機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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過去最長だと思われます


PHASE20 砂漠の虎

セラはまわりを見る

にぎわう人々

笑顔がたくさん見られる

 

キラも同じことを思いながらまわりをきょろきょろと見ていた

 

 

「何ぼさっとしてるんだ!お前らは一応護衛なんだろ?」

 

 

カガリがそんな二人を見て、叱るような口調で話す

 

三人は、買い出しのためにバナディーヤの町に来ていた

この街は虎の本拠地でもあるのだが

 

 

「ほんとにここが…虎の本拠地?」

 

 

疑いたくなってしまう

 

 

「ずいぶん平和そうだよな…」

 

 

セラがつぶやく

人々は、戦いとは無縁だと言わんばかりでそれぞれ自由に暮らしているように見える

どこかヘリオポリスと重なってしまう

 

カガリが二人の言葉を聞いてため息をつく

 

 

「ついてこい」

 

 

カガリの言う通りついていくセラとキラ

カガリは路地裏に入っていく

訳が分からないがついていく

 

 

「見ろ」

 

 

目的地に着いたのか

セラとキラはカガリの姿で隠れたがれきの山を見る

そしてがれきの向こうにある立派な艦

壊れた建物の上に置かれていた

 

 

「平和そうに見えたって、そんなものは見せかけだ。逆らう者は容赦なく消される。この街は…、砂漠の虎のものなんだ」

 

 

セラは、にぎやかに歩いていた通りの方を見る

あの人たちは幸せそうに見えた

なのに…

 

 

「難しいな…」

 

 

「ん…、何か言った?」

 

 

「なんでもない」

 

 

三人は本来の目的を果たすべく、歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マードックの呆れ声が格納庫中に響く

 

マードックの手にあるのはごみを入れた袋

これらのごみは全てストライクのコックピットの中から出てきたものだ

その近くでは不満そうな顔をしながらフレイがマードックを手伝っている

 

 

「でも、いつからそんな…」

 

 

マリューが上からこの光景を眺めながら隣にいるムウに尋ねる

ムウにもわからないことはわかってはいるのだが…

 

 

「さあ…、けど、地球に降りてきたからだろ?今までそんな余裕はなかったでしょ」

 

 

「あの子は…、サイ君の彼女よね…。なのに…、キラ君と?」

 

 

「意外?だよねぇ…。俺もそう思うんだけどさ?」

 

 

マリューとムウの目には、サイとフレイの関係は上手くいっているように見えた

マリューとムウだけではない

アークエンジェルのクルーのほとんどは、そう思っているはずだ

 

その分噂が広がるのが早い

キラがフレイを寝取ったという噂は

 

マリューが格納庫から出、ムウがついていく

 

 

「おかしくなってそうなったのか、そうなったからおかしくなったのか…。何にしても、うまくはないな。あの坊主の状態は」

 

 

何しろコックピットで寝泊まりするほど追いつめられているのだ

 

 

「…うかつだったわ。パイロットとしてあまりにも優秀だから、つい正規の訓練を受けていない子供だということを忘れて…」

 

 

「君だけのせいじゃないさ。おれももっとちゃんと気にしてやるべきだったし、弟の方は普通すぎたし…」

 

 

マリューが暗い表情でつぶやいた内容を否定するムウ

 

 

「…セラ君は、平気なのかしら」

 

 

セラ

キラの弟

当然キラより幼いのだが

 

 

「なんか…、兄貴の方の様子とは比べ物にならないくらい平常運転だよな」

 

 

そう

セラの様子は全く変わらない

やるときは、キラと同じくらい根詰めてやるのだが…

 

 

「なんか最近、他のクルーとも仲良くなってるみたいだし」

 

 

ムウは、セラがノイマン、チャンドラと笑いながら談笑しているのを見たことがある

それは当然地球に降りてからなのだが

 

 

「…本当に今更だが、ナチュラルなのが信じられねぇ」

 

 

「でも…」

 

 

「あぁ、本人がそう言ってるのはわかってるんだが…」

 

 

ムウが顎に手を当てながら立ち止まる

マリューもムウに合わせて止まる

 

 

「なんか…、セラ・ヤマト…。初めて会った時から思ってたんだが、どこかで聞いたことがある…気がする」

 

 

「え?」

 

 

ムウは思い出しきることが出来ないのか、髪をガシガシとかく

 

 

「あぁ!いつだっけな…。親父がなんか…言ってた気が…」

 

 

マリューは考える

ムウの父親は、かの有名なアル・ダ・フラガだ

そのアルが、セラの名前を口にしている?

