機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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十二話目です



PHASE12 分かれる道

「どういう事なんだ…」

 

 

アスランは困惑していた

理由は先程入ってきた通信だ

 

 

『こちらX-105ストライク!ラクス・クライン嬢と一人、民間人と同行!引き渡す!ただ一つ条件がある!イージスのパイロットが一人で来ることだ!この条件が破られた場合、彼女たちの命は保証しない!』

 

 

あの声はキラだ

間違いない

聞き間違えるはずがない

 

だが何のつもりなんだ?

先の戦闘では彼女を人質にし、そして今

彼女を引き渡そうとしている

向こうは一体…

 

 

「…いや」

 

 

これは向こうの判断じゃない

キラ、セラの独断だろう

 

本当にあいつらは変わらない

バカで、無鉄砲で…

 

なら、やることはただ一つだ

 

 

「隊長、行かせてください」

 

 

「アスラン?」

 

 

アスランはラウに頼む

行かせてくれと

自分が行かなきゃならないと

 

 

「だが、むこうの罠かもしれないんだぞ!そう無暗に…!」

 

 

アデスは否定

だがここはいい

隊長が許可を出せば彼はあらがえない

 

アスランはまっすぐにラウの目を見据える

ラウもアスランの目を見返す

 

 

「…」

 

 

「…」

 

 

やがて、ラウはふっと笑いを零す

 

 

「いいだろう。許可する」

 

 

「!ありがとうございます!」

 

 

アスランがデッキに走って向かっていった

 

 

「いいのですか?」

 

 

ロイがラウに聞く

 

 

「チャンスでもある。あれのパイロットは未熟なようだしな」

 

 

ラウはにやりと笑う

ロイも同じように笑う

 

 

「艦を止め、シグーを用意しろ。ロイ、君も出撃準備だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェサリウスが想定外の出来事に困惑した以上にアークエンジェルも慌てていた

 

 

「艦長!あれが勝手に言っていることです!攻撃を!」

 

 

「そんなことしたらストライクがこっちを攻撃してくるぜ?」

 

 

ナタルがマリューに進言し、ムウが笑いながら言い返す

 

マリューはふと笑いを零してしまう

自分も若かったらキラと同じことをしただろうか…

 

ここまで考えたところで首を横に振り、気を引き締める

私情を挟むな

 

 

「ナスカ級、制動かけます!イージス、出てきました!」

 

 

皆が見守る中、ストライクとイージスが対峙した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ストライクとイージス

キラとアスラン

敵同士じゃなかったら、どちらかが片方の陣へ行っていただろう

 

 

「アスラン・ザラか?」

 

 

キラが口を開く

心なしか、声が震えている

 

 

「そうだ」

 

 

アスランから返答が返ってくる

声はアスランのものだ

 

 

「コックピットを開け」

 

 

それでもまだ信用しない

その姿を確認するまでは

 

イージスのコックピットが開く

中にはアスラン・ザラの姿

 

それを確認したキラもストライクのコックピットを開ける

 

 

「二人とも、話して。声を聴かせるんだ」

 

 

キラが二人に言う

 

 

「こんにちは、アスラン、お久しぶりですわね」

 

 

「…アスラン」

 

 

ラクスが先に声を出し、そのあとにシエルが声を出す

 

 

「その声…シエル・ルティウスか!?」

 

 

アスランは驚愕するが、二人の声を確認したため、二人を受け取る

 

キラ、ストライクはイージスに銃口を向けながら離れていく

 

 

 

ダメだ

行かせるな

これが最後のチャンスかもしれないんだ

キラを、連れていく

 

 

「お前も来い!キラ!」

 

 

「!」

 

 

「お前が地球軍にいる理由がない!セラだって…、何とかして見せるから!だから…!」

 

 

アスランは声を震わせながらキラに叫ぶ

戦いたくない

お前と、友達のままでいたい

 

そう、願いを込めて

 

 

「…僕たちだって、君と戦いたくなんてない。けど…」

 

 

アスランはその時悟った

キラはナチュラルに騙されているわけじゃない

自分の意志で…

 

 

「友達がいるんだ!」

 

 

友達を守るために、戦っているんだと…

 

 

