機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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十八話目です




PHASE18 すれ違い

地球 ザフト軍 ジブラルタル基地

 

 

「両名とも、無事にジブラルタルに入ったと聞き、安堵している」

 

 

画面の中で、本当に安心しているのか疑問になる表情でラウが話しているのを、イザークとディアッカが聞いていた

 

大気圏での戦いのあと、何とか降下でき、ジブラルタルにたどり着くことができたのだ

そして、これからの行動の指示をラウから聞いているのである

 

 

「先の戦闘ではごくろうだったな」

 

 

「…死にそうになりましたけど」

 

 

ラウの労いの言葉をディアッカが皮肉っぽく返す

 

大気圏を単独で突破したのだ

疲労困憊である

そのうえ、足つきも落とせなかった

 

たまらないものだ

 

 

「足つきを落とせなかったとはいえ、君たちが地上に降りれたのは幸いだ。足つきは今後、地球駐留部隊の標的となる。君たちも共に追ってくれ」

 

 

ラウは一拍、間をおいてさらに付け加える

 

 

「機会があれば、討っても構わん」

 

 

そう言い残して、ラウは通信を切る

 

ディアッカは、ため息をつく

 

 

「俺たちに、駐留軍と一緒に足つき追って地べたを這いずり回れってか?参ったねぇ…」

 

 

ディアッカがイザークに目を向けながら苦笑気味に言う

しかし、イザークは口を開かない

それどころか動かない

 

 

「おい、イザーク…?」

 

 

すると今度はプルプルと震えはじめる

 

手を包帯に持っていき、外し始める

包帯を取ったイザークの顔を久しぶりに見たディアッカは驚愕する

 

 

「お前…」

 

 

イザークの顔には痛々しい傷跡が残っていた

確かに、あのストライクとの戦いでついた傷は深かったが

今の医療技術なら簡単に傷跡も残さず治すことが出来たはずだ

 

なのに、イザークの顔には傷跡が残っている

イザークが残した?

なぜ?

 

イザークの顔には憤怒の感情が浮かんでいる

 

 

「機会があれば…だと…?」

 

 

イザークがゆっくりとした口調でしゃべり始める

だが、その声は決して穏やかなものではなかった

 

 

「いいとも…。あれは討ってやるさ…」

 

 

俯かせていた顔を勢いよくあげる

 

 

「この俺がなぁ!!」

 

 

イザークは決意する

どんなに自分のプライドがつぶされても、ディアッカの言う通り地べたを這いずり回ることになっても

 

足つきは、自分の手で討つと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂から突き出た小島のような岩山に、アークエンジェルは近づいていた

明けの砂漠との会話から、今

明けの砂漠の案内についていっていた

 

どこに行くかは詳し話されていないが、どうやら目的地に着いたらしい

 

地上いる人たちはおそらく明けの砂漠のメンバーだろう

アークエンジェルを見て目を見開かせている

 

マリュー、ムウ、ナタルは艦から降りて、サイーブについていく

 

 

「おい、サイーブ!こりゃどういうことだよ!」

 

 

「客人だ。仲良くしろ」

 

 

一人男が抗議しに来たが、サイーブは言葉短く突っぱねる

 

ここが明けの砂漠の本拠地か

中には豊富に武器がそろっている

 

どんどん奥に歩いていくと、指令室のような場所につく

 

 

「へぇ、たいしたもんだ。ここに住んでるのか?」

 

 

「ここは前線基地だ。まだ焼かれてなきゃ、みな家は町にある」

 

 

サイーブがポッドを取りながら言う

 

 

「町?」

 

 

マリューが口を開く

 

 

「タッシル、ムーラ、バナディーヤから来てる奴もいる。俺たちはそういう街の有志の一団だ。コーヒー、いるか?」

 

 

サイーブが明けの砂漠の構成を説明する

そしてついでにコーヒーを進めてくる

 

 

「あ、はい」

 

 

「その辺にあるカップ、好きに使いな」

 

 

マリューはコーヒーを飲もうとするが、カップが見当たらない

 

断念する

 

 

「艦のこと、助かりました」

 

 

マリューが艦の隠し場所を提供してくれたことを感謝する

ここなら敵にも見つかりずらいだろう

 

すると、先程キラと印象的なやり取りをしていた少女がサイーブに何やら耳打ちして、去っていく

 

 

「彼女は?」

 

 

