機動戦士ガンダムSEED 夢の果て   作:もう何も辛くない

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今回は自分で書いててイライラしました…


では本編をどうぞ!


PHASE08 少年たちはゆりかごに閉じ込められる

「アスラン・ザラです。通告を受け、出頭いたしました」

 

 

アスランはあの戦闘の後、ガモフに撤退したのだが、ヴェサリウスに帰投し、ラウに呼ばれ、この場に来たのだ

なぜ呼ばれたのか、わからない

 

 

「ふむ、来たか。さっそくだが本題に入ろう」

 

 

ラウは椅子から立ち上がり、アスランの目の前まで近寄る

 

 

「先程の戦闘。君の普段の動きではなかった。だから彼らを落とせなかったとは言わんが、理由を聞いておきたい」

 

 

アスランは若いながらも、すでに軍の中でも一流といえるほどの腕の持ち主だ

そのアスランが普段通りの動きが出来なかった

アスランにとって、かなり衝撃的な出来事があったのだろうとラウは推測していたのだ

 

 

「…、あの最後の二機に乗っているのはキラ・ヤマトとセラ・ヤマト。月の幼年学校で友人だったんです」

 

 

「ほう」

 

 

アスランは一度話し出すと、止まらなくなっていた

 

 

「まさかあのような場で再会するとは思わず、どうしても確かめたくて…」

 

 

「…、そうか。戦争とは皮肉なものだな。仲の良い友人か。君の動揺も仕方あるまい」

 

 

「…」

 

 

ラウの言葉にアスランは黙り込む

そのアスランにラウは再び声をかける

 

 

「次の出撃、君は外そう」

 

 

「…え?」

 

 

アスランはラウの言葉に戸惑う

出撃から外す…?

 

 

「隊長!それは…」

 

 

「そんな相手には銃を向けられまい。私だって君にそんなことをさせたくない」

 

 

アスランは首を激しく振り、ラウに拒否の意思を見せる

 

 

「キラは、ナチュラルにいいように使われてるだけなんです!あいつ…、優秀だけど、ぼうっとして、お人よしだから…。セラだって!ナチュラルとは思えないほど優秀なんですが、それを利用されてるんです!だから、私は、説得したいんです!あいつだってコーディネーターです!セラはナチュラルですが…、自分たちが戦う理由なんかないと、わかってくれるはずです!」

 

 

「君の気持ちはわかる。…だが、聞き入れないときは?」

 

 

「!」

 

 

アスランは息をのむ

あり得ない話ではない

キラは言っていた

友達を守りたいと

あれはおそらく本気で言っていたのだろう

 

 

「その時は…」

 

 

アスランは絞り出すように声を出す

 

 

「私が…、撃ちます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスランが部屋から出て行った後、ラウは考えていた

セラ・ヤマトと、キラ・ヤマト

キラ・ヤマトの方は十中八九本人だろう

だが、セラ・ヤマトの方はどうだ?

アスランはナチュラルだと言っていた

だが、あのセラ・ヤマトはナチュラルではない

コーディネーター…、いや、それすらも超越する存在だ

 

 

「ただ、自分のことを知らないだけか、それとも本当に別人か…」

 

 

憎い存在

奴を生み出そうと考えることがなかったら、自分たちは生まれてこなったのだ

辛い現実と戦いながら生きることはなかったのだ

 

 

「…」

 

 

怒りを鎮めようとするラウ

今は違う

今するべきことはこれではない評議会への出頭

これをどううまく切り抜けるか

 

 

「やることはたくさんだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「坊主ども、スピリットとストライクの起動プログラムをロックしておいてくれ。自分以外の人間には動かすことが出来ないようにな」

 

 

セラとキラは、マードックに指示される

 

 

「なんでですか?」

 

 

セラはマードックに質問する

 

 

「ま…、すぐにわかるって」

 

 

「?」

 

 

マードックの言葉の意味は言葉の通り、すぐにわかった

 

 

 

 

 

アークエンジェルが入港した途端、武装した兵が中になだれ込み、食堂に押し込まれた

 

 

「これはどういうことですか!」

 

 

この対応に憤慨したマリューがユーラシア士官に向けて叫ぶ

士官はねっとりとした視線をマリューに向ける

 

 

