機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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フレイ好きには辛いかも…


PHASE14 憎しみは燃える

アスランは、ラクスを迎えの船の場所へ連れてっている最中だ

 

自分の婚約者の横顔を見つめる

笑顔

とてもきれいな笑顔だ

何にも穢されていない、純粋無垢な笑顔

 

見つめる

 

 

「どうかなさいましたか?」

 

 

ラクスを見つめていたことに気づかれる

少し動揺する

 

 

「あ…その…、ご気分はいかがですか?…人質にされたり…、いろいろありましたから…」

 

 

「わたくしは元気ですわ。あちらではあなたのお友達方がよくしてくださいました」

 

 

「…」

 

 

アスランの表情が沈む

 

 

「…キラ様はお優しい方でした。セラ様も、キラ様とは違ったやさしさがあって…、そして…面白いお方でした…ふふ」

 

 

「?」

 

 

急に笑い出したラクスに疑問符を浮かべるアスラン

それに気づくラクスだが、なかなか笑いを止めることができない

 

 

「すみません…ふふ…。セラ様が…面白いことを…ふっ…。おっしゃったことを…思い出しまして…ふふふ」

 

 

「は…はぁ」

 

 

アスランは苦笑いをしつつ、返事をする

だが、アスランは昔のセラを思い出す

いつも何かをやらかす

肝が冷えたこともあったが、基本、自分たちを笑わせてくれる

 

セラも、キラも、変わってないのか…

 

 

「…セラ様とはあまりお話できなかったのですが、キラ様はあなたと戦いたくないと、おっしゃっておりましたわ」

 

 

「!俺だってそうです!誰があいつたちと…!」

 

 

つい叫んでしまうアスラン

 

 

「最近のあなたは、辛そうな顔ばかりですわ…」

 

 

「にこにこ笑って戦争なんてできませんよ」

 

 

迎えの船がある格納庫に着いた

ラウが見送りに、そこにいた

 

 

「クルーゼ隊長にも、お世話になりました」

 

 

「お身柄はラコーニが責任をもってお送りするとのことです」

 

 

「ヴェサリウスは追悼式にお戻りになられますの?」

 

 

「それはわかりかねますが…」

 

 

ラクスとラウが会話をしている

アスランはその会話に入り込まず、聞くことに徹している

 

 

「…戦果も重要なことなのでしょうが、犠牲になる者たちのことも、お忘れにならないよう」

 

 

「…肝に銘じておきましょう

 

 

アスランはこの時のラクスの目を見て一瞬ぞっとする

ラウを見るラクスの目は、冷たいものだった

ラウを見ているようで見ていない

もっと深いものを見定めているような…

 

ラクスはもとの優しい目に戻し、アスランに向き直す

 

 

「何と戦わねばならないのか…。戦争は本当に難しいものですわね…」

 

 

その言葉に、返事をすることができない

ラクスは、ではまた、と言い残し船に乗り込んでいった

 

何と戦わなければならないのか…か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、ヘリオポリス崩壊の知らせの報を聞いたときはもうダメかとおもったよ!よく生きてここまできてくれた!」

 

 

連絡艇に乗ってアークエンジェルにやってきた男

第八艦隊の司令官、デュエイン・ハルバートン

 

 

「ありがとうございます。お久しぶりです、閣下」

 

 

マリューが笑顔でハルバートンに敬礼する

ハルバートンも敬礼を返す

 

 

「ナタル・バジルールであります」

 

 

「第七機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガであります」

 

 

ナタルとムウも敬礼をしながらハルバートンに挨拶する

 

 

「ふむ、君がいてくれて幸いだったよ、フラガ君」

 

 

「いえ、自分はさして役には…」

 

 

ハルバートンは士官へのあいさつを終えた後、マリューたちの後ろにいるセラたちを見る

セラたちは慌てて背筋を伸ばす

 

 

「ラミアス大尉、彼らが…」

 

 

「はい、操艦を手伝ってくれたヘリオポリスの学生たちです」

 

 

マリューがセラたちを紹介する

ハルバートンはセラたちに歩み寄る

 

 

「君たちのご家族の消息を確認した。全員無事だそうだ」

 

 

ハルバートンの言葉に表情を明るくさせるセラたち

ここまで辛い戦いをしてきた彼らに、その報告はかなりうれしいものだった

 

 

「この状況の中、よくここまで頑張ったくれた私からも礼を言う」

 

 

