機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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あ、本当の魔物ではありませんよ?






PHASE24 海の魔物

今、アークエンジェルを襲っているグーンは、水中で戦闘を行える機体だ

というより、水中専門の機体である

 

グーンは、アークエンジェルから放たれるイーゲルシュテルンを素早い機動でかわす

セラとキラも、ビームライフルを撃つが、すべて交わされてしまう

 

 

「…くそっ!」

 

 

キラは悪態をつくと、格納庫の中に戻っていく

 

 

「兄さん!?なにを…」

 

 

「ソードストライカーを装備する!レーザーを切れば、実体剣として使える!」

 

 

セラはキラの言葉を聞き、なるほどと思う

 

水の中では、ビームライフルやビームサーベルなどのビーム兵器が使えない

だが、ソードストライカーの対艦刀、シュベルトゲベールのまわりに張られるビームをなくすように設定すれば、水中でも戦えるのだ

 

ソードストライカーを装備したストライクが、格納庫から出てくる

 

 

「空中の敵は心配しないで!水中の敵に集中しろよ!」

 

 

「うん!任せたよ!」

 

 

キラは、水の中に入っていく

 

一方のセラは、空の敵に集中する

ライフルでディンを狙うが、すべて流れるような動きでかわされてしまう

セラは歯噛みする

これではじり貧だ

長期戦はこちらにとっても嫌な展開だ

 

 

「…!」

 

 

セラは、迷いを振り切ってバーニアを吹かせた

機体が宙に浮く

 

重力によって崩される体制を整えながらディンに接近していく

長い時間は飛べない

一機でも…

 

セラは腰のサーベルを抜く

 

ディンは、スピリットが飛べないと決めつけていたのか、動きが一瞬止まっていた

その一瞬の隙をつけるのがセラだ

 

サーベルで相手の左腕を斬りおとす

そこから反転

サーベルを真一文字に振るい、両足を斬りおとす

 

バランスを崩したディンは、海面に着水

戦闘継続は不可能だろう

 

セラは、ライフルで相手をけん制しながら一旦アークエンジェルに降り立つ

そして再びバーニアを吹かせて飛び立つ

 

空中の戦いは、すぐに決着がつきそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水中に潜ったキラ

コックピットが圧迫されるような感覚

太陽の光があまり届かず、まわりは薄暗い

ここが水中なのだと改めて自覚する

 

とここで、横殴りにされるような感覚がキラを襲う

 

グーンがストライクに体当たりを仕掛けてのだ

水中の速さはグーンの方が圧倒的に速い

 

 

「くっ!」

 

 

視界にグーンの姿を捉える

イーゲルシュテルンを放つが、水によって勢いが衰え、グーンを捉えることができない

 

そこに、もう一機のグーンが迫る

キラは落ち着いてシュベルトゲベールを抜いて振るう

 

振るわれた大剣は、グーンの推進部を斬りおとす

 

キラは、バーニアを吹かせて残ったグーンに接近しようとする

が、どこからか放たれる魚雷によってそれは阻まれる

 

魚雷はかわす

放たれた方向を見ると、そこにはグーンとは違う機体がストライクに接近していた

 

UMF-5ゾノ

グーンの発展機

今襲ってきている部隊の隊長機だろうとキラは考える

この機体を落とせば、相手の部隊に動揺を与えられ、戦闘がぐっと有利になるはず

 

キラは、ゾノを優先的に狙うが、グーンより速い機動で攻撃がすべて交わされてしまう

 

さらにグーンがゾノとの連携で攻撃を仕掛けてくる

キラは、狙いをグーンに変更する

接近しながらイーゲルシュテルンを撃つ

 

グーンは交わしながら、こちらに接近してくる

だがこれは、愚かな選択としか言えない

キラは、対艦刀のリーチにグーンが入ったことを察すると、大剣を振るう

 

グーンは、何の抵抗もできず一刀両断される

 

まさか、突っ込んでくるとは思わなかった

水中だから、自分たちが勝てるとこちらを舐めているのだろうか

だが、それならそれでいい

戦闘が楽になる

 

