機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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書くことがない…


PHASE21 戦いの予兆

サイが懲罰を受けて、閉じ込められた

 

帰ってきたセラたちは、この衝撃的なニュースを聴いた

サイが、ストライクに乗って操縦しようとしたらしい

 

しかし、サイはただのナチュラル

コーディネーターであるキラが設定したOSを扱えるはずもなく

ストライクは前のめりに転倒

けが人もストライクの故障もなく、特に問題はなかったのだが、下手をすれば死者も出してしまうほどの大惨事になるところだった

 

キラは、サイの様子を見に行こうとする

 

 

「やめろ」

 

 

「…セラ」

 

 

セラがいつになく冷たい口調でキラに声をかける

 

 

「サイが何でそんな風になったか。わからない?」

 

 

「…」

 

 

わかる

自分が原因だ

自分がフレイを…

 

 

「わかるならやめろ。それとも、ここまでなるなんて、思わなかった?」

 

 

セラの言葉が突き刺さる

何も言い返せない

 

セラはもう何も言わず去っていく

 

 

「…」

 

 

キラも自室に戻る

 

今、自分がサイにしてやれることは何もない

 

何もないのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラは目の前に、赤く長い髪を見る

 

フレイだ

フレイはキラを探しているのか、きょろきょろしている

 

 

「サイのことはいいの?」

 

 

すれ違いざまに、フレイに聞こえるようにつぶやく

フレイは立ち止まり、こちらを見る

 

 

「…何がよ?あんな馬鹿な人のことなんて、知らないわ」

 

 

フレイは冷たい口調で言う

セラの表情が少し歪む

 

 

「馬鹿?俺にはあんたの方がよっぽど馬鹿で滑稽に見えるけど?」

 

 

「…!」

 

 

フレイの表情に怒りが浮かぶ

しかし、セラは気にせず続ける

 

 

「あのさ、あんたの復讐がどうとかは知らないけど、そのくだらないことのために俺の大切な人を利用しないでくれる?」

 

 

セラは自分の怒りを込めながら言う

フレイの目が見開かれる

 

今の言葉ははったりだったのだが、図星のようだ

 

フレイは、自分の父を殺したコーディネーターへ復讐したいようだ

そしておそらく、守ってくれなかったキラへも

 

 

「あのさ、自分で自分のこと、残念な奴だって思わない?ほんと、見てられない」

 

 

「なんですって…!家族が殺された苦しみも知らないで!」

 

 

「だから自分は特別?」

 

 

「…!」

 

 

フレイがたじろぐ

 

 

「自分は家族が殺されて苦しいから、必死に守ろうとする人も苦しめていいと?」

 

 

「…なによ。何が言いたいのよ!?」

 

 

フレイはもうヒステリー気味に叫ぶ

目の前の男は何がしたいのか

 

 

「まぁ、要するに…。これ以上兄さんを苦しめてみろ。たとえ兄さんが止めたとしても、あんたを叩き潰す」

 

 

「…!」

 

 

セラは殺気を思い切りフレイにぶつける

フレイは涙目になりながら床にへたり込む

 

そのフレイを、冷たい目で一瞥してからセラはその場から立ち去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ダメよ。ここでへこたれちゃ…」

 

 

そう、自分はここまでやり通したのだ

 

 

「あんなガキに、何ができるの…」

 

 

セラが自分に何ができるというのか

 

 

「キラには、もっと戦ってもらわなきゃ…」

 

 

自分のために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラは、フレイを好きなだけいたぶった後、格納庫に来ていた

特にやらなきゃいけないことはないのだが、ただ単に暇だから来たというだけ

 

 

「…ん?」

 

 

セラは、何やら人…というかカガリを囲んで、トールたちが集まっているのを見つける

カガリがシミュレーションをやっているようだ

 

そういえば、自分はシミュレーションに触れたことがないな…

 

興味を持ったセラが、トールたちに近づく

 

 

「調子はどう?」

 

 

「あ、セラ!この子すげえんだ!」

 

 

「あ!また一機落とした!」

 

 

トールとカズイが興奮したように騒ぐ

ミリアリアは、画面に釘付けだ

 

セラは、画面をのぞき込む

 

カガリが動かした機体が、敵の攻撃をかわし、逆に攻撃を撃ちこんでいく

 