ムウが尋ねる

 

 

「俺たちの勝利の女神だ」

 

 

ムウはサイーブの言葉を聞いて、目を軽く見開く

 

 

「へぇ。で、名前は?」

 

 

ムウの問いを聞き、サイーブはムウをにらむ

ムウにはなぜ睨まれているのかわからないが、肩をすくませながら続ける

 

 

「女神なんだから。名前を知らなきゃ失礼だろ?」

 

 

「…カガリ・ユラ」

 

 

その声にはもうこれ以上聞くなという思いが感じ取れたため、これ以上は聞かない

 

 

「あんたらはアラスカに行きてぇってことだがな…」

 

 

サイーブが地図を取り出し、話題を変える

 

そのあからさまさに、少し疑問を持つがすぐに地図に注意を向ける

 

そこからサイーブとのミーティングが始まる

ビクトリアが落とされたというのには驚かされた

 

が、今はそのことを気にしてばかりではいられない

今自分たちがすべきなのは、この艦を、二つの機体をアラスカに届けること

 

ミーティングは続いていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラとキラは坂で座りながら、下の方で何か作業している人たちを眺めていた

風が来ず、暑いのが少し不快に感じるが、それでも久しぶりに心から安らいでいた

 

 

「…ん。兄さん」

 

 

セラが最初に気づいた

キラはセラに目を向ける

セラはキラに下に目を向けろと無言で指示する

 

そこにはあの少女

カガリがいた

気難しい表情をしながら近づいてくる

 

キラは、また殴られるのではないかと警戒する

セラは、そんなキラを見てくすくす笑う

 

そしてキラの前まで来たカガリは口を開く

 

 

「さっきは悪かった。殴るつもりはなかっ…たわけではないが…。あれははずみだ。許せ」

 

 

セラとキラは目を見開いて、目を合わせる

そして、声を出して笑う

 

 

「…!なにがおかしい!」

 

 

「何がって…!」

 

 

「なぁ…」

 

 

セラとキラはまだ笑いが収まらない

 

カガリの謝り方

まず内容

殴るつもり、あったのか

そして、謝る態度

偉そうな態度

だが、その態度が鼻につかないのが不思議だ

 

彼女はいつもそうなのだろうか

 

 

「…ずっと気になっていた。あの後、お前はどうしたんだろうと…」

 

 

急に態度がしゅんとなる

セラとキラは笑いを止め、カガリの言葉を聞く

 

 

「それが、こんなものに乗って現れるとはな!それに今は地球軍か!」

 

 

さっきのしゅんとした態度がウソみたいに元の態度に戻る

 

 

「だいたいお前は誰だ!?お前もあのパイロットみたいだが」

 

 

え?今それを聞く?

セラは急に話を振られ驚く

 

 

「えっと、セラ・ヤマト。これの弟だよ」

 

 

セラがカガリに自己紹介をする

キラがセラの横で、「これ扱い!?」と何か騒いでいるが、セラもカガリも気にしない

 

 

「そっか。私はカガリ・ユラだ。よろしくな」

 

 

カガリは笑顔をセラに向けながら紹介しかえす

そして

 

 

「で、何でお前らはあんなものに乗ってるんだ?」

 

 

だから…

それも今聞く?

さっきのに聞いとけよ…

 

 

「色々あったんだよ…」

 

 

「…としか言いようがないよな」

 

 

キラがカガリの問いに答え、セラが苦笑しながら同調する

カガリも何か感じ取ったのか、これ以上何も聞かなかった

 

まだ聞きたいことがあるだろう

それでも我慢する

 

少し空気読めないところもあるけど、決して悪い人ではない

セラはカガリにそういう印象を持った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トール、ミリアリア、サイ、カズイは四人で雑談していた

カズイがため息をつく

 

 

「なんか変なことになってきたな…。レジスタンスなんてさ…」

 

 

カズイがふと愚痴をもらす

 

 

「でも、あそこでシャトルに乗り込んでたら、死んでたぜ?」

 

 

トールがカズイにそう返す

「そうなんだよなー…」と、カズイがつぶやく

 

カズイの気持ちもわからないでもない

地球に降下したと思ったら、敵に襲われ

何が何だかわからないうちにレジスタンスの基地に来たのだ

 

自分だって愚痴りたい気分は一緒だ

 

 

「フレイ?」

 

 

