機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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十五話目です


PHASE15 激闘と降下

第八艦隊の艦からメビウスが出撃していく

ザフト側はジンが散開し、艦に向かっていく

 

ジンとメビウスが飛び交う中、シエルが乗るラスターは艦隊に接近していた

立ちはだかるメビウスを落としつつ機体を進めていく

 

 

「どこだ…ストライク!」

 

 

スピーカーからイザークの声が流れてくる

イザークはストライクとの戦闘でけがを負ったものの、それをおして出撃したのだ

 

 

「イザーク。気持ちはわかるけど、冷静さを欠いちゃだめだよ?」

 

 

「あぁ、わかっている…!」

 

 

シエルはイザークのイラついてる様子が気になり声をかける

返事はいつもと同じように、流したような返事

 

 

「…足つきには戦闘をさせない気か?」

 

 

ロイがそうつぶやく

実際、数では向こうが勝ってるとはいえ、こちらのMSの性能は知っているはずだ

 

なのに、あの二機

そして、エンデュミオンの鷹も出てこない

 

 

「いくぞ!シエル!」

 

 

ロイが意気込んで艦の群れに向かっていく

シエルは少し遅れてついていく

 

今度はスピリットを落とす

ロイからはその思いがにじみ出ていた

この前の戦い、二人がかりでも勝てなかった相手

 

セラは危険な存在だ

 

 

「…落とす」

 

 

そうしなきゃだめなのだ

ザフトのためにも

 

シエルは戦艦の推進部にライフルの照準を合わせ、撃つ

さらに戦艦の武装を奪っていく

 

戦艦が離脱していく

 

 

「…!」

 

 

そこに、ヴェサリウスから離脱中の艦に主砲が放たれる

放たれた砲は寸分違わず艦のブリッジを襲った

 

 

「…」

 

 

戦艦が爆散していくところを目に焼き付ける

 

これが、戦争だ

 

シエルはアークエンジェルに向けて機体を加速させた

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!何で俺は発進待機なんだよ!?」

 

 

ムウはブリッジに通信をつなげ、マリューにどなる

 

 

「本艦への出撃命令はまだありません!引き続き待機していてください!」

 

 

マリューはムウにそう返す

 

 

「そんなこと言ってられる場合ですか!!」

 

 

「「!」」

 

 

ムウとマリューが聞こえてきた声に驚愕する

シャトルに乗っているはず

なのに

 

 

「命令だと従って、それで艦隊が全滅したら後悔するのは自分たちです!本当にそれでいいんですか!?艦長!」

 

 

「セラ君…?なんで…?」

 

 

モニターの中のマリューの目が大きく見開く

 

しかし、すぐに表情を引き締め、告げる

 

 

「ともかく、今は待機していてください!」

 

 

モニターが切れる

 

 

「くそっ!」

 

 

ムウは画面の横の壁を叩く

このまま艦隊が落とされていくのをただ見るだなんて我慢ができない

 

 

「坊主、お前、なんで!?」

 

 

マードックの声が聞こえる

 

そうだ、セラはなぜ戻ってきたのだろうか

 

ムウはセラに視線を向ける

 

 

「ここまで来て、そのままさようならなんて、できるわけないじゃないですか」

 

 

セラは苦笑しながらそう言う

 

セラはそのままスピリットのコックピットに乗り込んでいった

ムウはそんなセラを見つめる

 

 

「あんな幼いやつを戦場に出さなきゃならないなんて…。情けないな、俺たちは」

 

 

「大尉、何か言いましたかい?」

 

 

「なんでもねえよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マリューは考えていた

もう自分たちが介入しても第八艦隊が大打撃を受けることは免れない

 

自分たちは何としてもアラスカに行かねばならない

 

 

「…メネラオスに通信をつないで!」

 

 

モニターに映るハルバートンの顔

その表情はいつもの穏やかなものとは遠くかけ離れたものだった

 

 

「なんだ!?」

 

 

ハルバートンが怒鳴り声に近い声でマリューに問いかける

 

 

「本艦は艦隊を離脱し、ただちに降下シークエンスに入りたいと思います」

 