 

ムウは未だに何かを思い出そうとしている

 

 

「ともかく、今はキラ君の状態ですよ!何か解消法はありませんか?」

 

 

「…そうだな。解消法か…」

 

 

ムウは考える

うちに無意識にマリューを見つめてしまう

 

 

「?」

 

 

マリューは首をかしげる

 

ムウは彼女を観察するように見る顔から首、首から胸、胸からウェスト、ウェストから足

 

そして気づく

マリューに冷たい視線で見られていることに

 

 

「あ…と…。あまり参考にならない…かな?」

 

 

「そのようですわね…?」

 

マリューはこれ以上は一緒にいたくないと言わんばかりに勢いよく後ろを向く

 

 

「とりあえず、今日の外出で少しは気が晴れるといいんですけど!」

 

 

マリューは早い歩調で歩いていく

ムウは取り残されてしまった

 

 

「…はぁ。いいよねぇ、若者は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「はぁ…」」

 

 

セラとキラはカフェの椅子に座る

キラはへたり込み、セラはテーブルに倒れこむ

 

女の買物は長いと聞くが、ここまでとは…

恐ろしいという感情まで湧いてきてしまう

 

 

「これでだいたい揃ったが…。フレイってやつの要求は無理だぞ。エリザリオの乳液だの化粧水だの…。こんなとこにあるものか」

 

 

セラがフレイが要求したものの名前を聞いて疑問符を出す

だが、名前からして、高級品だろうか

 

こんな砂漠の地にあると思ってるのか?

つくづく馬鹿な奴だよな…

と、セラは呆れる

 

とここで、テーブルにお茶と料理が置かれていく

 

パン?

 

 

「なに?これ」

 

 

キラが口を開く

 

 

「ドネル・ケバブさ!あー腹減った!お前らも食えよ!こうやってチリソースをだな…」

 

 

「あいや!ちょぉっと待ったぁ!」

 

 

カガリがチリソースの容器を持とうとした時、横から陽気な男の声が聞こえてきた

三人は声をかけてきた男を見る

 

 

「ケバブにチリソースなんて何を言ってるんだ!ここはヨーグルトソースをかけるのが常識ってもんだろう!」

 

 

アロハシャツ、カンカン帽子

 

見た目はかなり怪しいおじさんだ

うさんくさい

 

 

「はぁ?」

 

 

「いや、常識というよりもこう…。そう!ヨーグルトソースをかけないなんて、この料理に対する冒涜だよ!」

 

 

「なんなんだお前は…」

 

 

カガリが細目になりながらアロハな男を見る

セラとキラもアロハな男を細目で見る

 

 

「見ず知らずの男に、私の食べ方をとやかく言われる筋合いはない!」

 

 

カガリはチリソースをケバブにかけ、頬張る

 

 

「あーっ!うーまーいー!」

 

 

…大人気ない

 

 

「あぁ、なんという…」

 

 

アロハな男はなぜか打ちひしがれている

セラとキラはついていけない

 

 

「ほら、お前もくえ。ケバブにはチリソースが当たり前だ!」

 

 

カガリがキラにチリソースを進める

チリソースを強調しているのは気のせいじゃないだろう

 

 

「あぁ!彼まで邪道に落とす気か!?」

 

 

アロハな男はカガリがチリソースをかけようとするのに気づく

負けじとアロハな男もヨーグルトソースの容器をつかむ

 

 

「なにをしてる!邪魔するな!」

 

 

「いや!彼を邪道なんて落とさせやしない!」

 

 

キラの目の前でカガリとアロハな男が争っている

 

 

「「ええい!」」

 

 

「「あ…」」

 

 

そして、二人は同時にソースをキラのケバブにかけてしまった

 

 

「「「…」」」

 

 

「ぷっ…!くくくく…!」

 

 

キラは自分の料理の現状を呆然と見つめる

カガリとアロハな男は気まずそうに黙る

セラはこらえきれず笑う

 

 

 

 

 

なんだこれは…

 

 

 

 

 

「いやー、すまなかったね」

 

 

アロハな男はわが物顔でセラたちのテーブルの椅子に座っていた

 

 

「いえ、ミックスもなかなか…」

 

 

そう言うキラの表情は苦い

味が濃すぎるのだろう

 

ちなみにセラは、両方のソースを交互にかけて食べている

どちらもおいしく、選べなかったためだ

 