最後の一機を落とし、終了画面にうつる

成績順位で、ダントツトップの成績だ

 

 

「すごいな…」

 

 

素直に称賛するセラ

カガリは得意げに笑う

 

 

「お前もやるか?」

 

 

カガリがセラに言う

そしてセラは気づく

挑発している

自分の成績を抜いてみろと

 

 

「…あぁ、やってみるか」

 

 

カガリと席を替わる

ボタンを操作してシミュレーションをスタートさせる

 

操縦桿を握る

 

シミュレーションが始まった

スカイグラスパーを操縦する

 

 

「…」

 

 

敵のビームをかわしつつ接近

すれ違いざまにビームをお見舞いさせる

 

さらにそれをやりつつも違う敵機にミサイルを撃つ

これで二機だ

 

早い

早すぎる

 

 

「さてと、いくぞぉ!」

 

 

セラの表情はとても楽しそうなものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キラは、自室の電気もつけずにベッドに寝転がっていた

足元では、トリィが跳ねている

 

 

「キラ?」

 

 

フレイの声が聞こえる

キラは状態を起こし、ドアの方を見る

 

ドアが開き、フレイが入ってくる

 

 

「もう、なによ。こんなに暗くしちゃって」

 

 

フレイはスイッチを押して電気をつける

そして、キラが座るベッドに座る

 

いつもなら、心躍るはずだった

なのに、今日は気持ちが暗くなっていく

 

 

「…サイ、馬鹿よね。」

 

 

「…」

 

 

「あなたにかなうはずないのに…」

 

 

「っ!」

 

 

フレイの口調

サイを気遣うような口調

 

何で

今傍にいるのは自分なのに

何でサイ?

やっぱりフレイは…

 

 

「キラ?どうしたの?」

 

 

キラの表情を見ていたフレイが、口を開く

キラを気遣う

 

フレイはキラに体を預ける

 

 

「大丈夫よ、キラ…」

 

 

フレイはキラを押し倒しながら唇をふさぐ

 

その瞬間、キラにいら立ちがはしる

 

何で、何で!

サイがいいんだろ?

僕のことなんかほっとけよ!

 

 

「やめろよ!」

 

 

キラはフレイを突き飛ばし、部屋から走り出る

 

フレイの声が聞こえてくる

しかし、キラはそれを振り切るように走る

 

好かれたい

フレイに好かれたい

自分はフレイを愛している

フレイの愛が欲しい

 

キラの目に、涙が浮かんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラの成績は、カガリのさらに、圧倒的に上だった

 

カガリたちが、ぽかんと口を開けている

 

 

「どうよ。これが現役パイロットの力だ」

 

 

「いや、お前は異常だ」

 

 

いつの間にいたのか

ノイマンがセラに突っ込みを入れる

 

 

「そ…そうだ!だいたいなんだあれは!敵機に突っ込んでって、攻撃に当たったと思ったら敵機を落としてて…」

 

 

「敵の攻撃で敵を落としたりしてたよね…?」

 

 

「今まで艦のことで精いっぱいであまりわからなかったけど、セラっていつもこんなことして戦ってるのか…?」

 

 

「…化け物」

 

 

カガリたちがそれぞれセラたちに感想を言う

 

最後の化け物はグサッときた

 

 

「…ひどい」

 

 

セラは端っこで体育座りでいじけ始める

そんなセラを無視して、今度はトールのシミュレーションが始まり、画面を皆がのぞく

 

セラの扱いはひどいのだ

 

…ぐすん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂漠で立っている二人の姿

近くにはレセップスが止まっている

 

 

「何でザウートなんかをよこすかね…。バクゥは品切れかい?」

 

 

バルトフェルドは苛立たしげに言う

 

 

「はあ、もうこれ以上は回せないようで…。その埋め合わせのつもりなのですかね?あの二人は」

 

 

ダコスタも呆れたように言う

 

ザウートは、遠距離攻撃に優れているMSだ

砂の上を移動することもできるのだが、そのスピードはバクゥとは比べ物にならないほど遅い

 

そして、あの二人とは

 

輸送機からザウートと共に、デュエルとバスターが出てきた

そう、イザークとディアッカである

 

 

「かえって邪魔になると思うのだがね…。宇宙の戦いしか経験がないんだろう?」

 