 

「なんだと!」

 

 

ハルバートンが目を見開く

彼の副官のホフマンが驚愕の声を出す

 

 

「自分たちだけ逃げ出す気なのか!?」

 

 

「敵の狙いは本艦です!本艦が離れない限り、艦隊は全滅してしまいます!」

 

 

ハルバートンとホフマンの表情が苦いものに変わる

 

そうなのだ

今、艦隊はザフトのMSに押されっぱなしなのだ

このままではアークエンジェルを地球に降ろせない

 

 

「アラスカは無理ですが、この位置なら地球軍の制空圏内になら降りられます!突入限界点まで持ちこたえれば、ジンとザフト艦は振り切れます!閣下っ!」

 

 

マリューは懇願するようにハルバートンに言う

 

 

「…相変わらず無茶な奴だな」

 

 

「部下は、上官に習うものですから」

 

 

マリューとハルバートンが笑いあう

 

ハルバートンは、決めた

 

 

「アークエンジェルはただちに降下準備に入れ!限界点まできっちり送ってやる。送り狼は一匹たりとも通さんぞ!」

 

 

ハルバートンはそう告げ、通信を切る

 

マリューはすぐさま降下準備の号令をかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、この状況で降りるのか」

 

 

セラはつぶやく

 

ムウたちの会話を聞いて今の状況がどうなってるのかがわかった

 

 

「ザフト艦とジンは振り切れても、あの六機が問題ですよね」

 

 

兄さん?

 

セラはハッチを開け、顔を出す

キラがいた

どこか吹っ切れたような表情をしている

 

キラはこちらに気づき、笑顔を向け、コックピットに乗り込んでいった

 

セラはそんなキラを暗い目で見る

 

 

「…フレイ」

 

 

あいつ…

何をした?

兄さんが戦うと決めたのはわかっていた

だが

 

おかしい

何かがおかしい

兄さんはどこか

 

戦いたがっていた

 

 

「…今は、違うだろ」

 

 

考えるべきことが違う

今は襲い掛かってくる敵をどうするか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シエルたちの目に足つきが艦隊から離脱していくのが見える

 

 

「くっ!このまま降りる気か!?」

 

 

「させるかっ!」

 

 

ロイとイザーク、ディアッカが我先にと機体を足つきに向け加速させる

 

シエルも同じように加速させる

 

 

「…セラ。今回は、前みたいにはいかない」

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長!俺たちを限界ぎりぎりまで出せ!」

 

 

ムウの声が聞こえる

自分たちを出撃させるように掛け合っているようだ

 

マリューの拒否しようとする声が聞こえる

 

セラも通信をつなげる

 

 

「カタログスペック上ではストライクもスピリットも単体でも降下可能です」

 

 

キラも通信をつなげてマリューに言う

 

 

「キラ君…!?あなた、どうして…!」

 

 

マリューの驚きがこちらにも伝わってくる

 

そこに追い打ちをかけるように自分も口を開く

 

 

「このままじゃ、メネラオスも危ないです!艦長!」

 

 

マリューが考え込む

悩んでいる

 

しかし、すぐさま決断をした人物がいた

 

マリューが悩んでいるのをよそに、セラたちに命令を告げる

 

 

「わかった。ただし、フェイズスリーまでには戻れ」

 

 

ナタルの声が聞こえ、マリューがナタルを信じられないような目で見る

 

 

「スペック上は大丈夫でも、やった人間はいないんだ。高度とタイムには常に気を配れ、いいな」

 

 

そう告げると通信が切れる

 

 

 

 

 

 

 

「バジルール少尉!」

 

 

マリューが激昂をナタルに向ける

こんな危険な状況でなぜ彼らを出すのか

 

 

「ここで本艦が落ちたら、第八艦隊の犠牲が無駄になります!」

 

 

ナタルも負けじとマリューにどなり返す

 

お互いがお互いの目をにらむ

 

お互いの意思を譲らない

 

このにらみ合いはしばらく続いた

 

 

 

 

 

 

「こんな状況…俺だって初めてだぜ…」

 

 