サイが口を開く

サイが見ている方向に目を向けると、フレイがいた

 

フレイは何かを探しているかのようにきょろきょろしている

 

 

「どうしたんだ?」

 

 

「キラは…?」

 

 

フレイはどうやらキラを探しているようだ

 

サイが表情をむっとさせる

 

しかしフレイはそれに気づかずキラを探しに再び歩き始める

 

 

「なんかフレイ、よくキラのこと気にするようになったよね…」

 

 

ミリアリアがトールに耳打ちする

 

 

「あぁ…。変なことにならなきゃいいんだけど…」

 

 

サイがこちらに戻ってくるのを確認して、顔をミリアリアから離す

サイの表情はすぐれない

 

何か嫌なことが起こる

 

何か確信したトールだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外は暗くなり、夜

セラはコックピットでOSを設定しなおしていた

 

バクゥとの戦い

ライフルのビームがまがった

照準を少しずらせば問題なかったとはいえ、これからしばらく砂漠で戦っていくのだ

 

少しでも不安要素は消しておきたい

 

 

「おう、坊主。またOSの設定か?熱心だな」

 

 

すると、スピリットの足元からマードックの声が聞こえてくる

よく通る声だ

 

集中したセラは他人の声は聞こえてこないタイプなのだが、そんなことはお構いなしにマードックの声は聞こえてくる

 

 

「はい!ライフルの軌道が熱対流の影響でまがってしまって…。それの修正です!」

 

 

コックピットから顔をだし、マードックに答えるセラ

 

 

「そうか!まぁ、無茶だけはすんじゃねえぞ!」

 

 

マードックはそう言い残してデッキを出ていく

 

セラは再び作業に熱中する

 

カタカタとキーボードを叩く音だけがデッキに響く

セラの目は画面にだけ向けられている

 

本当なら、この作業はすぐに終わらせることが出来るのだが、せっかく時間が取れたのだ

じっくりと確認しながら作業がしたい

 

 

「…よしっ。こんなもんか…ん?何か騒がしいな…」

 

 

作業を完璧に終え、コックピットから降りようとする

そこで、何やら外が騒がしいことに気づく

 

 

「ま、大したことじゃないだろ。寝よ寝よ」

 

 

セラはデッキを出て自室に向かっていった

 

のだが…

 

 

「お!坊主!ここにいたか!」

 

 

「マードックさん?どうかしましたか?」

 

 

マードックの話を聞いたセラは、表情を厳しくさせた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バルトフェルドは、レセップスの隊長室でコーヒーを作成していた

色々ブレンドして、味を確かめる

 

バルトフェルドの楽しみの一つだった

 

 

「ダコスタです。失礼します」

 

 

自分の副官の声が聞こえる

 

バルトフェルドは間延びした声で返事する

ダコスタはいつものこと、慣れたように隊長室に入ってくる

 

 

「…う」

 

 

ダコスタは部屋に入ってすぐ、鼻をふさぐ

コーヒーのにおい

 

かぐわしいにおいならいいのだが

この部屋に充満しているにおいはそれを超越している

 

 

「隊長、換気しませんか…?」

 

 

「そんなことを言いにきたの?」

 

 

ダコスタがにおいに耐えかねて、換気を提案する

しかしバルトフェルド相手にしない

 

悪意が込められていないため、ダコスタも特に不満を持つことはないのだが…

 

この人の自由さには手を焼く…

 

そこでダコスタは本来の自分の目的を思い出す

 

 

「出撃準備、完了しました」

 

 

「はい」

 

 

バルトフェルドは出来上がったばかりのコーヒーをカップに入れ、味わいながら口に入れる

 

     

「うん、いいね。これにはハワイコナを少し足してみたんだ」

 

 

「はぁ…」

 

 

ダコスタにはコーヒーのことなどわからない

適当に相槌をうつしかなかった

 

 

「よし。じゃ、そろそろいくか」

 

 

バルトフェルドは椅子から立ち上がり、兵士を待たせている甲板に向かう

ダコスタも慌てて追いかける

 

甲板にはバクゥ三機、装甲車

出撃を待つ兵士がいる

 

 

「ではこれより、レジスタンス拠点に対する攻撃を行う。そろそろ奴らには、きつーいお仕置きを与えないとな?」

 

 

バルトフェルドは笑みを浮かべながら兵士たちに言う

兵士たちもにやにや笑みを浮かべる

 

