだろ!」

 

 

セラは、とりあえずブリッツは、攻撃をかわすだけで相手にしないことにする

ライフルをしまい、サーベルを抜いてリーパーを迎え撃つ

 

鍔迫り合い

ブリッツからの射撃の気配はない

なら…!

 

セラはサーベルを持っていない方の手でリーパーを弾き飛ばす

リーパーはすぐに体制を整える

 

 

「そんなもんで…。何回お前に苦汁をのまされたと思ってるんだぁああああ!」

 

 

ロイは再びサーベルで斬りかかる

セラは、リーパーから感じる気迫に少し押されながらも斬撃をかわし、サーベルで反撃しようとする

 

 

「…!」

 

 

セラは、そこで機体を後退させる

ブリッツがライフルでこちらを撃ってきたのだ

 

ビームがセラの目の前を横切る

 

 

「やはり、シエルほどの腕はないみたいだな…」

 

 

セラは、リーパーに向けてライフルを撃つ

ロイもスピリットに向けてライフルを撃っていた

セラとロイは同時に互いのビームをかわす

 

そこで、セラは、かわすために移動させた方向にブリッツがいることに気づく

セラは、狙いをブリッツに変更する

バーニアを最大の力で吹かせ、ブリッツに接近する

 

ニコルは、急にこちらに接近してきたスピリットに反応できなかった

スピリットはリーパーを狙っている

自分はロイの援護をすればいいと思っていたからだ

 

 

「これで!」

 

 

「ぐっ!」

 

 

セラはブリッツのライフルを持っている腕をサーベルで斬りおとす

 

 

「一機目ぇ!」

 

 

セラは続けざまにブリッツをグゥルからけり落とした

そして、油断せずにリーパーの方を見る

 

 

「このぉぉおおおおおお!!!」

 

 

ロイは、咆哮をあげながらスピリットに接近する

 

 

「シエルだけでなくニコルまで!」

 

 

「くっ…!」

 

 

勢いよくサーベルを叩きつけるロイ

セラは斬撃を何とか防ぎながら反撃の機会をうかがう

 

だがロイは、型に当てはまらない動きでセラを翻弄しはじめる

 

 

「な…!」

 

 

「はぁあああああああああ!!!」

 

 

ロイは、弾き飛ばされた機体を無理やりバーニアを吹かせて止まらせる

そしてそのままスピリットに向けて方向転換

スピリットにサーベルで斬りかかる

 

 

「…!」

 

 

「これでぇえええええええ!!!」

 

 

だがセラも負けていない

その斬撃を正確に読み取りシールドを割り込ませる

サーベルをシールドで防ぐと、セラはサーベルを振り下ろす

ロイもシールドで防ぎ、二機は押し合いを始める

 

 

「くっ!」

 

 

セラは、リーパーから離れる

しかしロイは、スピリットに追いすがる

 

 

「な…!」

 

 

「そうそう何度も…、やれると思うなぁ!」

 

 

ロイの中で、何かがはじけた

何度も戦いながら、討てなかったスピリットへの怒り

シエルを連れてかれた、スピリットへの怒り

それが、ロイを覚醒させたのだ

 

ロイはライフルを撃ちながらスピリットに接近する

セラは、最小限の動きでかわしながら、接近してくるリーパーを迎え撃とうとサーベルを構える

そして、間合いに入ってきたことを確認し、サーベルを振り下ろした

 

だが、ロイはその斬撃をかわしたのだ

 

 

「!」

 

 

ロイは無防備なスピリットに向けてサーベルを振り上げる

 

 

「くっ…お…!」

 

 

セラは、機体を無理やりひねらせる

空中で機体を横に倒すことでリーパーの斬撃をかわした

 

 

「なにっ!?」

 

 

ここでリーパーも無防備になる

だが、体制を崩したセラに反撃することはできない

その隙に体制を整えることしかできなかった

 

 

「はぁ…はぁ…。あいつ、いきなり動きが…」

 

 

セラは感じていた

リーパーの動きが急によくなったことを

 

 

「…バッテリーもそろそろ」

 

 

そして、バッテリーもそろそろ気を遣っていかないと危ないところにまで来ている

セラの方が状況は不利だ

 

だが

 

 

「負けるわけにはいかない!」

 

 

セラは、再びサーベルで斬りかかってくるリーパーを迎え撃った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方のキラは、デュエル、バスターをトールとの上手い連携を駆使し海中に落とした後、アスランと一対一で戦っていた

 

お互い剣で斬り合う

剣がぶつかり合う

二機が離れ、イージスがライフルを撃つ

キラはビームをかわすと、イージスに接近

剣で斬りかかる

 

 

「ぐっ!」

 

 

アスランはそれをかろうじてかわす

 

アスランは感じていた

もうキラは、自分を超えている

自分一人では手に負えない領域まで来ていると

 

キラが再び斬りかかってくる

それをしゃがみこむことでかわす

そして、サーベルを振り上げようとする

だが、それよりもワンテンポ早く、キラがこぶしでイージスを殴り倒した

イージスが地面に倒れこみ、PSダウンを起こす

 

だがアスランは諦めようとしない

ライフルを取り出して、ストライクに向ける

だが、そのライフルはストライクの剣に斬りおとされてしまう

 

 

「アスランっ!」

 

 

「くっ!」

 

 

アスランは、歯を食いしばってストライクを見る

 

これで、終わり?

