VALKYRIE PROFILE ZERO   作:鶴の翁

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第14話

 衛兵所を後にしたルイズ達は再び大通りを歩きながら武器屋を目指す。

 変わった点としては、財布はレナスの懐にしまわれず、先程受け取った懸賞金と共に腰に吊るされていることだけだ。

 

「懐に仕舞ったとしても盗られる物は盗られる。もしまた盗られたとしても取り返すことが出来るのだから構わんだろう? それにその度にスリを捕まえれば、城下町の平和にも繋がる」

 

 と言うレナスの言葉にルイズは渋々ながらも首を縦に振るほかなかった。

 

 ルイズを先頭に二人は大通りを外れ、先程のような狭く薄暗い路地裏へと入って行く。

 ゴミや汚物が散乱し、それらの悪臭が鼻を突く。ルイズはムッと顔をしかめながらも、それらを踏まぬように先へと進む。

 小さな十字路に出たところで、ルイズは下に向けていた視線を上へと向け、あたりを見回す。

 

「ピエモンの秘薬屋の近くだって聞いてたから、多分この辺りなんだろうけど……」

 

 それぞれの店の上に掲げられている、看板を一つ一つ確かめながら、武器屋を探す。

 

「あ、あった、多分アレね」

 

 ルイズが指差す方には、銅で作られている剣の形を模した看板がかけられていた。

 足元に気をつけながら、店先の石段を上り、武器屋であろうその店の扉を開け、二人は中へと入って行った。

 

 路地裏に居を構えてあるからか、時刻は午後へと差し掛かろうとしている時間にもかかわらず、店の中は薄暗く、店内に居たのは店主であろう、五十路位の男一人であり、他の客は皆無であった。他に何か居るとすれば、天井の片隅でせっせと自身の巣を作っている、小さな蜘蛛と、乱雑に積み込まれた武器の中に感じる不思議な気配だけだった。

 あの中に何か居るのだろうかと、横目で観察しながら店主であろう男の元まで進む。

 店主らしき男は店に入ってきた二人を怪しげに観察するような目付きで眺めていたが、ルイズの首元にある五芒星の描かれた紐タイ留めに気付くと、警戒するような声で話しかける。

 

「これはこれは、貴族様方、うちはまっとうな商売をしておりますぜ。お上に目を付けられるようなことはこれっぽっちもやってはおりませんよ」

 

 どうやら店主はルイズ達を視察に来た、税関か何かと思ったようで、身の潔白を口にするとさっさと帰れと言いたそうな目をこちらへと向けてきた。

 

「そんなつもりで来た訳じゃないわ。客よ」

 

 腕を組んだまま答えるルイズのその言葉に店主は目を見開く。そして今の心情をそのまま口に出すように口を開いた。

 

「こりゃ、おったまげた! 客でしたかい!」

 

 相手が金を落としていってくれる客だとわかると、店主はニンマリと笑い、久々の収入だと頭の中で皮算用を始めた。

 

「それで、本日はどのようなご入用で?」

 

 揉み手をしながら訪ねてくる店主にルイズは軽く嫌悪しながらも、レナスの方へ顔を向けながら答える。

 

「彼女に合う剣を見繕ってちょうだい。選ぶのは彼女に任せるから、適当に持って来て」

 

 ルイズの言葉に店主は、レナスを品定めするかのように眺めると、いそいそと奥にある倉庫の方へと姿を消した。その際に、店主の謀略の独り言がレナスの耳に届いていたが、レナスはそれを無視することにした。

 

「これなんてどうでしょう?」

 

 そう言いながら倉庫から戻ってきた店主が手にしていた物は、刺突を得意とするレイピアの類であった。

 使えなくはないのだが、これを得意とした仲間のようにまでは上手く扱えない。やはり自身が一番使い慣れている形の剣が欲しい。

 

「店主よ、すまないが、一般的に衛兵達に使われているような剣はないか?」

 

「衛兵達に使われている剣? 確かにうちで卸した物なんでありまさあ。少々お待ちを」

 