 

「目標はタッシルだ。いくぞ!」

 

 

バルトフェルドたちはタッシルに向けて発進する

 

バルトフェルドは優秀だ

優秀なのだが、変人だ

今回のように真面目にやることもあれば

先程のセリフの最後の言葉のように余計なことをしたりする

 

しかし、それでもやはりバルトフェルドは優秀なのだ

そのバルトフェルドが負けるなど、ダコスタやその他の部下たちは考えていた

 

だが、急にこの地に降りてきた大天使

そしてあのMS

 

初めてだ

初めて狙った獲物からバルトフェルドは敗走した

 

撤退したことは当然ある

だがそれも、勝利を確実にする作戦の上の状態である

 

あのときは完敗だった

 

 

「どうした、ダコスタ君」

 

 

「あ、いえ。何でもありません」

 

 

バルトフェルドが急に話しかけてきて驚くダコスタ

 

気がつくともうすぐ目的地に着く場所まで来ていた

 

 

「そろそろだな。気を引き締めろ?ダコスタ君」

 

 

笑みを浮かべながら声をかけてくるバルトフェルド

 

やはり、この人が負けるところは想像できない

 

 

 

 

タッシルの町は真っ暗だった

明かりもついておらず、人の声も聞こえてこない

 

 

「もう寝静まる時間ですね」

 

 

「そのまま永遠の眠りについてもらおう…なんてことは言わないよ、僕は」

 

 

バルトフェルドの表情はいたって真面目

だがそこから出てくる言葉はまったくそうは考えられない

 

 

「警告十五分後に攻撃を開始する」

 

 

「…は?」

 

 

ダコスタの動きがぴたりと止まる

 

 

「ほら、早く言ってきたまえ」

 

 

バルトフェルドは本気だとわかり、ダコスタがスピーカーを取りに行く

 

 

「さてと、むこうはどう出てくるのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カガリはキラとセラを探していた

もっと彼らと話してみたかった

 

彼らと話すのは、他の人と話すよりも何かが違った

何が違うのかと問われれば、わからないのだが…

 

 

「ちょっとまてよフレイ!そんなんじゃわかんないよ!」

 

 

「何よ!もう話したでしょ!?」

 

 

何やら大声が聞こえてきて、つい物陰に隠れて聞き耳を立ててしまうカガリ

修羅場?

これが修羅場なのか?

 

なんかテンションが高くなるカガリ

 

こっそりと二人の男女の姿を見る

 

 

「あ、キラ!」

 

 

フレイの声が何やら憂いを帯びたものに変わる

 

…キラ?

 

カガリはフレイが走っていった方を見る

そこには先程まで自分が探していたキラの姿

 

フレイは両手でキラの腕に抱き付き、キラの後ろに隠れる

 

サイがキラの前に立つ

 

 

「…なに?」

 

 

キラはどこか冷たい口調でサイに尋ねる

これは何なのか

 

カガリは表情に何とか出さないようにするものの、動揺が隠し切れない

この修羅場にキラが関わってくるとは

 

 

「…フレイに話があるんだ。キラには…、関係ないよ」

 

 

サイがキラの冷たい視線に耐えかねたのか、キラから視線をそらす

 

 

「関係なくないわ!」

 

 

フレイが叫ぶ

 

カガリがさらに聞き耳を立てる

 

 

「だって私!昨夜はキラの部屋にいたんだから!」

 

 

「なっ!」

 

 

サイは驚愕の声をあげ

 

 

「え…んん!」

 

 

カガリも大声をあげそうになるところを自分の手のひらで口をふさぐことで回避

しかし、想像以上のことがここで起きている

 

ここでカガリはふと思った

 

セラはこのことを知っているのか?

 

 

「やめろよ、サイ」

 

 

「…キラ?」

 

 

キラが再び冷たい声質でサイに言う

 

 

「どう見ても、嫌がるフレイを追いかけてるようにしか見えないよ」

 

 

「なんだと…?」

 

 

サイの目に憤怒の感情が浮かぶ

 

 

「こっちは昨夜の戦闘で疲れてるんだ。みっともない真似、やめてくれる?」

 

 

サイの堪忍袋の緒はここで切れた

フレイはキラに寄り添っている

つい最近までその位置は自分のものだったのに

今は、キラがいる

 

 

「キラぁぁああああああああ!!!!!」

 

 