 

 

「もう下がれ!君たちの負けだ!」

 

 

「…!」

 

 

スピーカーからキラの声が聞こえてくる

通信をつなげたのだろうか

 

 

下がれ?

ふざけるな!

 

 

「何をいまさら!撃てばいいだろう!お前もそう言ったはずだ!」

 

 

アスランは、バッテリー切れしてしまった機体を起こしてストライクに向かっていく

 

 

「…!アスラン!」

 

 

「お前も俺を撃つと!そう言ったはずだ!」

 

 

キラは、向かってくるイージスを再び殴り倒す

イージスは、前回よりも勢いよく地面にたたきつけられる

 

ストライクが、大剣を振りかぶるのが見える

今度こそ、終わり

 

 

「アスラン!下がって!」

 

 

そこに、二人の耳に二人のもの以外の声が聞こえてくる

キラは、視線を横にずらす

そこには

 

 

「!ブリッツ!?」

 

 

ミラージュコロイドを展開させていたのか、ついさっきまで反応しなかった

ブリッツは、余りにも直線的に、ストライクに向かってランサーダートを突き出してくる

キラは、その突きをかわしながらシュベルトゲベールを振るった

 

振るってしまった

 

シュベルトゲベールが、ブリッツのコックピットに薙いだ

キラは、大剣から手を放し、一歩二歩後退する

 

ブリッツのコックピットから火花が飛び散る

アスランは、その光景を信じられない面持ちで見ていた

 

 

「アスラン…」

 

 

アスランの耳に、ニコルの声が届く

 

まだ、生きている?

なら、今から助けに向かえば!

 

一瞬希望を持ったアスランを、次の瞬間、突き落とした

 

 

「逃げ…」

 

 

ブリッツが、爆散した

木端微塵が、表現に一番似合う

 

あれでは、もうパイロットは…

 

 

「…ニコル?」

 

 

「馬鹿な…!」

 

 

イザークとディアッカの声が聞こえてくる

今の光景を見ていたのだろうか

 

だが、そんなの気にすることが出来ない

自分の目の前で死んだニコル

護れなかった

自分に力がなかったから

 

 

「ニコルぅううううううううううううう!!!!」

 

 

そこで、ストライクにデュエルとバスターが向かっていく

デュエルはライフルを撃つ

バスターは砲撃を

 

キラは、二機からの攻撃をシールドで防ぎながら後退

追撃しようとするデュエル

だが、デュエルは進行を止めざるを得なかった

足つきがストライクの援護に入ってきたのだ

 

 

「くっ!」

 

 

イザークはなお、機体を進めようとする

だが、ディアッカがそれをさせない

ここで無理に追いかけようとしても、落とされる

冷静に判断ができたのだ

 

 

「アスラン!」

 

 

アスランは、身動きが取れない

だが、思い体を無理やり動かして、機体を撤退させる

 

ニコル…

 

撤退しながら、ニコルが死んでしまった場所を見る

 

そこからは、煙が昇っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにっ!?ニコルが!?くそっ!」

 

 

「?」

 

 

セラは、撤退していくリーパーを不思議そうな目で見る

まだ、撤退するような状況でもなかった

 

 

「味方が落とされたのか?」

 

 

何にしても、撤退していくのなら、もう戻るしかない

セラは、機体をアークエンジェルに向けて進ませた

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ってきたセラは、何やら褒められながらバンバン背中を叩かれているキラだった

だが、キラの表情はどこか暗い

 

キラは無言で格納庫から去っていった

 

技術員の人たちは怪訝そうな表情でキラを見送る

セラは、コックピットから降りて、ムウにこの状況を聞いた

 

 

「あぁ、坊主がブリッツを落としたのを褒めてたんだが…」

 

 

セラは、その言葉を聞いてすぐさまキラを追いかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

ニコル…

キラは、アスランがあの時叫んでいた言葉を思い出していた

 

あのコックピットの名前だろうか?

アスランの仲間…

僕が殺した

 

 

「兄さん!」

 

 

「セラ?」

 

 

セラが後ろからキラを追いかけていた

セラは、キラの隣まで来る

 

 

「ブリッツ、討ったんだって?」

 

 

「…うん」

 

 

セラも、褒めてくるんだろうか

アスランの仲間を殺したことを

友達の仲間を殺したことを

 

 

「…そっか。ま、気にせず、次の戦いも生き残ろう?」

 

 

セラはそう言って、キラを追い抜かして先に歩いていった

 

 

「…セラ」

 

 

セラは、気づいていたのだろうか

自分が悩んでいたことを

 

セラの言葉は、別にどこにも特別な意味を込められていないように聞こえる

けど、キラにはそれが嬉しかった

 

 

「…次も、生き残る」

 

 

キラは、こぶしを握り締め、歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

悪夢まで、あと少し




ニコルさんは犠牲になったのです…

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