ムウがつぶやくのが聞こえる

歴戦の兵でもこの状況には緊張するらしい

 

 

「キラ・ヤマト!ストライク、行きます!」

 

 

そんな中、キラが先だって出撃する

 

 

「ムウ・ラ・フラガ!出るぞ!」

 

 

ムウも出撃する

自分も出撃しなければ

 

 

「セラ・ヤマト!スピリット、発進する!」

 

 

セラも機体を進める

宇宙に出た時、機体が地球の方向に引き込まれるようでなかなか前に進みずらい

 

 

「…重力か」

 

 

しかし、これを気にしている状況ではない

見ると、ストライクはデュエル、ゼロはバスターと交戦

こちらにもあの二機が向かってきている

 

腰のビームサーベルを抜く

相手が撃ってきたビームをシールドで防ぎながら接近

リーパーに向かってサーベルを振り下ろす

 

 

 

 

 

 

 

このセラたちの出撃は、両軍に驚愕を与えた

 

しかし、ロイたちには喜びが与えられた

 

 

「ようやく出てきたか…、ストライクぅ!!」

 

 

「はっ!今日こそ落としてやるよ!」

 

 

イザークとディアッカが機体をさらに加速させる

 

 

「いくぞ、シエル!今日こそあいつを落とすんだ!」

 

 

ロイはサーベルを抜き、サーベルで切り込んでくるスピリットを迎え撃つ

二機は鍔迫り合いを開始

 

シエルはライフルの照準をスピリットに合わせ、引き金を引いた

 

 

 

 

 

 

 

リーパーと鍔迫り合いをしていたセラは警告音を聞き、機体を後退させる

そしてビームを撃ってきたラスターにライフルを向け、撃つ

 

ラスターはそれをかわし、再びスピリットにライフルを撃つ

 

二機は横向きに位置を回転させながらライフルを撃ち合う

 

 

「シエル!」

 

 

それを見ているだけの状況に我慢できなくなったロイがライフルをスピリットに撃つ

 

セラはビームをかわしサーベルをもってリーパーに接近する

リーパーはサーベルで迎え撃つ

 

 

「ぐぅうう…!」

 

 

ロイは苦悶の声を出す

 

セラはバーニアを吹かせ、勢いをつけてサーベルで斬りかかったのだ

リーパーが少しずつ体制が後ろに傾き始める

 

セラは勢いに任せてリーパーをはじく

そしてラスターの方に注意を向ける

ラスターはサーベルを抜いて向かってくる

 

セラはシールドでサーベルを防ぐ

そしてサーベルを振り下ろす

それをシエルはシールドで防ぐ

二機の押し合い

 

 

「ちっ」

 

 

「くっ」

 

 

セラとシエルは同時に機体を後退

 

ラスターの陰からリーパーが現れる

サーベルでスピリットに斬りかかる

 

 

「はあああああああ!!!」

 

 

ロイは咆哮をあげながら突進してくる

 

セラはそれをサーベルで迎え撃つ

鍔迫り合い…のはずだった

 

急にリーパーが後退

すぐにラスターがサーベルで斬りかかってくる

 

防御は…間に合わない

 

サーベルが振り下ろされようとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「ストライクうううぅぅうう!!!」

 

 

「デュエル!?装備が!?」

 

 

キラはデュエルを見て驚愕した

装備が増えていたのだ

 

イザークはストライクとの戦いに負けたことにより、デュエルの装備を増やしたのだ

増やした装備はアサルトシュラウド

中距離の攻撃にたけている

 

デュエルはレールガン、ビームライフルを同時に撃ってくる

 

 

「くっ!」

 

 

キラはそれを回避

ライフルを撃ち返す

 

デュエルはそれをかわすと今度はサーベルを抜き、こちらに向かってくる

キラもサーベルを抜いて迎え撃つ

 

ストライクとデュエルはサーベルで鍔迫り合い、ライフルを撃ち合う

互角の戦いを繰り広げていた

 

デュエルは怒涛の攻撃を仕掛け、ストライクはそれをかわし反撃する

デュエルはそれをかわすとまた怒涛の攻撃を仕掛ける

 

その繰り返しだ

 

キラはふとスピリットの戦いを見た

二機に対し、やや押されつつも互角と言っていい戦いをしていた

 

セラなら大丈夫、と気を引き締めデュエルとの戦いに集中していく

 

 

 

 

 

 

 

セラは振り下ろされるサーベルを見た

 

間に合わない

 

やられる

 

いや、やられるものか

 

負けるわけにはいかない

 

 

「こんな…ところで!

