問題児と悪魔の妹が異世界から来るそうですよ?   作:亡き不死鳥

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フランと耀の戦い長いよ!いつまでやってんの!?
いや手抜きじゃないっすよ?ただラストだけ想像出来てるのに途中が想像出来てなかっただけです(開き直り)
あとサブタイが毎回同じような事やってるんで考えるのが難しい。

あ、幻想郷組みは出ますよ?


人間と妖怪

 

 

 

 

 

 

「…………ん。………さん!……すかさん!」

 

ブンゲローゼン通りで一人の少年の声が響き渡る。どうやら道端に寝ている少女を起こそうとしているようだ。

その少年の名はジン=ラッセル。五百人のうちの捜索隊に指示を出し終えた後、急に魔王(実はフラン)の攻撃が激しくなり、クリア条件である目的のステンドグラスに近づきつつも慎重に進んでいたところ、寝ていた久遠飛鳥を見つけたというわけだ。

 

「飛鳥さん!起きてください!」

 

「……ぅん、うるさいわね」

 

不躾な返事を返されるもようやく飛鳥が起きた事にジンは安堵の溜息をつく。さっきまで触れれば即死の黒風が吹いたり、フランの弾幕が飛び交ったりと飛鳥の上を死が飛び回っていた事を考えるとゾッとする。

しかしなぜ飛鳥がこんなところで寝ていたのか疑問に思った。敵にやられたと思う程の外傷はなく、飛鳥の纏っている服は土を除けば綺麗なままだからだ。

 

「飛鳥さん、なんでこんなところで寝ていたんですか?」

 

思った事をそのまま聞くジン。飛鳥はまだ寝ぼけているのか頭を左右に振りながら状況の把握に努める。そして突然激昂した。

 

「そうよ!ジンくん、日傘をさしたおばさまを見なかった!?」

 

「え?日傘をさしたおばさんですか?それなら……」

 

「誰がおばさんよ誰が」

 

後ろに…とジンが飛鳥の後方を指さそうとしたところで、頭にパチンという衝撃と声が聞こえた。

振り返ると、そこには自分を眠らせた張本人が相変わらず日傘片手に扇子を広げていた。

 

「ご機嫌はいかが?随分と気持ち良さそうに眠っていたけれど」

 

「……そうね、無理矢理眠らされた事以外は中々の眠りごこちだったわ」

 

「それはなにより。起きたのなら早くフランドールと春日部耀の元へ行きなさい、ジン=ラッセルに久遠飛鳥。直にこの短くも長いギフトゲームは終わりを告げるわ。

数百のコミュニティを巻き込んだゲームに、さらに混乱を引き起こしたノーネームに、その物語に勝手に乱入した私達に、これから何が起こるのか。それを自分の目で確かめなさい」

 

言いたいことを言い終わると、紫はスキマを開き消えようとした。未だ逆廻十六夜はスキマの中で藍に監視をさせている。式神として紫の力を一部分け与えているので逃げられたり死なれたりはしないはずだが、まぁ心配だ。

だから早く行かなければ、と早足でスキマに入ろうとした紫をジンが引き止めた。

 

「待ってください!」

 

「……なにかしら?」

 

話が終わった(紫の中では)というのにまだ何か用か?という軽いイラつきを籠めてジンを見る。

ジンのギフトは知っている。精霊使役者(ジーニアー)、霊体の種族を隷属させて使役するギフト。限定的な種族にしか作用しないものの、隷属させれば魔王であろうとも十全に支配できるギフト。対魔王を掲げるコミュニティで、これから魔王を隷属させるならばこれほど心強いギフトもないだろう。だがそれは、強い精霊を隷属させていなければパンの耳程の価値もない。簡単に言うならば今のジン=ラッセルに興味がないのだ。

精霊使いに必要なのは如何にその精霊を使いこなすか、である。逆廻十六夜に感化され少しは変わってきたとはいえ、今の彼に統率や使役が出来るとは思えない。

 

「貴女は……ノーネームの皆を知っているんですか?」

 

「ええもちろん。これから懇意にして欲しいと思ってるわ」

 