「なら…今度会ったときは、俺はお前を…、セラを撃つ!」

 

 

アスランは決意を込め、そう言い放つ

 

 

「…僕もだ」

 

 

二機が離れていく

もう交わることもないだろう

二人はそう予感していた

 

 

「エンジン始動だ!アデス!出るぞ!ロイ!」

 

 

「了解!」

 

 

二機が離れた瞬間、タイミングをうかがっていたラウがアデスに指示

そしてロイと一緒に発進する

 

 

「敵MS、発進しまし…!スピリットが発進した!?」

 

 

相手のMSが出撃したことはアークエンジェルにもわかっていた

だが、それよりも早くそのことを察したセラが出撃

それを見たムウが少し遅れて出撃する

 

 

「こうなることはお見通しだ!」

 

 

セラは見えてきたシグーに接近する

一方のラウもスピリットに接近していく

 

 

「この…!」

 

 

ロイはスピリットに無視されたように感じた

スピリットは自分に目もくれずシグーに襲い掛かったのだ

いら立ちが募る

 

 

「俺を!なめるな!」

 

 

ロイもスピリット襲おうとするが

 

 

「おおっと!あんたは俺と付き合ってもらおうか!」

 

 

ムウが乗るゼロが立ちはだかる

 

 

「邪魔だ!」

 

 

リーパーは背中からビームサーベルを抜き、ゼロに斬りかかろうとする

スピリットとシグーもライフルを抜いてお互いに向ける

 

 

「やめてください!クルーゼ隊長!追悼慰霊団代表の私がいるこの場所を、戦場にするおつもりですか!?」

 

 

「なっ…」

 

 

ラウの動きが止まる

まさかこの重要な場面でこんなことを言い出すとは!

 

ここで無視することも可能だ

だが

 

 

「聞こえませんか!?戦闘行動を中止しなさい!」

 

 

「ロイも今は退いて!その機体に乗ってるのはロイなんでしょ!」

 

 

「なっ!シエル!?シエルなのか!?」

 

 

ラクスからの再びの声

しかも命令口調ときた

さらに死んだと思われていたシエル・ルティウスの帰還

 

ここは退くのが得策か…

 

 

「全軍攻撃中止、撤退だ」

 

 

ラウがそう口にする

しかしその口調からは、悔しさがにじみ出ていた

 

 

「シエル…。本当にシエルなのか?」

 

 

「うん…。話は…、艦についてから…ね?」

 

 

一方、ロイは喜びに満ちていた

死んだと思っていた自分の婚約者が生きていたのだから

 

 

「…」

 

 

セラたち三人は退いていく三機を見つめる

 

 

「…戻るぞ。二人とも」

 

 

ムウがセラとキラにそう言い、先に戻っていく

 

 

「兄さん…行こう」

 

 

セラも戻っていく

 

 

「…」

 

 

キラも遅れて戻っていくのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんと、びっくりしたよ。シエルが戦死したって報告が来たから、そうなんだとばかり…」

 

 

「…うん。心配かけてごめんね?」

 

 

シエルとロイがヴェサリウスの部屋の中で雑談していた

 

 

「それで、足つきで何かひどいこと、されなかったか?」

 

 

「足つき…?あぁ、アークエンジェルのこと?大丈夫。自分がコーディネーターだって言わなかったから。みんなよくしてくれたよ?」

 

 

たとえコーディネーターとばれても関係なかっただろうがと、心の中で追加しておく

セラやキラはもちろん、トールやミリアリアたち

…フレイは論外だが

あの人たちは、ナチュラルとかコーディネーターとか関係ないんだろうな…

 

 

「…そっか。よかったよ」

 

 

「うん。ほんとに何もされなかったから、心配しないで?」

 

 

本当に、よくしてくれた

特にセラとは…、友人と言っていいくらいの仲になった

 

セラ…

幼くして戦火に巻き込まれて、戦うことになって

…これからも見守っていきt

 

 

「シエル?」

 

 

「…え?」

 

 

不意にロイに呼ばれる

 

 

「いや…、なんか考え込んでるように見えたから…」

 

 

「…ううん。そんなことない。大丈夫」

 

 

自分は今、何を考えた?

敵であるセラを…、何したいって?