キラは、残ったゾノを見据える

 

キラはバーニアを吹かせて、ゾノに接近していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「潜水母艦?」

 

 

「あぁ、さすがにカーペンタリアからここまで直接来るのは無理だろ。必ずどこかに母艦があるはずだ。それを落としに行く」

 

 

ムウが、通信を通してマリューに言う

 

確かに、カーペンタリアからここまではかなり距離がある

直接ここまで来るのは無理があるだろう

 

 

「CIC,モビルスーツの航跡から母艦の位置を割り出せない?」

 

 

「ちょっと待ってください…」

 

 

マリューの指示に従って、サイたちがデータを調べていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私を乗せろ!」

 

 

カガリが騒ぐ

スカイグラスパーで出るというのだ

 

 

「ダメだって!だいたいお前さん、砂漠の時に乗って、艦長たちに叱られたのを忘れたのか!?」

 

 

「それでも、アークエンジェルを沈ませたくないんだ!いいからとっとと乗せろ!」

 

 

カガリが相変わらずの上から目線でマードックに言う

マードックはカガリの勢いにたじろいでしまう

 

その様子を見ていたムウが口を開く

 

 

「曹長、乗せてやってくれ。これから母艦を叩きに行く。嬢ちゃんは十分に戦力になる」

 

 

カガリが「誰が嬢ちゃんだ!」と、騒いでいるがムウは無視してマードックに掛け合う

 

 

「う…まぁ、少佐がそう言うなら…。けど、機体に傷つけたら承知しねえからな!」

 

 

マードックが遂に、カガリが搭乗することを認める

カガリは待ってましたと言わんばかりにすぐさまスカイグラスパーに乗り込む

 

 

「今から母艦を叩きに行く!ついてこい!」

 

 

ムウがカガリにそう言い、機体を加速させる

カガリも、必ずこの艦の力になると決意を胸に込め、ムウについていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラは、ディン二機を行動不能にさせた後、海面から攻めてくるグーンの対応に追われていた

キラは一体何をやっているのか

 

まさか、落とされてはいないだろうな、と不安に駆られながらも、アークエンジェルにミサイルを当てないようにライフルで迎撃していく

 

 

「くっそ!キリがない!」

 

 

海に潜っているグーンへの攻撃手段がセラにはないためもどかしい

 

だが

 

 

「…あの時の感覚が出れば」

 

 

そう、記憶に新しいバルトフェルドとの戦い

あのはじけたような感覚が出れば、もしかしたら…

 

セラは目をつむって集中する

感情をコントロールする

どこまでも、どこまでも深く潜っていくように…

 

 

「…!」

 

 

何か、種のようなものが見えた瞬間

その種がはじけた

 

視界がクリアになり、不要なものが入ってこない

自分以外のすべての動きがスローモーションに見える

 

そして、海面で動いているグーンや、ストライクの位置がすべて把握できる

 

これなら…!

 

そこで、一機のグーンが海面から顔をのぞかせようとしているのを察知

セラは、そのグーンが出ようとしている海面の位置に向かってバーニアを吹かせる

腰のサーベルを抜き、振りかぶる

 

タイミングよく、というより、セラは察知していたのだが

グーンが海面から出てきたところを、サーベルで斬りかかる

 

グーンに乗るパイロットは、何が起こったかわからないままメインカメラを切られ、戦闘不能に陥ってしまう

 

セラの行動はそこで終わらない

アークエンジェルに通信をつなげる

 

 

「艦長!艦から左、距離五十の所をゴットフリートで撃つんだ!」

 

 

「え?え?」

 

 

急にセラから通信が来て、さらに砲撃を撃てとまで言われたマリューは戸惑ってしまう

 

 

「早く!」

 

 

「あ…わかりました!ゴットフリート、照準!」

 

 

マリューは、セラの言葉通りの位置にゴットフリートの照準を向けるように指示

 

 

「てぇ!」

 

 

マリューの号令と共に放たれた砲撃

 

砲撃を撃った瞬間、なんとグーンが海面から出てきた

照準を合わせた丁度どの場所に

 

