VALKYRIE PROFILE ZERO   作:鶴の翁

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※注意
 閑話は現在執筆中の本編より更に登場人物の性格が崩壊しております。
 ギャグテイスト? での提供と言う形になります。
 文章も短く、簡易的なものとなります。
 お読みになる際はご注意ください。
 


閑話1

 武器屋を出た二人は、そのまま帰るのは惜しいと言うルイズの提案を受け、レナスがそれを了承。夕刻まで城下町を散策することとなった。

 二人は、大通りを歩きながら、目に付いたお店へと足を向ける。

 最初に二人が入ったお店は、服屋であった。

 実は服屋へ行きたいと言ったのはレナスである。

 ルイズは学院に居る間は、制服を着る義務があるが、レナスにはそれがない。

 ほぼ、着の身着のまま召喚された、と言うことにしてあるゆえに他の服へと着替える服がないのだ。

 勿論、レナスには浄化の力があるため、例え、一生同じ服を着続けたとしても、その浄化の力のお陰で、洗濯された洋服よりも清潔な服を着続けることが出来る。

 だがそのことを知らない周りからして見れば、いつ洗濯しているかもわからない服をずっと着続けているようにしか見えないのだ。

 無論、学院の者から数着借りてはいるのだが、いつまでも借りているわけにもいかないと言うレナスの判断からである。

 その貸し出された服の中には、学院の制服や、使用人用のメイド服なども混じっていたのだが、色々と問題になりそうだった為、それらは試着されることなく、レナスの部屋に備え付けられていたタンスの奥底へと収納されることとなった。

 その時どこからか舌打ちのような音が聞こえた様な気がした、とレナスは語った。

 

「ルイズ。私の買い物に付き合わせてしまってすまない」

 

 淡々とした言い方ではあったが、少し申し訳無さそうに言うレナスに、ルイズはさも気にしてないように返事を返す。

 

「構わないわよ。自分の使い魔にいつまでも同じ服を着せ続けているなんて、それこそヴァリエール家の沽券に関わるわ。それに――」

 

 ルイズはレナスに顔を向けるとまるで花が咲いたように笑った。

 

「私だって女の子よ。買う買わないにしても、可愛い服を見るだけでも楽しいものよ」

 

 そう言うと、ルイズは小走りになりながら、レナスより先に店内へと入っていった。

 それを見たレナスは、例えどの時代、どの世界であろうと少女と言うのは、この手の買物が好きなのだなと、軽く微笑み、ルイズの後を追うように店内へと足を進めた。

 

 店内は先程の武器屋とは打って変わって綺羅びやかなものであった。

 貴族様御用達といった所であろうか、どの服も見たところ一級品であり、店内に居る客もそれに負けず劣らず、豪華な服を着ていた。

 

「……ルイズ、入って直ぐで何だが、もっと庶民的な店にしないか?」

 

 店先からはただの服屋としか見て取れなかったので、入るまでその店がどういうお店なのかレナスにはわからなかったのだ。

 

「えー、なんでよ?」

 

 レナスの言葉に少し不満気に返すルイズ。

 

「いや、私にはここにあるような豪勢な服は似合わない。もっと質素な物で良い」

 

 仲間のエインフェリア達が聞けば、ヴァルキリーの戦闘服も十分豪華な気もするがな、と返されそうだが、今のレナスの姿は町娘のそれであり、神化時の姿を知る者は今この場には誰も居ない。

 そんなレナスの言葉にルイズは呆れた顔をする。

 

「なによそれくらい。別に豪勢な服を買えなんて言ってないわよ。それなら別にあんたが気にいるシンプルな服をこの店から選べば良いだけの話じゃない。ほら! 行くわよ!」

 

「ル、ルイズ!? わかったからそんなに引っ張るな!」

 

 ルイズは何故か嬉しそうにレナスの手を強引に引きながら店内の奥の方へと更に足を進めるのであった。

 

 

 

 それから時間にして約二時間。

 ルイズにされるがままに服をあれやこれやと試着させられながらも、値段もそこそこのレナスに合う、いま来ている服に酷似した白や薄い水色のような清らかな色をした服を数着購入した。