アロハな男は視線を今日セラたちが買った大量の品物に移す

 

 

「それにしても凄い買い物だねー。パーティーでもやるの?」

 

 

「余計なお世話だ!だいたいさっきからお前はなんなんだ!?」

 

 

「まあまあ…」

 

 

アロハな男に食って掛かるカガリをなだめるセラ

 

と、ここでセラは身構える

キラとアロハな男も身構えている

 

カガリはそれに気づかない

 

 

「勝手に座り込んで…」

 

 

キラがカガリの頭を抱えてしゃがみこむ

セラとアロハの男はテーブルを倒してしゃがむ

 

その次の瞬間、爆発が起こる

爆風や破片は、セラとアロハの男が倒したテーブルの陰でやり過ごす

 

帽子が吹き飛んで、サングラス姿になったアロハ男は、ホルスターから拳銃を取り出す

 

 

「死ね!コーディネーター!宙の化け物め!」

 

 

「青き正常なる世界のために!」

 

 

ブルーコスモス!

 

コーディネーターを排除しようとする集団、ブルーコスモスが襲ってきたのだ

 

何で?

兄さんのことがばれたのか?

 

セラが混乱しながらも思考を巡らせる

 

 

「…!」

 

 

そこで、拳銃をこちらに向けている男に気づく

 

引き金を引く前に、セラは近くに落ちていたチリソースの容器を投げた

投げられた容器は男の手に当たる

男は思わず拳銃を落としてしまう

 

セラはまわりが自分に注意を向けていないことを確認しながら接近

男を蹴り飛ばす

 

 

「…!兄さん!」

 

 

今度はキラとカガリを狙った男に気づく

 

キラは、セラに言われるまでもなく男に反撃していた

近くにあった拳銃を投げ、相手をひるませる

その隙にセラと同じように蹴り倒した

 

セラはほっとしてまわりを見る

もう騒ぎは収まっていた

 

 

「おい!」

 

カガリがキラに何やらからんでいた

 

 

「お前、銃の使い方、知ってるか?」

 

セラとキラはカガリの姿を見て吹き出してしまう

ケバブのソースやお茶をかぶって中々悲惨なことになっているのだ

 

だが、カガリもそのことには気づいているが、笑われるのは気に入らない

 

 

「何笑ってるんだ!」

 

 

「いや…」

 

 

キラに大声でからむカガリ

セラはそのやり取りを高みの見物と言わんばかりに遠目でくすくす笑っていた

 

 

「隊長!ご無事で!?」

 

 

アロハ男に近づく軍服の男

その男はアロハ男を隊長と呼んだ

 

…ん?隊長?

 

 

「あぁ。私は平気だ。彼らのおかげでな」

 

 

アロハ男はサングラスを取る

 

カガリがサングラスを取った男の顔を見て目を見開く

セラとキラはそんなカガリを疑問顔で見る

 

カガリは二人を無視して、口をゆっくりと開いた

 

 

「アンドリュー・バルトフェルド…?」

 

 

「「…!」」

 

 

カガリがつぶやいた名前に、ついセラとキラは身構えてしまう

 

そうか

だからブルーコスモスがここを襲ってきたのか

 

砂漠の虎を、排除するために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですって!?カガリさんたちが戻らない!?」

 

 

艦橋にマリューの大声が響く

そして艦橋にいる全員がはっ、とキサカの顔が映ったモニターに目を向けた

 

ノイズが混じっているが、声は何とか聴きとれる

 

 

「あぁ、時間が過ぎても現れない…。そちらに連絡はいっているか?」

 

 

「いえ…」

 

 

「町の方で、ブルーコスモスのテロがあったようだが…」

 

 

全員が顔を青ざめる

キラがコーディネーターだと知る人間は少ないはず

ザフトの兵でもないのだから、姿どころか、名前すら広まっていないはず

 

マリューとキサカがこれからどうしていくか話している間に、他のクルーがこそこそ会話する

 

 

「どうせ遊びすぎて時間を忘れてるだけだって…」

 

 

「けど、もしヤマトたちが戻らなかったら…」

 

 

「大丈夫だって…!」

 

 

艦橋に不安が広がっている

だからだろうか

誰も気づかなかった

 

一人だけ、笑みを浮かべている人物がいることを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラたちはあれから豪華な建物に連れていかれていた

バルトフェルドは何を考えているのか

自分たちを殺そうと考えているようには見えない

 