 そう行って再度倉庫へと姿を消す店主。倉庫の中を熟知しているのか、倉庫に入って数秒もしないうちに店主は戻ってきた。

 

「これでさあ、ただし一般的な物なんでそこまで良い物ではですぜ? 良くも悪くも普通って言ったところでさあ」

 

 店主が持って来た物は町中の衛兵達が腰から下げていたものと全く同じものであった。

 

「触っても問題ないか?」

 

 レナスの問いに、どうぞ、と店主は返しながらレナスに剣を渡す。

 それを受け取ったレナスは剣を鞘から中程まで抜刀し、刀身を眺める。

 店主の言う通り、良くも悪くもない平凡な剣なのだろうが、ミッドガルドで一般的に使われている剣より少々弱い位と感じるくらいか……。この剣が一般的であるのであれば、剣や鎧といった武具はそこまで重要視されていないのだろう。

 だが、今の私が使うとしたら丁度良いくらいか。

 

「なるほど、確かに良くも悪くもないな」

 

「でしょう? でいかがなさいますか?」

 

 店主の問いかけにレナスは、鞘に剣を収めながら、これを――。

 

「ちょっと! そんなみすぼらしい剣にするの!?」

 

 貰おうか。とレナスが口にする前にルイズが口を挟んだ。

 

「私のパートナーとして側に居るのよ!? もっと綺麗で見栄えがいい剣にしなさい!」

 

 任せると言っておきながら、自分の要望を勝手に押し付けてくるルイズに店主もレナスも困り顔になる。

 

「ですが、お嬢様、お連れの方がこれで良いと言っておられますし、先程は任せると――」

 

「そんなことはいいから、この店で一番高価で見栄えの良い奴を持って来なさい!」

 

 店主の言葉など聞く耳を持たないといったような態度でレナスは店主を怒鳴りつける。

 すごすごとまた倉庫へと入っていく店主が、行き際に悪態をついていたが、それもまたレナスの耳に届いており、仕方のない事だ。と、今度はあえて聞き流した。

 次に店主が戻ってきた時、その手の中には、小柄な人間の背丈程ある、大剣を抱えていた。

 見たところ、宝石も散りばめられており、刀身は鏡のような光沢を持っていた。

 武具に関しては素人であるルイズは、小さく賞賛の声を漏らしていたが、レナスの目から見ると、その剣は些か綺麗過ぎていた。

 

「これなんてどうでしょう? 我が店に置いてある中で最も高価で見栄えの良い一振りでさあ。なんてったってこいつは、かの有名なゲルマニアの錬金術士、シュペー卿が鍛えた物で魔法もかかっております。こいつなら岩だろうが、鉄だろうが何でも斬ることできまさあ。どうです? これなら文句はありませんよね?」

 

 見栄えも気に入ったのかルイズは満足そうに頷くと、じゃぁ、それを――。

 

「待て、その前にそれを持って見ても良いか?」

 

 ちょうだい。とルイズが言う前に今度はレナスがルイズの言葉に口を挟んだ。

 

「へぇ、構いませんが、丁寧に扱ってくだせえ」

 

 そう言いながら渡してくる店主から大剣を受け取ると、ギーシュの剣を見た時と同様に、さも調べてるかのように軽く叩きながら、持ち手の方で神力を流し、内部を解析する。

 今の自分でも振るえなくはないのだが、やはり仲間である重戦士達と比較すると、練度は落ちる。

 それにこいつは――。

 解析を終えた、レナスは感謝の言葉を述べながら、店主へと剣を返す。

 

「良い剣でしょう? 私もこれほど良い剣は余り見たことがありません。で、いかがなさいますか? お嬢様の方はこれをご所望ですが、お連れ様の方もこれで良いですかい?」

 

 もう既に買う物は決まっただろうとばかりにニタニタと笑う店主に、レナスは答える。

 

「いや、やはり先程の剣を貰おうか」

 

 期待していた言葉とは違った言葉に店主もルイズも面食らったような顔をする。

 

「そ、それはどういった理由で?」

 

 既に決まった買い物だと思っていた店主は、レナスの答えにヒクヒクと口元を引きつらせ、それと同じように声も引きつらせながら質問する。

 

