問題児と悪魔の妹が異世界から来るそうですよ?   作:亡き不死鳥

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オリジナル展開です。脳内構想では絶対に必要だったので多目に見てやってください


幸と不幸の境界

 

世界の果て

 

 

 

「と〜ちゃく。世界の果てへ参りましたよお嬢様?」

 

「おー、綺麗だね〜」

 

黒ウサギ達と別行動をしていた二人は世界の果てにあるトリトニスと滝の前まできていた。全長2800mもの広大さに加えて、跳ね返る水飛沫が作り出す数多の虹に両者が感動していた。

 

「こりゃすげえな。こんなでけぇ滝見た事ねえぞ」

 

「私は滝を見たのが初めてだな〜」

 

「まじかよ。今までどんなとこに住んでたんだ?」

 

「ーーー私はーー」

 

『ほう、人間とは珍しいな』

 

「あん?」

 

「え?…わっ!」

 

突如近くにあった川面から水柱とともに声が響いた。その水柱から大量の水が二人に降り注いで来たのでフランは勢いよく十六夜の肩から水の届かない場所まで跳躍した。…その結果…

 

「………おい」

 

「あ、あはは。ごめん十六夜、水が来たからつい…」

 

フランの踏み台になった十六夜は全く避ける事が出来ず、箱庭についた時のようにずぶ濡れになってしまった。フランに一言言ってやりたい所だが、今の十六夜の興味は川から出てきた巨大な蛇に集まっていた。

 

『ふむ…人間に、日の光を浴びても灰にならない吸血鬼か。実に珍しいな。喜べ小僧、小娘。この蛇神たる我自ら貴様らを試してやろう。さぁ、"力"、"知恵"、"勇気"。この中の何れかを我に示してみよ。さあ、試練を選べ!』

 

「おいおい随分と上から目線じゃねぇか」

 

心底楽しそうな顔で蛇神へ歩みを進めていく。

 

「んじゃま、取り敢えず。俺を試せるかどうか試させてもらうぜ!!」

 

ドンッと地面を蹴り、拳を振りかぶりながら蛇神の目の前まで跳んだ。

 

『なに!?』

 

目にも留まらぬ速さで眼前に躍り出た十六夜に蛇神が目を見開く。そんな蛇神へ一切の躊躇なく拳をその鼻頭に叩き込んだ。

 

「オラァ!」

 

殴られた蛇神は勢いそのままに出てきた川へ押し戻されてしまった。さらに蛇神がやられた時の水飛沫が再び頭上に降り注ぎになりフランがさらに距離をとった。

 

(十六夜もう勝っちゃった。私の分も残しといてくれればいいのに〜)

 

と、そんなふうに不貞腐れていると自分の視界を何かが横切った。驚き『それ』を見ると、フランの目が歓喜に染まる。

 

「うさぎだ〜!!」

 

フランの目の前を横切ったのは黒ウサギのように人間にうさ耳を生やした子供の兎だった。不貞腐れたフランの前にまるで猫を挑発する猫じゃらしの如くウサギが現れたのだ。ならばここでやる事は一つ、

 

「まてー!」

 

フランは新しいオモチャを貰ったかのように白ウサギを追いかけ始めた。

 

そしてその後には、

 

「あれ?あいつ何処行った?」

 

フランを見失った十六夜と、

 

「やっと見つけたのですよぉぉぉぉ!」

 

ようやく追いついた黒ウサギの姿が残った。

 

 

☆☆☆

 

 

そんな事は知らずフランは捕まえたウサギの足を掴みご満悦の様子で歩いていた。

 

「ウッサギ、ウッサギ、ウッサギ鍋〜♪」

 

「お嬢ちゃ〜ん、勘弁してくれないか?あと無邪気に私を食べる宣言しないでくれないかな!?」

 

そんなフランにブラブラ揺れているウサギが問いかける。ちょくちょく箱庭の外に出て仕事をサボるのが日課だった白ウサギはどうやって現場を打破するか考えていた。

 

(この嬢ちゃんみたいな子の場合は物で釣った方が簡単かな〜?)

