問題児と悪魔の妹が異世界から来るそうですよ?   作:亡き不死鳥

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続きました。
思ったより長くなってしまった。
どこまでいけるかわかりませんが頑張ります




第一章・悪魔の妹の異世界入り
悪魔の妹が異世界入り


 

 

 

暗い地下室から一転、明るい光と風を切る音がフランの感覚器官を刺激した。

 

「え!?うわわ!…わ〜」

 

驚愕、困惑、そして感動へとフランの感情は移り変わった。今まで屋敷の敷地内へ出たことはあっても、高度4000mもの高さから世界を見るのは初めてだ。そしてなにより、真上から見下ろして来る太陽に目と心を奪われた。

 

「……綺麗」

 

肌を暖める熱や目が眩むほどの光。吸血鬼であるフランには縁のないものだった。

しかしそこで自分の状況、つまり落下中だという事を思い出し、視線を上から下へ移し、固まった。

 

落下地点と思われる場所には水が張り巡らされていたのだ。吸血鬼の弱点の一つに『流水』がある。つまり水に飛び込むという事はフランにとって自殺行為に他ならない。

 

バサッバサッと虹色の羽を羽ばたかせ勢いを殺し、水面数mのところで止まる。それと同時、水柱が3つ勢いよく立ち上った。

 

 

☆☆☆

 

 

「し、信じられないわ!まさか問答無用で引きずり込んだ挙句に、空に放り出すなんて!」

 

「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」

 

「…冷たい」

 

「にゃ〜(ホンマやなお嬢〜)」

 

湖に落とされた3人は湖から上がると口々に文句を言い始めた。しかしフランは自分の見た事のない世界にワクワクしてそれどころではなく、辺りを忙しなく見回している。

 

「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」

 

「そうだけど、まずは『オマエ』って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後気を付けて」 

 

長髪でどこか高飛車そうな少女と金髪で学ランを着た所謂不良っぽさのある少年、短髪で無表情な少女の3人はフランの動向を横目で見つつも会話を続ける。

 

「それで、そこの猫を抱きかかえている貴方は?」

 

「……春日部耀。以下同文」

 

「そう。よろしく春日部さん。それで野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」

 

「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれよ。お嬢様」

 

「そう、取り扱い説明書を作ってくれたらそうするわ」

 

「ヤハハ!マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけよ」

 

「それで……さっきから落ち着きのないお嬢ちゃんは?」

 

今まで会話を続けていた3人の視線がフランに集まる。そこでようやく自分に話しかけていると分かったフランは元気良く挨拶した。

 

「私はフランドール・スカーレット!フランって呼んでね!」

 

「元気が良いのね。よろしくねフラン。私も飛鳥でいいわ」

 

「うん!よろしく、飛鳥!」

 

「…春日部耀。耀でいい」

 

「逆廻十六夜だ。よろしくな嬢ちゃん」

 

「耀に十六夜もよろしくね!」

 

改めて自己紹介も終わったところでフランも混じって現状について話し始めた。そのまま一通り話した後、十六夜が我慢しきれなくなったように呟いた。

 

「で、呼び出されたいいけどなんで誰もいねぇんだよ。この状況だと招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねぇのか?」

 

「ええ、そうよね。何の説明もないままでは動きようがないもの」

 

「―――仕方ねぇな。こうなったらそこに隠れているやつにでも話を聞くか?」

 

十六夜が草むらの一角を指差しそう言い放った。それに反応するように草むらがガサッと揺れる。

 

「なんだ?貴方も気づいてたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだったんだぜ? そっちの2人も気づいてたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「一昨日食べたお鍋の匂いがしたから気になってたんだ〜」

 

「ちょっと待ってください!貴方ウサギになんてこと「出てこないなら仕方が無い」へ?」

 

草葉の陰からうさ耳を生やした女性が現れようとしたかと思うと、十六夜が人間ではあり得ない脚力で飛び上がり女性へ蹴りをはなった。

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

間一髪で蹴りを避けると十六夜の着地点の地面がおもいきり抉れ、大地に罅を刻み込んだ。

 

「なにあれ?」

 

「……コスプレ?」

 

「ウサギだー!」

 

三者三様の反応を示されながら、十六夜の蹴りから逃げた女性は四人を説得しようと試みる。

 

「ちょ、ちょっとは黒ウサギの話を…ひゃう!」

 

しかしそこは問題児。話を聞くはずもなく再び十六夜の蹴りが放たれた。それを黒ウサギと言った女性は後ろの木の幹までバク転して飛び上がることで回避した。

 

それを今度は耀と名乗った少女が猫の様に木の幹を飛び回り黒ウサギを追いかけ始めた。

 

「追いかけっこだー!」

 

それに便乗したフランが空を飛び、数発の弾幕を打ちながら黒ウサギを追いかけ回す。当たった弾幕が木や地面を破壊して行くので黒ウサギは背筋に薄ら寒いものを覚えた。十六夜のような派手な一撃ではなく何気無く放っている弾幕の威力が十分に高いからだ。

 

「待て待て〜♪」

 

そんな黒ウサギに気づく筈もなく楽しそうに黒ウサギを追い詰めていく。

 

(こ、これは本当に命の危機なのですよ〜!きっと学級崩壊とはこのような……いえ学級崩壊なんて生ぬるいです!全校生徒が不良化してもこんなことにならないデスよ!)