 

そんなことは許されない

自分は、ザフトの一員なんだ

 

 

『シエル・ルティウス、ロイ・セルヴェリオスの二名はブリッジへ。繰り返す…』

 

 

「ん?なんだろ…。行こう、シエル」

 

 

「…うん」

 

 

 

 

 

「ガモフに移動?」

 

 

「あぁ、そうだ」

 

 

シエルとロイはラウから移動の指示をされる

 

 

「ガモフが今足つきを追っている。次の戦闘に間に合うように急いで向かい、戦闘を援護してほしい」

 

 

シエルはもう来たか、という思いに襲われる

アークエンジェルを攻めるという命令が

覚悟はしていた

この命令が出るのは時間の問題だろうと

とはいえ、まさか帰ってきてすぐに告げられるとは…

 

 

「しかし、私には機体が…」

 

 

そう、シエルは元々スピリットに搭乗する予定だったのだ

しかしそのスピリットにはセラが乗っている

 

乗る機体がない

 

 

「なに、念のために、君のための機体を軍は用意してあったのだよ」

 

 

「!」

 

 

機体が、ある

これで攻めれる

足つきを

セラたちを…

 

セラたちはこんな思いを抱えながら戦ってたのか…

迷いがシエルを襲う

 

 

「シエル?」

 

 

「どうしたのかね?帰ってきたばかりで疲れているのかね?」

 

 

ロイとラウが心配そうに声をかけてくる

 

 

「!いえ!そんなことはありません!任務、承りました」

 

 

言った

言った

これで取り返しはつかない

セラとは、敵だ

 

シエルとロイは、それぞれの機体に乗り込み出撃した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トイレ掃除…ね」

 

 

セラが苦笑いしながらトールたちに声をかける

 

自分たちはお咎めなしだったというのに

ま、一度銃殺刑と言われた時はさすがに焦ったが…

民間人でよかった…

 

 

「お前らは何もなしかよ?」

 

 

「ふっふっふっ」

 

 

セラはニヒル(?)な笑いをトールに見せつける

それによってトールはカチンとくる

 

 

「んのやろっ!ミリィ!」

 

 

「えぇ」

 

 

なぜそこでミリアリアに振る?

 

 

「手伝ってくれないなんて…、お母さん悲しい…」

 

 

「もうその話題、しつこいってレベルまで来てるぞ!?」

 

 

まわりが笑いに包まれる

いつもの通りの光景

 

それは戦場の中でも変わらなかった

 

 

「…」

 

 

まわりが未だ笑っている中、セラは笑いをやめる

 

シエル…

自分のことを思いやってくれた

彼女がコーディネーターだと知ったとき、今までのやさしさはウソだとも考えた

 

けどなぜだか、それはないと確信することができた

証拠なんてない

確証だってない

だが断言できる

シエルが自分や、キラたちに向けたやさしさが偽りのものじゃないと

 

今頃、プラントに戻ってるころかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かに、合流する前に足つきに追いつくことはできますが…、恐らく戦闘が出来る時間は十分しかありませんよ?」

 

 

ニコルがイザークとディアッカに告げる

 

ザフトの戦艦、ガモフでミーティングしているディアッカ、イザーク、ニコル

もうすぐ月艦隊と合流してしまうアークエンジェルをどうやって落とすか

それを打ち合わせていた

 

イザークとディアッカが合流してしまう前に落とすと言い

ニコルがヴェサリウスと合流してから攻めると言う

 

 

「臆病ものは黙ってな」

 

 

「…」

 

 

イザークに臆病者と言われてしまうニコル

ここまで言われてしまえば黙っていられない

 

 

「…わかりました。それでいきましょう。しかし、隊長が言っていた援軍が合流する前に出るんですか?」

 

 

ニコルが口にした援軍

ついさっきラウから通信が入ったのだ

こちらに二人、援軍を送ったと

 

 

「ふん、そんなことは知らん」

 

 

「攻め込む前に来るならともかく、来なかったら先に落としちまおうぜ」

 

 

イザークとディアッカは、援軍をあてにしていないようだ

 

 

「…、わかりました」

 

 

ニコルは胃薬が欲しいと思ったのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ月艦隊と合流だなぁ」

 

 