ハルバートンはそう言い、連絡艇に向かっていく

 

 

「あとで、ゆっくり話をしたいものだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツィーグラーとガモフ、合流いたしました」

 

 

「気づかれていないな」

 

 

「あの位置なら大丈夫でしょう。艦隊はだいぶ降りていますから」

 

 

ラウとアデスが会話する

これからの行動について

 

 

「艦隊は足つきをこのまま地球に降ろす気だな…」

 

 

まさかこのまま降ろしに行くとはラウも予想外だった

月本部へ向かう

これがラウの予測だった

 

さすがハルバートンといったところか…

 

 

「なんとかこちらの庭にいるうちに落としたいものだが…」

 

 

「ツィーグラーにジン六機、こちらにイージス含めて五機、ガモフにはデュエルを除いて…、ラスターとリーパーはすぐに修理が終わるとの話だから四機出られますから…」

 

 

こちらが出られる戦力を頭にいれ、ラウは考える

 

今度こそ奴らを落とす手を

 

 

「智将ハルバートン…そろそろ消えてもらおうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トールはナタルに渡された紙に、大きく書かれた文字を読む

 

 

「除隊、許可証?」

 

 

なんで除隊?

自分たちは軍人ではない

 

サイやミリアリア、カズイもトールと同じことを考えているようだ

トールと同じ、きょとんとした表情をしている

 

 

「たとえ非常時でも民間人が戦闘行為を行うことは犯罪となる。それを回避するための措置として、君たちはあの日以前に志願兵として入隊したということにしたのだ。…、セラ・ヤマトとキラ・ヤマトがいないな。後で渡しておいてくれ」

 

 

ナタルが、トールたちの立場がどうなっていたのかを説明する

それを聞き、なぜ除隊許可証が渡されたのかを理解するトールたち

 

そして、セラとキラの分の許可証をサイが受け取る

 

 

「避難民はこれからメネラオスに移動し、シャトルで地球に降りることになる。シャトルに乗りたければなくすなよ」

 

 

ナタルがそう言った時だった

今まで黙っていた一人が口を開いたのは

 

 

「あの、私、軍に志願したいんですけど」

 

 

フレイがそうナタルに希望した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セラとキラはデッキで自分の機体を眺めていた

セラは違うが、キラはこれでこの機体を手放す、という考えが頭を支配していた

 

 

「やはり、降りるとなると名残惜しいかね?」

 

 

セラとキラは振り返る

そこには、機体を見上げているハルバートン

ある程度機体を見ると、ハルバートンはセラとキラに目を向ける

 

 

「セラ・ヤマト君に、キラ・ヤマト君だね?」

 

 

セラはすぐに頷き、キラは少し固まってから、遅れて頷く

 

 

「報告書を見たのでね…。それにしても驚いたよ。コーディネーターの力には。…おっと、セラ君はナチュラルだったな」

 

 

ハルバートンは二人の目を一人ずつ合わせ、話を続ける

 

 

「ザフトのモビルスーツにせめて対抗せんと作ったものだったのだが…、君らが扱うととんでもない怪物になってしまうのか、こいつは」

 

 

キラが困った感じで苦笑いする

 

 

「君のご両親はナチュラルだったな…」

 

 

「あ…はい」

 

 

「どんな夢を持って君をコーディネーターとしたのか…」

 

 

ハルバートンはキラにそうつぶやくと、今度はセラに向く

 

 

「君はナチュラルという話だが…、とんでもない力の持ち主だな」

 

 

「信じられませんか?俺がナチュラルだなんて」

 

 

セラはどこか挑むような目でハルバートンを見ながら返す

ハルバートンは一瞬目を見開くが、すぐに戻す

 

 

「気を悪くさせたのなら謝ろう。だが、君のその力…、少し心配でね?」

 

 

「?」

 

 

「心配?」

 

 

ハルバートンの言葉にセラは疑問符を浮かべ、キラが言葉を返す

 

 

「あぁ。君のその力は間違いなく上層部に伝わる…。そして、幼い君を何とか自分の手ごまにしようと考える者も出てくるだろう…」

 

 

「…」

 

 

「そんなっ!」

 

 

現実

セラはナチュラルと言われているのだ

コーディネーターではない

権力がある者にとっては格好の獲物だ

 

 

「閣下、メネラオスに至急、お戻りいただきたいと…」

 

 

「やれやれ、君たちとゆっくり話す暇もないわ…」

 

 

