問題児と悪魔の妹が異世界から来るそうですよ?   作:亡き不死鳥

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取り敢えず全員出しとけのノリでヒョイと



魔王のゲーム 開幕

 

 

 

 

 

「……魔王」

 

「はい。この黒い契約書類は主催者権限を持った者のみが扱える物。ヤホホ〜。これは困りましたねぇ〜」

 

「笑い事ではございません!白夜叉様の主催者権限を使ってまで防いだ筈の魔王の主催者権限を、相手の魔王はすり抜けてきたのデスよ!?」

 

ヤホホと笑うジャックに黒ウサギが突っかかる。

実は白夜叉はこの火龍誕生祭の参加ルールに条件を加えていた。

その内容は

 

『一、一般参加は舞台区画内・自由区画でコミュニティ間のギフトゲームの開催を禁ず。

二、“主催者権限”を所持する参加者は、祭典のホストに許可なく入る事を禁ず。

三、祭典区画で参加者の“主催者権限”の使用を禁ず。

四、祭典区域にある舞台区画・自由区画に参加者以外の侵入を禁ず。』

 

というものである。

つまり、参加者でなければ入れない以上参加者でなければ主催者権限は使えない。しかし参加者であるならば主催者権限は使えないという縛りもある。つまり魔王は主催者権限は絶対に使えない筈なのだ。

 

「だが連中はルールに則った上でゲーム盤に現れてるわけだ。……ハハ、流石は本物の魔王様。期待を裏切らないぜ」

 

黒ウサギとほぼ同時に十六夜が飛鳥、レティシアが共に舞台へと下りて来た。

 

「取り敢えず魔王を迎え撃つぞ。だが全員で迎え撃つのは具合が悪い。まずは俺とレティシア、そしてフランで奴等を抑える」

 

「では黒ウサギはサンドラ様を捜しに行きます。ジン坊ちゃん達は白夜叉様をお願いします」

 

「え?白夜叉に何かあったの!?」

 

「その話は後だ!魔王が下りてくる」

 

上空からは四つの人影が落下してくる。それを見るや否や両拳を強く叩き、レティシアとフランに向かって叫ぶ。

 

「んじゃいくぞ!黒い奴と白い奴は俺が、デカイのと小さいのは任せた!」

 

「了解した主殿」

 

「分かった。こっちに魔王がいてもあげないからね?」

 

「そりゃこっちもな」

 

最後まで軽口を叩き合い三人は舞台会場を砕く勢いで境界壁に向かって跳躍した。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

「なに!?」

 

驚きの声を上げたのは黒い軍服を着た男だった。十六夜が飛び上がった勢いのまま男を境界壁に叩きつける。

巨大な亀裂と共に嘔吐しかけた男は獰猛な視線で十六夜を睨んだ。

 

「会いたかったぜ魔王様。俺にも一曲恵んでくれよ」

 

更に十六夜はそのまま境界壁を力任せに踏み抜き水平に断崖を走り始めた。

 

「ヴェーザー!」

 

「馬鹿野郎!避けろラッテン!」

 

「え?…チッ!」

 

黒い軍服の男、ヴェーザーを心配した白装束の女、ラッテンは突如横から飛んで来た無数の弾幕を境界壁の壁を伝う事でギリギリ避けた。その間に陶器でできた巨兵と斑模様のワンピースを着た少女はそのまま落下していく。それを横目に引きずられていたヴェーザーは怒号を上げ、棍のような笛を一振りした。

 

「舐めるな、このクソ餓鬼!!」

 

すると不気味な風切り音が響き境界壁が生き物のように蠢き始め、十六夜の足を止めた。ヴェーザーはその隙に十六夜の手から逃れる。

 

「ラッテン、お前は先に降りてろ。マスターを一人にしたら皆殺しにしちまうからな」

 

「…分かったわ」

 

ラッテンは捕まっていた境界壁から手を離しと飛び降りる。その姿を見送るとヴェーザーは視線を十六夜に戻した。

 

「………追わないんだな」

 

「別に。お前を倒してからゆっくり追うさ。だから幻滅させないでくれよ魔王様。こちとら魔王会いたさに異世界からやってきたんだからな」

 

「ほお?そりゃ残念だったな坊主。俺は魔王じゃない。只の木っ端悪魔さ。俺らの魔王閣下は、先に落ちた二人のどちらかだ」

 

それを聞くと十六夜は盛大に舌打ちする。どうやらこちらはハズレのようだ。

 