 

黒ウサギは半泣きになりながら、いやマジ泣きになりながら逃げ続ける。

 

「鳥たちよ、彼女の動きを封じなさい!」

 

飛鳥が命令すると飛鳥の声を聞き、飛んでいた鳥たちが纏めて黒ウサギに襲いかかった。

 

すると鳥たちに邪魔されたことにより次の枝に飛び移ることが出来ず、地面へ落下を始めてしまう。そんな彼女の視界にある少女の顔が映り込んだ。満面の笑みを浮かべこちらへ飛んでくるフランの顔が…

 

(あぁ、ジンぼっちゃん。黒ウサギはここまでのようです。呼んだばかりの方に美味しくお鍋にされてしまうのですよ〜)

 

黒ウサギは覚悟を決め歯を食いしばり、目を閉じた。

 

「つっかまぁえた!」

 

ぽすっ、と黒ウサギの予想に反し優しく抱きかかえるようにフランに抱きしめられていた。

 

「……ほへ?」

 

現状に頭が追いつかず変な声を出してしまう。殺されると思っていたのにその少女は黒ウサギの胸に顔を埋めて嬉しそうに笑っていたのだ。

 

「えへへ〜。フランの勝ち!」

 

「………はぁ〜」

 

そんな無邪気な顔を見ながら黒ウサギは安堵のため息を吐いたのだった

 

 

☆☆☆

 

 

「さて。改めましてようこそ、"箱庭の世界"へ! 我々は貴方がたにギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと思いまして、この世界にご招待いたしました!」

 

フランをあやし終わり三人に耳を引っ張られ、ようやくこの世界について黒ウサギは話し始められた。

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです! 既にお気づきかもしれませんが、貴方がたは皆、普通の人間ではありません!」

 

「私人間じゃないよ?」

 

「大丈夫です!人外なんてこの箱庭には腐る程いますから!そして皆様の持つその特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を駆使して、あるいは賭けて競いあうゲームのこと。この箱庭の世界はその為のステージとして造られたものなのですよ!」

 

「恩恵ーーつまり自分の力を賭けなければいけないの?」

 

自分の力ーーフランにとっては『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』のことだろう。

 

(この力を手放せる…)

 

僅かにフランの顔に影が差すが黒ウサギは気づく様子もなく話を進めていく。

 

「そうとは限りません。ゲームのチップは様々です。ギフト、金品、土地、利権、名誉、人間。賭けるチップの価値が高ければ高いほど、得られる賞品の価値も高くなるというものです。ですが当然、賞品を手に入れるためには主催者の提示した条件をクリアし、ゲームに勝利しなければなりません」

 

「……主催者って何?」

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏から、商店街のご主人まで。それに合わせてゲームのレベルも、命懸けの凶悪、難解なものから福引き的なものまで、多種多様に揃っているのでございますよ!」

 

「!私にもできるの?」

 

「YES!報酬さえ用意できればフランちゃんでもなれます!」

 

「そうなんだ〜」

 

フランは異世界であるこの世界でも弾幕ごっこができる事に歓喜した。自分でゲームを開けば見ず知らずの人も一緒に遊んでくれる。フランはギフトゲームをそう解釈した。

 

「話を聞いただけではわからないことも多いでしょう、なのでここで簡単なゲームをしませんか?フランちゃん、ゲームの作り方を教えてあげるからちょっとやってみましょう?」

 

「いいの!?やるやる!」

 

異世界でさっそくチャンスをくれた。霊夢や魔理沙みたいに強いであろう彼等と一緒に遊べるのがフランはたまらなく嬉しかった。

 

「おい嬢ちゃん。俺たち全員参加できるゲームで頼むぜ?」

 

「うん!私の世界で流行ってた遊びだからすっごく楽しいよ!お姉様が言うには友達を作るきっかけになるんだって!」

 

「へぇ。なんだか素敵なゲームね」

 

「…楽しみ」

 

「………にゃー(なんか嫌な予感するでお嬢)」

 

……この中で一番この状況のマズさを悟っていたのは実は三毛猫だったりする。

 

 

 




次回…さっそく弾幕ごっこ
問題児さんたち!逃げて!超逃げて!
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