ハルバートンは、話しかけてきた兵に向けていた目を再びセラとキラに向ける

 

 

「ここまでアークエンジェルにスピリット、ストライクを守ってくれて感謝する。…良い時代が来るまで、死ぬなよ」

 

 

ハルバートンは身を返し、そのまま行こうとする

 

 

「あ、あの!ラミアス大尉たちはこれから…」

 

 

キラがハルバートンにマリューたちはこれからどうなるのかを聞こうとする

だが、キラもセラも、この答えはどこか心の中でわかっていた

 

 

「アークエンジェルは地球に降りる。彼女たちはまた戦場だ」

 

 

キラは俯く

最初は戦いに巻き込もうとするマリューたちが嫌いだった

だが、何とか自分を生き残らせようとサポートしてくれた

ムウとはくだらない話で笑いあったこともあった

ナタルは…厳しかった

 

そんな人たちを守りたいと思っていた

自分には力がある

 

 

「君が何を悩んでいるのかはわかる…。だが、うぬぼれるなよ。君一人で勝てるほど、戦争は甘くない」

 

 

「でも…!」

 

 

「意志のない者に、それをやり抜くことはできんよ」

 

 

今度こそ立ち去ろうとするハルバートン

 

 

「俺は、力を使わないで後悔するのは御免なんで」

 

 

そのハルバートンに、セラは口を開く

ハルバートンは振り返り、セラの目を見る

時間をかけてセラを見定めるように見て、ふっ、と笑う

 

 

「…そうか」

 

 

ハルバートンは、メネラオスに返っていった

 

 

「…セラ?」

 

 

「…ごめん、兄さん。俺は決めたから。兄さんは地球に降りなよ?」

 

 

セラはそういってデッキから出ていく

キラはセラに何も言えない

 

これからどうするのか

いや、決まっている

地球に降りるのだ

だが、セラは戦うと決めたのだろう

 

 

「…僕は」

 

 

キラはストライクを見上げた

 

 

「お、いたいた。キラ!」

 

 

「…トール?」

 

 

キラの所にトールたちが集まる

 

 

「どうしたの?…まだ軍服着て…」

 

 

「俺たち、軍に残ることにしたんだ」

 

 

「え!?」

 

 

サイが言った言葉に驚愕する

 

軍に…残る?

サイが…トールたちが?

 

 

「フレイが志願したんだよ。自分も戦いたいって」

 

 

フレイを一人にできない

だからサイは残る決心をし、友のために自分たちもということでトールやカズイ

そしてトールと一緒にいる

残せないということでミリアリアが残ったのだろう

 

 

「キラ、セラは?」

 

 

カズイがキラに聞く

キラはセラがハルバートンに言った言葉と、自分に言った言葉を思い出す

直接的には言わなかったが、間違いなく…

 

 

「戦うって…。そう決めたみたいだ」

 

 

「…そっか。あいつはそう言うと思ってたけど…。でも、キラは降りろよ?お前が降りることは、あいつも望んでるはずだから…」

 

 

そうトールが言った時だった

 

 

「総員第一戦闘配備!クルーは所定の位置についてください!」

 

 

放送が入る

ザフトが攻めてきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シエルは自室のベッドで寝ころんでいた

 

 

「…」

 

 

これから、地球に降りようとしている足つきを落とすべく、第八艦隊に接近しているのだ

また、セラと戦う

 

気が滅入りそうだ

セラが強いこともそうだが、セラが本気で自分を殺しにかかってくるのだ

今まで、こんなことになるなんて

敵同士なんて、想像できない楽しく過ごせていたのに…

 

 

「…ダメ」

 

 

迷ってはダメだ

迷いは振り切ったはずだ

 

コンコン

 

ドアを叩く音が聞こえる

 

 

「シエル、そろそろ出撃だ」

 

 

「…わかった」

 

 

ベッドから起き上がり、部屋から出る

 

ドアの前にはロイがいた

 

 

「シエル…、今度こそ、奴を討つぞ…」

 

 

ロイがわずかにさっきを込めて口にする

シエルに向けたものではない

スピリット、セラに向けたものだ

 

 

「…うん」

 

 

シエルは了承の返事をするしかない

戦いたくなんてない

自分を守ってくれて、足つきに乗った後も何かと気にかけてくれたセラと、戦いたくなんか…

 

だから、シエルは賭ける

艦隊と合流したことで、地球に降りるという選択をしていることに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵の数は!?」

 

 