 

 

やられてたまるか!!!」

 

 

セラの中で何かがはじける

 

シールドの防御は間に合わない

 

なら!

 

セラはラスターに蹴りを加える

ラスターは体制を崩す

それでもサーベルの動きは止まらない

が、動きは遅くなった

 

セラはその隙に回避

 

 

「なっ!あれを避けた!?シエル!」

 

 

今度はリーパーが来る

 

ライフルか?

だがその前に撃つ

 

セラはリーパーが引き金を引く前に逆に引き金を引く

 

放たれたビームはリーパーが持つライフルに当たり、爆散

 

 

「…なっ!」

 

 

ロイはコックピットに向かってこないビームに、反応がワンテンポ遅れた

ビームをかわすことが出来なかった

 

そしてすぐさまライフルを後ろに向けて撃つ

 

 

「…!」

 

 

後ろからライフルを撃とうとしていたラスターはビームをかわす

そのことでライフルを撃ち損ねる

 

 

「なんで…!」

 

 

シエルは歯噛みする

セラの、まるで後ろが見えているような行動

 

前の戦いでも急に鋭くなった動き

この戦いでも急に動きが鋭くなり、その動きは前よりもさらに速かった

 

そんなことをシエルが考えていること

シエルがラスターに乗っていることすら知らないセラは、ラスターを落とそうとサーベルで斬りかかる

 

ラスターはそれを受け止めるのではなく、かわす

 

そしてセラは気づく

後ろからサーベルを振り下ろそうとするであろう存在を

 

そんなことをさせる前に、振り返り、サーベルを振るう

 

リーパーは仕留めようとしたサーベルの振りが、結果的に防御をしたことになってしまう

 

鍔迫り合いになるが、セラはリーパーに蹴りを入れようとする

 

 

「二度、同じ攻撃が通用すると思ってるのか!」

 

 

ロイは前の戦いでこの手に引っかかっていた

 

リーパーはそれを読んでかわす

しかし、セラはそうすることを読んでいた

ライフルを向け、撃つ

 

 

「くっ」

 

 

リーパーは何とかシールドでビームを防ぐ

 

セラはすぐさま振り返り、ラスターのサーベルをシールドで防ぐ

 

戦況が動かない

 

セラはアークエンジェルを見る

降下準備が進んでいるのがわかる

 

セラは後退し、また振り返る

目の前にいるリーパーを蹴り飛ばす

 

そして今度はメネラオスを見る

 

 

「…!」

 

 

ローラシア級がメネラオスに特攻を仕掛けていた

ローラシア級もメネラオスも所々に被弾している跡がついている

 

セラはメネラオスを援護しようと、機体を向かわせようとするが

 

 

「いかせるか!」

 

 

リーパーが食い下がるように足をつかんでくる

 

 

「…くっそ!邪魔だ!」

 

 

セラはリーパーを蹴り、何とか離させる

ライフルの標準を合わせるが、撃とうとすると、ラスターが間に入ってくる

ご丁寧にシールドを構えてだ

 

 

「ちっ」

 

 

セラは行動を変更

サーベルを投げた

同時に機体を最大速度でラスターに接近させる

 

サーベルはシールドに刺さる

刺さった直後にセラがシールドの前まで接近

 

ラスターはシールドを構えるのをやめる

その前にサーベルを抜くのを忘れない

 

そして、サーベルを突き立てようと振りかぶる

 

しかし、シエルの反応は早かった

 

シエルはサーベルを振るい、スピリットのサーベルに当てる

 

 

「…!」

 

 