 

自分の安全を確保しつつ、自分を捕まえた少女に痛い目を見させる方法を探す。そしてやはりギフトゲームが手っ取り早いと結論を出し、早速吹っかける事にした。

 

「なぁ嬢ちゃん。私とギフトゲームしない?私に勝てたらとってもいい物あげるよ?」

 

「いい物?やるやる!」

 

さっきまで話を無視していた時と打って変わって興味を示して来た

 

(こいつは騙しやすいタイプだ。ククク、せいぜい死なないようにするんだね。ウサウサウサ!)

 

「?」

 

腹の中を黒くしながら心の中で笑っていると怪訝な表情をされたので慌てて話を進めていく。

 

「こほん。ルールは簡単。私の攻撃を一回、一歩も動かずに受け止める、もしく無効化する。たったそれだけ」

 

「動かないで攻撃を受け止める……。わかった!やる!」

 

「オーケー、ゲーム成立だ。私の名前はてんゐ、よろしく」

 

「私はフランドールだよ!」

 

名前を言い合った二人の間に一枚の契約書類が舞い降りて来た。

 

 

 

 

 

『ギフトゲーム名"天の為す技"』

 

プレイヤー一覧: フランドール・スカーレット

 

クリア条件: ホストの攻撃の無効化、及び無力化

 

クリア方法: その場を動かない

 

敗北条件: その場から動く

 

特殊ルール: ホストとプレイヤー以外の干渉を禁ずる

 

宣誓 : 上記を尊重し、誇りと御旗の下"フランドール・スカーレット"はギフトゲームに参加します

 

"四本足"印』

 

 

 

 

 

契約書類をてんゐが掴み取り、高らかに宣言した

 

「さあ!ゲームを始めよう!」

 

 

……フランに足を掴まれながら。

 

 

☆☆☆

 

 

一方十六夜と黒ウサギは先程の一撃で倒しきれなかった蛇神を十六夜の拳が再びぶん殴り完全に倒した後、ゲームの報酬である『水樹の苗』を抱えフランの探索をしていた。

 

「フランちゃんは何処行ったのでしょう?十六夜さんも保護者ならきちんと見ていてくださいよ」

 

「いつの間に保護者になったんだよ。つかあいつ俺より年上なんじゃねぇの?」

 

「まぁ吸血鬼ですしあの力なら何百年か生きててもおかしくない…で・す・が!女の子に年齢の事を言うなんて失礼ですよ?」

 

「そりゃ悪かったな。……お?あれあいつじゃね?」

 

「あ、ほんとですね」

 

黒ウサギが十六夜の視線を辿るとフランと一匹のウサギが向かい合っていた。さらに間にはギアスロールと思われる紙も浮かんでいる。それを見た十六夜はまた面白いことやってるな、と顔に笑みを浮かべ、黒ウサギは相対しているウサギを見て驚愕の声を上げた。

 

「てんゐさん!?何故フランちゃんとギフトゲームを!?」

 

「なんだ黒ウサギ。知り合いか?あいつも黒ウサギと同じ月のウサギなのか?」

 

「ウサギのよしみで知っていますが彼女は月のウサギではありません。地上のウサギ……因幡の素兎と言えばわかるでしょうか?」

 

「あぁそれなら分かる。有名だしな。じゃあなにか?あいつは今から鮫の上を飛び回ったりするのか?」

 

「それはないですね。彼女はコミュニティ"四本足"から命令されない限り自分の由来するギフトゲームはしませんからね。むしろ運試しのゲームを中心にやっていました。」

 

「運ねぇ。幸運のウサギに運ゲーとは……。じゃああんま危険はねえのか?」

 

「……いえ、むしろ運次第ではかなり危険が伴います。彼女はああ見えて神格持ちなのです。……あ〜!なんで御二人とも揃いも揃って神格持ちに喧嘩を売っているのですかぁ〜!!」

 

頭を抱えて叫び出す黒ウサギ。神格とは種の最上級の証のような物。先程の蛇神の時もそうだが黒ウサギは相手のウサギのことも知っている。見た目はただのウサギだが彼女がギフトゲームで何人も重症を負わせている。死者が未だゼロなのはさすが幸運のウサギと言えるかもしれないが……

 

「……取り敢えずフランちゃんを説得しましょう。十六夜さんと違ってフランちゃんは素直ですからちゃんとお願いすればきっと聞いてくれるはずです」

 

「…残念だがそれも無理みたいだぞ」

 

「え?……あう!」

 

二人に近づこうとした黒ウサギが何か見えない壁に行く手を阻まれた。それと同時に十六夜と黒ウサギの目の前にギアスロールが立ち塞がった。

 