グーンは何も抵抗できずに、ゴットフリートに命中

爆散

 

 

「…」

 

 

本当なら、爆散させずに済むはずだったが、マリューが戸惑ってしまった分、時間が遅れてしまった

 

 

「…兄さんは」

 

 

艦の上に戻り、セラはキラの様子を案じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空中、海面の戦闘がひと段落ついたとき、キラは未だにゾノと激闘を繰り広げていた

ゾノは相変わらず、その機動性を使いキラを翻弄する

だがキラも、ゾノの猛攻をしのいで反撃のチャンスをうかがっていた

 

まだ時間はある

ビーム兵器を使わない分、バッテリーの減少が遅い

 

キラはシュベルトゲベールを振るう

ゾノはその斬撃をかわし、ミサイルを撃つ

キラは、そのミサイルをかわしながらゾノに接近

 

対艦刀を再び振るった

 

対艦刀はゾノの右腕を奪う

 

相変わらずなめられてるのか…

それとも、これが実力なのだろうか

 

長い間、ゾノと戦い続けたキラは、その機動性に目が慣れてきていた

 

さらに、ゾノの片腕も落とした

 

勝負は、決したと言っていいだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、少し経ってから

 

生き残ったキラは、アークエンジェルに戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムウとカガリがそれぞれ乗るスカイグラスパー二機は、敵の母艦を探していた

カガリは、視線をまわりに巡らせる

レーダーに反応もなければ、当然肉眼でも見えない

 

本当に、母艦なんてあるのだろうか

そう思い始めた時だった

 

 

「「…!」」

 

 

レーダーに反応

敵の母艦で間違いないだろう

 

 

「いくぜ!嬢ちゃん!」

 

 

「さっきも言ったが、私を嬢ちゃんと呼ぶな!私はカガリだ!」

 

 

そんな会話をしたあと、機体を母艦に向けて降下させる

 

カガリは、機体の下部からミサイルを発射

放たれたミサイルは命中

水柱が立つ

 

さすがに敵の存在に気づいたか、潜水していた母艦が浮上してきた

浮上してきた瞬間を叩こうと、高度を下げるカガリ

 

それを見たムウは、慌ててカガリに怒鳴る

 

 

「ばか!あまり高度を下げると潮をかぶるぞ!」

 

 

「え!?」

 

 

ムウに怒鳴られたカガリは、慌てて機体を浮上させる

ぎりぎり間に合い、水がかかることは回避する

 

母艦を見ると、ハッチが開かれ、MSを発進させようとしていた

 

 

「そうはさせるか!」

 

 

ムウがアグ二を撃つ

甲板に当たり、大きな爆発が起こる

 

 

「やった!」

 

 

カガリが喜びの声をあげる

だが、これで終わりではなかった

 

 

「嬢ちゃん!後ろだ!」

 

 

「え?」

 

 

ムウに言われ、後ろに振り返る

そこには、生き残ったディン

ディンの撃った突撃銃が、カガリの乗るスカイグラスパーにかする

 

 

「大丈夫か!?」

 

 

それを見ていたムウは、すぐさまカガリに様子を聞く

 

 

「ナビゲーションモジュールをやられただけだ!大丈夫!」

 

 

ムウがほっと息をつき、カガリに告げる

 

 

「帰投できるな?こいつは俺がやるから早く戻れ」

 

 

「な…、まだやれる!」

 

 

ムウの帰投しろという指示に不満を持つカガリ

ムウに食い掛かる

 

 

「だめだ!そんな状態で戦われたって、邪魔なだけだ!」

 

 

「…」

 

 

確かにその通りだ

このまま戦ってもムウの邪魔になるだけだろう

 

 

「わかったよ!」

 

 

カガリはしぶしぶアークエンジェルに向かって飛行を開始した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦闘?この近くでですか?」

 

 

輸送機に乗ってカーペンタリアに向かっている途中のアスランが、操縦しているパイロットに聞いた

 

 

「前方海上でな。くっそ…、ここはザフトの制空圏内だってのに…」

 