「その大剣が、先程の剣より劣るからだ」

 

 レナスに言葉に目眩のような衝撃を受ける店主。

 この店一番の大剣が、衛兵達が使う一般的な剣に劣る? そんなバカな、と頭を抱え、嫌なものを払うかのように頭を振る店主に、レナスは更に続ける。

 

「剣とは敵を殺傷する為の武器だ、宝石などは不要。あったとしても一つか二つ、それも魔力などが込められたものが望ましい。しかしそれに付けられている宝石類はどれも見栄えだけの為に付けられたものだ。更にそいつの刀身と柄は別で作られたものらしい、剣を弾いた時、刀身から伝わる振動が柄に響き難かった。これでは岩や鉄を切るどころか、力任せに振るだけで刀身が柄から外れてしまうだろう」

 

 どうしてそこまで明確な答えが出せるのかと言いたげな目を向けてくる二人に、レナスは自身の目を指しながら答える。

 

「これでも旅をしてきた中で様々な武具を見てきた。魔剣、神剣などと謳われる物もな。だから物を視る眼は持ち合わせている」

 

 レナスの言葉に決して小さくない疑問を残しながらも、ルイズは彼女ならありえるのかも、と無理矢理納得した。

 だが店主はまだ納得出来ないのかレナスへと突っかかる。

 

「しかし! ここにシュペー卿の名が! ゲルマニア一番の! 錬金術士の!」

 

「確かに名はあるが、刀身と柄は別物だと言ったはずだ。柄は本物かも知れんが、刀身は偽物だ。実用性は皆無。儀式用剣として使うなら用途はあるだろう」

 

 それでも未練たらしく、大剣を指差しながら喚く主人に、レナスは事実だ、と伝えると身体の力が抜けたのか、よろめきながら椅子へと腰を落とした。

 それでもまだその手には大事そうにその大剣が抱えられていた。

 

「もう良いか? では先程の剣を――」

 

「はっはっはっ! ざまあねえな! 大事に大事にしていた剣が俺よりもオンボロだとわな! こりゃ笑いが止まらねえ!」

 

 貰おうか。と言う前に、今度はレナスの声を低い男のような声が遮った。

 今日はやけに口を挟まれるな、と感じながらも、レナスは後ろを振り返る。

 だが、そこに人影はなく、あの不思議な気配を感じた辺り。乱雑に積み込まれた剣や槍が置いてあるだけだった。

 

「デル公か……。今はおめえの相手をする余裕もねぇよ、黙ってろ」

 

「デルコウ?」

 

 気配を感じる辺りに近づき、乱雑に詰め込まれた武器の中からレナスは一本の剣を引き抜いた。

 

「喋ったのは貴様か?」

 

 引き抜いた剣がカタカタと柄を鳴らしながら答える。

 

「おう! おめえ、いい眼を持ってるな! おでれーた! 久しぶりに面白い奴が来やがったぜ!」

 

 一人、として認識して良いのか、喋る剣は今も嬉しそうにカタカタと柄を鳴らす。

 

「店主よ、こいつは?」

 

 未だに喋り続ける剣を横目に店主に問いかける。

 まだ立ち直れないのかうなだれたままの店主が力なくもそれに答える。

 

「あぁ、そいつあ、意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードのデル公でさあ。剣に意思をもたせるなんてその酔狂な魔術師が始めたのかわかりやせんが、そいつはかなり口が悪くてね、来る客来る客に喧嘩をふっかけましてね……。私の頭痛の種なんでさあ」

 

「意思を持つ魔剣か、流石の私もこれは見たことがないな」

 

 感心しながら、まじまじとデル公と呼ばれる魔剣を観察する。意思を持つ故に、安易に神力は流せない。

 あの大剣と長さは同じだが、刀身は細身、錆が浮いてはいるがこれなら今の私でもなんとか練度を落とさず振れるだろう。

 色々と考察しているレナスであったが、ふとあることに気が付いた。

 先程までうるさいくらいにしゃべっていたこの魔剣がピタリとその言葉を止めていたのだ。

 誤って浄化でもしてしまったかと思っているレナスにデル公の柄が動き、声を発した。

 だがそれは、次にレナスの思考を止めるものとなった。

 