 

「ほら、入って入って」

 

 

「いや、僕たちは…」

 

 

「何いってるの!君たちは僕の恩人なんだから!お礼しないと僕の気が済まないんだ」

 

 

キラがやんわりと断ろうとしてもバルトフェルドはそうさせてくれない

セラたちは建物の中に入っていく

 

 

「お帰りなさい、アンディ」

 

 

柔らかい女性の声が聞こえる

玄関には美しい女性が

 

 

「ただいま、アイシャ」

 

 

バルトフェルドはアイシャに近づき、軽いキスをする

 

キラとカガリは顔を赤くしてそれを見る

セラは一瞬黒いオーラを出した

 

 

「この娘ですの?」

 

 

「ああ、チリソースとヨーグルトソースにお茶もかぶってしまったんだ」

 

 

「ふふっ、それは大変ね。こっちにいらっしゃい?」

 

 

アイシャはカガリを連れてどこかにいく

 

キラはカガリについていこうとするが、セラは止める

 

 

「兄さんは着替えを覗く気?」

 

 

キラは顔を赤くして勢いよく首を横に振る

 

 

「君たちはこっちだ」

 

 

セラとキラはバルトフェルドに連れていかれる

 

とある一室に入ると、バルトフェルドはサイフォンをいじり始めた

 

 

「僕はコーヒーにこだわりがあってね」

 

 

セラは部屋を見回す

 

そして視界に入る一つの化石のレプリカ

 

 

「それが気になるかい?」

 

 

バルトフェルドに言葉をかけられ、セラはバルトフェルドに視線を向ける

 

 

「エヴィデンス01。実物を見たことは?」

 

 

バルトフェルドの問いに、二人は首を横に振る

 

 

「なんでこれは鯨石と呼ばれてるのかねぇ?」

 

 

「え…」

 

 

バルトフェルドはさらに言葉をつづける

 

 

「ここのこれ。どう見ても羽だよね?ふつうクジラに羽はない」

 

 

「ええ、まあ…。けど、よその星の生き物ですから…」

 

 

「そうじゃなくて、僕はなんでこれがクジラ石と呼ばれてるか…さ」

 

 

「…じゃあ、何ならいいんですか?」

 

 

セラがバルトフェルドをまっすぐと見据え、言う

バルトフェルドは首をかしげる

 

 

「ん…、何…か。そういわれると困るな…。鳥には見えないし…。うーん…あ、どうだい?コーヒーの方は」

 

 

バルトフェルドはテーブルに置かれたコーヒーを勧める

キラはソファに座っていたため、すぐに口につける

セラは立っていたため、ソファに座ってからカップを口につける

 

 

「…」

 

 

「…うまい」

 

 

キラはコーヒーの苦さに表情を歪ませ、セラはコーヒーの味を称賛する

 

 

「君には大人の味はわからなかったようだね…。君は、そこの彼よりも幼そうに見えるのに、よくこの味の良さがわかったね?」

 

 

「コーヒーは自分で入れて、よく飲みますから」

 

 

「おぉっ!そうなのかい!このコーヒーにはね…」

 

 

「あ、そうなんですか?俺はですね…、で、…」

 

 

「ふむ…、なるほど…。そのブレンドもありだな…」

 

 

セラとバルトフェルドがコーヒーのブレンドについて語りだした

キラはコーヒーのことは何もわからないため、蚊帳の外だ

 

だが、セラはよく勉強の合間などに、コーヒーをよく飲んでいたことを思い出していた

 

セラとバルトフェルドが論争を繰り広げている中、コンコンと扉を叩く音がする

ドアが開き、アイシャとカガリが入ってくるが、カガリがアイシャの背中に隠れてよく見えない

 

 

「なに恥ずかしがってるの?ほら」

 

 

「…あ」

 

 

アイシャはカガリを押し出す

 

 

「「…は?」」

 

 

「ほーう」

 

 

その姿を見て、セラとキラはぽかんと口を開け、バルトフェルドは感心するような声を出した

 

カガリは髪を結い、薄く化粧をしている

薄い緑色の、裾が長いドレスを身にまとっている

 

 

「おんな…のこ…」

 

 

キラが呆然とつぶやく

セラが慌ててキラの口をふさごうとするが、間に合わなかった

 

 

「!てんめぇ!!」

 

 

「あ…いや!だったよね、て言おうとしたんだよ」

 

 

「同じだろうがそれじゃぁ!!」

 

 