 その後も、別の店に行くも、何かとルイズがレナスに絡みながら買い物を続けることとなった。

 買い物を終えた二人は、荷物を学院まで届けてくれる所に荷物を預け、休憩のためにとテラスのあるカフェに寄っていた。

 テラス席に着くも、注文を終えたルイズは少し席を外すとだけ言い残し、一人店内へと入っていった。

 一人になったレナスは、だらしなくも椅子の背もたれへとその身を預けた。

 

「……何故だろうか。不死者と戦うよりも疲れた気がするな」

 

 大きく深呼吸するように息を吸い、軽く吐き出す。

 レナスは先程までの買い物を目を閉じて思い出す。買い物をしている時のルイズは、学院に居る時よりも楽しげに、普段見せない笑顔を常にしていたような気がする。

 やはり勉学をしている時より、このような羽を伸ばせる時は、皆少なからず笑顔になるのだろうなと思慮する。

 

「待たせたわね。プラチナ? どうしたの? もしかして疲れちゃった?」

 

 ルイズの声に反応し目を開けると、店内から戻ったルイズが対面の席に腰掛けていた。

 

「あぁ、少しな」

 

 背もたれから背を離し、レナスは姿勢を正す。

 

「でも、楽しかったでしょ?」

 

 今も楽しそうに笑うルイズに、レナスもつられて微笑む。

 

「そうだな。このようなことは初めてだ」

 

 今まで、アース神族の主神であるオーディンに駒として使われてきたレナスに、このような娯楽と言った物事は初めてだった。

 生前も遊ぶ様な事は一切せず、家事をこなしてばかりだったなと、レナスは感慨にふけていた。

 

「でしょう? 私も久しぶりに楽しめたわ」

 

 フフッと笑うルイズではあったが、直ぐにその顔に影がさした。

 

「私もね、学院に入学した当初までは、こんな風に遊べる友人が居たのよ。でもね、私が魔法が使えないと知ると、周りは皆私から離れていったわ。落ちこぼれなんかと一緒にいれないなんて言ってね。魔法一つ使えないだけで、友人と言えた人が一人も居なくなっちゃったのよ、そこから私はひとりぼっち……。絡んでくるのは、私を馬鹿にする奴等とあのツェルプストーの色ボケくらいかしらね」

 

 淡々と話し始めるルイズの言葉をレナスはただジッと聞くしかなかった。

 

「それから一緒に買物なんて行ってくれるのは家のメイド達くらいだったわね。でもね、それってただの買い物なのよ、遊びなんてもんじゃなかったわ。私があれこれ選んでも、結局私の気分を損ねないように、お店の店員なんかみたいに、良いですね、お似合いです。しか言わないのよ。そんなのつまらないわよ」

 

 顔を伏せ、言葉が徐々に弱まるルイズ。

 

「それとね、私には二人の姉様が居るのだけれど、一番上のエレオノール姉様は私がお洒落に興味を持つ頃には、もう忙しくて遊んで貰えなくてね、ちいねえさま……。あー、えっと、二番目の姉様なんだけど、身体が弱くてね、なかなか一緒に買物なんて出来なかったのよ。だからね――」

 

 顔を上げたルイズは少し目を赤くしていたが、それに負けないような笑顔で笑った。

 

「ありがとう、プラチナ。久しぶりに本当に楽しかった」

 

 それだけ言うと、照れ臭かったのか対面している店が気になるからと、そそくさとその場を離れて行った。

 小走りで離れていくルイズの背中を見ながら、レナスはルイズに対して考えを改めていた。

 貴族としてのプライドが高く、例え孤独であっても屈しない姿を学院で見てきたが、根は寂しがりやで優しい歳相応の少女なのだ。

 

「どんなに気丈な立ち振舞をしていようと、ルイズも一人の少女なのだな」

 

 やはり、あのエインフェリアに似ているとレナスは再度思う。

 似ているからこそ、幼さゆえの危うさを知っているレナスは、今暫く彼女の側で彼女を守る決意を固めるのだった。

 ルイズの後を追うべく、カフェの店員に代金を支払い、レナスも席を立った。

 

 

 

 ルイズが眺めていた店は、どうやら見世物小屋に近い風貌をしており、様々な籠が所狭しと店先に並べられていた。

 籠の中に居る生き物達を物珍しそうに眺める大人達と、その子供であろう少年少女達がはしゃいでいるのが見て取れる。

 それに交じるようにして、ピンク色のブロンド髪が栄える我が主人もその子等と一緒に籠に入れられている生き物達を眺めていた。

 ルイズの後ろに近寄り、肩を軽く叩く。

 