にっこりと作り笑いを浮かべる。初対面の相手にこんな事を言われれば疑問に思うだろう。それもジン=ラッセルはノーネームのリーダー。怪しい相手に警戒するのは当然だ。

だから少し情報をあげよう。隠すだけでは信頼は得られない。だが与え、与えられた信頼を鵜呑みにするような馬鹿では頼りないにも程がある。

これはジンの素質を紫なりに測ろうとしているのだ。

 

「……では一つ、質問をいいですか?」

 

「あら。一つと言わず二つでも三つでも構わないわよ?」

 

「いえ、ギフトゲーム中ですので」

 

「それは残念。ならゲームが終わった後にはゆっくり話したいものですわね」

 

「そうですね。…ではいいですか?」

 

「ええ」

 

少し焦ったように話を続けるジン。魔王とのゲームの最中に悠長な話などしていられない。何故か耀が魔王と戦っているはずのフランと同じ場所にいるのか気になるし、十六夜の名前が出てこないのも気になる。十六夜なら真っ先に魔王に飛びかかろうとする筈なのにその場に居ないという事は、もしや魔王の配下にやられてしまったのではないか?そんな不安がジンの頭を駆け巡っていた。

 

「フランさんや耀さんや黒ウサギ、それに十六夜さんは無事ですか?」

 

これが今のジンが精一杯考えた手っ取り早く仲間の状況を知る方法。心配なのもあるが、これならノーネームが対魔王の大部分を担っているので状況がわかりやすいだろう。

 

「フランドールは現在正気を失い春日部耀と交戦中。春日部耀はフランドールとの戦闘で所々を負傷しています。黒ウサギは気絶中。逆廻十六夜は右腕を負傷してますが、まぁ元気ですわ」

 

「ちょ、ちょっと待ってください!フランさんと耀さんが交戦中!?なんでそんな事に……」

 

「落ち着きなさい、ジン=ラッセル」

 

「これが落ち着いて…」

 

 

 

 

 

 

「落ち着きなさい」

 

 

 

 

 

 

グワッと広がる妖気にジンは口を塞いだ。恐ろしい波動が目の前の女性から広がってくる。

そうだった、忘れてた。あの耀さんが一目見ただけで警戒し、ただ近づかれただけで殴りかかり、そしてそれをあっさりこの相手は受け止めていた。

つまりこの相手は自分にとって、圧倒的で絶対的な格上なのだ。それをなんで今まで忘れてたんだ。

恐怖と自己嫌悪が混ざり合う。ようやく相手の妖気が止んだ時には、ジンと飛鳥はペタンと座り込んでしまっていた。

 

「落ち着いたかしら?」

 

腰を下ろし手を差し伸べてくれた女性を見つめる。その目は僅かな冷たさを含んでいた。しかし『落胆』という感情は入っていないように思える。その意味がわからないまま、ジンはその手を取った。

 

「すみません、ありがとうございます」

 

つまり、『予想通り』『期待外れ』だということを。

だが彼も十歳を僅かに過ぎたばかりの子なのだから仕方もないだろう。これから長い付き合いになる予定なのだ。じっくり教えこめばいい。フランドールと彼女等の関係をしればそれは確実になるのだから。

 

「落ち着いたなら聞きなさい。もうすぐフランドールと春日部耀の戦いは終わるわ。紅い悪魔がこの戦いに勝利の幕を垂らしてくれる」

 

「紅い…悪魔?味方なの?」

 

「ええ。妹の為に異世界まで訪れる、優しい優しいお姉様よ」

 

「お姉様?それってまさか……」

 

 

 

 

 

ーーキィィィィィィンーー

 

 

 

 

 

言葉を続けようとする飛鳥を遮り、大きな金切り音が響く。それを見上げ、紫は小さく笑みを浮かべた。

 

「ほら……来た」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

フランは空中で佇み、弾幕に呑まれた耀のいる場所を静かに眺めていた。

暴れ過ぎたせいか、周りの屋根や地面から出た土煙が酷く耀の姿は完全には見えていない。だが弾幕越しとはいえ確かな手応えを感じた。

あれは何度も繰り返した、モノが壊れる感触だった。

 

……結局、人間ではダメだったのだ。約束すると言っても人間は簡単に嘘をつく。人間はすぐ壊れるし、寿命だって短い。

私、フランドールは人間以外だ。自分の気持ちが最優先で、身体が壊れてもすぐ治る。寿命だって何千年も残っているじゃないか。

どれをとっても人間と人間以外は釣り合わない。

何かの本で言っていた。『友達は対等な存在で初めて成立する』と。

だったら、私とノーネームの皆との対等ってなに?