キラがしゅんとなる

セラが手をおでこにあてため息をつく

バルトフェルドとアイシャは笑っていた

 

三人はソファに座ってコーヒーを飲む

 

 

「さっきまでの服もいいけどドレスもよく似合うねぇ。というか、その姿も、板についている感じだ」

 

 

バルトフェルドがさらにカガリをほめる

 

しかし、カガリはまったく相手にしない

 

 

「勝手に言ってろ」

 

 

「しゃべらなきゃ完璧」

 

 

セラがバルトフェルドの言葉に共感を覚え、くくっと笑いを零してしまう

 

 

「…!!!!!!!!!!!!!あっ…おまっ…ぐぅ…」

 

 

カガリはそんなセラに気づいた

セラの足を、靴のヒール部分で踏みつける

 

カガリは靴も、ドレスに合うように変えていた

 

ハイヒールに

 

セラは思わず立ち上がり、踏まれた足を抑えながらケンケンをする

 

キラとバルトフェルド、アイシャはそんなやり取りを見て、声を出して笑う

 

と、そこでアイシャは退室していった

 

 

「で、お前は何なんだ。人にこんな恰好させたりして。お前、本当に砂漠の虎か?それとも、これも毎度のお遊びか?」

 

 

カガリが唐突に口を開く

 

 

「ドレスを選んだのはアイシャだよ。それに、毎度のお遊びとは?」

 

 

「変装して外出したり、住民を逃がして町を焼いたり…だよ」

 

 

バルトフェルドはカガリの目をじっと見る

 

 

「…いい目だねぇ。まっすぐで。…実に良い目だ」

 

 

「ふざけるな!」

 

 

カガリがバルトフェルドの態度に我慢が出来なくなる

テーブルを叩きながら立ち上がる

 

キラはそんなカガリをなだめようとする

 

 

「君も、死んだ方がましなクチかね?」

 

 

バルトフェルドは、さっきまでとは違い鋭い目でセラたちを見据える

 

 

「君はどう思ってる?」

 

 

「え?」

 

 

不意に話を振られたキラは戸惑ってしまう

 

 

「どうしたら戦争が終わると思う?モビルスーツのパイロットとしては」

 

 

「お前!どうしてそれを!?」

 

 

カガリが叫んでしまう

これではバルトフェルドの言葉を肯定してしまうようなものだ

 

 

「おいおい…、あんまりまっすぐすぎるのも考え物だぞ?」

 

 

今度は、セラに視線を向ける

 

 

「君は、どう思う?」

 

 

セラは考える

どうやったら…か

 

 

「一番手っ取り早いのが、どちらか一方を滅ぼす、でしょうね」

 

 

「「!」」

 

 

セラが出した回答に驚くキラとカガリ

 

バルトフェルドも少し予想外だったのか、目を見開く

 

 

「まぁ、たとえ話ですがね。本気でそうしようとはこれっぽっちも思ってませんが」

 

 

「…戦争には、スポーツのように明確なルールがない。どこで終わりだと決めるものがない。それでもかい?」

 

 

「人は考えるものでしょう?」

 

 

バルトフェルドの言葉にセラは笑顔で返す

 

バルトフェルドも少し間をおいて、笑顔を返す

 

 

「…そろそろお開きにしよう。そのドレスはあげるよ。次に会うときは、戦場だな。同胞とは戦いたくはないがな」

 

 

「…!」

 

 

「え?」

 

 

キラの目が見開き、カガリが戸惑いの声を出す

 

 

「ストライクの戦闘を一度、スピリットは二度見た。あれを見てパイロットがナチュラルだと信じるほど僕はバカじゃないよ」

 

 

「俺はナチュラルなんですけどね?」

 

 

「…なに?」

 

 

セラのナチュラル宣言に、バルトフェルドは初めて本気で驚いた表情を見せる

しかしそれも一瞬で、すぐに笑顔に戻る

 

 

「だったらなおさらだ。本気で戦うよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラたちは建物から出て、キサカと合流した

かなり厳しくしかられたが、耳に入ってこなかった

 

アンドリュー・バルトフェルド

 

敵として出会わなかったら、よき友人になれただろう

 

その思いが止まらなかった

 

しかし、思いとは裏腹に、戦闘はすぐそこまで迫っていた




ゴールデンウイークですよ!
皆さまはどう過ごされるのでしょうか?

え?私ですか?

そんなの…
ゴロゴロあんどゴロゴロ!です!

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