問題児と悪魔の妹が異世界から来るそうですよ? 作:亡き不死鳥
これからもご愛読よろしくお願いします!
「不死の貴方は、私が壊しても生きてられるのか……ってね」
弾幕の壁に囲まれた中で、勝利宣言にも殺害宣言にも聞こえる言葉を発するフラン。反面ジャックはその意気込みを楽しむように愉快に笑い続ける。
「ヤホホ〜♪威勢のいい方は嫌いじゃありません。しかし……第一条件として、お嬢さんに私が壊せますか?」
「もちろん。私の能力で壊せない物はないよ」
「ではでは、これはいかがです?」
ゴォッ!とアーシャが放った炎とは比べ物にならない熱量と速度でジャックの炎がフランに迫る。それをフランは持ち直したレーヴァテインの一振りで消して見せた。
「……おやおや、随分と凄まじい力をお持ちのようだ。ギフトの無効果でしょうか?……いえ、ならば私自身を破壊することは出来ませんね。やはり純粋な破壊のギフトですか。しかし私の炎をアッサリ消されるとは少々ショックですねぇ。ヤホホ〜♪」
「アッハハ!楽しそうだねえ。そろそろ、こっちも攻撃した方がいいよねぇ!」
ニコニコとレーヴァテインを持つ手とは逆の手をジャックに向ける。ヤホホ〜と笑いながらジャックはフランの攻撃に備え炎を出す準備をする。
当然、無駄だが。
「きゅっとしてぇ〜、ドッカーン!」
手元に寄せた『目』を握り潰す。相も変わらずたったそれだけで対象となったジャック・オー・ランタンの身体が破壊され、五体満足でいられなくなった。
「や、ヤホ!?こ、このギフトは…!?」
「さあ、こっからが実験。貴方はあっさり死んじゃうのかな?それとも、まだまだ遊んでくれるのかな?どっちかな〜♪」
体内から溢れ出す炎に身を包まれるバラバラのジャック。さらにこのスプラッタな状況を笑顔で眺める子供がいる光景は、なかなかに不気味だ。
燃え続けるジャックの声が聞こえなくなると、先程までジャックが悶えていた場所から爆発的な炎の拡散が起こった。
「YAッFUUUUUuuuu!!!」
さらにそこから五体満足に戻ったジャックが勢いよく飛び出してきた。まるで火から生まれ変わる不死鳥のようだ。
そんなジャックをフランは新しいオモチャをもらったような笑みで出迎えた。
「凄い凄い!やっぱり不死って本当だったんだね!」
「ヤホホ。この世界最古のカボチャ悪魔を舐めないでいただきたい。あっさり死ぬようでは不死の名が泣きますからね。ヤホホ〜♪」
「じゃあさぁ〜……」
満面の笑みは悪巧みをする時の笑みに変わっていく。フランは思ったのだ。不死鳥のように炎に包まれて復活するのなら、『復活するための炎を壊せばどうなるのか』と。
興味関心は消せない。もう一度ジャックに手のひらを向けた。
「もう一回壊れてよ」
「それはお断りしましょう!ヤホホ〜!」
初めて人格を出した時のように凄まじいスピードでフランとの距離を詰める。『目』を潰している余裕はないと判断し即座にレーヴァテインを構え、迎え撃った。
「……どうやらあなたの剣にも能力が宿っているようですね。これは厄介です」
ジャックの手をレーヴァテインで防いだところ、勢いが強過ぎたのかジャックの右腕が丸々なくなっていた。
そろそろ種明かしをしよう。何故ジャックの炎がフランの弾幕を消せなくなったのか。何故炎に耐性を持つジャックがレーヴァテインの炎で右腕を焼かれたのか。
答えは簡単だ。フランは『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を弾幕、あるいは炎に付与していた(堕ちた英雄ペルセウス参照)のだ。弾幕に触れれば壊される。炎に触れれば壊される。弾幕に力が篭ってなくとも、炎の温度が低くても、触れたものを破壊する能力だ。
「それで、あなたはこれで終わり?」
「いやいやまさか。私もこのまま引き下がれるほどカボチャが出来てないんですよ。ですので…まだまだ抵抗させていただきます!」
ゴォッ!と再びジャックから炎が放たれる。しかし今度の炎は色が
「色を変えたくらいで!……アヅッ!?」
蒼い炎をレーヴァテインが破壊するかと思いきや、消えはすれども押し負けずレーヴァテインの炎をフランの腕ごと焼き消した。
「色を変えたくらいで?それは聞き捨てなりませんよ、お嬢さん。この蒼き炎は我らの旗印。無為に命を散らした魂を導く篝火です。この炎を使うからには私の全力をもってお相手すると誓いましょう!いざ来たれ、己が身に破壊の力を持つ少女よ!聖人ペテロに烙印を押されし不死の怪物、このジャック・オー・ランタンがお相手しましょう!」