「一応の措置として、艦のコントロールと火器管制を封鎖させていただくだけです。貴艦には船籍登録もなく、当然わが軍の認識コードもないんですから。残念ながら我々はまだ貴艦を友軍と認めたわけではない」

 

 

「いや、それおかしいだろ」

 

 

士官の主張にすぐさま異を唱える者がいた

セラだ

 

 

「まず友軍と認めてないならまず港に入れるなよ。…なぁ、はっきり言ってバレバレだよ?」

 

 

セラは鋭い視線を向けながら士官に話す

士官はセラの視線にたじろぎながらも、負けじと言い返す

 

 

「何のことかね?バレバレ?」

 

 

「あれ、わからないの?その頭の中は空洞なの?」

 

 

今の言葉は耐えられなかった

士官は怒りで表情を歪ませながら、セラに向かってずかずか歩く

 

 

「貴様ぁ…!」

 

 

「やめたまえ」

 

 

士官がセラにこぶしを突き出そうとしたその時、新たな人物が食堂に入ってきた

 

 

「…!しかし、ガルシア中将!」

 

 

「やめろと言ったのが聞こえなかったのかね?」

 

 

「…!はい…」

 

 

ガルシアにも鋭い視線を向けられ、士官は止まる

セラをキッとにらんでからガルシアに向かっていく

 

 

「私の部下が無礼を働いたことを謝罪しよう。ジェラード・ガルシアだ。ようこそ、アルテミスへ」

 

 

ガルシアは、マリュー、ムウ、ナタルを連れてアルテミスの内部へはいっていく

そして司令官室に案内される

 

 

「ふむ、君らのIDは確かに大西洋連邦のもののようだ」

 

 

ガルシアは、マリューたち三人を見渡す

しかし、その表情は、欲望に満ちた笑みを浮かべていた

 

 

「しかし、君が、あのエンデュミオンの鷹どのが、あんな艦と共に現れるとはな」

 

 

「特務でありますので、残念ながら仔細をお教えすることはできません」

 

 

ガルシアの言葉にムウは皮肉を込めて、おっとりと返す

 

 

「秘密というものはどこからか漏れる。無論、どこから、より、なにが、の方が価値の高い情報だと思うのだがね」

 

 

「…なるほど」

 

 

今の言葉を聞き、疑念が確信に変わる

こいつの狙いはXナンバーの機体の情報だ

おそらくセラは初めから気づいていたのだろう

 

連れてきてみても面白かったかも

 

聞かれたら、間違いなくマリューとナタルに叱られるであろう言葉を心の中でつぶやく

 

 

「できるだけ早く補給をお願いします。我々は一刻も早く月本部に行かなければなりません。ザフトの追跡だって、未だ止んでいないと思われます」

 

 

ナタルはここから一刻も早く出たいのだろう

早口で補給をするように頼む

 

 

「ザフト?これかね?」

 

 

ガルシアの手が壁のモニターをさす

そこに映っていたのは…

 

 

「ローアシア級!」

 

 

「見ての通り、奴らは傘のまわりをうろついておるよ。さっきからずっとな」

 

 

三人を見て、ガルシアはにやりと笑う

 

 

「これでは補給を受けても出られまい」

 

 

「奴らが追っているのは我々です」

 

 

ムウはさらに続ける

 

 

「このまま留まり、アルテミスに被害を及ぼしては―-」

 

 

「被害?このアルテミスがか?ばかばかしい!いつもの通り、奴らは何もできずに去っていくさ」

 

 

ガルシアは改めて三人を見る

三人の表情は唖然としていた

 

 

「君たちも疲れているだろう?部屋を用意させよう。なに、慌てることはない。ゆっくりとこれからのことを話し合っていこうじゃないか…」

 

 

呼ばれて入ってきた兵士にムウたちはつれられる

その表情はガルシアに対しての侮蔑に包まれていた

 

 

 

 

 

 

 

ザフト艦ガモフのブリッジに、イザーク、ディアッカ、ニコルの三人は集まっていた

アルテミスに入港したアークエンジェル、もとい足つきをどう討つか

そのブリーフィングである

 

 

「傘はレーザーも実弾も通さない。まあ、むこうも同じことなんだがな」

 

 

「だから攻撃もしてこない?馬鹿な話だよな」

 

 

ガモフの艦長、ゼルマンの言葉に呆れた口調で返すディアッカ

 