 

そう

イザークとディアッカは、大気圏内の戦闘をしたことがない

 

 

「だいたい、クルーゼ隊ってのが気に入らん。僕はあいつのことが嫌いでね」

 

 

彼らの上司が個人的に気に入らないのもある

 

 

 

 

 

イザークとディアッカは、コックピットから出る

 

砂が彼らに降りかかる

 

 

「うわっ!ひでえ所だな」

 

 

ディアッカが文句を言う

確かに、この環境はひどい

だが、そうも言ってられない

ここに奴が、足つきがいる

 

 

「砂漠は、その身で知ってこそってね…」

 

 

そこに、彼らに声をかける人物

 

砂漠の虎

 

 

「ようこそレセップスへ。指揮官のアンドリュー・バルトフェルドだ」

 

 

イザークとディアッカはバルトフェルドと向かい合い、背筋を伸ばし敬礼する

 

 

「クルーゼ隊、イザーク・ジュールです」

 

 

「同じく、ディアッカ・エルスマンです」

 

 

二人は自分の名を名乗る

 

バルトフェルドは、イザークの顔についている傷をじろじろ見る

 

 

「戦死が消せる傷を消さないのはそれに誓ったものがあるから…と、思うのだがどうかな?」

 

 

「…」

 

 

イザークがバルトフェルドから視線を背ける

 

 

「そう言われて顔をそむけるのは、屈辱の証…か」

 

 

イザークは、バルトフェルドの無遠慮な言葉に頭に血が昇る

 

 

「そんなことより!足つきの動きはどうなってるんですか!?」

 

 

「あの艦なら、ここから西方百八十キロの地点、レジスタンス基地にいるよ。無人偵察機を飛ばしてある、見るかい?」

 

 

バルトフェルドが、イザークたちに問いかける

が、イザークが首を横に振る

 

 

「いえ、今は…。隊長に、OSを見てほしいのです」

 

 

「OSを?」

 

 

イザークが提案したことを意外に思うバルトフェルド

クルーゼ隊の隊員は、皆プライドが高いことで有名だ

こんなふうに手伝いを求めてくるとは…

 

 

「はい。宙にいる仲間に、『大気圏と、宇宙とじゃ全然違う。それに砂漠とくるんだから、OSはしっかりと設定すべきだ』、と言われまして…」

 

 

隣にいるディアッカもうんうんと頷いている

バルトフェルドは、二人に対する印象を改めた

プライドが高いことは間違いなさそうだが、自分の力だけでは無理なことに対して、他人の力を借りるということが出来るようだ

 

最近は、それすらできない兵が多い

 

バルトフェルドは素直に感心した

 

 

「いいだろう。人型のMSは専門外だが、力になろう」

 

 

二人の表情がわずかに明るくなる

 

この二人がいれば、勝てるか?

ちゃんと力にはなってくれるだろう

 

バルトフェルドはそう思った

 

 

「バルトフェルド隊長は、連合のモビルスーツと交戦されたとお聞きになりましたが…」

 

 

「あぁ、そうだな。僕もクルーゼ隊を笑えんよ。あれだけの力…。かなりの脅威だな…」

 

 

そう、あれは敵だ

 

昨日のことは昨日のこと

 

今日のことは今日のことだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークエンジェルが発進した

 

明けの砂漠と共に、砂漠の虎を討つために

 

セラとキラは、食堂で食事をとっていた

 

 

「なんだ?まだ食ってないの?」

 

 

二人の食器をのぞき込んだムウが言う

 

 

「ほら、ちゃんと食えよ?これもやるよ」

 

 

そう言ってムウは二人の食器に一つずつケバブを載せた

二人がはっとする

 

ケバブ

あの人と出会ったきっかけとなった

 

 

「やっぱ、現地調達のものは上手いよな。ほら、ヨーグルトソースかけるのがうまいんだぞ」

 

 

キラとセラが目を見開く

そして、セラは吹き出してしまった

 

ムウがそんな二人を不審に思う

 

 

「…どした?」

 

 

「いえ…、虎も同じことを言っていたので…」

 

 

「カガリはチリソースを推してて。二人の争いのせいで、兄さんのケバブが二種類のソースでぐちゃぐちゃに…くく」

 

 