セラはスピリットの腕の動きが止まるのを感じる

ならばと、もう片方の腕で裏拳

ラスターをはじき、怯んだ隙にシールドを投げる

そのシールドに向かってライフルを撃つ

 

ビームはシールドに当たり屈折

ラスターの後ろでライフルの照準をスピリットに向けていたリーパーに向かう

 

 

「なにっ!」

 

 

リーパーはそれをかわそうとする

それが功を奏し、肩をかすめた程度で留まる

 

怯みから立ち直ったラスターにライフルを撃つ

 

当たるという期待はしていない

これはただの牽制

 

ラスターの動きがわずかに止まる

 

セラはすぐさまメネラオスの援護に向かうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

アスランは艦隊の猛攻により、動きを止められていた

 

 

「くそっ!しつこい!」

 

 

同じように動きを止められていたニコルが悪態をつきながら艦に向けて、3連装超高速運動体貫徹弾、ランサーダートを撃つ

三連続で放たれた弾が艦の推進部に当たり、飛行能力を奪う

 

アスランも両腕脚部を展開し、スキュラを撃ち、戦艦の飛行能力を奪っていく

 

だいぶ片付いてきたのか、敵の砲撃が緩んできたように感じる

 

残った戦艦はヴェサリウスなどの艦に任せることにして、自分たちも足つきを落とそうと機体を進める

 

しかし、足つきにたどり着く前にガモフがメネラオスに特攻していくのが見える

 

 

「ぜ…ゼルマン艦長!一体何を!?」

 

 

ニコルがガモフの行動に驚愕し、通信をつなげようとする

しかし、つながらない

 

ゼルマンはヴェサリウスから止まるように言われて断ったあと、通信が来ないようにしていたのだ

 

 

「くっ!」

 

 

「やめろニコル!あそこまで行ったら地球の重力に引かれるぞ!」

 

 

ガモフを助けに行こうとするニコルを止めるアスラン

 

その直後、メネラオスとガモフがお互いの被弾を気にも留めず、砲撃戦を始める

 

ガモフにもメネラオスにも被弾が重なっていく

アスランの目の前で少しずつ炎を吹き始める二艦

 

相打ちになるのは目に見えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ!間に合わない!」

 

 

セラはガモフの攻撃にさらされているメネラオスを援護しようと機体を進めていた

ラスターとリーパーが追ってくるかと思っていたが、そろそろ限界点が近づいているのがわかったのか、撤退したようだ

 

だから何も気にせずメネラオスに向かえたのだが

 

間に合いそうにない

 

 

「…ダメだ!諦めるものか!」

 

 

セラの頭にハルバートンの表情が浮かぶ

自分たちを気にかけてくれた

 

コーディネーターの兄を、差別的な目で見なかった人

 

ナチュラルなのに並のコーディネーター以上の力を持つ自分に、嫌悪の目を向けなかった人

 

死なせたくない

 

 

「セラ君…」

 

 

声が聞こえる

 

この声は…

 

 

「提督…?」

 

 

「もういい。君はよくやった」

 

 

「そんな…!俺は…何も!」

 

 

セラは機体をさらに進める

機体が重力に引かれて、動きが鈍くなっていることを気にもせず

 

 

「こんな年寄りのことはもういい…。だが君は…、生きろ」

 

 

「!」

 

 

メネラオスの主砲がガモフを仕留める

 

だがそれと同時に、ガモフの主砲が

 

メネラオスを貫いた

 

 

「あ…」

 

 

声が零れる

 

メネラオスが爆散していく

 

ハルバートンは、死ぬ

 

 

「…守れなかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでいい」

 

 

ハルバートンは、爆散していくメネラオスのブリッジの中でつぶやいた

種を、植えることはできた

 

 

「死ぬなよ、少年」

 

 

セラ・ヤマト

資料上のデータしか知らなかった

 

セラは、確かにデータに書かれた通りのものを持っていた

そして、それ以上のものも持っていた

 

 

「これから、君に容赦なく降りかかるだろう現実…」

 

 

老人は案じる

これからの少年の未来を

 

 

「…負けるなよ」

 

 

爆発が、ハルバートンを包んだ

 




次回の途中から砂漠です

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