自分がナチュラルで、キラがコーディネーターだということをサイは忘れていた

キラに殴りかかる

 

キラはサイのこぶしを受け止め、逆手にひねられ、突き放される

サイは砂の上にしりもちをつく

 

 

「…やめてよね。本気で喧嘩したら、サイが僕にかなうはずないだろ?」

 

 

キラがさらに鋭くなった声をサイにかける

 

カガリは自分が盗み聞きをしているということも忘れて聞き入っていた

キラの声は確かに冷たいものだったが、どこか辛いものを感じたからだ

 

 

「フレイは、優しかったんだ…」

 

 

キラの声が一気に苦しいものに変わる

 

サイは急に変わったキラの声質に戸惑う

 

 

「ずっと…、ついててくれて、抱き締めてくれて…。…僕を守るって言ってくれて!」

 

 

キラの声が少しずつ荒いものになっていく

 

 

「僕がどんな思いで戦ってきたか、誰も気にもしないくせに!!」

 

 

キラは目に涙を浮かべながらサイをにらむ

 

どうだ、自分が今言ったことを考えたことはあるか?と、疑問をこめて

 

 

「キラ…」

 

 

フレイはキラに自分のぬくもりを与えるために、さらに密着する

 

キラはそのぬくもりに身を任せる

おぼれていく

 

 

 

 

「…」

 

 

カガリは自分が言ったことの軽卒を恥じた

 

自分はキラがMSに乗っているということを責めた

だが、当のキラはこんなに辛い思いをしていたのか

 

いや、それは当たり前だ

なぜそれに気づかなかったのだろう

 

 

「…あいつに、知らせてやらなきゃな」

 

 

カガリはふと、セラにこのことを知らせなきゃと思う

キラが感じてる思いを知っているのか

 

そしておそらくあの二人は友人だろう

その友人を仲直りさせてやりたいというカガリのお節介が働く

 

セラを探しにいこうと歩き出そうとしたそのとき、笛の音が鳴り響いた

 

カガリは、はっと顔を音が鳴った方向に向ける

 

一体何なのだろうか

何が起こった?

 

 

「空が…、空が燃えてる!」

 

 

誰かがどうしたと聞いたのだろう

見張り台にいる少年が叫んでいる

 

 

「タッシルの方向だ!」

 

 

カガリはサイーブがいる方向に走り出した

サイーブは今、基地の入り口にいるはずだ

 

軍の士官と指令室で話をしている途中だが、笛の音で、中から飛び出しているはずだ

 

 

 

 

 

 

 

サイーブが無線で連絡を試みるが、通じない

 

それを見ていた男たちが車を、弾薬を用意していく

 

 

「待て!慌てるんじゃない!」

 

 

「なんだよ!ほっとけって言うのか!?」

 

 

「そうじゃない!半分は残れ!別働隊がいるかもしれん!」

 

 

このやり取りを聞いていたマリューが隣にいるムウに囁きかける

 

 

「…どう思います?」

 

 

「んー…。虎が残虐非道とは聞いてないけど…」

 

 

「じゃぁ、これはどういう?」

 

 

「さぁ、俺は彼とは知り合いじゃないし」

 

 

ムウはあっけらかんと言葉を重ねる

 

 

「で、俺たちはどうするの?」

 

 

「動かない方がいいでしょうね。確かに別働隊がいる可能性もないわけではありませんから。少佐、行ってくださいます?」

 

 

「え…」

 

 

マリューのセリフに戸惑うムウ

自分は高みの見物を決め込んでいたから

 

 

「スカイグラスパーが一番早いでしょう?」

 

 

「…そうだな」

 

 

ムウはマリューの案を飲み、艦の中に向かう

 

 

「私たちができるのはあくまで救援です!バギーで医師も乗せていきます!」

 

 

ムウはマリューの言葉に、手を振ることで返事をする

 

もう、明けの砂漠は車に乗って発進し始めている

 

 

「総員、ただちに帰投!警戒態勢をとる!」

 

 

マリューも号令を発し、自分の役割を果たそうとする

 

 

 

 

 

 

 

セラは、マードックの報告を聞いた

 

タッシルの町が燃えている

 

 

「…、明けの砂漠が暴走しなきゃいいんだけどな」

 

 

セラは嫌な予感を拭えない

 

そして、セラの予感は、当たることになってしまう

 




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縁起がいいですねww

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