 

「だが、傘を突破する手段は今のところない。…、厄介なところに入り込まれたな」

 

 

「で、どうする?出てくるまでまつ?」

 

 

「ふざけてる場合かディアッカ!貴様は戻ってこられたクルーゼ隊長に何もできませんでしたと報告するつもりか!?」

 

 

「いや、そうじゃないけどよぅ…」

 

 

イザークとディアッカが言い争いをしていると、ニコルが口を開く

 

 

「傘はいつも開いているわけでは…」

 

 

「ないな。周辺に敵がいないときは展開していない。とは言っても、しまっている隙を狙って接近しても、衛星が射程に入る前に察知され、展開されてしまうだろうな」

 

 

ニコルとゼルマンの会話を聞き、ニコルが何かいい手を考え付いたのかと考えたディアッカは目に見えるほど表情をうんざりさせる

だが、そうとるのは少し早計だった

 

 

「それなら、僕の機体、ブリッツならうまくやれるかもしれません」

 

 

「なに?」

 

 

「おいおい、どうするつもりだよ」

 

 

イザークとディアッカはニコルの顔を見る

その顔は、いたずらをする子供のような笑みを浮かべていた

 

 

「ブリッツには、PSの他にもう一つ、面白い機能があるんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークエンジェルの食堂は、ざわついていた

その中で、セラは机の上に頭を載せ、うなだれていた

 

ムウたちが案内されて出て行ったあと、マードックやノイマンに士官へのあの暴言について説教されたのだ

さらに、説教がようやく終わったと思ったら今度はミリアリアの説教が始まる始末

心配したと言いながらミリアリアは泣き、それを見たトールにも説教を受け

とどめに「親に心配かけるんじゃありません」とミリアリアに言われる

まわりが笑いに包まれノックアウト

 

まあそのすぐ後、再びアルテミスの兵が入ってきて、笑いは強制終了させられたのだが

セラのHPはほぼ0に近かった

 

 

「セラ…大丈夫?」

 

 

そこに、シエルがセラを心配して、声をかけてくる

 

 

「あぁ…大丈夫じゃn」

 

 

「大丈夫よシエル。いつものことだから」

 

 

セラの言葉にかぶせて、ミリアリアが口をはさむ

 

…、まだいじる気なのか

 

 

「ひ…、ひでえ…」

 

 

「ハハハ…」

 

 

セラは反抗する気力がなくさらに項垂れる

シエルはそんなセラを見て、苦笑い

食堂が和やかな空気に包まれかけたその時

 

 

「この艦に積んであるMSのパイロットと技術者はどこかね?」

 

 

ガルシアが食堂に入ってきてそう尋ねた

セラが死んでいた視線に力を込める

そして、手をあげようとしたキラの腕をつかむ

キラは、目を見開いてこちらを見るが、今は無視する

キラも、セラの行動の意味が分かったのか、もう視線はセラではなく、ガルシアに向けていた

 

 

「なぜ我々に聞くんです?艦長たちは言わなかったのですか?」

 

 

ノイマンが不満をあらわにしながら聞き返す

しかしそれをガルシアは気にもしない

 

 

「…ストライクをどうするつもりですか?」

 

 

「なに、別にどうもしないさ。ただ、せっかく公式発表よりも前に見ることが出来る機会がもらえたんだ。いろいろ聞きたくてね…、それで、パイロットは誰かね?」

 

 

「フラガ大尉ですよ」

 

 

ガルシアの問いに、マードックがウソの答えを告げる

 

 

「さきの戦いは私も見ていた。ガンバレル付きのゼロを操れるのは彼しかおるまい。それに、たとえ彼がそのパイロットだったとしても、MSは二機あるのだ。」

 

 

「…」

 

 

マードックとノイマンはガルシアを見て、小さく歯ぎしりする

その通りなのだ

MSは二機

つまり、必然的にパイロットは二人になる

 

ガルシアは気づく

パイロットが誰なのか

言うつもりはないのだと

 

 

「まさかパイロットが女性だとは思えんが、この艦は艦長も女性ということだしな」

 

 

「え?きゃ…!」

 

 

ガルシアが汚い目を向けながらミリアリアに近づき、手をつかみ無理やり立たせる

それを見たセラは頭に一気に血が上る

だが、感情を爆発させるわけにはいかない

 