蒼い業火の炎が燃え上がり、大炎上する樹の根の空洞。自らの炎と旗印に誇りを持つ悪魔。フランはで理解する。この相手を倒すには手抜きをしている余裕はない。全力をもって、本気で倒すしかなさそうだと。
「……あなたの炎を嘲ったことは謝るわ。実験ももういいや。私も、ここからは本気でいくよ。私の今までの495年間を詰め込んだ、私の弾幕。不死でも、不死身でも、神でも悪魔でも!私の弾幕の前では無意味だって思い知らせてあげる!」
「…では、最後にお名前をお聞かせ願っても?」
「コミュニティ“ノーネーム”所属。フランドール・スカーレット。よろしく」
「コミュニティ“ウィル・オ・ウィプス”所属。ジャック・オー・ランタンです。よろしくお願いします。ヤホホ〜♪」
「ウフフ。じゃあ、壊れても文句言わないでね?」
フランの手のひらに力が集まっていく。破壊の『目』ではない。フランの全力の妖力が右の手のひらに集中し、青白い光の玉が出来上がった。
対するジャックも蒼い炎を胸の前に掲げた両手に集め始める。彼の誇りである蒼い炎を全力でぶつける為だ。そこに蒼い炎弾が出来上がる。
お互い、自らの最高の力を使う準備は整った。
最後の戦いが始まる。
「QED『495年の……」
「『ジャック・オー……」
『ゲーム終了!勝者、春日部耀!』
「「え?」」
最後の戦い、それは戦う前に終わったようだ。
まるで夢のような思いを打ち壊すように会場の舞台はガラスのように砕け散り、円状の舞台に戻ってきていた。
☆☆☆
観客席からは割れんばかりの歓声が会場を包んでいた。その中でフランとジャックは手の中で手持ち無沙汰な力をどうしようか悩んでいた。そんな二人に互いのパートナーが声を掛ける。
「フラン、時間稼ぎありがとう。おかげで簡単に勝てた」
「う、ううん!耀もお疲れ様」
手のひらの力を消し耀とハイタッチを交わす。
「ジャックさん!なんで追いかけてきてくれなかったんですか!?ジャックさんならあんな奴楽勝だったでしょ!?」
「すみませんねアーシャ。あのお嬢さんは想像より強かったもんで、逃がしてもらえませんでした」
「そんな……ジャックさんが」
信じられないといった表情を浮かべるアーシャ。身近で見てきたからこそ、この言葉が信じられない。ジャックが異常に強いのは自分がよく知っているからだ。さらにジャックが嘘を付かないこともよく知っている。
心を落ち着けキッと耀とフランを睨み、
「おい、オマエラ!名前は何ていうの?出身外門は?」
「えと、二一◯五三八◯外門のフランドール・スカーレット」
「………春日部耀」
「覚えとけ!私は六七八九◯◯外門出身アーシャ=イグニファトゥス!今回は負けたけど次に会うようなことがあったら、今度こそ私が勝つからな!覚えとけよ!」
言うだけ言ったあと、アーシャはツインテールを揺らして帰っていく。ジャックはヤホホ!と笑って説明した。
「あの子は同世代の女の子に負けたことが無い子でしたから。今回のゲームで何も出来なかったことが悔しいのでしょう」
「悔しいって言ったら最後に決着を付けられなかったのが私は悔しかったけどね」
「ヤホホ〜♪そうですね。私もあれほど楽しかったのは久しぶりです。ですが、また戦う機会もあるでしょう。それまで私はカボチャを磨いておく事にします。それでは、失礼………ん?」
去ろうとしたジャックが突如動きを止め空を見上げる。それに釣られるように耀とフランも空を見上げた。そこには黒い飛行物体。雨のようにばら撒かれる黒い封書。
「黒く輝く契約書類。……まさかこんな時に
「……ジャックさん、それがなんだか知ってるの?」
「ええ。この箱庭では知らぬものは居ないほどのものです。これはつまり……」
『ギフトゲーム名"The PIED PIPER of HAMELIN"
プレイヤー一覧、現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。
プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター、太陽の運行者・星霊、白夜叉。
ホストマスター側勝利条件、全プレイヤーの屈服・及び殺害。
プレイヤー側勝利条件、一、ゲームマスターを打倒。二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。
宣誓、上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
"グリムグリモワール・ハーメルン"印
「魔王が現れた。ということです」
感想にぶっ壊れは入れないとか言ってすぐあんな能力にしたけど大丈夫かな?
感想の前に決定していた設定はしょうがないですよね!
実際あっさりジャックさん打ち破りましたし