サイがそうつぶやいた

アークエンジェルは月艦隊との合流を目前にしていた

 

 

「合流したら、ぼくたちもおろしてもらえるんだよね?」

 

 

カズイがそう言う

サイが不思議そうな顔でカズイを見る

 

 

「ほら、艦長が言ったじゃん。『しかるべき所と連絡できるまで』って。だからそこがしかるべき所なんじゃ…」

 

 

サイが納得したような表情をする

 

 

「でも、セラとキラはどうなるんだろうな…」

 

 

急に聞こえてきた他人の声に驚いて、ばっと振り返るサイとカズイ

そこには暗い表情をしたトールがいた

 

 

「驚かせるなよ、トール…」

 

 

「セラとキラって、何が?」

 

 

上からサイ、カズイである

 

 

「だって、あいつらMSのパイロットだぜ?しかもここまで艦を守ってきた優秀な…だ」

 

 

「「あ…」」

 

 

トールの言葉の意味を理解したサイとカズイも表情を暗くさせる

 

 

「軍が、あいつらを手放すとは思えないんだよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

トールたちが会話していたころ、ブリッジは敵の反応をつかんでいた

 

 

「モビルスーツ熱紋確認!デュエル、バスター、ブリッツ、そして、アンノウン二!」

 

 

「え!?」

 

 

チャンドラの報告にマリューが声を漏らしてしまう

片方は前にも出てきたあの新型だろう

だがもう片方は…?

また新たな新型のMSをザフトは作り出したのだろうか?

 

 

「第一戦闘配備!すぐにそれぞれの持ち場につくように知らせなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニコルたちはアークエンジェルを討つべく出撃した

その途中でなんという偶然

ラウが言っていた援軍と合流することが出来たのだ

 

 

「まさか援軍が、あのセルヴェリオス閣下の息子と、有名なパイロット、シエル・ルティウスだとは…」

 

 

この援軍のメンツに、さすがのディアッカも驚いていた

 

 

「これで落とせなかったら洒落にならんな…」

 

 

イザークもいつもの強気さが隠れてしまっている

 

それほど援軍に来てくれた二人の力はすごいのだ

 

 

「俺とシエルがスピリットをやる。イザークがストライク、ディアッカがメビウスを抑え、ニコルが足つきをやる。いいな」

 

 

「「「はいっ」」」

 

 

ロイの指示に、イザーク、ディアッカ、ニコルが了承の返事を返す

 

 

「シエル、その機体での初戦闘だな。マニュアルを確認していたから大丈夫だとは思うが、気を付けろよ」

 

 

「…うん」

 

 

今、シエルはザフトが作り出した新型のMSに乗っている

 

ZGMF-X02ラスター

機体は真っ白とはいかないが、白が基調で、黒などの色はどこにもついていない

(詳しい武装は次に出す説明参照)

 

 

「よし、見えてきた。散開!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、合流は目の前なのに!」

 

 

再びザフトの部隊が襲い掛かってきた

そのしつこさに、呆れどころか尊敬の念すらわずかに湧いてくる

 

 

「けど、やられるわけにはいかないんだ!」

 

 

セラの目の前のハッチが開く

 

 

「セラ、キラ!敵はデュエル、バスター、ブリッツ、この前の新型にアンノウンよ!気を付けて!」

 

 

「アンノウン…、また新型か!」

 

 

次々につぎ込まれるザフトの新型のMS

その技術力は羨ましいに尽きる

だが、さっきも言った通り負けられない

 

 

「セラ・ヤマト!スピリット、発進する!」

 

 

「キラ・ヤマト!ストライク、行きます!」

 

 

「ムウ・ラ・フラガ!出るぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…セラ」

 

 

シエルは今発進してきたスピリットを見る

 

今からセラと戦う

殺しあう

 

 

「…っ!」

 

 

今すぐ逃げ出したいという思いを打ち消す

 

 

「行くぞ!シエル!あいつは強い!だが、ここで落とすぞ!」

 

 

ロイが先にスピリットに突っ込んでいく

他の機体もそれぞれ戦闘に入っている

 

 

「…迷っちゃダメ」

 

 

シエルも機体をスピリットに

 

セラに向けてはしらせていった

 




今度こそ…今度こそ次は機体設定です!

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