「…チッ、フランに魔王は取られたか。まあいい。あんたらのマスターらしいあの斑ロリの前座くらいにはなってくれんだろうな?」

 

「……ま、そりゃ気づくか。だが前座はゲームを盛り上げるのが仕事だ。いいクライマックスはいい前座がいるからこそ映えるんだよ。さっさと終わらせはしねえから覚悟しろ」

 

阿ッ、と笑って二人は同時に走り出す。

拳と笛がぶつかり合い、ギフトゲームが始まった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

その眼下、先に下りていた斑模様の少女と陶器の巨兵は二人の吸血鬼と対峙していた。

 

「あら吸血鬼が二人も。これはいきなり当たり?」

 

無機質な瞳でフランとレティシアを見つめる少女。そこに再度少女と巨兵に弾幕がはなたれるが、互いに離れることであっさり避けた。

 

「レティシア、あのデカイのやっといて。私はあっちをやりたい」

 

「了解した。直ぐに片付ける。あまり無茶をするなよ?」

 

「はーい」

 

相手同士の距離が離れたところでフランは斑模様の少女へ。レティシアは巨兵へと突っ込んだ。

そしてすぐさまレーヴァテインに炎を灯し少女へ叩きつけた。しかしそれは奇妙な風によって遮られる。その黒く、温く、不気味な風を気にすることもなくフランは少女に話しかける。

 

「貴方が魔王?」

 

「ええ、そうよ。といってもハーメルンの魔王じゃないわ。私のギフトネームの正式名称は“黒死斑の魔王(ブラック・バーチャー)”よ」

 

「わーかっこいいー!それじゃあ魔王さん!」

 

元気良く、楽しそうに、口を歪ませ、不敵に素敵に最高な笑みで…

 

 

 

 

「壊れて♪」

 

「いやよ」

 

 

 

 

ここでも魔王のゲームが開始された。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

「BRUUUUUUM!!」

 

フラン魔王と戦い始めた頃、レティシアは陶器の巨兵と対峙していた。巨兵は全身の風穴から空気を吸い込み、四方八方に大気の渦を造り上げている。さらにその渦は周囲の瓦礫を壊し、吸収し始める。

しかしそんな中でも翼を広げて空中を舞っているレティシアは堂々と漂っていた。

 

「ふむ。随分と荒々しい。生物には見えないしお前は雑兵だろう。だからお前には時間をかけている暇はないんだ」

 

意思はないが蔑ろにされたのが分かったのか、陶器の巨兵は吸収した瓦礫の山を圧縮し始めた。そして

 

「BRUUUUUUUM!!!」

 

瓦礫を臼砲のように一斉に発射した。顔面に空いた巨大な空洞から数多の瓦礫が襲いかかる。

しかしその刹那。レティシアは急加速して巨兵の懐に攻め込んだ。

 

「悪いな」

 

バギャァ!と自前の槍で巨兵を貫く。腹に穴を空けた巨兵はその場に崩れ落ち、土へと還っていった。

 

「ふぅ…」

 

「大丈夫?」

 

いつの間に居たのか、サンドラが僅かな炎を纏い近づいて来た。

 

「…サンドラ様か。問題ない」

 

「そう。じゃあ…」

 

キッとフランと戦っている斑模様の魔王を睨みつける。

 

「私達も行きましょう」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

大祭運営本陣営、バルコニー内部。そこでは黒い風に閉じ込められた白夜叉と白装束の女、ラッテンが向かい合って居た。閉じ込められている白夜叉は堂々と胡座をかき、ラッテンの背後には三匹の火蜥蜴を連れている。

 

「うふふ。本当に閉じ込められているのね。最強のフロアマスターもそうなっちゃ形なしね」

 

「……おんし、後ろのサラマンドラの連中に何をした?」

 

「そんなの秘密に決まってるじゃない。如何に封印が成功したとしても、貴女に情報を与えるほど驕っちゃいないわ」

 

「うむ、まあそれは当然だな。といっても、聞く必要もないだろう。『奴等』にその程度が分からんこともないだろうしな」

 

「…奴等?何をいって…」

 

「『全員そこを動くな!』」

 

横から聞こえる声。突然の事に唖然とするラッテン。その直後にガチン!と火蜥蜴含め、ラッテンまでもが不可視の何かに拘束された。

その声を上げた場所には飛鳥が白銀の十剣を構え、立っていた。

 

「白夜叉!大丈夫なの!?」

 

「私は全く問題ない!ただ閉じ込められているだけだ!飛鳥は今すぐ逃げろ!まだ悪魔に勝てるほどお前は……」

 