ムウも、セラの説明を聞いて吹き出してしまう

 

そして腕を組んで口を開く

 

 

「ん、味のわかる男だな…。けど、敵のことなんて知らない方がいいんだ」

 

 

「え?」

 

 

キラが戸惑いの表情を見せる

セラは、真剣な表情でムウを見る

 

 

「これから命のやり取りをする奴のことなんて知ったって、やりにくいだけだろ」

 

 

そう

そうだ

これから自分たちは、あの人と戦うことになる

 

殺しあうことになる

 

セラもキラも、バルトフェルドにあえてよかったと思っている

楽しかったと思っている

 

だが、バルトフェルドは敵

砂漠の虎は敵なのだ

 

この感情は、不要なものなのだろうか

 

 

「俺は…、忘れたりはしません」

 

 

セラはつぶやく

 

忘れる?

冗談じゃない

 

 

「俺は、絶対に忘れない。たとえ、俺の手で殺したことになったとしても絶対に忘れない。俺のすべてに、刻み込む」

 

 

セラは、声に力を込めて言い放つ

 

 

「坊主…」

 

 

ムウが、どこか驚いたような、悲しんでるような

複雑な表情で、何か言いたげにしている

 

そして、ムウが口を開きかけた

 

そのとき

 

爆音が聞こえてきた

 

 

「なんだ!?」

 

 

ムウが驚愕の声をあげる

 

虎との戦いは、すぐそこまで迫っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、地雷は全て除去できたようだな」

 

 

レセップスは、明けの砂漠が仕掛けた地雷を除去すべくミサイルを発射した

 

足つきが動き出したことを知り、同時にこちらも動いたのだ

 

これで少しは向こうに動揺を与えられるといいのだが…

 

 

「隊長!我々の位置は?」

 

 

クルーゼ隊の二人が聞きに来る

 

あの二機のOSは、問題なく書き換えれた

さっきまでは、艦の上で迎撃作業をやらせようと思ってたのだが

 

これなら、どちらか一機と戦わせても面白いかもしれん…

 

やはりエリートだ

そこらのパイロットを凌駕している

 

 

「僕が、あの二機のどちらかをやる。君たちは、そのもう一機と交戦してほしい」

 

 

バルトフェルドはそう指示した

 

この二人が勝てるかと聞かれれば、微妙だ

スピリットが相手なら、即答で無理だと答えれる

だが、ストライクなら…

 

二人は、明るくなった表情を隠そうともしない

それを見て、バルトフェルドは苦笑する

 

 

「さてと。第一戦闘配備!パイロットはそれぞれの機体に乗り込んで待機しろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラたち三人は、パイロットスーツに着替えていた

 

着替え終わっているムウが、スカイグラスパーの装備のことで何やら揉めている

通信が終わったのか、ムウがこちらに向く

 

 

「連中には悪いが…、レジスタンスの戦力は、正直言って、あてにならん」

 

 

セラとキラは頷く

 

レジスタンスは、MSも戦闘機すら持っていない

この戦いは、虎との全面戦争となる

その中で、レジスタンスは、はっきり言って役立たずになるだろう

 

 

「お前らも踏ん張れよ。…ま、最近のお前さんたちなら、大丈夫だとは思うけどな」

 

 

ムウは柔らかい笑みを浮かべて更衣室を出る

 

セラとキラも、ムウを追って格納庫に向かう

 

 

 

 

セラはスピリットのコックピットに 乗り込む

今、ストライクが装備を選択している

それが終わったら、すぐに出撃だ

 

 

「…砂漠の、虎」

 

 

コーヒーのことについて、もっと語り合いたかった

だが、それはもうかなわないだろう

 

これから殺し合いだ

どちらかは、おそらく死ぬ

 

いや

 

 

「死ぬのは、あんただ。砂漠の虎」

 

 

「発進準備、整いました!出撃タイミングを譲渡します!」

 

 

ミリアリアから通信が入る

セラは、ペダルを踏む

 

 

「セラ・ヤマト!スピリット、発進する!」

 

 

「キラ・ヤマト!ストライク、行きます!」

 

 

「ムウ・ラ・フラガ!出るぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大天使 対 砂漠の虎




次回は戦闘回です
一話で終わらせたいですが、どうなるかわかりません

たぶん一話で収めることが出来ると思います

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