 

そう

ここは中立国に近接してはいるが、ザフトの制空圏内

その中で戦闘が行われているとは…

 

 

「巻き込まれたら厄介だぞ…。生憎、グゥルは積んでいないんだ」

 

 

グゥル

大気圏内での飛行ができないMSが乗ることで、飛行しながら戦闘が出来るというものである

 

それがないということは、大気圏内での飛行能力を持たないイージスは…、お察しの通りだ

 

 

「…!」

 

 

その時だった

彼らの目の前に小型の戦闘機が飛び込んできた

 

 

「地球軍機!?」

 

 

「くそっ!巻き込まれたらどうとか言うんじゃなかったぜ!」

 

 

パイロットの男二人が悪態をつきながらも、戦闘機から回避するように操縦する

 

 

「君はモビルスーツのコックピットに!いざとなったら機体はパージする!」

 

 

「!しかし!」

 

 

「積荷ごと落ちたら俺たちの恥なんだよ!」

 

 

パイロットの一人が、アスランに離脱するよう言うが、アスランは渋ってしまう

だが、もう一人の男がアスランに叫ぶ

 

 

「…わかった」

 

 

そこまで言われれば、断るわけにもいかない

アスランはイージスのコックピットに乗り込んだ

その瞬間、輸送機に大きい震動がはしる

被弾したのだ

 

 

「くっそ、限界だ!パージするぞ!」

 

 

アスランに有無も言わせず、機体をパージする

機体に浮遊感を感じる

 

メインカメラに映された映像を見て、地面が近くなってきたことを確認する

バーニアを吹かせて落下速度を遅めて、着地した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完勝という形で戦闘を終わらせたアークエンジェル

だが、一つ足りないものがあった

 

 

「カガリが戻らない…?」

 

 

キラが呆然とつぶやく

 

カガリが出撃して、まだ帰投していないのだ

カガリの機体は損傷している

もしかしたら…

という思いがキラを包む

 

 

「すまない…。俺があの時出撃を許してなかったら…」

 

 

「たらればを言っても仕方ありませんよ…。それよりも、日没まで時間がありますし、捜索しに行きましょう」

 

 

ムウが後悔の念を込めた言葉をセラは一蹴して捜索に行くことを提案する

 

 

「ほら、兄さんも」

 

 

「…うん」

 

 

話し合った結果、捜索時間は二時間

 

…短い

そんなにもたもたしていて、もしカガリが見つからなかったらどうするんだ

その命令には従えない

 

…カガリ

 

カガリに言った、気が楽になった

 

それは、当然セラのおかげというのが大部分だ

だが、他にもトールたち

そして、カガリの存在というのも大きかった

もう友人と言っていい

 

友人を助ける

死なせない!

 

キラたちは、カガリの捜索のためにそれぞれの機体を発進させた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…誰もいない…か」

 

 

カガリは、帰投しようと機体をアークエンジェルに向けた後、ザフトの輸送艦と接触

戦闘の末、被弾し、今いる孤島の浅瀬に不時着したのだ

 

誰もいない

今まで、まわりに人が絶えない生活をしていたカガリにとって、その事実は重くのしかかっていた

 

カガリは、スカイグラスパーのコックピットに座る

 

 

「アークエンジェル、聞こえるか。こちらカガリ、聞こえるか、アークエンジェル」

 

 

アークエンジェルに通信を試みたが、通じない

 

あちらも自分を探してはいるだろうが、これでは野宿も覚悟した方がいいかもしれない

 

と、そこで見えた

赤い機体が、ここから近い場所に着陸するところを

 

 

「…っ」

 

 

カガリは、自分の衝動に従って走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着陸したアスランは、イージスのコックピットから出る

まわりを見ても、木、木、木だ

 

人がいそうな感じでもない

 

その時

 

 

「…!」

 

 

がさりという音がした

動物か?

こちらに近づいてきている

 

ともかく、草陰に隠れて様子を見る

 

そして、出てきたのは、金色の髪をはやした少年だった

 




アスラン君…
君という人は…(笑)

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