「おめえ、一体なにもんだ?」

 

 一瞬だがその言葉に思考を止められたレナス、だがその言葉の意味を理解すると、柄の所に顔を近づけ、小さな声で囁く。

 

「貴様……。私が解るのか?」

 

 迂闊だった、手にした相手の情報を読み取る力があるとまで考えずに手にしたことをレナスは後悔した。

 威圧を込めたような声でデル公に話しかけると、まるで人間のように少々恐怖したような気配を出しながら、デル公が答える。

 

「い、いや、解るっていうか、俺は確かに手にした相手を少しばかり読み取れるが、おめえが人間ではあるが人間としては綺麗過ぎると感じただけだ。おめえの正体までは解んねえ」

 

 レナスに合わせるように小声で答えるデル公に、完全に正体がバレなかったことに少しばかり安心したレナスは、デル公に言葉を返す。

 

「デル公、このことは黙っていて欲しい。その代わり貴様を買ってやる」

 

「おう、わかった。おめえについて行けば退屈はしなさそうだしな。後俺の名前はデル公じゃねえ。デルフリンガーだ。覚えとけ」

 

 他の者に聞かれないよう小声で契約を結び、レナスはデルフリンガーから顔を離すと、店主へと話しかける。

 

「店主よ、先程の剣と、こいつを貰おう」

 

「へえ、そりゃ構いませんが……。そいつをですかい?」

 

 少し立ち直れたのか、最初のような態度で受け答えする店主にレナスは頷く。

 

「ちょっと、私は一本しか買わないわよ。それに喋る剣なんてなんか嫌よ。それに一本あれば十分じゃないの?」

 

 また不機嫌になっているのか、不貞腐れたような声でルイズが反論する。

 

「ルイズには先程の剣を買って貰う。これは私が買おう。それと武具は消耗品でもあるからな、どちらかが壊れてしまった時の予備と考えてくれ」

 

 レナスの答えに嫌な顔を崩さないルイズだが、それなら良いかと了承するルイズ。

 

「で、いくらなの?」

 

 ルイズが店主に値段を聞くと、店主はそれぞれを指差しながら金額を答える。

 

「こっちのやつが金貨で百五十、デル公が百で結構でさ」

 

「……なんであっちの方が安いのよ?」

 

「こっちにとっちゃ厄介払いみたいなもんでさ、嫌なら、お嬢様があっちの金額をお支払いになりますか?」

 

 金貨五十枚の差はでかいが、なんとなくあっちの支払いをすると負けた気になる、と思ったルイズのプライドがそれを許しはしなかった。

 ルイズは嫌々ながらも、その提示された金額をカウンターの上に並べる。

 それと同じく、レナスも先程貰った懸賞金からそれだけの金額をカウンターに置いた。

 店主がそれを間違いがないか数え、確かにあることを確認すると、確かに。とだけ言い、デルフリンガーの鞘であろう物ををレナスへと渡す。

 

「もし、そいつがうるさければ、こいつをその鞘に押しこめば黙りますんで、使ってくだせえ」

 

 これに入れておけば黙るのであれば、何故最初からこれに入れておかないのかと言う疑問があったが、黙ってレナスはその鞘を受け取った。

 

 その後、店主は毎度、とだけ残して奥の方へふらふらと引っ込んで行った。

 未だにその腕の中にはあの大剣が虚しい輝きを放ちながら、大事そうに抱えられていた。

 その後ろ姿を見送った、レナス達は、そこから一言も喋ることなく、武器屋を出て行くのであった。

 

 

 

 

 

「くっそう、今日は最悪だ……」

 レナス達が去った後、店主はあの大剣をどうしようかと悩みながら店のカウンターへと戻っていた。

 しかし、その手には先程の大剣はなく、代わりに酒の入った一本の瓶が握られていた。

 