力?精神?身長?自由さ?楽しさ?悲しさ?苦しさ?速さ?頭の良さ?能力?それとも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何もない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弾幕ごっこをして、ノーネームに入って、ギフトゲームやって。これだけじゃ、対等な存在じゃないのかな?

ならそもそも、私達と耀や飛鳥やイザ兄は友達じゃなかったのかな?

……耀と一緒にギフトゲームに出たのになぁ。飛鳥には初めてプレゼント貰ったのになぁ。イザ兄と沢山遊んだのになぁ。

全部…全部…

 

 

 

 

「全部独りよがりだったんだ…」

 

 

 

 

上方にある欠けた月を見上げる。その欠けた月が、まるで今の自分の心のように不完全に見えてくる。どんなに光って見えても完璧になることなんてまるっきりないと月に言われているようだ。

もういっそのこと月も壊してしまおうか。今の私なら月くらい壊せるかもしれない。歓迎会で月を手に入れるとレティシアに言ったが、月がなくなればそれも嘘になる。

……嘘をつけば私は対等になれるかな?私も壊れれば対等になれるかな?私の寿命をなくせば対等になれるかな?

一通り考えて、フランは考えるのを辞めた。らしくない。壊したモノに感傷を抱くなんて。今まで幾つも壊したくせに、今さらなにさ。

 

「………ばっかみたい。人間と妖怪が友達なんて、無理だよ」

 

「…そんなことない」

 

「!?」

 

 

ブワッと土煙が一斉に飛び散った場所から一直線に此方に向かって飛んでくる。

確かに壊したはずだった。その証拠に耀の右腕は曲がってはいけない方向に捻じ曲がり、肉が飛び出て骨が見えている。身体中にも今までの弾幕の傷が痛々しく痕を刻んでいる。通常では絶対に動けるはずがない程の傷を負いながら、耀は懸命に空中を踏み締めた。ほんの数メートルが数千キロにも及ぶような錯覚に陥る。

しかし耀は負ける気がしなかった。

先ほど壊されそうになったけど、頭から逃げろと警報が鳴りまくってるけど、痛くて痛くて泣きそうだけど!

 

「…まだ私には、フランから貰った『友達の証』が残ってる!」

 

身体中から紅い霧が立ち昇る。フランから貰った吸血鬼のギフト。傷は治せるけど貧血になるからあまり使わないようにと言われたギフト。ガルドとの戦いでもう一度戦うチャンスをくれたギフト。

……今思えばフランには助けられてばっかりだ。ガルドの時も、ペルセウスの時も、アンダーウッドの迷路の時も。

直接にしろ間接にしろ、フランが私を助けてくれた。フランは何も思ってないかもしれないけど、その借りを返させないなんてあんまりだ。

だからフラン、独りよがりだなんて言わないで!

 

唖然としてるフランに耀は勢いそのまま抱きしめた。

 

「………私は、私達は、フランのことを友達だと思ってるよ。人間でも、妖怪でも、そんなの関係なく、友達、だと……わたし……は…」

 

耀の意識はそこで途切れた。耀の身体から力が抜けていき、フランを抱きしめていた手も外れゆっくりと地面に落下していく。

そんな彼女にフランは手を向けた。助けるためではなく、今度こそ、耀を壊すために。

 

「………やっぱり無理だよ、耀。妖怪は人間を襲うモノ。私はその本能を我慢できない。お願い耀……」

 

死んで。耀や皆の存在が、今より大きくなる前に。別れが辛くなる前に。全てが終わった後に、私が本当に狂う前に。

 

 

 

「きゅっとして………」

 

 

 

 

フランはゆっくりと、ゆっくりと拳を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィィィィィィンという金切り音と共に、フランの右腕は吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 




幻想郷出ますよ(姿を出すとは言ってない)。
幻想郷(声だけ)キター。

嘘は言ってない。うん、嘘は言ってない。

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