「あっ、プラチナ! 見て見て! このこ可愛いのよ!」

 

 もう既に目の赤みはなく、物珍しい生き物達を見ていたルイズが、両手で何かを隠すように持っていた。

 

「東方に生息している、愛玩用の小動物らしいんだけど、これがね、可愛いの!」

 

 そう言って、レナスの前にズイッと手を突き出すと、手で蓋をしていた手を開いた。

 

 

 

 

 

 ルイズの手の平に居たのは、夢の中で対峙した、あの小さな悪魔がいた。

 

 

 

 

 

「このこね、ハムスターって言うらしいの!」

 

 嬉しそうに話す、ルイズではあったが、その手の中に居るあの小さな悪魔と目が合ったレナスはその身を完全に硬直させていた。

 

「プラチナ? どうしたの?」

 

 ルイズの言葉にハッとなり、レナスは一気に距離を離す。

 突然のレナスの行動に驚いた周りの人達の目は、一斉にレナスへと向けられる。

 だが、そんなことにかまってられないというような、焦りが見て取れた。

 

「ちょっ、ちょっとプラチナ! いきなりどうしたのよ!」

 

 ルイズの声が届いているかどうかさえ怪しく、冷や汗を流しながら、レナスは腰の衛兵剣ではなく、背にしていたデルフリンガーに手を伸ばした。

 

「おっ? どうした相棒? なんか震えてるぜ? 町中なのに一体どうしたって――。おい相棒、そんな力を込めるの止めてくれないか。いやなんだか懐かしいような気もするけど、変な力が俺の腹に溜まっていってるんだが! いや俺剣だから腹なんてないがよ! 待った待った! マジで破裂する! あ、相棒、マジで止めてくれ! 止めて止めて!」

 

 抜刀しようとする女性と言葉を解する剣が物珍しさを呼んでか、見世物かと更に見物人が集まってきた。

 

「プ、プラチナ、ちょっと落ち着いて」

 

 ルイズはハムスターをその手にレナスに近付こうとするが、ルイズが近付いた分レナスも下がっているため、一向に近付けない。

 

「もしかして、プラチナ、このこが怖いの?」

 

 ルイズの問い掛けに、極僅かにだが、レナスの首が縦に動いた。

 

「ルイズ、早くそいつを籠に戻して、此方に来るんだ」

 

 明らかに焦っているレナスにルイズは残念そうにハムスターを撫でながら、もといた籠に返した。

 

「こんなに可愛いのに……」

 

 ルイズがハムスターを籠に返すのを見届けると、レナスはやっとデルフリンガーから手を離した。

 デルフリンガーも別の意味で危機を脱したらしく、ゲフゥとだけ言葉を吐くと、鞘に完全に押し込まれていないのにも関わらず黙りこんでしまった。

 だが、籠に戻されたハムスターは元から籠の中にいた他のハムスター達と合流した後、そのつぶらな瞳に、怪しい光を灯した。

 

 そこからが早業であった、ハムスター達は自身らをまるでハシゴのように籠の中で隊列を組み、下に居るものから順々に籠の外へと飛び出した。

 そしてそのままレナスの方に群となって駈け出したのだった。

 

「きゃあ!」

 

 短いながらも大きめの悲鳴を上げたレナスは、襲い来るハムスターの群れに背を向け走りだした。

 

「あっ! プラチナ!?」

 

 突然の事に店主も周りの人達も唖然としていたが、ルイズがレナスを追いかけ始めると直ぐに店主が逃げ出した奴等を捕まえてくれと叫び、逃げ出したハムスター達は周りにいた子供達に一匹残らず捕らえられ、籠へと戻されていった。

 その場から逃げたプラチナに周りの人達は、苦手な動物に好かれてしまう女性なのだろう、という微笑ましい感想を言われていた。

 だが、あの恐怖を知る者にとっては、微笑ましいなどと言う感想はとても残酷なものである。




 未だに私には奴等がトラウマなのです。
 更にレナスへのイメージが壊れてしまったと思いますが、本当にごめんなさい。

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