 

『ギフトゲーム名"天の為す技"』

 

プレイヤー一覧: フランドール・スカーレット

 

クリア条件: ホストの攻撃の無効化、及び無力化

 

クリア方法: その場を動かない

 

敗北条件: その場から動く

 

特殊ルール: ホストとプレイヤー以外の干渉を禁ずる

 

宣誓 : 上記を尊重し、誇りと御旗の下"フランドール・スカーレット"はギフトゲームに参加します

 

"四本足"印』

 

 

「これは……」

 

「特殊ルール……随分と臆病だな。いや、ここは慎重といった方がいいのか?ま、何はともあれ俺たちはここで眺めてるしか無いわけだ」

 

 

 

☆☆☆

 

 

(あれは黒ウサギ……と人間?思いつきだったが特殊ルールを入れたのは正解だったか。ククク、運がいいねぇ)

 

黒ウサギと十六夜の姿を視界に収めたてんゐは静かにほくそ笑んだ。ここまで来てゲームを降りるなどと言われれば自分の溜飲が下がらない。

 

「てんゐ〜?」

 

「ごめんごめん。じゃいくよ〜」

 

いくと言いつつまるで構える様子の無いてんゐにフランは怪訝な表情をする。だがてんゐはいやらしい笑みを隠そうともせずフランを見つめている。

 

すると……

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

空から轟音が鳴り響く。そこから顔を出したのは小さな星……隕石だった

 

 

 

ーー因幡の素兎ーー

 

因幡の素兎を助けた大国主命は、素兎の口利きのおかげで八上比売と結婚することが出来たと言われている。その逸話により因幡の素兎は幸運を授けると言われている。

 

しかしその一方で大国主命が須勢理比命と結婚したことにより八上比売と結婚しようとしていた大国主命の兄神達へ不幸を授けたことにもなるのである。

 

そして神格を得たてんゐは幸運を授けるだけでなく不幸をも授けることが出来るようになった。運で決まるゲーム。もしこのゲームを運が良い人がやったのならば小石が一つ飛んでくるだけだったかもしれない。しかし、フランが引き当てたのは石一つというには大き過ぎる石だった。

 

「おやおや、ここなら突風や川の溢流あたりだと思っていたのに……いやはや嬢ちゃんや……」

 

勝ち誇った笑みを見えながらフランに指を突きつける。

 

「……運がなかったねぇ」

 

てんゐが喋っている間も隕石はフランへ向けて落ちていく。この状況を見ているてんゐと黒ウサギ、十六夜までもが絶体絶命だと思った。落ちてくる物が物だ。普通なら為す術もなく隕石に潰されるのを待つのみだろう。

 

しかし当のフランはまるで慌てる様子はなく落ちてくる隕石を見つめていた。そしてスッと、まるで夜空の星に手を伸ばすかのような気軽さでその手を隕石へ向けた。すると手に小さな赤い球体が現れた。そして歌を歌うかのように小さく口ずさみながらその球体を……握り潰した

 

 

 

「きゅっとしてぇ〜、どっか〜ん♪」

 

 

 

 

その場にいた物は目を疑った。その瞬間は誰一人として瞬きを忘れていただろう。フランが手を握っただけで隕石が空中で爆散したのだ。あれだけの質量を一瞬で粉屑にしたフランに黒ウサギは呆気に取られ、十六夜の背中に心地良い冷や汗が流れ、てんゐは達観したような笑みを浮かべた

 

(やれやれ、まさかあんな力を持っていたとは。あんなあっさりクリア出来たって事はこの子にとってやり易いゲームだったってことかい。いやはや……)

 

「てんゐ!」

 

「!」

 

目の前にギアスロールを手に持ち笑っているフランがいた。

 

「私の勝ち!」

 

そして何処までも澄んだ瞳でフランは勝利宣言をしたのだった。それを見たてんゐは自然と笑みが浮かぶのがわかった。

 

「やれやれ、全く……」

 

だがそんなの自分のキャラじゃない。最後に捨てゼリフを残してやろうじゃないか。そう心の中で言い訳しフランへ笑いかけた

 

 

 

 

 

 

「運がいいねぇ」

 

 

 

 




てんゐちゃんはてゐを思い浮かべてくれれば結構です。

ほら、あれ、パレラルワールドてきな


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