だが、抑えられなかったキラが立ち上がる

 

 

「やめてください!パイロットは僕です!」

 

 

ガルシアは驚いた顔をキラに向けるが、すぐに元の嫌な笑みに戻る

ミリアリアの手を放し、キラに近づく

 

 

「彼女を助けようとする心意気は買うがね…。あれは君みたいなひよっこが乗れるものじゃあない。ふざけたことを言うな!」

 

 

ガルシアはキラに向かって殴りかかる

しかし、遅い

本当に軍人なのかと疑うほどだ

キラはそのこぶしをかわし、ガルシアの腹にこぶしを突き込む

 

ガルシアは腹を押さえながら床に崩れる

 

 

「あなたに殴られる筋合いなんてない!」

 

 

「なん…だと!」

 

 

兵士がキラを拘束しようとする

 

 

「やめてください!」

 

 

サイがキラを助けようと割って入るが、殴り倒されてしまう

それを見たフレイが悲鳴をあげながらサイに近寄る

 

 

「もうやめて!その子と、あの子がパイロットよ!だってその子たち、コーディネーターだもの!」

 

 

フレイはキラ、そしてセラも指さしていた

辺りに沈黙が訪れる

アルテミスの兵たちが驚いた顔をしているが、一番驚いたのはセラだった

このままばれずにやり過ごそうとはこれっぽっちも思っていなかったが

まさかこんな形で

さらにコーディネーターと言われた形になるとは予想していなかった

 

だが、ちょうどいい

このまま連行されよう

 

セラとキラは、兵士に連れてかれるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんであんなこと言うんだよ!」

 

 

「だって本当のことじゃない」

 

 

トールが大声でフレイをなじる

が、フレイはまったく反省した様子はない

その様子を見てトールはさらに怒りが募る

 

 

「フレイ、セラはナチュラルだよ…」

 

 

「え、ウソ!?それほんと!?サイ!」

 

 

フレイはサイの言ったことに驚く

 

 

「うっそぉ!ならあたし、あの子が戻ってきたら謝らなくちゃ…」

 

 

キラには謝らないのかよ…!

 

怒りを通り越してあきれを感じるトール

だいたい、戻ってくるのかも疑わしいのだ

 

 

「…?」

 

 

トールは気づいた

シエルが心配そうな目で、デッキがある方向を見ていることを

 

セラ、戻って来いよ

こんないい子を心配させるなんて

普通は許されないことなんだからな…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「OSのロックを外せばいいんですよね?」

 

 

セラはスピリットの前までついてきた、

入港した直後、言い争ったあの士官に聞く

 

 

「あぁ、それは無論やってもらうが、君はもっといろんなことができるだろう?」

 

 

士官はセラににやにやと嫌な笑みを向けながら言う

 

 

「いろんなこと…とは?」

 

 

「こいつと同じものを作ったり、こいつを改造したりなどだよ」

 

 

その言葉を聞き、セラはため息をつく

 

 

「あのですね、俺は民間人です。そんなことできるわけがないじゃないですか」

 

 

「だが、君は裏切り者のコーディネーターだろう?」

 

 

その言葉は、コーディネーターに言っていたらかなり堪えただろう

だが、セラはナチュラルだ

まったく堪えない

 

 

「あのですね。専門の勉強もしないで改造とか、できるわけがないでしょう?もしコーディネーターがそれをできていたらすごいことになってますよ。今頃戦争が終わってますよ?ザフトの勝利で」

 

 

「な…!」

 

 

怒りの目を向けてくるが、まったく気にならない

 

 

「…!」

 

 

そこで、セラは感じた

何かが…、来る?

ヘリオポリスがザフトに攻撃される直前に感じたあの小さな感覚

 

 

「ザフトが…来る?」

 

 

セラはつぶやく

感覚はどんどん強くなってくる

ここもヘリオポリスの時と同じだ

 

気づかないときもあるだろうほどの小さな違和感

今回はそれを感じ取った

 

セラはすぐさまコックピットに乗り込む

あの士官がやかましい

外に自分の声が届くようにする

 

 

「ザフトが来る!戦闘配備をさせろ!」

 

 

セラがそう叫んだ瞬間

 

 

アルテミス全体を、大きな揺れが襲った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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では、また次回で!

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