「へぇ……。驚いたわ。不意打ちとはいえ、数秒も拘束されるなんて」

 

なんとか飛鳥を逃がそうとする白夜叉だったがその間にラッテンは拘束を解いていた。

飛鳥の能力は『支配する力』。だが、今の飛鳥に悪魔を支配する力はない。

 

「………火蜥蜴には逃げられちやったか。まあいいわ。貴女、かなり奇妙な力を持っているみたいね。出会い頭に悪魔を服従しようとするなんていい度胸してるじゃない♪」

 

興味心身といった表情で飛鳥を見つめる。だがその瞳には嘲りが多々に含まれまるで負けると思っている様子はない。

 

「貴女は私達がいただくわ。そして思い知りなさい、人間。我々“グリムグリモワール・ハーメルン”のゲームはこれからが本番よ!さあ、最高に過激な歌劇(オペラ)を始めましょう!」

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

耀とジンは迷っていた。先程まで一緒にいた飛鳥とはぐれ、慣れていない赤いガラスの歩廊を走っている。

 

「飛鳥は大丈夫かなぁ?」

 

「…分かりません。ですがこれはおかしいです。舞台にいた筈なのにいつの間にか外にいた事。来た道を引き返しても会場に辿り着けない。……どうなってるんでしょうか?」

 

「……匂いはしてる。でも、かなり遠く。一瞬で移動させられたのかも。……!ジン!止まって」

 

話していた耀は突如ジンの肩を引き止める。薄暗くなってきた誰もいない歩廊の曲がり角を睨みつけている。

 

「…………あらあら。随分と鋭いことですこと」

 

スッと曲がり角から現れたのは、金髪の女性だった。毛先をリボンで束ね、日傘をさし、肘まである純白の手袋をはめていた。

 

「……耀さん?」

 

現れた女性に警戒していたジンは隣の耀の様子がおかしいことに気づいた。薄っすらと、額から汗が流れている。ほんの少し、腰が引けている。そして僅かばかり、手から伝わる力が強まった気がした。

 

「どうかしたの?」

 

「……え?」

 

すぐ近くから声がした。目の前、僅か五十センチほどの距離に先程まで十メートルは離れていた筈の女性が存在していた。

 

(見逃した?いや、あの距離をあんな短時間で…)

 

「…ジン、逃げて」

 

え?という前に耀の後ろに押しやられた。

耀は女性の挙動全てに気を払っていた。耀の本能と言うべきものが彼女に対して警報を鳴らし続けていたからだ。

それなのに、分からなかった。瞬間移動か、認識を逸らす力か。とにかくわかる事は一つ、私達じゃ勝てない。

 

「はぁぁぁぁあ!!!」

 

だからジンだけでも逃がす。せめて、ジンが逃げる時間くらいは稼いでみせる。それだけを考え、敵か味方かさえ分からない相手に挑んだ。

腕に人間を簡単に殺せる程の力を込め、相手に放った。

 

「せっかちな子ね」

 

ポスッ。手からまるでフカフカの布団を殴ったような不思議な感触がした。自分の手は女性の手に防がれている。それを相手はまるで気にしていないような仕草で話を続けた。

 

「貴女達と交えるつもりはないわ。私はただの伝言役。白夜叉がこれを黒ウサギにだそうよ」

 

女性は懐からだした手紙を未だ耀の後ろで倒れているジンに投げ渡し、顔に貼りつけた。そして耀とジンが何かを言う前に女性は耀の目を遮るように片手を翳した。

 

「精々頑張りなさいな。貴女達があの子達に認められるように」

 

再び視界が開けた頃には耀とジンは元居た舞台に立っていた。

 

「………黒ウサギに届けなくちゃ」

 

分からない事は沢山あった。不可解なことも沢山ある。それでも今はゲームに集中しなければ。喝を入れ黒ウサギを探し始めるも、耀は頭の端でさっきの女性の言葉が引っかかっていた。

 

『貴女達があの子達に認められるように』

 

ソレは黒ウサギが耀の手紙を受け取り、ゲームを中断しても続いている。何が起きて何が起こっていて何が起こるのか、耀には分からない。それでも、今は既に物語は始まっている。

 

 

 

『幻想』と『箱庭』が交差する時

物語は始まる

 

 

 

 




幻想と箱庭が交差する時物語は始まる(キリッ

ようやく幻想郷組に登場者が(涙)

後々増殖するなんちゃらレベルで出したい(希望)

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