マリューの声がブリッジに響く

 

 

「ナスカ級一、ローアシア級二!ジンが六に、イージス、ブリッツ、バスター、デュエル、それと、あの二機です!」

 

 

マリューは歯噛みする

本気で、全力で自分たちを落としに来た

こちらは第八艦隊がいるものの、スピリット、ストライクはいない

こちらが圧倒的に戦力的に不利だ

 

 

「アークエンジェルは前に出るなよ」

 

 

「!閣下!?」

 

 

ブリッジのモニターに、ハルバートンの顔が映る

 

 

「イーゲルシュテルン起動!後部ミサイル管コリントス装填!ゴットフリート、ローエングリン発射準備!」

 

 

ナタルが武装の準備を告げていく

いつなん時も、最悪の状況を想定しておくものだ

第八艦隊の全滅を考えたい人なんてここにはどこにもいないが、生きる為なのだ

 

このアークエンジェルは、なんとしてもアラスカに届けなくてはならないのだ

 

 

「すみません、遅れました!」

 

 

すると、ドアが開きキラとセラを除くヘリオポリスの学生たちが入ってきた

 

マリューが目を見開きトールたちを見る

 

 

「あなたたち…」

 

 

「志願兵です。ホフマン大佐が受領し、私が許可しました」

 

 

マリューはトールたちの目を見て、止めても無駄だと悟る

そして、どこか彼らが来てくれたことに安心している自分を嫌悪する

まだ子供の、それもつい最近まで民間人だった子たちに重荷を背負わせることになるのか…

 

しかし、残ると決心したのは彼らだけではないということをまだ知らない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キラは、サイに渡された除隊許可証を破り捨てる

 

 

『今まで守ってくれて、ありがとう』

 

 

小さな女の子が自分にお礼を言いながら折り紙で作った花を二つくれた

一つは、セラの分だろう

 

トールたちが残る

女の子が、自分に感謝してくれた

セラは戦う

 

 

「もう、これしかないよね!」

 

 

キラは自分の意志で戦うことを決意する

 

 

「兄さん?」

 

 

パイロットスーツを着たセラがキラに声をかける

キラはセラに体を向ける

 

 

「セラ…、僕も戦うよ。この艦には守りたい人がたくさんいるんだ」

 

 

キラはセラにそう告げる

セラはそれを聞き、笑みを零す

 

 

「兄さんが決めたことに口出しなんてしないよ」

 

 

「…うん。ありがとう」

 

 

キラはパイロットスーツに着替えるため、デッキを出る

 

 

「…気を付けて」

 

 

セラがぼそりとつぶやいた言葉は、キラに届いたのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フレイは、軍に志願し承認された後、更衣室でキラを待っていた

キラより先にセラが来たとき、ターゲットを変更しようかと考えたが、セラはナチュラルだということで、そこまでは踏み切らなかった

それに、セラにはなぜか、見切られてしまいそうだったから…

 

 

「…」

 

 

フレイはセラの顔を思い出す

セラが入ってきた時の顔

どこまでも無表情で、自分の中がすべて見透かされそうで

 

サイたちと一緒にいるときの感じと違いすぎて、小さく悲鳴を漏らしてしまった

 

 

『着替えたいから、出てってくれない?』

 

 

自分を突き放すような冷たい声

あんなに冷たい感じで出された声を、今までかけられたことはフレイにはなかった

 

 

「フレイ?」

 

 

キラが来た

もう止められない

この思いは誰にも悟られることはあるはずがない

そう、セラにだって、わかるはずがないのだ

 

フレイは、キラに見えないように狂気の笑みを浮かべる

そして

 

 

「キラ!」

 

 

いつもの顔に戻し、キラの名を呼びながら、キラに抱き付いた

 

 

これは誰にも止められない

キラは、戦って戦って死ぬのだ

自分のことを守って守って死んでいくのだ

 

逃がすものか

 

キラの胸に顔をうずめながら再び狂気の笑みを浮かべる

 

これからキラは自分のために、自分に利用されるのだ

誰にも渡さない

絶対に

 

もうこの○○のためなら自分だって捨ててやる

このコーディネーターに自分が味わった苦しみを味あわせてやる

 

許すものか

 

逃がさない逃がさない許さない許さない

 

 

 

 

 

さあ

 

 

 

 

 

 

報いを受けろ

 

 

 

 

 

 

コーディネーター




フレイさんが壊れました

フレイさんの怖さが出せてればいいのですが…

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