「あぁ、糞! そのあの女がいう通り、儀式用剣として売るか? いや、あいつみたいに剣を視る眼があるやつはそうそういやしねぇ。馬鹿な貴族にさっきみたいにいやあ、喜んで買うやつがいるだろう。だがあの女が何処でこの事を喋るか分かったもんじゃねぇ、もし買った貴族にこのことが耳に入ったら、最悪殺されちまう……。やっぱり儀式用剣として……。いやそれじゃあ安く買い叩かれちまう。どうすれば……」

 

 うなだれながら、悩み続ける店主を余所に、店の扉が開いた。

 ハッとなった店主は店先に閉店の看板をかけるのを忘れた自分に悪態をつきながら、入ってきた客もよく見ずに怒鳴る。

 

「今日は店じまいだ! すまねぇが帰ってくれ!」

 

「あら? 貴族にそんなこと言っていいのかしらね?」

 

 貴族と言う言葉に反応した店主は、バッと顔をあげる。

 そこには対極した髪色を持つ二人の女が立っていた。

 青色の髪をした背丈の低い幼さを感じさせる少女と、赤い髪をした肉付きの良い、女の魅力を醸し出す少女であったが、どちらもマントと首元の五芒星の紐タイ留めから貴族だということが解る。

 冷や汗を掻きながらも、先程の失態を取り返すかのように愛想笑いをしながら揉み手をする。

 

「いやはや、失礼いたしました。まさかまた貴族のお客様が来られるとは思っても見なくて……」

 

 その言葉に、赤髪の少女は、フーンと軽く返していたが、青髪の少女は店主の前へと歩きつめる。

 

「何を買った?」

 

「へっ?」

 

 青髪の少女がいう言葉が理解出来ず、店主はマヌケな声を漏らす。

 

「さっきの貴族達、何を買った?」

 

 再度話しかける青髪の少女の言葉に主語が付いたおかげで、店主はやっと理解できた。

 

「へ、へえ、さっきの貴族のお客様なら、衛兵が持つような一般的な剣を一本と、ボロボロの大剣を一本お買い上げなさいましたが?」

 

 その言葉に青髪の少女が小さく頷くと、また口を開いた。

 

「私に合う剣はある?」

 

「……なんですって?」

 

 青髪の少女の言葉に聞き間違いではないかと、再度聞き返す店主。

 

「私に合う剣を見繕って」

 

「まさか、貴族様が剣をお使いになるのですかい!?」

 

 驚く店主に青髪の少女はコクリと頷く。

 

「貴族様、私が言うのもなんですが、貴族様が剣をお使いになる必要は無いかと……。確かに陛下直属のグリフォン隊なんかは杖として仕えるレイピアなどを装備しておりますが、杖にも使えないただの剣をお持ちになる必要は――」

 

 店主の言葉がピタリと止まる。それもそのはず、青髪の少女が手にしていた、杖を店主の鼻先へとピタリと狙いをつけたからである。

 

「何度も言わない、私に合う剣を用意して」

 

「ハッ! ハイ! ただいま!」

 

 ドタバタと奥に逃げるように、倉庫へと駆けこむ店主を見ながら赤髪の少女が青髪の少女へと話しかける。

 

「ねぇ、本気で剣を買うつもり? 本を買わずに剣を買うって、変なことするわね」

 

 赤髪の少女の問いかけに青髪の少女は答えなかったが、それが普通なのか、赤髪の少女もそれ以上話しかけず、詮索もしなかった。

 

 その後、店主が小柄な少女でも十分に扱える、片手剣を恐る恐る提示し、青髪の少女はそれを購入すると赤髪の少女と共にさっさと店を出て行った。

 店主はその二人の後ろ姿が見えなくなるのを確認してから、急ぎ閉店の看板を店先にかけ、自身は自室へと駆け込むと、酒を煽りながら、ベットに潜り込む。

 今日は厄日だ……。と弱々しく呟くと、枕を涙で濡らしたのだった。




 筆の速度が遅いため1ページ書くのに約8時間
 その他の原因としては、仕事もそうですが、イカと狩猟と騎空団が原因だったりします。
 なんかごめんなさい。

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